庭シーズン真っ盛り。気温もあがり、庭仕事をしていると汗ばむ陽気になってきました。この時期に植えておきたいハーブと言えば「ミント」。耐寒性のある多年草で、冬以外は収穫できる丈夫なハーブです。特に春夏はグングンと伸びる時期。今回はミントの歴史とおすすめの種類、そして春夏のテーブルに大活躍、さっぱりしているのにクリーミーなミントで作る「ライタ風ドレッシング」のグリルドポテトサラダを神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
最も身近で、最も栽培が簡単なハーブ「ミント」
これまで幾度となく、ご紹介してきた「ミント」。ミントは私たちの暮らしに最も身近なハーブです。飲料水、ガム、歯磨き粉などの生活用品や掃除用品にも多く使われ、誰からも好まれる、嗅ぐだけで気分が爽快になる香りです。
春の訪れと共に、今年もミントの甲高いおしゃべり声が聞こえてきました。さぁ! 5月はミントを植える最高のシーズン。私も脳内にお花とミントを咲かせて、夢見心地の浮かれ気味。
育てるのも容易で、食べても美味しい! 騙されたと思って、素直な心で植えてみて。毎年毎年永遠とおすすめして恐縮ですが、耳にタコができちゃうくらい、皆さんに紹介したくなるハーブなのです。
呪いのハーブ「ミント」?!
その歴史は古く、約3,500年も前から古代ギリシャでは生薬として使われており、日本では平安時代に「山菜」として貴族のテーブルを彩っていたのだとか。
ん、山菜? ミントは丈夫で、栽培が簡単、ほっとけば雑草のようにグングン育つので、もしかしたら、山で増殖していたのかしら? と平安時代に思いを馳せています。
それよりも平安時代の食卓で、ミントがどう使われていたのか興味津々。
一説では、属名のミント(mentha)の由来はギリシャ神話に出てくる、若い娘「メンテー(mínthē)」が由来。ダンナが若い娘と浮気をしていることに気付いた妻が、嫉妬に狂い、「小娘ぇ! お前なんか雑草に変わってしまえぇ!!!!」とメンテーを踏み付け、呪いで雑草(ミント)に変えてしまったのだとか。こ、怖い。
神話って神様達の話ですよね……? ギリシャ神話もそうだけれど、『古事記』に書かれている日本の神話もそんな感じですよね。非常に人間的。
今年こそ! ミントの栽培に挑戦してみては?
気温が上がり、昨年植えた子たちが芽を出して伸びてきました。そう! ミントは冬以外、収穫できる丈夫な多年草のハーブです。
私はハーブたちに親しみを込めて「雑草みたいな」(呪いではない)という表現をしばしば使いますが、ほとんどのハーブは手がかからず元気に育ちます。ミントは代表格です。
雑草、つまり「雑なアナタにも育てられる草」の略、かもね♡
たまに、元気すぎてアウトオブコントロールになることもありますが、基本的なことさえ知っていれば、仲良く楽しめるハーブです。
栽培ポイント①
やや日陰の湿った土地を好む
真夏の直射日光や、乾燥で葉が傷みます。特に鉢植えの場合は要注意! 生育旺盛なミントの根は魔法のように伸びていくので、鉢の中では水分不足になりがち。
根が詰まると成長も止まってしまいますから、そんな時は物怖じせずに、忍法「分身の術」、別名「株分け」をしましょう! ミントは根が傷ついてもお構いなし。成長に影響することはありませんから、大胆にやっちゃってください。
栽培ポイント②
元気だけど聞かん坊! 鉢植えもおすすめ
放っておいても勝手に育ちます。種類や環境にもよりますが、グングン庭中にミントが広がり、手がつけられなくなる「ミントテロ」なんて言葉もありますが、正直、どこでも土足で踏み込んでくる無礼者の「竹」や「笹」に比べたら可愛いもんです。
不安な方は花壇や狭めのガーデンでは、鉢でおしとやかに育てると扱いやすいです。または、テラコッタなど通気性のよい鉢に入れたまま、地中に埋めて育てると、根をコントロールしながら地植えの高さに揃えられます。あくまで一時的な借り住処ではありますが。
栽培ポイント③
物怖じせずにどんどん使う
これは他のハーブにも共通しますが、大切に大切に使わないで見守っていると、ひょろひょろ〜っと伸びて、倒れてしまったり、早く花が咲いてしまい成長が止まってしまいます。小さいうちから新芽を摘み、頻繁に使うとよいでしょう! 草丈が20〜30cmくらいになったら、あまり何も考えずに1/3くらい切り戻して大丈夫!
一番簡単にミントを活用できるのが、ハーブウォーター。水に切ったミントを数本入れるだけで、見た目も味も涼しげに。緑茶を淹れた際にミントを少し浮かべるのも、私のおすすめです。「ミントグリーンティー」は夏の冷茶にもどうぞ! カットしたフルーツに添えるのも簡単。特にパイナップルとの相性は抜群です。
ちょっと変わり種のおすすめ「ミント」3選
一言で「ミント」と言っても、その種類は600以上あると言われています。最近はさまざまな種類のミントを園芸店で見かけます。
まずはラベンダーミント。学名は Mentha piperita ‘lavender’。ペパーミントの園芸品種です。
紛らわしい名前のこちら。ラベンダーと言う名前が付いたミント。画面上では香りをお届けできないのが非常に残念ですが、ほんのりとすっきり、スパイシー風なラベンダーの香りがします。これは紅茶を淹れたときに、数枚ポットに忍ばせてもいいですねぇ。
そして「スイスリコラミント」。学名はMentha × piperita ‘swiss’。こちらもペパーミントファミリー。
かなり清々しい清涼感!シンプルで強い香りです。お茶やサラダに加えると一気にオシャレ度アップ。スイスの「リコラ」というハーブキャンディに使われているミントです。あの1度は見たことあるかもしれない、黄色いパッケージの飴ちゃん。経験上ですが、そんなに横に広がらない「お上品」なミントと感じます。
最後は「オーデコロンミント」。 学名はMentha ×piperita citrata。この子もペパーミントファミリーです。
なんて言うか、大人っぽいミントです。オーデコロンを思わせるような、個性的な強い香りがします。柑橘系の香水のような香りもするので、ドライにしてポプリやサシェにもするのにも向いています。他のミントより、葉も大きく大株になりやすいです。茂る様子が大きく堂々としているので、花壇の中でも目を引きます。
ミントで作る「ライタ風ドレッシング」のグリルドポテトサラダ
日本ではミントを使ったレシピは、ポピュラーではありませんよね。アラビア料理などでは羊肉のソースとして使われたり、中東ではクスクスなどのサラダに刻んで加えたり、インドではミントのチャツネがあります。
まだまだ日本で十分な活躍がされていないミントたち。まずは序の口、簡単に試せる「ライタ風ドレッシング」はいかがでしょう?
ライタとは、ヨーグルトと野菜を和えたソースのようなサラダです。まろやかでさっぱりとした風味なので、インド料理では肉やカレーの「付け合わせ」に添えられています。
ヨーグルトにミント、そしてニンニク……と聞くと変な味?? となりそうですが、固定概念は「ポイッ」っと捨てましょう。爽やかな香りがこれからの暑いシーズンにピッタリ。クセになる味です。
■ 材料
- ヨーグルト 250g
- ミント 数本
- クミンパウダー 小さじ1/2
- キュウリ 1本
- おろしニンニク 小さじ1/3 ※今回はチューブを使用
- 塩 小さじ1/2
- オリーブオイル 仕上げにひと回し
- 胡椒 仕上げに適量
- 飾りのミント 適量
■ 作り方
① ジャガイモを7mmほどに切って、沸騰させたお鍋で、5分ほど下茹でをする。
② キュウリをグレイターでおろして、水をしっかり切る。
③ ミントの葉を軸から外して、細かく刻む。
④ お気に入りのお皿でヨーグルト、クミンパウダー、塩、おろしニンニク、先ほどのキュウリとミントを混ぜる。
⑤ ①のジャガイモを、多めのオリーブオイル(分量外)をひいたフライパンで、縁がカリッとするまで揚げ焼きにする。
⑥ ④のミントヨーグルトソースの上にジャガイモを盛りつけて、オリーブオイル、コショウ、ミントを散らして完成。
とっても簡単でしょ? ミントの爽快さと、ヨーグルトの酸味、そしてキュウリの青臭さが心地よいハーモニーを奏でます。ジャガイモはオーブンでローストしてもいいし、小さな新ジャガは茹でて和えても結構! 夏のガーデンピクニックやバーベキューのサラダとしても活躍します。ドレッシング自体がとろっとしたテクスチャーなので、ディップソースとしても活躍します。私のお気に入りは、トルティーヤチップスのお供に。
ヨーグルトとキュウリでヘルシーな気分になれちゃうから、あら不思議。「病は気から、美は思い込みから」です。日本人からしたら不思議な組み合わせですが、食べてミント分からないでしょ♡ お試しあれ!
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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