世界最大級の植物コレクションを誇る、英国キュー王立植物園。そのキューガーデンで1987年に開館したプリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリーは、世界の10の気候が再現されている温室です。乾燥地帯でサボテンを眺めたと思ったら、次に待っているのは熱帯雨林。異空間へと旅する温室を訪ねます。

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世界のさまざまな気候を再現する温室

プリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリー
キュー設立に携わったオーガスタ妃を記念し名付けられたプリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリー。Kiev.Victor/Shutterstock.com

前編でもご紹介したプリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリーは、近代的な設備を誇る、広さ4,500㎡の温室です。温室内は冷涼な乾燥地帯から熱帯雨林まで、異なる10の気候がコンピュータ制御によって再現されています。ゾーンによって気温や湿度が変わるので、植物を世話するガーデナーたちは、出入りするたびに上着を着たり脱いだり、体温調節が大変なのだとか。

この温室の基礎部分には、動物学者で植物学者のデビッド・アッテンボロー卿によって、1985年にタイムカプセルが置かれました。中に入っているのは、絶滅の危機にある穀物類のタネ。カプセルは、100年後の2085年に開けられる予定ですが、その頃の世界はどうなっているでしょうか。

それでは、前編に続いて、乾燥熱帯や砂漠気候ゾーンのサボテンや多肉植物を見ていきましょう。

メキシコや南米のサボテン その2

ミルチロカクツス・ゲオメトリザンス (Myrtillocactus geometrizans)

ミルチロカクツス・ゲオメトリザンス (Myrtillocactus geometrizans)
メキシコ原産の、4~5mに育つ低木状のサボテン。まさに、メキシコと聞いて思い浮かべるサボテンの形をしていますね。日本では「リュウジンボク(竜神木)」の名で流通しています。

オプンチア・クイテンシスとフェロカクツス・シュワルツィー

左:オプンチア・クイテンシス (Opuntia quitensis)
ペルー、エクアドル原産のウチワサボテンの一種。可愛らしい、明るいオレンジの花の後にできる果実は食べられるそうですが、どんな味なのでしょう。

右:フェロカクツス・シュワルツィー (Ferocactus schwarzii)
メキシコ原産の樽形に育つサボテン。まるで折り紙で作ったようなきれいな形です。鮮やかな黄色の花が咲き、日本では「オウサイギョク(黄彩玉)」の名で流通しています。

オプンチア・フィカス=インディカ (Opuntia ficus-indica)

オプンチア・フィカス=インディカ (Opuntia ficus-indica)
メキシコ原産で、オプンチア属の中では最もポピュラーなウチワサボテンの一種。英名は、棘だらけのナシ(プリックリー・ペア)といい、果実は食用に売られています。南米ではウチワ形の茎も食べられているそう。エキスが化粧品に使われるなど、商用として重要な役割を果たすサボテンです。

ペレスキア・グランディフォリア(Pereskia grandifolia)とオプンチア・ファルカータ (Opuntia falcata)

左:ペレスキア・グランディフォリア(Pereskia grandifolia
ブラジル原産。5mほどまで伸びて、樹木のような姿をしたサボテンですが、幹のように見える茶色の部分には棘が生えています。半八重のバラのような花が咲くことからローズカクタスとも呼ばれます。日本では「オオバキリン」の名で流通。

右:オプンチア・ファルカータ (Opuntia falcata
こちらも樹木のような、変わり種のサボテン。

ミルチロカクツス・コカル(Myrtillocactus cochal)

ミルチロカクツス・コカル(Myrtillocactus cochal
英名で、燭台サボテン(キャンデラブラ・カクタス)というように、燭台を思わせる形をしています。メキシコ原産。

エケベリア

サボテンの根元にはエケベリア(Echeveria)が。

セダム ‘ブリート’ (Sedum ‘Brrito’)  とセダム・パキフィルム (Sedum pachyphyllum)

左:セダム ‘ブリート’ (Sedum ‘Brrito’)
長く垂れる茎に丸みを帯びた葉が連なるセダム。日本では、「玉つづり」か「新玉つづり」の名で流通しています。

右:セダム・パキフィルム (Sedum pachyphyllum)
メキシコ原産ベンケイソウ科の多肉植物。欧米ではジェリービーンズの名で呼ばれますが、日本では「乙女心」の名で流通しています。

フェロカクツス・ピロスス (Ferocactus pilosus)とプヤ・フェルギネア(Puya ferruginea)

左:フェロカクツス・ピロスス (Ferocactus pilosus)
赤い棘が目を引く、メキシコ原産のサボテン。円柱状で、3m近くまで育ちます。鮮やかな濃いオレンジの花が咲きます。

右:プヤ・フェルギネア(Puya ferruginea
ボリビアやエクアドルを原産地とするパイナップル科の植物。

ダイナミックな魅力のアガベ

アガベ・アテヌアタ (Agave attenuata)

温室内には、存在感たっぷりのアガベもたくさん植わっています。

アガベ・アテヌアタ (Agave attenuata) (流通名はアガベ・アテナータとも)
高さ1~1.5mほどに育った立派なアガベ。メキシコ原産の常緑のアガベで、葉には棘がありません。英名で、キツネの尻尾のアガベ(フォックステイル・アガベ)といわれるように、1.5~3mほどの長くて太い花穂が中心から伸びて、くるりと垂れます。

アガベ・テクイラナとアガベ・フィリフェラ

左:アガベ・テクイラナ (Agave Tequilana)
メキシコの高地、ハリスコ州原産の、テキーラの原料となるアガベ。ブルーアガベ、テキーラアガベとも呼ばれます。テキーラ作りには、葉の根元にある大きく育った球茎が使われます。

中:アガベ・フィリフェラ (Agave filifera)
メキシコ原産、葉の端から白い糸状の繊維が生えているのが特徴。高さ60cmほどの小ぶりなアガベ。

アガベ・ミシオヌム (Agave missionum) とアガベ・チタノタ (Agave titanota)

左:アガベ・ミシオヌム (Agave missionum)
立ち姿が美しいアガベ。葉の周りに細かい棘があります。

右:アガベ・チタノタ (Agave titanota)
葉の周りに大きな棘があって、どう猛な印象のアガベ。一回結実性で、花が咲くと枯れてしまいます。

ボーカルネア

左:ボーカルネア・ストリクタ (Beaucarnea stricta)
細い葉を放射状に広げるボーカルネア。6~10mに育ちます。

右は植物名が分かりませんでしたが、ボーカルネアの仲間でしょうか。放射状に見事に広がる細葉が印象的です。

ジャングル感満載 湿潤熱帯ゾーン

湿潤熱帯植物

乾燥地帯のゾーンを抜けると、今度は湿度が高くムンムンする熱帯ゾーンに来ました。植生がガラリと変わってジャングルのよう。面白い体験です。

チランジア・ストリクタ(Tillandsia stricta)

中央の塊は、チランジア・ストリクタ(Tillandsia stricta)。

南米原産のパイナップル科の植物で、チランジアの仲間はエアプランツと呼ばれます。カーテンのように掛かっているのも、同じチランジア属の仲間、チランジア・ウスネオイデス。

エアプランツ

エアプランツの美しい競演。

温室

温室内は加湿されています。

エクメア・ブラクテアタ (Aechmea bracteate)とクリプタンツス・アカウリス (Cryptanthus acaulis var. ruber) 

左:エクメア・ブラクテアタ (Aechmea bracteate)
パイナップル科の植物で、原産地はメキシコから中南米にかけて。

右:クリプタンツス・アカウリス (Cryptanthus acaulis var. ruber)
ブラジル原産。葉の色が渋いですね。

パイナップル科の植物

躍動感のある、パイナップル科の植物の競演。

キューガーデンの温室

温室のエリアごとに、湿度の高さや室温の微妙な変化があり、植物のグループが変わる様子を見ながら、まるで旅をしているような気分になれた温室散策。貴重な植物を保存維持することは、繊細な作業の連続なのだろうなと感じました。また、あのサボテンや多肉たちが成長した姿を見に行ける日を楽しみにしています。

アガベ

温室の外には大きなアガベが育っていました。

会員募集

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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