フランスで毎年開催され、約53万人もの入場者を集める人気のガーデンショー「国際ガーデンフェスティバル」。その会場となるロワールの古城、ショーモンシュルロワールの魅力は、ガーデンショーに留まりません。イギリス風景式庭園や現代アートのインスタレーション、ポタジェ、近隣の公園にいたるまで、フランス最大規模のガーデンショーの見どころを、フランス在住の庭園文化研究家、遠藤浩子さんがレポートします。

Print Friendly, PDF & Email

歴史と現代アートが出会うロワールの古城

ショーモンシュルロワール城
Bruno Mazzetti/shutterstock.com

ショーモン城の城館の歴史は15世紀の城砦に遡り、16世紀のフランス・ルネサンス期はカトリーヌ・ド・メディシス、ついでディアーヌ・ド・ポワティエが城主になるなどフランス王室との縁が深く、預言者ノストラダムスが滞在した部屋なども見学できます。

ショーモンシュルロワール城
アート展示に使われているかつての厩舎の入口。

その一方で、現在では現代アートセンターができて、アーティストインレジデンスなどを行っており、歴史的な見学コースと並行して、世界的な巨匠・若手作家を合わせたアート作品の展示が多数あります。

ショーモンシュルロワール城
旧厩舎のアートインスタレーション。パトリック・ブランの垂直庭園も。

レジデンスに選ばれた作家が、城内の特定の場所を選んで構想・制作する作品は、一定期間の企画展示の時もあれば、恒久的な常設展示になることもあり、さまざまです。また、城に付随する

建物、例えばパトリック・ブランの壁面緑化の立体作品などがある旧厩舎も同様に、アート展示の場として活用されています。

ショーモンシュルロワール城
ドライフラワーや鉱物を用いた、城内チャペルの常設インスタレーション。
ステファン・ギラン「囁きの巣」
ステファン・ギラン「囁きの巣」。5,000本の水晶の花を使ったインスタレーション。

ナチュラル&アーティーなイギリス風景式庭園

ショーモンシュルロワール城
カッコいい現代アートのインスタレーションが散策のリズムを刻むイギリス風景式庭園。

ところで、ショーモン城に庭園がつくられたのは、じつは19世紀も後半になってからでした。当時の城主はそれまで城の周りにあった村落をすべて、教会や墓地も含めてロワール河沿いに移します。著名造園家アンリ・デュシェンヌが、緩やかな芝生の丘陵に大樹が点在する、現在に続く広大なイギリス風景式庭園を設計しました。ロワール河を見晴らす庭園の城館近くに植えられた古いレバノン杉は、建物の石材の白色をより引き立てて見事な景観を作っています。

ショーモンシュルロワール城
大きな木にたくさんの梯子がかかったポエティックな作品。

そして、この歴史的庭園は、歳月を経た大樹の数々だけでなく、現代アートのインスタレーションが散策路に点在するアート・ガーデンになっています。世界的に活躍する作家たちがこの庭園のために制作した作品は、散策がより印象深いものになるような、どれも場のエスプリに繋がった、人と庭、自然や時間との関わりに想いを誘うものが多いように思います。

ショーモンシュルロワール城
ジュゼッペ・ぺノーネのブロンズ彫刻。

各作品を訪ねつつ、森林浴も出来てしまう気持ちのよいこの空間。かつては芝生がしっかり刈り込まれたクラシックな緑の風景でしたが、サスティナブルなメンテナンスが主流となってきた最近では、一部をワイルドフラワーの草原として残したりと、さらにナチュラル感が溢れる雰囲気に変化してきているのも興味深いところです。

フランスの城に欠かせないポタジェ(菜園)も素敵

クマニンニクの花
まだ植物が少ない春先、盛大に咲いているのはクマニンニクの花。花も葉っぱもちゃんと料理に使えます。

さて、フランスの城に欠かせない庭といえば、果樹や野菜にハーブ、花々と盛りだくさんのポタジェ(フランス風の菜園)です。ショーモンシュルロワール城にも、もちろんポタジェが! こちらは歴史的というよりは、自由な遊び心が感じられる場所。

ショーモンシュルロワール城
パーゴラのフジがゴージャスに咲き誇る季節。

お洒落さは欠かせない、と言った感じの造形的なパーゴラなどに、実用的な温室が入り混じるざっくり感もポタジェらしくていい感じです。春先から盛夏にかけてどんどん表情が変わっていくのも面白いものです。

ショーモンシュルロワール城
夏になると、緑でもさもさに。多年草のアーティチョークは花も葉っぱもスタイリッシュで、ポタジェの植栽のアクセントにピッタリです。

新しい庭園パーク、グアルプ草原

グアルプ草原

そして、数年前から新たに加わった10haほどのグアルプ草原(Prés du Goualoup)も見逃せません。パリ、チュイルリー庭園のリノベーションなどでも知られる造園家ルイ・ベネシュが設計したこの広大な公園スペースには、やは現代アートのインスタレーション作品に加え、オールド・ローズやクレマチス、ピオニー(シャクヤク)、ダリア、アスターなどのプランツ・コレクションの植栽がなされています。

グアルプ草原
ヤナギの並木道。

また世界の庭園文化からインスパイアされたさまざまなスタイルの小さな庭があるのも魅力です。例えばイギリス、アフリカ、中国、韓国、日本風など、いずれもコンテンポラリーなデザインのスモール・ガーデンが設えられていて、一歩進む度に驚きがあるような散策路が用意されています。

グアルプ草原
今年加わったジャン・ムスによる「プロヴァンスの庭」。

今年はさらに、南仏コート・ダジュールのガーデンデザインの大御所、ジャン・ムスがデザインした地中海風のスモールガーデンが増えていました。オリーブやサイプレスと白砂利のコントラストがあると、一気に地中海っぽい雰囲気が作れるなあ、など、庭の雰囲気作りのアイデアの参考になるTipsもたくさん見つけることができるでしょう。

グアルプ草原
コンテンポラリーなデザインの日本庭園。八重桜が満開の頃。

多彩なカフェやレストランも魅力的

グアルプ草原
お城の中庭の様子、右手の建物はライブラリー・カフェや展示室になっています。

さて、一日中庭や城を見て回っていたら、さすがにお腹も空いてきます。当然、敷地内にはいくつかカフェ・レストランがありますのでご安心を。アートやガーデンに関する本を閲覧しながら休憩できる小さなライブラリー付きのカフェや、オープンエアでオーガニックのローカルフードを提供するレストランの傍ら、ガストロノミー・レストランでは、毎回のガーデンフェスティバルのテーマからインスパイアされるメニューを提案(こちらもアーティスティックなプレゼンテーションかつ美味しくておすすめです。ハイシーズンは要予約)。

ガストロノミー・レストラン
ガストロノミー・レストランの入口。グラスハウスのような空間で、フェスティバルのテーマからインスパイアされたアーティスティックかつ美味しいコース料理がいただけます。

来訪者が気分に合わせて使い分けができるような、気の利いたこだわりのあるセクションで、どれをとっても心地のよい時間が過ごせます。

進化し続けるガーデン&アートの聖地

ショーモンシュルロワール城

季節によって庭園の表情は大きく変わりますが、ショーモンシュルロワールではアート&ガーデンフェスティバルの毎年異なるテーマからの新たな創造に触れることができるのが魅力です。

ショーモンシュルロワール城

また常設の展示や庭園の中にも常に変化があって、訪れる度に必ず新たな発見があるのがすごいところ。今年はさらに、敷地内に新たなホテルレストランが加わるということで、年々充実していくショーモンシュルロワール、何度でも訪れたくなる充実のシャトー&ガーデンです。

●『ショーモンシュルロワール城・国際ガーデンフェスティバル~前編~』も併せてお読みください。

Information

ショーモンシュルロワール城・国際ガーデンフェスティバル 

2022年4月21日~11月6日

https://domaine-chaumont.fr/ja/kokusai-teien-fesutibaru(公式HP日本語)

Credit

遠藤浩子

写真・文/遠藤浩子

フランス在住、庭園文化研究家。
東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。

blog|http://www.hirokoendo.com
instagram|moutonner2018

Print Friendly, PDF & Email