これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第32回は、バラの名所としても有名な千葉県八千代市にある「京成バラ園」。バラ咲く季節を前に、花木やクリスマスローズも迫力の景色を見せる早春の庭をご紹介します。

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冬から春に撮影モードも切り替えの時

早春の花木
色づいた早春の樹々が囲むエリア。若葉の木、まだ芽吹かない裸木、花の咲いている木……どの木も本当に美しい。

今年は例年より少し早い3月中旬、各地でサクラの開花の声が聞こえ出しました。この知らせが届くと、僕の仕事もようやく冬モードから春モードに切り替わります。冬の間は生産者さんを訪ねて、ハウスの中でビオラやクリスマスローズの花の写真を撮らせてもらうことが多いのですが、当然ハウスという限られたスペースで、さまざまな制約もある中での撮影になります。それはそれで嫌いではないのですが、季節が変わって早春の庭に出て屋外の撮影になると、新緑の優しい緑に包まれた庭にいるだけで気持ちがいいものです。

桜と雪柳
サクラはもちろん綺麗だけれど、風に揺れるユキヤナギがいい味を出している。

撮影を始めると、足元には草花や小球根が咲いていたり、上を見上げれば花木が無数の花を咲かせていたりします。それらの花たちを自由に自分のスタイルで撮影ができるこの季節が来ると、毎日のように翌日の天気予報を確認し、どこに行って何を撮るか、予定を立てるのですが、想像するだけで嬉しくてワクワクしながら過ごしています。

通い慣れたバラ園の早春の風景とは

マンサク
マンサクは、日本原産の落葉低木。細い花びらがびっしりついたユニークな花木は早春の庭の必需品。

例年、春の庭の撮影は、まず2月後半、群馬県太田市の「アンディ&ウィリアムスボタニックガーデン」のスノードロップから始めていました。しかし、皆さんもご存じのように、残念ながらガーデンは昨年11月に閉園してしまいました。そのため、今年の撮影は叶わなかったのですが、Facebookを見ていると友人が投稿していた春の草花や花木が綺麗に咲いている京成バラ園の写真に目がとまりました。このバラ園は、5月のバラの時期は毎週のように通っていることもあり、奥にある池のエリアにいろいろな花木があるのも知っていたし、それらの木々が花をつけている景色も想像できたので、今年は早春の京成バラ園をカメラに収めてみることにしました

記憶を辿って早春の花たちに会いに行く

ヒュウガミズキ
マンサク科の落葉低木、ヒュウガミズキ。早春の代表的な低木といえばこの黄色の花を思い浮かべる。

3月19日午後2時。その日は快晴でとても暖かく、園内には数人のお客さんもいて、芝生のエリアでは子ども連れの家族が遊んだりしていました。そんなのどかな雰囲気の中、カメラを担いでバラ園の入り口から向かって右奥にある‘フランソワ・ジュランビル’の大きなアーチをくぐり、池のほうに歩いていくと、右手に満開のヒュウガミズキ、後ろにはマンサクも咲いています。さらに園路を進むと、右側の原種のバラのエリアでは、バラの周りにクリスマスローズが植栽されていたり、左側のアジサイのエリアには、小球根やさまざまな草花がプラスされたりしていました。

狙い以上のシチュエーションをカメラに収める

早春の庭
この時期、高さとボリュームがあって庭の主役にもなるクリスマスローズを手前に、背景のモクレンのピンクが画面全体に春らしい色彩を添えてくれた。

その日は黄花のスイセンがちょうど見頃を迎えていて、池の周りのサクラもいい咲き具合。どちらを向いても早春の草花がとても綺麗でした。そのまま歩を進めた先にある斜面のさらに奥が、今日のお目当てだったクリスマスローズの群落のエリアです。もう随分前に植えられた株なので、どれも皆、大株に育っていて、なかなかの迫力です。背景には濃いピンクのモクレンも満開。その足元には黄色いスイセンまで咲いて、まさに狙い以上のシチュエーションでした。

クリスマスローズ
たくさんのクリスマスローズの中でも、花弁の裏側の赤が綺麗で気に入った株。

撮影に適した光になるまで花風景を探す

モクレン
モクレンは中国原産の落葉低木。この時期はサクラのように小さい花を咲かせる木が多いなか、このように大きな花は存在感がありよく目立つ。

到着した時間はまだ少し日射しが強かったので、別カットが撮れそうな場所を探しながら、もう少し池の周りを歩くことにしました。クリスマスローズの群落+モクレンの撮影は、光が柔らかくなるまで待つことにして、ひとまず坂を下りました。バラ園のほうに戻ってみると、そこではユキヤナギの大株が花を無数に咲かせ、後ろには柳の新緑、さらにその奥にはサクラが咲いていて、これも100点満点のカットが撮れそうで大満足。

春の庭
夕方の木漏れ日が綺麗な時間帯に、白花のコブシを背景にクリスマスローズの群落を撮影。

光が柔らかくなるまで、まだ時間がありそうなので、オールドローズのエリアで新芽をチェックしたり、京成バラ園のヘッドガーデナーである村上敏さんが作っている花壇に行ったりしながら、午後3時半頃からクリスマスローズの撮影を開始しました。最高に綺麗な太陽の光の中でカメラを構え、白い花をセンターにして後ろのピンクのモクレンの入れ方を考えながら何枚かシャッターを切ったら、急いでユキヤナギの場所へ。

雪柳
このユキヤナギ、大きな株で驚かされました。中央奥の赤い花はボケ、白×赤×グリーン×ピンクのコラボ、美しすぎる!

ここも柔らかい逆光になっていて、ユキヤナギの白×柳の明るい新緑×桜のピンクのコンビネーションがため息が出るほど綺麗でした。ゆっくりファインダーの中でアングルを確認してシャッターを切った後、他の場所の桜や早春の花木の撮影をして5時少し前に撮影を終了。心ゆくまで納得の撮影ができた、幸せな一日でした。

Credit


写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ローズカレンダー』も好評。

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