高知県立牧野植物園は見どころ満載! 牧野富太郎の想いが詰まった園内おすすめスポットを一挙ご紹介!
NHKの連続テレビ小説「らんまん」でもお馴染み、牧野富太郎博士。その博士を顕彰して作られた高知県立牧野植物園をVol.1でご紹介しましたが、今回はまだまだあるおすすめスポットを8つご紹介します。
これから現地に行かれる方は、要チェックです!
目次
牧野植物園の見所をもっと知る!
日本の植物分類学に偉大な足跡を残した牧野富太郎。その生涯をモチーフに描かれたNHKの連続テレビ小説「らんまん」が絶賛放映中です。
ガーデンストーリー編集部では放映に先立ち、2022年初冬、牧野富太郎の業績を顕彰してつくられた、高知県立牧野植物園を訪れ、一足先にその足跡をたどってきました。そして牧野博士と牧野植物園の関係を解説した第1回目に引き続き、今回は、その広さゆえに一度ではお伝えしきれなかった牧野植物園をクローズアップし、見どころやおすすめスポットを映像と共にご紹介したいと思います。
おすすめスポット① エントランスまでの道のり
日本最後の清流とも称される美しい四万十川をはじめ、日本一の消費量を誇る鰹料理など、見どころ食いどころ満載の観光王国高知県。さらに、牧野富太郎博士がクローズアップされたことにより、植物王国としての顔に注目が集まっています。
日本で確認されている植物のうち約40%が生育しているといわれる高知県の自然を体感できるのが、牧野植物園正面玄関からエントランスまでの約100mのアプローチ「土佐の植物生態園」。
このエリアでは、高知県の豊かな植物生態を、山→川→海辺と、段階的に体感することができます。
山野草が好きな方の中には、この場所で半日過ごす方もいるのだとか。まだエントランス前ですよ! こんなところにも、牧野植物園の「自然のままの植物の生態を知ってほしい」という本気度が伝わってきます。
おすすめスポット② エントランスと本館建屋
エントランスを抜けるとすぐ、右側にボタニカルショップ nonoca(野の花)と、レストラン「アルブル」(現在は新店舗C.L.GARDENとして南園に移転し、ここではカフェ・アルブルとして営業中)があります。
ボタニカルショップ nonocaでは、季節の花の鉢植えや、牧野博士の植物図をあしらった牧野植物園オリジナルグッズ、高知産の土産物などを購入することができます。
私のイチ推しは、スコットランド沖合のアイラ島に自生する22種の希少な野生のボタニカルを手摘みで採取してつくられた蒸留酒(ジン)「THE BOTANIST」。
一般的なジンの持つハーブ感というよりは、いくつもの花の香りが複雑に交わるような、フローラルアロマが特徴。お酒の強い方は、ロックで心地よいアロマをダイレクトに味わってほしいですが、弱い方はトニックウォーターで割ってジントニックにして楽しんでください。
ちなみに、商品名のBOTANISTとは植物学者のこと。牧野博士を顕彰した牧野植物園のお土産としてはもってこいですね。
BOTANISTをはじめアルコール等の飲料類は、取材時の nonocaから植物研究交流センター 3Fの牧野ミュージアムショップ「サクラ」に販売場所が移っているためご注意ください。
おみやげ類は売り切れるものもあるため、先に購入して散策中は園内のコインロッカーに入れておくのがおすすめです。
コインロッカーは本館nonoca、植物研究交流センター 3Fサクラ、共に入り口付近に設置されています。
さて、本館建屋を中央に進むと、空に向かって存在感を示しているのはタイワンマダケ。
タイワンマダケは1896年に牧野博士が東京帝国大学(現在の東京大学)の依頼で台湾を調査した際に発見した台湾固有種で、1916年に「台湾植物図譜」の著者、早田文蔵博士が発見者の牧野博士にちなんで、学名の種小名をmakinoiとして発表しました。
原産地の台湾では工芸品の材料としても使用されています。
おすすめスポット③ 植物研究交流センター3Fレストラン「C.L.GARDEN」
C.L.GARDENは「子どもの頃に憧れた木の上の小屋のようなレストラン」をコンセプトに、ココット(鋳物ホーロー鍋)のハンバーグランチや、ふもとの市場で仕入れたお魚ランチなど、旬の野菜をふんだんに使ったシェフ自慢の地産地消の洋食メニューが魅力。
そんなC.L.GARDENから、夏限定のメニューの情報が届きましたのでご紹介します。
夏季限定ドリンク
ベリースカッシュ
ブルーベリーやストロベリーなど数種類のベリーが味わえるスカッシュ(炭酸ジュース)です。
管理栄養士曰く、ベリーに多く含まれるポリフェノールには、暑さによる疲労の回復効果がある「抗酸化作用」、血管を拡張し熱中症の症状を改善する「血流改善作用」、熱中症に起因する炎症の予防と罹患後の緩和に効果のある「炎症抑制作用」という3つの効能があり、熱中症への対策として有効であるとされています。
夏の園内は無理して歩くと大変なことになるので、こまめな休憩を心がけ、美味しく体にもよいベリースカッシュを熱中症対策にお役立てください。
ブルーレモネードスカッシュ
定番のレモネードスカッシュにブルーシロップが加わり、見た目にも涼しげな夏らしいドリンクです。土佐の空に溶け込む南国のような色彩は、映えること間違いなしです!
ティーソーダ
アイスティーシロップを炭酸で割ったドリンク。レモンを添えた、さわやかな味わいが暑い日にぴったりです。
余談ですが、牧野博士が育った佐川町は日本産の紅茶「土佐和紅茶」の産地でもあるんです。
残念ながらこちらのティーシロップには使用されていませんが、渋みが少なくマイルドな味わいの土佐和紅茶、お土産にいかがですか?
夏季限定フードメニュー
シェフ特製ハンバーグのココットランチ
玉ねぎの旨みたっぷりの自家製ハンバーグメニューは幅広いお客様に愛されているメニューです。
メイン(スープ・サラダ・ハンバーグ)にライスが付きます。
鶏ひき肉と野菜のカレー
人気のカレーは、これ目当てに五台山を登ってくるお客さまもいるほどファンが多い逸品です。
キッズプレート
小学生までのお子様が注文できるお子様ランチ。思わず大人も頼みたくなる、美味しいがつまったプレートです(ふりかけごはん・ミニスープ・フライドポテト・鶏のから揚げ・ミニハンバーグ・フルーツ)。
<レストラン内外観写真提供:高知県立牧野植物園 メニュー写真提供:C.L.GARDEN>
「C.L.GARDEN」
【場所】植物研究交流センター 3F
【営業時間】9:00~17:00
モーニング 9:00~11:00(オーダーストップ 10:30)
ランチ 11:00~15:00 (オーダーストップ 15:00)
カフェタイム 15:00~17:00(オーダーストップ 16:30)
【座席数】約60席
【TEL】088-802-6951
メニュー詳細はこちらから
おすすめスポット④ 回廊
本館と展示館を結ぶ170mの回廊は、周辺を四季折々の草花が彩り、遠くに高知市街が望めるため、映え必至のフォトスポットとしても大人気です。
取材時(12月)は園を彩る花が少ないながらも、ツワブキの黄色い花が回廊に彩りを添えていました。
冬季にしか出会えない花の中で、最も見たかったもののひとつがバイカオウレン。牧野博士ゆかりの花で、その葉が牧野植物園のシンボルにもなっています。
バイカオウレンを見たい方は、ぜひ冬の牧野植物園を訪れてみてください。
この回廊の途中、展示館への曲がり角の直前右側の石垣の上に目をやると、可愛らしいバイカオウレンがあなたを待っています。
「まきのQRガイド」を使おう!
園内の植物の多くは、解説が記載されたプレートが立っているため、その植物の情報を知ることができます。
特に牧野博士にゆかりの深い植物には、プレートによる説明プラス、お手持ちのスマホでプレートに表示されているQRコードを読み込むことで「まきのQRガイド」につながり、より詳しい情報を得ることができます。
積極的に使えば「まきの通」になれるかも。
おすすめスポット⑤ ふむふむ広場
ふむふむ広場は植物を五感で感じるエリア。今回は、展示館近くにあるハーブ園エリアを散策しましたが、ちょうどお手入れをしていた園の管理スタッフ渡辺さんに出会い、ここでの楽しみ方を伝授していただきました。
その極意はなんと、ここに植えられているハーブは、遠慮せずに葉をちぎったり花を摘んだりしてください! とのこと。
園内の植物の葉や花をむしり取るなんて、ちょっと気が引けますが、実際に植物に触れ、香りや手触りを楽しみながら植物と触れ合うことができます。
特にお子さんの情操教育に役立ててほしいと、高知の植物をこよなく愛する渡辺さんは語っていました。
ただし、この楽しみ方はハーブ園に限ってのこと。他のエリアで植物の葉をちぎることは、固く禁じられています。
おすすめスポット⑥ 展示館とスエコザサ
回廊の終点、展示館では、さまざまな企画展が催されています。
取材時は、牧野博士の生誕160年の特別企画展「牧野博士と図鑑展」という、博士の研究の歩みを紹介するブースが設けられており、そこには博士直筆の植物図などが展示されていました。
中でも感銘を受けたのは、博士直筆の「植物随記」。いわゆるメモ書きと察しますが、160年以上前に植物のことをこんなにも克明に記した博士直筆のノートを間近に見ることができたのは大変貴重な体験でした。
ちなみに、展示館では現在、写真家菅原一剛「MAKINO 植物の肖像」展が行われています(2023年10月1日まで)。
牧野博士の標本となった植物一点一点の、写真家菅原一剛氏による「肖像写真(ポートレイト)」が展示されているので、また違った視点から牧野博士の偉業を堪能することができると思います。これから牧野植物園に行かれる方は、ぜひ展示館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
【詳細はこちらから】
展示館では期間限定の催しが行われているため、事前にスケジュールをチェックして行かれることをおすすめします。
【イベントカレンダーはこちらから】
※「企画展」の部分が展示館の催事情報です。
展示館中庭には水盤が設置されていて、夏場は水面を吹き抜ける風が冷気をもたらしてくれます。
一歩下がって眺めると、鏡のような水面に映る木々や空が、周囲の景色と相まって、まるで絵画を眺めているような気分にさせてくれます。フォトスポットとしてもおすすめです。
この水盤の水は雨水を循環させたもので、昨今、資源循環型社会が声高に唱えられていますが、20年以上も前に環境保全とデザイン性を融合させた建物を設計した建築家内藤廣氏の先見性には感嘆を禁じ得ません。
展示館手前の回廊脇には、牧野博士が、前年他界した妻の名にちなんで命名したスエコザサを見ることができます。
スエコザサは昭和2年(1927年)に牧野博士が仙台市内で発見しました。
博士が名付けた数ある植物のうち、愛妻の名を付けたのがなぜこのササだったのかは諸説ありますが、仙台市野草園の元園長でスエコザサ研究の第一人者でもある上野雄規氏によると、実は牧野博士はササの研究にもかなり注力しており、ササの葉のしなやかでありながらも凛とした力強い姿(実際ササは冬にマイナス10〜マイナス20℃になっても芽を残して生き残る)に、妻壽衛さんの姿を重ね合わせたことが大きな理由ではないかとされています。
そして、研究に理解を示し、身を挺してサポートしてくれた妻の分まで、今後より一層研究に力を注ぐという強い意志を、妻の名を命名することで自他に示したかったのではないか、と語っています。まぁ、実際のところは、博士のみぞ知る…ですが。
いずれにせよ、愛妻を失ったときの博士の喪失感は、察するに余りあります。
風にそよぐスエコザサの乾いたざわめきは、まるで博士の悲しみが音になったようでした。
このような背景を持つこのスエコザサ、来園されたらぜひご覧になってください。そして在りし日の牧野夫妻の姿に想いを馳せてみてください。
といっても、NHKの連続テレビ小説を視聴されている方は、あの二人の姿で想像してしまうでしょうね(笑)。
ドラマではそのあたりがどう描かれるのかも楽しみですね。
おすすめスポット⑦ 板根
板根(ばんこん)という根をご存じですか? 板根とは、巨木の横走する根の背面全体が肥大化して、まるで屏風のようになる現象を指します。熱帯多雨林※でよく見られ、表土が浅く、土中の酸素や栄養が乏しい環境で、呼吸や栄養吸収を補い、また自らを支えるためにこのように根を発達させると考えられています。
ここ牧野植物園でも、北園と南園をつなぐ通路を横切る「お遍路道(四国霊場を巡るための道)」を下ると、ツブラジイという四国や九州で見られるブナ科の樹木の板根を見ることができます。
上り下りそれぞれ1分ほどの所要時間ですが、映像でも分かるように、ここを歩くのは正直運動靴でないとキツいですね。
園内を散策していても大きな看板があるわけではないので、意外と見逃されがちなこの板根。こんな奇怪な根っこ、多分見たことないと思うので一見の価値アリです!
【POINT】 ※熱帯多雨林とは、年間の平均気温が25℃以上で年間降水量が2,000mmを超える多雨な森林を指します。高知県は日本でも有数の多雨地帯で、年間の降水量が山間部だと3,000mmを超え、東部では4,000mmを超える場所もあります。
おすすめスポット⑧ 温室
温室の中はまさに南国!
異国情緒漂う棟内は、人気の観葉植物のほか、サボテン、蒐集家が多いことでも話題の塊根植物、童話に出てきそうな水生植物などなど、非日常を感じさせてくれる植物たちがひしめき合う空間。ちょっとしたジャングル探訪気分にさせてくれます。
特におすすめなのは、温室に入ってすぐのドームと高い壁の間を抜けていく通路。
映像の中でも触れていますが、宮崎駿氏のアニメ作品『天空の城ラピュタ』をご存じの方は、まるでラピュタの城内に入り込んだかのような錯覚を覚えます。もちろんスタジオジブリと温室は関係ありませんが、劇中で重要な役どころを担う「ロボット兵」がどこかから現れそうな鬱蒼とした雰囲気は、同作品が好きな方なら思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。
取材後記
私の今回の牧野植物園初来園は、取材(仕事)ということもあり、牧野博士のゆかりに絡めて物を見がちでしたが、牧野博士に対する予備知識ゼロで来園しても、見る人が決して飽きないルート設定がなされています。植物が、自然が好き、という動機だけでも十分に広大な植物園を楽しむことができると思いました。
でも結局はね、歩き回っていると牧野富太郎のことをもっと知りたくなるのですよ。
私の場合は広報課の担当者が付きっきりで案内してくださったため、そういう胸中に至りましたが、植物と牧野博士の学び、というところでは単独で回るのには限界があると思うので、そう頻繁に行けない方は、同行ガイドが園内を案内してくれる有料の「園内ガイド」を申し込むことをおすすめします。
ただ、ガイドのアテンドは10名以上からとなっているので、お友達を集めて行くのが一番ですが、SNSで当日の同行者を募るのもアリかもですね。
高知県立牧野植物園、私が近くに住んでいたら、おそらく毎週末通うことでしょう。
植物の知識も増え、とにかく起伏の多い園内を歩くことでよいダイエットにもなるという、一石二鳥ですからね。
またぜひ訪れたい、そしてこんな植物園が地元にある近隣住民が羨ましい、そんな取材でした。
取材協力
高知県立牧野植物園
〒781-8125 高知県高知市五台山4200-6
TEL(088)882-2601 / FAX(088)882-8635
- [開園時間]
- 9:00~17:00
(最終入園16:30)
- [休園日]
- 年末年始 12/27~1/1
メンテナンス休園 2023/10/30、11/27、
2024/1/29
- [入園料]
- 一般730円 (高校生以下無料)
団体630円 (20名以上)
年間入園券2,930円(1年間有効のフリーパス)
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / ガーデンストーリー編集部
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