オランダだけでなく、世界中で最も影響力のあるガーデンデザイナーの一人と言われるピィト・アゥドルフ氏(Piet Oudolf)。日本のガーデナーにとっても憧れの存在で、庭をじかに見てみたい! という人も多いはず。そんなピィト・アゥドルフ氏がデザインした庭が、2022年3月新感覚フラワーパーク 「HANA・BIYORI」 (東京都・稲城市)内に誕生しました。その名も「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」。これから美しく成長していく庭を、四季を追ってご紹介します。

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世界を席巻する
自然と調和するデザインとは

ピィト・アゥドルフ氏は、その地の風土に合った植物や宿根草を使った自然主義の植栽手法を生み出した、世界的に著名なガーデンデザイナー。オランダ国内でさまざまなプロジェクトを手掛け、ニューヨークの高架廃線跡を再開発した空中庭園「ハイライン公園」、18世紀の農場をアート施設として改装した英国の「ハウザー&ワース・サマセット」などが有名です。自然環境への関心の高まりとともに注目を浴びています。

ハウザー&ワース・サマセット
「ハウザー&ワース・サマセット」2019年6月の様子。

一般的なガーデンには観賞のピーク時があるのに対し、アゥドルフ氏のガーデンは一年を通して楽しむことができます。それは単に花の美しさの組み合わせで魅せるものではなく、葉や種をつけた穂などの色、形、質感など総合的な視点から組み合わされているから。

ハウザー&ワース・サマセット
「ハウザー&ワース・サマセット」2019年6月の様子。

「最盛期を過ぎて、枯れていく姿までも美しい」としみじみと感じられるシーンで構成されている風景は、見る人の「魂」を強く揺さぶります。朽ちる姿に美を見出す視点は、日本人の侘び・寂を愛でる精神にも通じています。そんなアゥドルフ氏のガーデンデザインスタイルは、園芸家や造園家の今までの庭に対する認識に大きな変革をもたらしました。またそのような風景づくりは「ダッチウェーブムーブメント」と呼ばれ、オランダの一つのスタイルを確立しました。

ピィト・アゥドルフのガーデン

自然から得られる感情の再創造により風景を生み出しているアゥドルフ氏。成長する多年草のみならず、蝶や鳥、訪れた子どもまでもがガーデンを構成する一つの要素となるよう、ていねいに風景を紡いでいます。

ピィト・アゥドルフのガーデン

3年目を迎えた「HANA・BIYORI」が
提案する自然と平和の大切さ

華やかな花々の潤いで、訪れた人々に癒やしと驚きを与えたいという思いで、2020年3月にオープンした「HANA・BIYORI」。緑豊かな多摩丘陵の東端にある遊園地「よみうりランド」に隣接しています。HANA・BIYORIオープン前は聖地公園としてこの自然をうまく生かしつつ、歴史的・文化的な建造物も大切に残し、地元の人にも愛され続けていました。この「自然との共生」を大切にした理念は、まさにアゥドルフ氏の考え方と重なります。

ピィト・アゥドルフ氏による植栽図
ピィト・アゥドルフ氏による植栽図。植物の特徴をとらえてアイコン化したもので表記しており、アートとしても評価されている。

「もう少しHANA・BIYORIらしさを追求したい」と模索していた2年目、ランドスケープデザイナーの永村裕子さんに相談したところ、「もっと自然と共生する植栽を」という方向性に決定。彼女が提案したのはアゥドルフ氏の庭をここにつくること。彼のデザインはサステナブルで、まさに今の時代に提唱するSDGsにフィットするものであり、「HANA・BIYORI」の新しい指針となりました。

ピィト・アゥドルフのガーデン
ピィト・アゥドルフのガーデン
芝生だったエリアに設けた、500㎡ほどのガーデン。今回は新規オープンということもあり、通常より少しあざやかな花、ラナンキュラス‘ラックス’やクリスマスローズなどで彩りを添えている。

植栽は永村さんの声かけにより、日本各地のガーデナーたちが集結しました。人気ガーデナーの上野砂由紀さんや天野麻里絵さんも参加。コロナ禍でアゥドルフ氏の来日は叶いませんでしたが綿密なやり取りを重ね、2021年12月に本格的な植え込みがスタート。この春、見事にアゥドルフ氏のガーデンが完成しました。

ピィト・アゥドルフ氏の庭づくり ピィト・アゥドルフ氏の庭づくり

「アゥドルフ氏の庭づくりのような、ピークまで複数年かけながら庭を育てて愛でるといった考えは、まだ日本では一般的でありません。ここがきっかけで、時間をかけて変化していく庭の楽しみ方の認知が高まればいいですね」と、今回プロジェクトヘッドガーデナーとなった永村裕子さん。「アジア初なので、夏の過酷な暑さに耐えられないものが出てくるかもしれません。でもすぐに植え替えをせずに1年はそのままで、自然任せで様子を見ることになっています。今植わっているものは、人間でいうとまだ幼い子ども。2年目は高校生ぐらい、3年目でようやく成人を迎えます。成長過程で見える風景も違いますし、年々見応えが増してくるので、こまめに見に来てもらえると嬉しいですね」。

ランドスケープデザイナーの永村裕子さん
ランドスケープデザイナーの永村裕子さん。

今のこのような時世もあって、「花で平和を発信できれば」とよみうりランドの溝口烈社長。

ペーター・ファン・デル・フリート駐日オランダ王国大使は「花を通じて文化の違いを埋め、人をつなぐものであって欲しい」と自然との共存の大切さに加えて、花によって築かれる人の絆の力について話されました。

PIET OUDOLF GARDEN TOKYOプロジェクトメンバー
左より、永村裕子氏(プロジェクトヘッドガーデナー)、髙橋勝浩氏(稲城市長)、溝口烈氏(㈱よみうりランド代表取締役社長)、ペーター・ファン・デル・フリート駐日オランダ大国大使と奥様、デニーズ・ルッツ農務参事官、北原融氏(㈱よみうりランド取締役植物園担当)。

「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」
以外の場所にも見どころがたくさん!

園路脇の花壇は、旬の花々が彩りを添えています。ぜひ、花合わせのご参考にしてください。

こちらはHANA・BIYORIスタッフによる植栽です。

HANA-BIYORIの花壇
春咲きのヒヤシンスやムスカリ球根植物に加え、ひと足先にダリアも植えられた園路脇花壇。この時季は大人っぽい色彩でまとめられている。

日本の園芸に携わるガーデナーたちの情熱で生み出したピィト・アゥドルフ氏のガーデン。アゥドルフ氏によって再構築された自然が織り成す芸術性あふれる風景を、ぜひ堪能しに訪れてください。

【ガーデンデザイナー】

ピィト・アゥドルフ (Piet Oudolf)

ピィト・アゥドルフ (Piet Oudolf)

1944年オランダ・ハーレム生まれ。1982年、オランダ東部の小さな村フメロに移り、多年草ナーセリー(植物栽培園)を始める。彼の育てた植物でデザインする、時間とともに美しさを増すガーデンは、多くの人の感情やインスピレーションを揺さぶり、園芸・造園界に大きなムーブメントを起こす。オランダ国内のみならず、ヨーロッパ、アメリカでさまざまなプロジェクトを手掛ける。植物やガーデンデザイン、ランドスケープに関する著書も多数。2017年にはドキュメンタリー映画「FIVE SEASONS」が制作・公開された。

Information

新感覚フラワーパーク HANA・BIYORI

東京都稲城市矢野口4015-1

TEL:044-966-8717

https://www.yomiuriland.com/hanabiyori/

営業時間:10:00~17:00 ※公式サイト要確認

定休日:不定休(HPをご確認下さい)

アクセス:京王「京王よみうりランド駅」より徒歩10分(無料シャトルバスあり)、小田急線「読売ランド駅」よりバスで約10分「よみうりランド」下車徒歩約8分

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』、近著に『簡単で素敵な寄せ植えづくり』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

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