桜の開花とともに作りたい!母から娘へ、子の幸せを祈る八重桜の塩漬け。作り方とアレンジレシピ

桜の季節。淡いピンクの花景色に、大切な思い出をもつ人も少なくないでしょう。会津郷土料理研究家の本間のぞみさんの場合、それは故郷会津の実家の庭に咲いていた八重桜。母が作り続ける手製の八重桜の塩漬けには、いつの日も子の幸せを祈る母の思いが込められていました。お湯に入れればふわっと優しい香りが立ち上る、八重桜の塩漬けとアレンジレシピをご紹介します。
目次
母の桜湯
会津では鶴ヶ城の桜が有名で、毎年春になると、家族でお弁当を持って花見に行くのがとても楽しみでした。お城に咲く桜は本当に見事で、お城がすっぽりと桜に包まれてしまうほどです。
花見客のお祭り騒ぎが落ち着いた頃、家の庭に咲く八重桜が満開になります。NHKの大河ドラマ『八重の桜』で会津の八重桜も有名になりましたが、染井吉野の儚く淡い花姿とは大きく違い、その色は濃いピンクに豪華な八重咲きで、私にはまるであの八重さんのように強そうな女性に思えるのです。それに、周りの桜が散った後に満開を迎えるところもなんだか特別感があり、幼い頃はそんな八重桜が我が家の庭に咲くことを、ちょっと誇らしく思っていたことを覚えています。
実家の八重桜は、私の誕生記念として植えた染井吉野がすぐに枯れてしまったため、代わりに植えた木だと後から知りました。実際に八重桜のほうが強かったようで、その後何十年も美しい花を毎年咲かせてきました。


母はその八重桜を毎年摘んでは塩漬けにして、お正月やひな祭りなど、お祝いのたびに桜湯にして出してくれました。そして、私の結婚式の日にも、自作の八重桜の塩漬けをタッパーに入れて持参し、これから家族になる主人の両親や親戚の方々へ、控え室で桜湯を淹れてくれました。私はいつも何気なくその桜湯を飲んできましたが、自分が二人の娘の親になった今、その味がとても尊く感じられます。母の何気ないお勝手仕事のなかには、子どもの幸せを祈る思いがいつも込められていたのだということが、今は分かるからです。今も母は東京に暮らす私のもとへ、桜の塩漬けを毎年送ってくれます。

八重桜の塩漬け

この八重桜の塩漬けは、白梅酢を使った香りのよいレシピです。母いわく「五分咲きくらいのツボミのうちが、お湯のなかで開いたときにちょうど桜が咲いた形になって、品がいいのよ」とのこと。咲き進んだ花を漬けると、お湯で開いたときにベロンと開きすぎて可愛くないのだそうです。これは母のこだわりですが、好みの咲き具合を見つけるのも楽しそうです。ただ、塩漬けのとき、花が水の上に出ると色があせてしまうので注意してください。紅梅酢を使うと、より濃いピンクの桜の塩漬けができますよ。

Photo/shinnji/Shutterstock.com
<材料>
八重桜の花100g(直径20㎝くらいのザルに1杯分くらい)、塩25~30g(桜の重さの25~30%)、白梅酢カップ1/3、仕上げ用の塩適量
- 花は軸ごと摘み取り、軸の元についている爪状のものを取り除く。
- 大きめのボウルに入れて水を静かにそそぎ、やさしく洗い、ざるに上げて水気を切る。
- ガラスかホウロウのバットの中で塩をまぶして、花の重さの2倍くらいの重しをする。
- 2~3日で水が上がってきたら、重しを外す。
- 両手で軽くしぼって水気を切り、上がった水は捨てる。
- 5に白梅酢を入れて、浮かない程度の重しで押さえる。
- 1週間ほど漬けたら、水気をしぼってざるに広げ、半日くらい陰干しする。
- 全体にたっぷりと仕上げ用の塩をまぶしながら、花をほぐして瓶に入れ、きっちりとフタをする。
*白梅酢がない場合、色は少し落ちますが、塩漬けのまま2週間ほどおいてから水気を切って陰干しし、塩をまぶして仕上げてもよいです。
<白梅酢>
梅干しをつくる工程で梅からしみ出る汁ですが、販売もしています。母は梅干しを作っているので、自家製白梅酢を使っています。白梅酢は翌年の梅を漬ける際にシソ揉みで使うほか、スプレー容器に入れて夏のお弁当に振りかけると防腐効果もあります。他にも野菜の酢漬け、寿司酢、ドレッシング、干物にと用途はさまざま。母の一年を通した手しごとは、いろいろなことにつながっているのだなと改めて感じます。
*参考資料 ベターホーム1986年4月20日発行
<桜湯>

桜の塩漬け1~2輪ほどを湯のみに落とし、静かにお湯を注ぎます。優しい香りと塩気が美味しい。
*桜の塩漬けを飾りで使うときは、一度水にさらして塩抜きし、クッキングペーパーなどで水気を取ってから使います。
<桜おにぎり>

お茶碗一杯分に対して桜の塩漬け4輪くらいを刻んで混ぜ、握ったら塩抜きした桜の塩漬けを1輪飾ります。お花見弁当にもぴったりですよ。
<桜のラングドシャ>

薄くて軽い食感のクッキーが桜の香りを引き立たせます。甘みと塩気がちょうどいいお茶受けになります。
<材料>(天板1枚分程度)
*アクアファバ30g(ない場合は卵の白身1つ分)、砂糖30g、米粉25g、アーモンドプードル5g、八重桜の塩漬け適量
準備/米粉とアーモンドプードルを合わせてふるいにかけておく。
<作り方>
- 小さめのボウルにアクアファバ(or卵白)を入れ、泡立て器で泡立てる。泡が均一になってきたら、砂糖を2~3回に分けて入れ、ツノがピンと立ち、固めのメレンゲ*になるまでしっかりと泡立てる。
【point!】固めのメレンゲ*の目安は、ボウルを逆さにしても落ちてこない固さです。
- 1に粉類をさっくりと混ぜ合わせる。
- クッキングシートを敷いた天板に、2をスプーンですくって落とし、スプーンのへらで薄く押しつぶす。
- 塩抜きした八重桜の塩漬けを生地に一輪ずつ飾る。
- 予熱なし170℃のオーブンで20分ほど焼く。
- オーブンから取り出し、オーブンシートごと天板から外して冷ます。
*アクアファバとはヒヨコ豆の煮汁のことで、卵白の代わりにメレンゲを作ることができるため、卵アレルギーの方やベジタリアンの間で今、話題となっています。私は大豆をよく煮るので、大豆の煮汁を煮詰めたものを使っています。
<桜の豆花>

台湾の人気スイーツ豆花(トウファ)を和風にアレンジ。豆花のやさしい舌触りとシロップをかけたときに立ち上る桜の香りに癒されます。お花見パーティーなどの持ち寄りにも。持ち運びの際は温めたシロップを水筒に入れて、食べる直前にかけていただくと、まだ少し寒いお花見の頃にホッとする温かいデザートになります。夏は冷やしたシロップで冷製豆花もおすすめ。トッピングは自由に。ピーナツやくるみなどのナッツ類、きなこ、黒蜜など、いろいろ楽しめます。
<材料>
豆乳400㎖、砂糖大さじ2、粉かんてん2g
シロップ/水100ml、砂糖大さじ2
<作り方>
- 豆乳の半量に粉かんてんを入れ、よく混ぜながら沸騰したら弱火にして1分ほど温める。
- 砂糖を加えて混ぜ合わせ、残りの豆乳も加えてよく混ぜ合わせる。
- 器に流し込み、冷蔵庫で20分ほど冷やす。
- シロップを作る。鍋に水と砂糖を入れて混ぜ、沸騰したら火を止める(好みで生姜やシナモンなどを少し混ぜても美味しい)。
- 3を各自の器に取り分け、桜の塩漬けを飾り、温めたシロップを静かに回しかけて完成。

実家の八重桜は害虫や病気で幹の中が空洞になってしまったため、残念ながら昨年秋に切ってしまいました。私と同じ年月を生きた八重桜が切られてしまったのは悲しいですが、株は残してあるので、また芽が出てくるのを祈るばかりです。子どもと共に成長した木が庭にあるのは素敵なものだなと思います。私も娘たちに残せるような木を育てたいです。
会津の桜の塩漬けは通信販売もされているので、まずは購入して気軽に楽しんでみるのはいかがでしょうか。
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Credit
制作&レシピ&写真/本間のぞみ
会津郷土料理研究家。福島県会津若松市生まれ。デザイン事務所のアシスタントを経てガーデニング雑誌編集部に入社。庭のある暮らしや食に関する記事をつくる中で、さまざまな食のプロに出会い魅了され、和菓子店、ベーグル店、ビストロなどで経験を積む。現在2人の子どもを育てながら、地元の母がつくった会津野菜や食品を使ったレシピを提供中。
料理写真/3and garden
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