今年もバジルの季節がやってきました。バジルといえば、おなじみ「スイートバジル」ですが、じつはバジルには150を超える種類があるとされています。日本では一年草扱いですが、冬越しする宿恨性のバジル「アフリカンブルーバジル」もあるのをご存じですか? スイートバジルの香りを少しワイルドにして、スパイシーにしたような風味が楽しめるのがアフリカンブルーバジルです。今回は4種のバジルと中華料理の調味料「ホイシンソース」を使った、野菜たっぷりなトルティーヤラップを神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
バジルのシーズン到来
待ってました! 今年もシーズンイン。バジルのハイシーズンです。
毎年、何かに取り憑かれたかのように10種類以上のバジルを育てていましたが、今年はなんだか正気の沙汰。4種類のバジルが成長中です。
まず1種類目は、バジルといえばやはりこれ! イタリアンな「スイートバジル」。
これがなきゃ夏は始まりません。サラダやサンドイッチ、トマト料理など、夏気分なディッシュに欠かせないバジルです。
そして2種類目、こちらも私の定番、インド原産の「ホーリーバジル」。
この子たちは、昨年のこぼれ種から発芽したもの。そこら中で芽を出し、スクスク育っています。畑を歩けば、このホーリーバジルにズボンの裾が触れ、「ふわ〜っ」と甘い香りが漂って夢見心地のプリンセス気分。バジル業界ではトップを争う甘い香りです。ミントやゼラニウムと合わせてハーブウォーターにすれば、うっとり♡ 魔法の水に。爽やかで濃厚な甘い香りが特徴なので、サラダの隠し味にも重宝します。
そして3種類目は、ちょっと出遅れて種子を播いた「シナモンバジル」。
こちらも我が家の定番です。私的、香りのトップが「シナモンバジル」。メキシコ出身の品種で、シナモンと同じ「桂皮酸メチル」という成分が含まれているそう。んー、シナモンの香りとはちょっと別物? って感じですが、シナモンバジル特有の、スパイシーさを纏った甘い香りは、なんだか高貴。
昨年は、このシナモンバジルを使ったガパオライスをご紹介しました。
寒さに弱いバジル。日本では冬越しできずに一年草扱いですが、熱帯地方が原産で、本来は多年草です。ここ日本、私の住む神奈川県ではそれが叶いませんから、毎年春を過ぎた頃にソワソワ、せっせとバジルの種子を播くわけです。
そんななか出会ったのが「アフリカンブルーバジル」。
なんと! この人、冬越しするのよ! 奥さんっ! ってなわけで、今回のスポットライトは、この「アフリカンブルーバジル」です。
冬越しするバジル「アフリカンブルーバジル」
4種類目のバジルは、昨年、苗から育て始めた「アフリカンブルーバジル」。
本当に冬越しするのかしら⁉︎ と半信半疑でしたが、ちゃんと出てきました、新芽が。冬は地上部が枯れて枝が残り、春になるとその枝に新芽が付きます。なんなら、暖冬だったためか、地上部が枯れずに越冬した子もいました。
では肝心の味は? ひと口にバジルと言えど、味はさまざま。あまり個性が強すぎると、どんな料理にも万能に使えなかったりと、役者と同じ。シナモンバジルやホーリーバジルは独特な香りなので、ある意味では個性が強すぎ。
ジャジャーン! こちらのアフリカンブルーバジル、なんと万能に使える味!
スイートバジル系の香りに、ワイルド&スパイシーさを足したようなイメージで、どんなお料理にも合いそうな名脇役的な味。
しかも見た目は、紫がかった葉が美しく、主演女優級。神が二物を与えた才色兼備なバジルなのです。
気温が下がると葉の紫色が濃くなり、とても綺麗! アフリカンブルーバジルは、ダークオパールバジルの交配品種だそう。0℃近くの低温に耐えるので、早春からの栽培にも向いています。どうやら種子がつかないらしく、挿し芽で増やすそうです。苗で流通していますので、探してみてください。
夏バテにはいつもと違った調味料を
夏といえば! アジア料理もいいですよね。でも、カレーも魅力的だし、お蕎麦も捨てがたい。んー、悩ましい。夏バテで食欲が落ちるなんて、食いしん坊の私からしたら夢のまた夢。だって、夏は野菜も果物も美味しい季節!
夏バテで食欲がない……なんてときには、いつもと違ったハーブやスパイス、調味料を使っての料理はいかがでしょう? 私は中華街に行くと、食材屋さんを巡り、食べたことのない調味料を購入したりします。ジャケ買いなこともあるし、成分で選ぶこともあります。
つい先日は、「藤椒油(タンジャオユ)」というものを初めて買ってみました。
生の青山椒を低温の菜種油でじっくりと煮詰めて、油に香りを移したもの。これ、すんごいっオススメです。興味があれば、ぜひ。
世の中って広くて、知らない調味料や食べ物がまだまだ沢山。初めての香りに五感が驚き、喜び、夏バテなんて忘れてしまうかも。だって夏だもの! ひと夏の失敗など恐れず、大胆に新しいことに挑戦してみましょう。いつもの自分の味からの、脱却! そんなわけで、今回使ってみてほしいのが、中華料理に使われる「ホイシンソース」です。
スパイシーな甘味がくせになる「ホイシンソース」
ホイシンソースとは甜麺醤(テンメンジャン)に似た調味料、広東風甘味噌です。ねっとりこってり。黒くて甘いタレで、「回鍋肉」に使われる定番調味料です。諸外国では甜麺醤よりも、ホイシンソースのほうがポピュラー。スパイシーな甘味が特徴です。
海鮮と書きますが、海の幸が原材料に入っているわけではございません。どうやら海鮮に合うタレ、みたいなニュアンスのようです。私的には、お肉との相性が抜群。焼き豚や回鍋肉、蒸し鶏のソースにも使えて、とっても便利。
甜麺醤に似ていますが、ホイシンソースのほうが、さらにこってり甘く、濃厚で奥深い味。テクスチャーはホイシンソースのほうが柔らかく、炒め物の際には焦げにくく、使いやすいです。もちろん甜麺醤でも代用は可。絶対にホイシンソースじゃなきゃダメ! とは言いません。心地よく生きていくには、適当さと応用力が不可欠。でも、ホイシンソースだと、さらに美味しい。そんな感じです。
ネットでなんでもすぐに買える時代ですから、ご興味あればぜひ。中華街の食材屋さんに行けば、どこの店でも必ず置いてあるでしょう。
バジルを楽しむアジア風「ホイシンチキンのトルティーヤラップ」レシピ
いざ! レシピをご紹介する前に、皆さんにお伝えしなければいけません。これ、めちゃくちゃに美味しいです。しかも、めちゃくちゃ簡単。
中華風に味付けしたサラダを、夏らしくトルティーヤで巻き巻き。キュウリのパリパリ、バジルのエキゾチックな香り、ホイシンソースとピーナッツバターで作るタレの甘旨なコク深さがクセになる、サラダラップです。手軽なランチにはもちろん、パーティーメニューにもなれちゃう優れものレシピです。
■ 材料
<ドレッシング材料>
- a) ピーナッツバター 大さじ2
- a) ホイシンソース 大さじ3 ※甜麺醤で代用可
- a) ごま油 大さじ1
- a) 刻みニンニク 小さじ1
- a) 刻み生姜 小さじ1
- 水 50cc
- お好みでラー油 適量
<サラダ材料>
- 鶏ささみ肉 200g
- バジル 好きなだけ ※なんの種類のバジルでも
- レタス 1/4個
- キュウリ 半本
- ニンジン 半本
- パプリカ 1/4個
- 紫キャベツ 少々
- ピーナッツ 適量
- 胡麻 適量
- 市販のトルティーヤ 適量
■ 作り方
① a)の材料全てをボウルに入れてよく混ぜ、ペースト状になったら水を加えて、さらに混ぜる。
② 野菜類は、全て細長くカットする。
③ 鶏ささみ肉は茹でて、ほぐしておく。
④ お皿に盛りつけて、バジル、ピーナッツや胡麻を散らす。①のドレッシングをかけて、温めたトルティーヤに巻いて召し上がれ!
さて、いかがだったかしら? 北京ダックが、ストリートフードになったら、多分こんな感じかしら。サラダはあらかじめ混ぜても綺麗です。
ピーナッツバターは定番、スキッピーのスーパーチャンクを使っています。
サラダの具材はなんでもOKですが、ポイントは色味と歯ごたえ。パプリカや紫キャベツ、キュウリの鮮やかな共演は、食べる前から心が躍ります。キュウリとピーナッツが、お口の中でシャキッとカリッと! 陽気で夏らしいリズムを奏でるでしょう。
お気に入りのお皿に盛りつけて、イェーイ!ズバッとサマータイム!ウキウキの夏気分で試してみてね♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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