カメラマンが訪ねた感動の花の庭。長年通ったアンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン【閉園】

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第3回は群馬県です。

「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は、今から16年前の2002年4月に日本初の本格的イングリッシュガーデンとして群馬県太田市にオープンしました。
僕の家からは車で約3時間、決して近いという距離ではないのですが,この18年間で一番多く撮影に訪れたガーデンは、間違いなくこの「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」だと思います。

アンディ・マクルーラとウィリアム・ウルフの2人のイギリス人によってデザインされたこの庭は、イギリスのガーデンのエッセンスが随所にちりばめられていて、春、夏、秋、冬、どの季節も期待を裏切らない、僕にとってかけがえのないガーデンです。そして、多くのことを勉強させていただきました。

初めてこのガーデンを訪れたのは、おそらく2002年の5月だったと記憶しています。大型ホームセンターの「ジョイフル本田」新田店に付随した施設として、なんと群馬県にイングリッシュガーデンがオープンしたという噂を聞きつけました。当時イギリスのガーデニング関連の本を2冊手がけたカメラマンとしては、どんなガーデンなのか、この目で見ない訳にはいかないぞ! と、さっそく車を走らせたのを思い出します。

東北自動車道の館林I.Cを下りてから約1時間。とにかく遠い、というのが第一印象でした。しかし、いざ着いてみると、そこはまさにイギリスのガーデンにしか見えないではないですか。アンティーク調のレンガとアイアンの大きなゲート、その奥にはきれいに刈り込まれたツゲのヘッジと噴水……。長い時間をかけて駆けつけた甲斐がありました。

三脚をかついで小走りにガーデンに入り、夢中で撮影を始めました。ガーデン内は、白を基調にしたホワイトガーデンやサンクンガーデンにデザイナーのお子さんの名がついた2本の小径など、20のテーマに沿って一つずつ部屋のようにデザインされています。一つのガーデンを撮っては次へ、また次へと撮影はとてもシンプルに進みました。それはなぜなら、正しい立ち位置を理解して、まっすぐに立てば、自然と美しいガーデンフォトになってしまうという、カメラマンにとって夢のようなガーデンだったからです。

当時はイングリッシュガーデンが流行りだして、宿根草のボーダー花壇をキーワードにした特集が園芸関連誌をにぎわせていました。しかし日本では、イギリスの雑誌のような美しいガーデンにある宿根草の写真がなかなか撮れないことが悩みで、常にいい撮影ができる庭を探していたのです。

そんな僕にとって、「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は最高の庭で、今まで憧れていたボーダー花壇の中には、美しく咲く宿根草が撮り放題! それどころか、撮影した花の品種名が分からなければ、イギリス仕込みのガーデナーさんが丁寧に教えてくれるし、さらに分からない時は調べてから連絡までしてくれるという、まさに天国のようなガーデンでした。

翌年からは毎年必ず足を運び、宿根草に限らず、バラやクレマチスなど、いろいろなガーデンシーンを撮影させていただきました。今の基本的な撮影スタイルは、このガーデンから学んだような気がします。

その後、2代目ヘッドガーデナーの福森さん、3代目ヘッドガーデナーの太田さんには、さらにお世話になりました。早春には、スノードロップやクロッカスなどの小球根の可愛らしさを見せてもらったり、冬にはイギリスの雑誌でよく登場していた凍った庭の撮影をするために、寒い真冬の早朝、裏のゲートを開けてもらったりもしました。春の花木の美しさや、秋の紅葉したガーデンの美しさまで、日本にいながらイギリスの庭を撮影しているかのような、さまざまな経験を重ね、学ばせてもらいました。

Information
アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン
2002年4月に開園して以来多くの来園者があった「アンディ&ウィリアムスボタニックガーデン」(群馬県太田市、ジョイフル本田新田店に併設)は、2020年12月20日(日)に閉園いたしました。
掲載の記事は、2018年2月5日公開のものです。
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Credit

写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。
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