梅も桜も庭の花も一緒に見たい! 橋本景子さんの花旅案内
暖かい日が少しずつ増えて、春の訪れを感じる今日この頃。3月は梅、4月は桜、5月はバラと、花木の開花が楽しみになる時期です。花を愛する人たちの「旬の花を愛でたい!」という思いを叶えるため、各地の花の名所を知る千葉在住の橋本景子さんに、かつてこの時期に訪れた花の旅についてご紹介いただきます。
目次
弥生の花見
冬と春のちょうど境目となる3月「弥生」ですが、弥生の「弥」は「いよいよ」とか「ますます」とかの意味を、「生」は「草木が芽吹く」という意味を持つそうです。春を迎えて草木がどんどん成長し、「いやが上にも生い茂る」が「いやおい」に変化し、さらに「弥生」といわれるようになったのだとか。
この季節は日照時間も長くなり、ついふらふらとどこかにお出かけしたくなるのですが、まだまだコロナ禍の影響もあります。特に首都圏に住む私たちにとっては、自由に動ける気分ではないのが正直なところ。
というわけで、今月は過去の写真を交え、早春の関西の花旅を振り返りたいと思います。
美しい日本の絶景を見に……鈴鹿の森庭園の「しだれ梅まつり」
名古屋駅で車をレンタルして、東名阪自動車道で1時間足らずのアクセス。京都駅からも1時間少々、関西国際空港からは2時間程度という手頃な場所に位置する三重県、鈴鹿の森庭園の「しだれ梅まつり」をご案内します。
2014年にグランドオープンした鈴鹿の森庭園は、日本の伝統園芸文化の一つである、しだれ梅の「仕立て技術」を未来へ継承する目的でつくられた研究栽培農園です。三重県津市にある赤塚植物園が地元の園芸会社と協力して運営しています。
広さ約2万㎡の園内には、桃色の代表的な八重咲き品種である、呉服枝垂(くれはしだれ)の古木、日本最古と思われる推定樹齢100年以上の「天の龍」や「地の龍」をはじめ、八重寒梅、藤牡丹枝垂、鹿児島紅、白滝枝垂、白加賀など、日本中から集められた200本もの名木が鈴鹿山脈を借景として咲き誇り、春の訪れを告げています。
この地方独特のしめ縄を巻かれた梅。樹齢100年を超える「呉服枝垂(くれはしだれ)」である目印なのだとか。
園内には展望台もあり、運がよければ鈴鹿山脈の雪を背景にした梅林を一望できます。また、おすすめなのは開花期間中の「ライトアップ」。
昼間とはまるで違う、妖艶で幻想的な眺め。一度は見ておきたい絶景です。
しだれ梅祭りは例年2月20日から開催されていますが、開花状況に応じて日程は変更される可能性があるため、確認が必要です。
私が行った2018年は3月20日過ぎでしたが、ピンクの花びらの絨毯が一面に敷き詰められていて、それもまた感動の景色でした。
ここでご紹介した写真は、今年2月23日、友人が撮影してくれたものです。
●開花状況等はWebページにて https://www.akatsuka.gr.jp/group/suzuka/
さらに、それから1週間後。
梅が散り始め、花びらがピンクの川になって流れる様子を、また撮影してくれました。
小さな春を見つけに……ローザンベリー多和田
鈴鹿から車で1時間半ほど行くと、ローザンベリー多和田があります。
名古屋駅からは1時間、新幹線なら米原駅から15分ほどです。
昨年オープンした、イギリスのマナーハウスを模したイベントホール。内装は、ウェッジウッドブルーで、英国風のインテリアが素晴らしい。
ローザンベリー多和田の13,000㎡のガーデンには、バラやクレマチス、宿根草などが植えられていますが、バラたちは、この時期やっと冬眠から目覚め、芽吹き始めたばかりです。秋からずっと咲き続けているパンジーやビオラに春の小球根などが加わり、少しずつ彩りが豊かになってきました。
羊との触れ合い広場や、ひつじのショーンファームガーデン、妖精と暮らすフェアリーガーデン、金・土・日・祝日の夜間のイルミネーションなど、この時期も見所はたっぷり。
ガーデンショップやオリジナル商品のショップ、レストランやカフェなどもあり、楽しいイベントも次々と企画されています。
●ローザンベリー多和田 https://www.rb-tawada.com
早咲きの桜を愛でに……京都御所
さて、次は京都に足を延ばしましょう。
2018年、鈴鹿の森のしだれ梅を見た翌々日、京都御所に向かいました。
目的は、早咲きで有名な糸桜です。
この旅で「梅と桜を両方見たい!」という友人のわがままなリクエストを叶えようと検索していたら見つけたのが、京都御苑の北西側に位置する旧近衛邸の跡地に植えられた30株の枝垂れ桜。御苑の中でも一番最初に咲き始める桜で、ソメイヨシノよりも開花が早く、毎年3月中旬から1カ月ほどの長期間、糸桜以外にも、さまざまな桜を楽しめるようです。
桜を見た後は、京都御所に。
即位式などの重要な行事が執り行われてきた、格式高い、左右対称の美しい紫宸殿と、敷き詰められた白砂も壮観です。ここでは、天皇から見て左近の桜、右近の橘が植えられています。
かつては、参観には事前に申し込みが必要で、春と秋の一般公開日には観光客が殺到していた京都御所ですが、2016年からは事前の申し込み不要の通年無料公開となり、気軽に見学ができます。
じつは学生時代には、御所のすぐ近くの大学に通い、御苑を自分の庭のように過ごしていた私にとっては懐かしい場所でもあります。
しかし、当時の私は植物には全く興味がなく、鳩を追いかけて遊んでいただけでした。今、もしその頃の自分に会えたら、「御所の四季をもっと楽しんでおきなさいよ!」と忠告してやりたい気分です(笑)
同じ関西圏でも、地域によって天候にも差があり、さまざまな花を追いかけて旅することは楽しみですが、年によって、開花の最盛期は変わりますので、事前にしっかりと下調べしてからの花旅をおすすめします。
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.4万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
写真(*)/髙橋広明 @hiroaki3660
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