春の新名所! 横浜「山下公園」の市民参加の球根ミックス花壇

公園の花壇が今、全国各地でどんどん美しく進化しているのをご存知ですか? 一列に花が植えられた単調な景色ではなく、さまざまな草花が組み合わされたフォトジェニックな花壇が増えています。なかでも市民が参加して花壇づくりを行っている横浜市「山下公園」の球根ミックス花壇は春の新名所として、注目度急上昇中。今見頃のチューリップの品種や、小さな庭でも実践できる球根ミックス花壇の作り方やかわいく見せるお手入れポイントを大公開!
見る人を一気に引き込む! 球根ミックス花壇づくりは今年で7年目

ピンクや白、オレンジ色のチューリップの間に、アネモネやヒヤシンス、スイセンが混ざり咲くこの花壇は、横浜市中区にある山下公園の北側(大さん橋側)の一角にあります。春風に揺られる花に、「わぁ、かわいいー!」と思わず駆け寄ってくる人が続出しています。
2027年開催の国際園芸博覧会「GREEN × EXPO 2027」に向けて、花と緑の取り組みを積極的に進めている神奈川県横浜市。2023年3月25日からは市内各所で花々の春の装いが楽しめる「ガーデンネックレス横浜2023」もスタートしました。その会場の一つが山下公園で、この花壇は横浜市民が参加しつくられています。

このエリアが毎年、多数のチューリップで彩られ、人々の目を楽しませるようになったのは2017年全国都市緑化フェアのメイン会場になって以来。チューリップやスイセン、ムスカリなど、開花時期の異なる春咲きの球根を数種混ぜて、ランダムに植え付けるこの手法は、オランダのガーデンデザイナー、ジャクリーン・ファン・デル・クルートさんのデザインや施工、手入れの考え方を山下公園らしくアレンジしたもので、当時、最新の花壇デザインとして話題になりました。

2017年の全国都市緑化フェアでは、ジャクリーンさんによるデザインの方法を学んだ横浜出身のガーデナー、平工詠子さんの指導のもと、市民連携花壇講座として公園愛護会の方々が花壇をつくられました。それ以降、平工さんの指導のもと毎年色合いが異なる球根ミックス花壇がつくられ2023年で7年目。この花壇づくりの手法は、横浜市にある他の公園でも実践されて、横浜市内各地が春の球根花で彩られています。
2023年2つのテーマの球根ミックス花壇見どころ
ピンクが映える「春祭りおとめ」

山下公園の大さん橋側入り口から入ってすぐに目の前に広がる花壇のタイトルは「春祭りおとめ」。寒い冬から暖かな春への移り変わりを、青みがかったピンクから暖かなピンクへと変化していく花色で表現しています。

開花は2月下旬のミニアイリスと原種系のクロッカスから始まり、4月末ごろまで開花期が異なる品種がバトンタッチしながら見頃が長く続きます。
「春祭りおとめ」花壇には、クロッカス4種、ミニアイリス1種、ヒヤシンス2種、スイセン1種、アネモネ1種、チューリップ9種の合計18種が植えられ、4月上旬には上写真のように10種以上の花が同時に楽しめます。
<春祭りおとめの主な品種の特徴>

① 爽やかなラベンダーブルーのヒヤシンス‘アクア’。
② 八重と一重が咲き、鮮やかなピンクのアネモネ‘セントブリッジドピンク’は、花びらにシルクのような光沢があるのも魅力。アネモネは、チューリップよりも開花期間が長く安価で、コスパもよいのでおすすめ。花後の丸いタネも観賞価値があります。また、葉の形がよく地面を隠すグラウンドカバーとしても役立ちます。「ヨコハマブルーガーデン」ではこの青花種を入れています。
③ 八重の房咲きのスイセン‘チャフルネス’は、すっきりとした香りのよい品種。
④ 受賞歴があり人気のチューリップ‘アプリコットビューティー’は、アプリコットからピンクに花色が変わるやや早咲き種。

⑤ 花が大きく、花びらの中央が濃いピンクで炎のような色合いが特徴のチューリップ‘アフケ’。
⑥ 八重の紫花のチューリップ ‘ブルーダイヤモンド’。八重咲きを入れるとボリュームが出ます。
⑦ とても鮮やかで目立つ一重の赤花は、遅咲きのチューリップ‘ヨセミテ’。
⑧ 先端が尖った純白花のチューリップ‘ホワイトライアンファター’は、ミックス花壇でもよく使う品種。遅咲きの中でも特に遅く、背が高く目立ち、花壇の最後のシーズンで爽やかになり、とてもよい仕事をしてくれます。
海と夕日がテーマカラー「ヨコハマブルーガーデン」

「春祭りおとめ」花壇と隣り合い、港を背景に広がる花壇のタイトルは「ヨコハマブルーガーデン」。横浜のシンボリックカラーである爽やかなブルーと、美しい夕日のオレンジから連想したコンビネーションで、横浜の洗練されたクールな印象を表現しています。

この花壇も、開花は1月上旬のスイセンから始まり、4月末ごろまで開花期が異なる品種がバトンタッチしながら見頃が長く続きます。
このエリアには、クロッカス4種、ムスカリ1種、ヒヤシンス2種、スイセン2種、チューリップ10種の合計20種が植えられ、4月上旬には上写真のように12種以上の花が同時に楽しめます。
<ヨコハマブルーガーデンの主な品種の特徴>

① 低く咲くのはムスカリ‘バレリーフィニス’。ムスカリの中でも優しい雰囲気のブルー花で、アネモネのブルーよりも淡い色。同系色の濃淡の花を入れると、より繊細で複雑な色合いを花壇の中に表現できます。
② きれいなブルー花が特徴のアネモネ‘セントブリッジドブルー’。横浜のシンボリックカラーである爽やかなブルーを表現しています。
③ 大きな花が咲くチューリップ‘サーモンファンアイク’は、メインカラーとして他のチューリップより多めに入れています。
④緑の「がく」がある白花のチューリップ‘ホワイトバレー’ 。白花と緑の間をつなぐ役目に。

⑤ 花壇の中でもひときわ目立つオレンジ花のチューリップ‘オレンジエンペラー’。花びらに緑のラインが入ります。
⑥ 深い紫色の一重チューリップ‘ネグリタ’は、シックな色合いは引き締め役として活躍します。
⑦ 花弁の先端が尖っているピンクのチューリップ‘サンネ’は、フルーティーな香りがあります。花びらの中心が濃く、縁が薄い色合いで、咲き始めは桃色、咲き進むと淡い色になっていきます。
⑧夕日を思わせるオレンジ系の花色としてセレクトした八重咲きのチューリップ ‘チャーミングビューティー’。

2つの花壇には春咲きの球根のほか、今は低く目立ちませんが、宿根草のグラスの、スティパやサンジャクバーベナ、ツワブキ、リグラリア(写真右)、ペンステモン‘ダークタワーズ’ 、キャットミント(写真左)、チョウジソウなども間に植えられていて、球根の花が終わっても花壇の景観がしばらく続くようになっています。
球根ミックス花壇を作るのは市民が活動する団体「公園愛護会」

2027年開催の国際園芸博覧会の開催地として注目される横浜市内には、約2,700の公園があり、そのうち9割にあたる約2,450もの公園で「公園愛護会(こうえんあいごかい)」が活動しています。各地の公園を拠点に、地域の人たちが清掃活動や花壇づくりなどを行うボランティア団体で、横浜市から花苗やタネ、清掃用具やゴミ袋などの公園維持に必須のものを支援してもらえたり、草刈機の貸し出しや技術講習、花壇づくりの講習なども受けることができます。

公園愛護会のサポートにより、地域市民で協力して公園の清掃を行い、花を植えるなどの活動をすることは安全な地域づくりにもつながり、SDGsの目標の一つ「住み続けられるまちづくり」にも貢献するとして、1961年からスタートした横浜市の事業です。

山下公園の花壇づくりは、毎年秋に公園愛護会に所属する方から参加希望者をつのり、10月末ごろの植え付け、12月と2月の草取り(有志のみ)、4月の開花の観察と手入れまで行っています。山下公園での作業経験が、地域の公園の技術アップにもつながるという人気の企画です。
あなたの庭でも実践できる! 球根ミックス花壇の魅力

山下公園で実践されている球根ミックス花壇は、公園愛護会を通じて各地の公園でも行われ、さらには各家庭での花壇づくりの手法としても普及しています。その魅力は、
・長く楽しめる
・予想のつかない魅力的な景色が楽しめる(どんどん変わる)
・組合せが無限大
また、ガーデニング初心者でもポイントを覚えれば毎年楽しめる花壇づくりです。

<球根ミックス花壇の作り方のポイント>
山下公園では例年10~11月に植え付けを行いますが、植え付け時期は、紅葉が始まった頃が目安。ここでご紹介した品種を参考に、オリジナルの花壇づくりに秋に挑戦してみましょう!
ポイント① 早咲き・中咲き・遅咲きの球根を1:1:1〜2:1:2程度の配合でブレンドして植え付けます。
ポイント② チューリップだけでなく、遅咲きのスイセン、クロッカス 、ムスカリなどを入れると花の時期が長くなったり、さまざまな花の組合せの変化を楽しめます。
ポイント③ 植物を何も植えていない場所では、チューリップの球根は平米あたり40〜50球を、宿根草などほかの植物が植わっている場所では平米あたり5~15球を目安に植えますが、球根がない場所もあると自然な雰囲気になります。
カンタン!気軽にやってみよう! 春のお手入れのコツ

山下公園では、早咲きのチューリップが咲き進んだ4月上旬に、植え付けから参加してきた「公園愛護会」のメンバーが集合し、花壇の観賞会と手入れが行われました。可愛いく咲く花々を愛でながら、手分けして短時間でお手入れが完了! 初心者からベテランまで一緒にできる手入れのポイントをご紹介します。
<球根ミックス花壇のお手入れのポイント>

●種類ごとのポイント
チューリップ/終わった花も、終わりかけと思った花も花首の下をポキッと折り取る。少しでも光合成の役に立つように花茎を残す(少しでも来年開花しやすくなるように)。落ちた花びらは病気の原因につながることもあるので取りのぞきます。花弁が反って広がりっぱなしの花は、もう終わりのサイン。
アネモネ/花が終わり、自然に花弁が落ちている茎は、切り取らなくてもOK。このあと、花心が膨らみタネがつきますが、アネモネはタネをつけたままでも株が弱ることがありません。タネになる過程も観賞価値があります。種の後に出てくるわた毛がうっとうしく感じれば切りましょう。
ヒヤシンス/花が傷んでいたら花茎の根元で切り取る。花が重く倒れていたら、二股や三股に別れたきゃしゃな小枝を支柱にして花を地面から起こして自然な角度で支えてあげましょう。自然の枝を使えば花壇に馴染み目立ちにくくなります。
スイセン/頭の節を手でポキッと折り取る。

●雑草は抜く?抜かない?
山下公園の球根ミックス花壇では、春の雑草は景色の邪魔になったり、球根の花や葉などの成長の妨げにならないものは生かしています。その理由は、地表の土が見えにくくなり緑の草のカーペットの中からチューリップが咲くという見た目の効果と、表土の水分の蒸発が抑えられ、水やりの頻度が減り、手入れの時間も短縮できるからです。早春に芽生えた小球根の葉が草に覆われないように、12月と2月に草取り作業を行っています。

公園愛護会により毎年、来園者を笑顔にするフォトジェニックな山下公園の球根ミックス花壇。山下公園で始まった花壇づくりの方法が市民に引き継がれ、横浜市のあちこちの公園で春の球根花が住民たちに春到来の喜びを伝えています。2027年開催の国際園芸博覧会「GREEN × EXPO 2027」に向けて、花と緑の取り組みが加速する神奈川県横浜市に、こうして年々花咲く風景が増えています。


2022年オランダで開催された国際園芸博覧会『フロリアード EXPO 2022』では、2027年の国際園芸博覧会のPRとして、山下公園で横浜らしく成長した球根ミックス花壇が『里帰り花壇』となってつくられ、多くの人々を魅了しました。
●山下公園の花壇の開花状況や、各地の花壇、花壇づくりの動画などを横浜市のHPでご覧いただけます。
●「公園愛護会」については、こちら
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