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「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園 」ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!

「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園 」ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!

代々木公園での開催に続き、第2回目となる「東京パークガーデンアワード」が調布市にある都立神代植物公園でスタート。書類審査で選ばれた5名のガーデンデザイナーによる植え込みが2023年12月上旬に行なわれました。デザイナーはコンテスト終了の秋までローメンテナンスで健全な状態を保てるよう、植物選びはもちろん、土づくりにも力を注ぎ、作庭に挑みました。今回は、ガーデナーそれぞれの施工の際のこだわりポイントをご紹介します。

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彩り豊かな庭をつくるために
ガーデナーが踏まえておく条件とは

2023年、画期的な試みとして大注目を浴びた「第1回 東京パークガーデンアワード」。2回目となる今回は、神代植物公園のプロムナード両脇の植栽エリアを活用して、コンテストガーデンが設けられました。以前ここはツツジや笹が列植する緑一色だったという場所だけに、花でどんな彩りがプラスされるのか期待が高まります。

北側に並ぶ日向の花壇(写真左)と、南側に並ぶ日陰の花壇。どちらの背後にもシラカシが列植されている。

コンテストガーデン区画(花壇)は、事務局にて既存地盤の上に盛土(厚さ40cm)を行い、土留め用の木材で囲った状態で引き渡しされました。基礎土壌は(上層20㎝が多孔質人工軽量土壌/下層10cmが黒土)が用いられていますが、ガーデナーは自身が表現したい植栽が健全に育つために、ガーデン制作時に土壌改良・施肥などをすることは可能です。

【ガーデン制作にあたり、デザイナーが踏まえておくこと】

◼️ガーデンのテーマは「武蔵野の“くさはら”」とし、多年生植物をメインとしたガーデンを制作すること。
◼️国内市場で流通している植物のみ使用可能(採取した植物は使用できません)。
◼️主たる植物は多年生植物を使用。容易に制御が可能な、草本類に近い木本類は使用可能(全ての植物は高さ2m以内に限る)。
◼️構造物やガーデンオーナメント等の設置は不可。植物のみで構成すること。

「第2回  東京パークガーデンアワード」【12月】第1回作庭

各ガーデナーの植え込みの様子をチェック。ガーデナーの経験値が頼りになる5者5様の土壌づくりにも注目を!

コンテストガーデンA
Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜

古橋 麻美さん率いる作庭メンバーの皆さん。

◆使用資材◆

土壌改良材:完熟堆肥(ガーデンプレミアムコンポ)、バーク堆肥
排水確保:燻炭(ピノス)
マルチング:杉皮バーク堆肥(ガーデンモス)
元肥:有機肥料バットグアノ

◆土壌を整える◆

土壌中の有機物を増やし微生物を活性化するために、バーク堆肥と完熟堆肥(ガーデンプレミアムコンポ)の2種類を混ぜながら耕す。
日向・日陰それぞれの花壇に水抜き穴を15カ所あけ、燻炭を入れる。
デザインに基づいて、溝や起伏を作る。

◆植え付け◆

苗を配置確認してから植える。
カマッシアやダッチアイリス、シラー、クロッカス、スイセンなどの球根を植え、グラス類以外の宿根草を植える場所に、有機元肥としてバットグアノを軽く混ぜ込む。

◆マルチング&その他仕上げ◆

左/杉皮バーク堆肥で全体にマルチングをする。右/植えつけた場所にそれぞれの植物名を書いたネームプレートを挿す。

【植え付け完了】

■日向(北側)
■日陰(南側)

【メンテナンス時の発生材について】

左/日向・日陰とも花壇の後方に剪定枝で形作ったバイオネストを設置。右/雑草や切り戻した植物は、溝部分にも混ぜ込んでいく予定。

切戻しなどで出た病気にかかっていない枝葉は、なるべく細かくしてマルチングとして利用します。もしくは後方にバイオネストを作り、夏の間堆積し発酵を促した後、土壌に漉き込みを行う予定です。雑草も同様で、一年草は後方へ堆積。宿根性の雑草(ヤブガラシ、ドクダミ、ササなど)が出てきた場合、根は処分したいと考えています。

【第1回作庭を終えて】

【第1回作庭を終えて】

始めは無事に終わるのか心配でしたが、心強いチームのおかげで形になりました。日陰の庭は特に配置に悩みました。人工土壌(エコロベースソイル)の下に黒土という土壌に、水抜き穴を設けて対応しましたが、思いのほか水はけがよさそうで、一番日当たりのよいAエリアで植物たちが元気に育ってくれることを祈るばかりです。

コンテストガーデンB
花鳥風月 命巡る草はら

メイガーデンズ、柵山 直之さん率いる作庭メンバーの皆さん。

◆使用資材◆

土壌改良材:腐葉土、もみ殻燻炭、バーミキュライト、ピートモス
マルチング材:腐葉土、一部に剪定生チップ
溝に入れ込むもの:鉢底石
元肥:発酵腐葉土ぼかし、一部に有機肥料バイオゴールド

◆土壌を整える◆

左/トラックから荷物を降ろして、自身の区画に運ぶ。右/デザインに基づいてラインを引き、位置確認をする。
左/保水性・通気性を高めるための資材(腐葉土:微生物の餌でありミネラルの元となる、もみ殻燻炭:アルカリ性ミネラルで微生物の住処になる、ピートモス:酸性ミネラルを補う、バーミキュライト:保肥力を高める)を投入する。右/水を注いで排水状態を確認。
左/1㎡単位水糸を張り、デザインに基づいて溝や起伏をつける。右/土壌全体に発酵腐葉土ぼかしを混ぜる。

◆植え付け◆

左/苗を置いて全体のバランスを確認してから苗を植える。右/水はけのために、溝の端部を深く掘り、鉢底石を敷きこんだ。
植えた苗の間に、スイセン、原種チューリップ、ダッチアイリス、カマッシアなどの球根を植える。

◆マルチング◆

花壇全体の表面を腐葉土で覆う。

【植え付け完了】

■日向(北側)
■日陰(南側)

【メンテナンス時の発生材について】

・雑草や剪定残渣は粉砕し、マルチング材として花壇に使用する。 
・簡易なインセクトホテルを制作し、今後刈り取ったイネ科の茎を詰め込んだテントウムシの冬越し場所を設けたい。

【第1回作庭を終えて】

【第1回作庭を終えて】

私が住む東海地区とは、土質が異なりますので、当日まで悩んでいたのが土づくりでしたが、結局は、土壌改良材も普段から使い慣れたものを使用しています。当コンテストでは、黒土に加え、リサイクル人工土壌が基盤として客土されています。庭づくりの土壌の確保も簡単ではない時代の中で、宿根草に適した新しい土づくりの手法も生み出していく必要を感じています。植物も自分の馴染みのある品種ばかり。ちゃんと咲いてくれるのか。そんなドキドキ感が宿根草ガーデンの醍醐味とも言えますが、とにかく心を込めて植えました。

コンテストガーデンC
草原は、やがて森へ還る。

吉野 ひろきさん率いる作庭メンバーの皆さん。

使用資材◆

土壌改良材:真砂土、バーク堆肥(炭入りコンパ)、竹炭、燻炭、もみがら、パーライト(ネニサンソ、ホワイトローム)
マルチング材: バーク堆肥、落ち葉、杉皮樹皮バーク(しらさぎ難燃マルチバーク)
溝に入れ込むもの:剪定枝葉竹、落ち葉、竹、稲藁、
元肥:牛ふん、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)、バーク
その他:プランツタグ、草花固定誘引ワイヤー

◆土壌を整える◆

左/デザイン図に基づいて線を引いてから、起伏をつける。右/パサパサしている土壌の質を変えるため、関西で使われることが多くてやや重みのある真砂土、排水効果を高めるパーライト、団粒構造を作りながら維持するバーク堆肥、保水性や通気性を高めるもみ殻や燻炭を混ぜ込む。
左/溝に、空壁があって微生物が住み着きやすい竹炭を敷いてから樹木の枝を入れ込む。枝はモミジやカナメモチ、マキ、ウメなどで、これらを敷きつめることで空気や水が通りやすくなる。太さ・長さ・落葉性・常緑性にさまざまなタイプを投入することで腐食時間がまちまちになり、さまざまなバクテリアが発生しやすくなる。また、こうすることでこの溝に向かってまわりの植物の根が動き、土中環境を活性化させる。右/植え付ける場所に、肥料分として汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ)、牛糞、バーク堆肥を混ぜる。

◆植え付け◆

配置図を確認しながら苗を配置し、1ポットずつ順に植え付ける。
原種チューリップやクロッカス、スイセンなどの小球根や大きめのアリウムの球根を、苗の合間に植える。

◆マルチング◆

バークを敷きならしたのち、落ち葉、杉皮樹皮バーク(しらさぎ難燃マルチバーク)でカバーする。

【植え付け完了】

■日向(北側)
■日陰(南側)

【メンテナンス時の発生材について】

・ガーデン内の草花の各群落の間、地形の緩やかな起伏に合わせて、その間を縫うように深さ10~20cm、幅は10cm程度の溝を張り巡らせ、水や空気が通る道を作った。溝や穴には、主に有機物植物の枝葉が絡みつくように寝かせ、そこに落ち葉や竹炭、燻炭、微生物活性汚泥、バーク堆肥などを混ぜておく。こうすることで、ガーデン内の土壌の保水性・通気性・透水性を高め、土壌微生物の増殖をも促すので、植物の根系の成長が活性化されるものと考えている(作庭当初はこの溝が多少目立つが、やがて草花が覆い隠すので、気にならなくなる)。

・メンテナンス時に発生した花がらや枯草、剪定枝、除草した草などは溝に漉き込むほか、落ち葉などとともにマルチング材としても再利用する。森の地面が落ち葉で深く覆われているように、表層を自然の野山と同じ状態にする。

・発生有機物をすべてガーデン内で循環利用し、やがて土へ還り植物たちの栄養へと再び還元されるゼロエミッションな計画を考えている。

【第1回作庭を終えて】

【第1回作庭を終えて】

大まかな植栽設計に基づいて、現場で詳細位置を決めていったのですが、周囲の樹木による季節ごとの日照変化を想定するのが難しく、花苗たちがこの環境条件に順応してどれくらい成長してくれるのか、未知数の部分が多いなと感じました。実験的要素も含めたチャレンジ&トライの一年。メンテをしながら少しずつ答えが見えてくることも含めて、このガーデンを楽しみたいと思います‼︎

コンテストガーデンD
feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~

藤井宏海さん率いる作庭メンバーの皆さん。

◆使用資材◆

土壌改良材:腐葉土
マルチング材:腐葉土
元肥: 食品リサイクル有機質堆肥(ミラクルバイオ肥料FDS)、鶏糞有機発酵堆肥(アミノ有機)
その他:樹名板(間伐材を加工した花名板を設置予定)

◆土壌を整える◆

既存の土が肥性に優れた黒土と透水、通気性に優れた改良土(エコロベースソイルCAプラス)だったため、腐葉土を混ぜ込んで耕運機で耕うんして微生物の働きで団粒構造のあるフカフカな土にする。
黒土はリン酸が欠乏しやすそうなので、鶏糞を発酵させた有機発酵堆肥(アミノ有機)を耕運機でまんべんなく混ぜ込む。
水糸を張ってグリッドを作り、デザインに基づいて溝や盛り上がりを作る。グラス系の植物を植えこむ場所を盛り上げ通気性、排水性をよくする。花を植える部分には食品リサイクル有機質堆肥(ミラクルバイオ肥料FDS)を混ぜ込む。

◆植え付け◆

左/グリッドを生かして苗を配置し、植えていく。右/アリウム、チューリップ、オーニソガラムなどの球根を植え込む。

◆マルチング◆

武蔵野の黒土の色をイメージして、溝も含めて全体的に腐葉土で覆う。

【植え付け完了】

■日向(北側)
■日陰(南側)

【メンテナンス時の発生材について】

ガーデン管理で出た剪定くずは、堆肥ヤードで堆肥化しマルチング材として活用し、ガーデン内で資源の循環を図る。微生物がより活発に活動がしやすい環境を作るために、枝や葉をヤード内に混合させる。

【第1回作庭を終えて】

【第1回作庭を終えて】

遠方参加で不安も多かったですが、無事、施工を終えることができました!現地では、ガーデナーさんや庭師さん、生産者さん、東京農業大学の学生さんなど心強いメンバーと意見を交えながらガーデンを制作しました。

神代植物公園が開催地であることから、「目に留まる」「植物の魅力を伝える」「武蔵野を伝える」ことを意識して計画しました。かつて武蔵野の新しい価値を世に伝えた国木田独歩さんとまでは行きませんが、武蔵野の風景の魅力をこのガーデンを通して発信していけたらいいなと思います。

コンテストガーデンE
武蔵野の“これから”の原風景

清水一史さん率いる作庭メンバーの皆さん。

使用資材◆

土壌改良材:完熟落ち葉堆肥(五段農園/岐阜県)、鹿沼土(刀川平和農園/栃木県)
マルチング材:バーク堆肥(上田林業/滋賀県)、腐葉土(岡部産業/東京都)

◆土壌を整える◆

左/既存の人工土壌と黒土の層が混ざり合うように、耕運機で念入りに耕してから均す。右/人工土壌がややアルカリ性なので、在来の野草がよく育つ弱酸性に傾けるために鹿沼土を一面に投入し、粒がつぶれないように軽く耕うん。
左/完熟落ち葉堆肥を最後に投入し、軽く攪拌、築山を造成していく。右/完熟した落ち葉堆肥(五段農園)。パッケージは培養土化した商品のもので中身は異なる。

◆植え付け◆

水糸を張ってグリットを作り、デザインに基づいて苗を植える。植物1種あたり0.5〜1.5㎡ほどをまとめて植えるブロックプランティングを採用。レイアウトを決めるマーキングにはスプレーなどを使わず、完熟落ち葉堆肥を線上に撒いて行った。

◆マルチング◆

目の細かなバーク堆肥を2cm、葉の形がやや残った腐葉土を2cm敷いた。土と植物の本来の姿を見届けるべく施肥は予定していない。

【植え付け完了】

■日向(北側)
■日陰(南側)

【メンテナンス時の発生材について】

・植物ゴミ等の現場発生資材を集めて、堆肥とするため“バイオネスト”を設置する。剪定した植物ゴミを投入、巡回時に天地返し。マルチング材として使用する”刈草堆肥”を作成する。

 ・バイオネストに資材を投入し、巡回時に天地返しするだけでは“完熟”せずに雑菌や雑草種子、病原菌などの混入が懸念されるため、土壌への鋤きこみには使用せず、マルチングとして活用することを想定している。 

 ・将来的には、現場発生資材と神代植物公園内で発生する落ち葉を利用し、“完熟”落ち葉堆肥にするコンポストプログラムなども妄想し、ガーデンと公園で資源循環を実現できないかと考えている。

【第1回作庭を終えて】

【第1回作庭を終えて】

かつての武蔵野の暮らしのそばにあった日本在来の野草を中心に構成したガーデンです。施工にあたっては、カズラグリーンさん、グリーンワイズさん、修景舎さん、トシランドスケープさん、会社の同僚後輩、心強いメンバーと議論しながら作り上げました。 現在の見応えは少ないですが、芽吹き、植物が隆盛していく過程をぜひともお楽しみください。

コンテストガーデンを見に行こう! Information

東京都・神代植物公園を舞台に行われている「第2回 東京パークガーデンアワード」。5人のガーデンデザイナーが日向と日陰のガーデンづくりにチャレンジし、趣の異なる10のガーデンを鑑賞することができます。いつでも自由に見学可能。日々表情を変えていくプロによる植栽を見に、ぜひ訪れてください。

都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])
所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10
https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/
電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)
開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)
休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)
アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。

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