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咲き乱れる花々に癒やされる滋賀県「English Garden ローザンベリー多和田」

咲き乱れる花々に癒やされる滋賀県「English Garden ローザンベリー多和田」

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第38回は、多くの庭ファンが訪れる聖地、滋賀県米原市の「ローザンベリー多和田」をご紹介。ガーデナーの西居秀明さんとの交流から今年最高のコンディションの時期に撮影した美しいガーデンフォトの数々まで、どうぞご覧ください。

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日本とは思えない美しい花々が咲く庭

English Garden ローザンベリー多和田
こんなに素敵なローズガーデンを任され、バラやクレマチスに思いっきり愛情を注ぎ込んで日々頑張っているヒデさん。大変なこともあると思うけれど、羨ましいとも思う。

僕が初めて「ローザンベリー多和田」の名前を聞いたのは、2015年の春のことでした。知り合いのガーデナーさんから「ローザンベリー多和田が綺麗らしいけれど、知ってる?」と聞かれたり、バラのシーズンになるとSNSでは関西の友人たちが入れ替わり立ち替わり毎日のように綺麗な庭の写真を投稿していました。

English Garden ローザンベリー多和田
周囲を山に囲まれた緑豊かな場所という立地も、このガーデンの大きな魅力。

それらを見ていて、1枚の写真に引き込まれました。それは立派なレンガの柱と重厚なアイアンのゲートが写っている写真です。本当にイギリスで見たガーデンのようで、僕もこのゲートの前に立ってカメラを構えてみたいという思いが湧き上がってきました。そしてすぐにFacebookで既に友達になっていたこの庭のガーデナーである西居秀明さん、通称「ヒデさん」に連絡をして、「来年は一番きれいなときに必ず伺います」と約束をしました。

写真家としての一面もあるヒデさんとの出会い

English Garden ローザンベリー多和田
初めて訪れた時から僕のお気に入りのコーナーとなった可愛いポタジェ。夕方のサイドからの光で撮影するのが大好き。

その日からちょうど1年が経った2016年6月3日。岐阜県可児市の「花フェスタ記念公園」での早朝のバラの撮影を終えたあと、滋賀県米原市の「ローザンベリー多和田」に向かいました。撮影は夕方からと決めていたので、高速道路は使わずにゆっくりと下道で、雲一つない爽やかな空気の中、美しい景色を眺めながら2時間弱のドライブを楽しみ、「ローザンベリー多和田」の駐車場に到着。

ビオルナ系クレマチス‘キャプリン’
壺形の花がふわふわと宙に浮いて咲くビオルナ系クレマチス‘キャプリン’。僕にとってヒデさんは、クレマチスの先生でもある。

すぐにヒデさんに電話すると「お待ちしておりました。すぐに伺いますから少しお待ちください」とイメージ通りの明るい関西の訛り声が聞こえて、1分もしないうちに、ハンチングに革のベストをバシッときめたヒデさんが登場しました。

English Garden ローザンベリー多和田
ピンクの大輪ロゼット咲きの ‘ガードルート・ジェキル’。すごく自然に咲いている感じがするのは、ヒデさんが癒やしのガーデンを目指して誘引しているからだろう。

まだヒデさんを知る前でしたが、フォトコンテストの審査もさせていただいたことがあります。その中で、アマチュアの中に一人だけプロのカメラマンがいると思うほど際立っていた写真があったのを記憶しています。もちろん、優秀賞に選ばせていただきました。それがヒデさんでした。写真関係のお仕事をしていたというだけあって、とても印象的な写真でした。

English Garden ローザンベリー多和田
このローズガーデン「癒やしのガーデン」に仕立てるため、宿根草がたくさん使われているとのこと。さらにバラを引き立たせるために、青系の花が多く選ばれている。

さらにその数年後、雑誌『花ぐらし』の誌面づくりの時のことです。バラとクレマチスを取り上げる企画で京都のナーセリー「松尾園芸」に伺った際、「どこかバラとクレマチスをうまく使ったお庭があったら紹介してください」とお願いしたところ、滋賀県の米原にある庭をご紹介いただきました。バラもクレマチスも完璧で、さらに写真もうまい人がいますとのこと。

English Garden ローザンベリー多和田
マナーハウスを背景にフェンス仕立ての‘つる サマースノー’が際立つ。

その方が投稿するブログを見せていただくと、僕から見ても完璧すぎるというのが第一印象でした。普段は自分と似たような年齢の女性と気楽な仕事ばかりをしていたものですから、こんな“完璧な男性”に会うのは気が引けたというのが正直なところでしょうか。こうしてヒデさんとの初対面の機会を逃してしまったのでした。あのとき思い切ってヒデさんと会っていれば、その後「バラとクレマチス」の企画で何回もご一緒に仕事をさせていただいていたかもしれないと思うと、ちょっと残念な気がします。

ラヴェンダー色の‘レイニーブルー’
ラヴェンダー色の‘レイニーブルー’。スタンダード仕立ての背景には、ちらちらと濃紫のクレマチス。下草にリナリアのコンビネーション。すべてが美しい。

イギリスの田舎道を思わせる初感覚の庭

English Garden ローザンベリー多和田
時を経た風合いのガゼボに、枯れ枝を組んだようなフェンス。構造物はみなシンプルで、植物が生き生きと咲きたいように咲いているかのよう。それがこのガーデンの魅力かなと思う。

そのヒデさんに案内をお願いして園内に入ると、いきなり目の前に、会いたかった古いレンガの門柱が現れました。そしてゲートを潜るとナチュラルに野草を思わせる植物が集まる植栽エリアがあり、奥には古いレンガの大きなパーゴラにバラが満開! その奥の階段を降りると、カシワバアジサイの群落に遭遇したり、レンガの塀を過ぎると時代を経たように見える板塀に野バラが絡んでいたり……。

English Garden ローザンベリー多和田
ゆったりとした景色を眺めていると、まるでイギリスの田舎のガーデンを一人で散歩策しているような気がしてくるから嬉しい。この写真もお気に入りの1枚。

こんなにイギリスの田舎道を歩いているような気分にさせてくれるガーデンは初めてだなぁと思いながら、夕方の光になるのを待ちました。撮影後は、ガーデンのオーナーである大澤惠理子さんにもお会いして、正にイギリス風な美味しいお茶とお菓子をご馳走になりながらガーデンの話に花が咲きました。「きっとここには、何度もカメラを担いで伺うことになるだろうな~」という予感がするほど充実した時を過ごしました。

English Garden ローザンベリー多和田
色鮮やかなイングリッシュローズが咲き乱れながら、こんなに優しい雰囲気。その理由は、周囲の緑の量と、奥に見えるつるバラのお陰なのだろう。

2016年以降は、毎年のように、春にはパンジー&ビオラフェアーやクリスマスローズの撮影を、バラの最盛期には撮影だけでなく写真講座もさせていただいたりしています。

ガーデンストーリーで紹介したいと撮影

English Garden ローザンベリー多和田
品種名が示すように花綱のごとく咲く、つるバラ‘ザ・ガーランド’。花が多すぎるほどだが、足元を覆うナチュラルな草花によって、癒やしの景色が生まれているのだろう。

今年2022年の撮影は5月28日。「ローザンベリー多和田」のガーデナーたちの愛情がこもった、素晴らしく綺麗なこのローズガーデンをガーデンストーリーに紹介したいと思い、去年からしっかりと撮影してきました。最高の写真を撮影するために、5月に入ってから何度も連絡をしてベストなタイミングを探りました。

English Garden ローザンベリー多和田
左/ ‘フランソワ・ジュランビル’の花綱。僕もヒデさんも、このつるバラが大好き。右/木製のブルーのアーチにハニーサックルと‘フランソワ・ジュランビル’が、自由に咲いて、なんと美しいのだろう。

そのお陰で、バラのコンディションも素晴らしく、天気も予報通り晴天に恵まれ、気分も上々! 足しげく通った“勝手知ったるローザンベリー”で、これ以上ない夕方の光に浮かび上がるガーデンを思う存分楽しんで撮影ができました。それぞれの写真に添えたコメントも併せて、ガーデン写真を堪能していただけたら嬉しいです。

English Garden ローザンベリー多和田
‘フェリシア’もこんなにたくさん花をつけているのは、冬の誘引時に充実した枝を多く残しているからだろう。
English Garden ローザンベリー多和田
夕日に輝く‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’。こんなに生き生きと、咲きすぎかと思うほど咲かせてしまうところに、ヒデさんをはじめ、ローザンベリーのガーデナーたちのバラへの愛情を感じる。
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