上野ファームの庭便り「新しいシーズンに向けて振り返る2020年人気のシーン」
多くの植物たちが休眠を迎える冬は、一年を振り返りながら新しい年の庭準備や見直し、アイデアをストックするのにピッタリの季節です。北海道で庭づくりをスタートして2021年で20年を迎える北海道旭川の「上野ファーム」は、益々充実する植物が人々に驚きと癒やしを与えています。今回は、「上野ファーム」のガーデナー、上野砂由紀さんに、2020年を振り返り、特に人気だった庭風景や注目の植物を教えていただきました。
目次
北海道の大地に咲く草花の美
上野ファームでは、毎年いろいろな植栽デザインや新しい植物に挑戦しています。
コロナ禍で、ガーデンを見ていただくことがとても難しかった2020年でしたが、ガーデンの花たちは、変わらずに成長を続け、いつも以上の美しさと感動を与えてくれました。ガーデンで人気のあったシーンやSNSなどで支持の多かった美しい瞬間を、注目植物とともにご紹介します。
<春>
カナダケシ、球根花
まだ新緑も広がらない早春の季節から咲き始める純白の八重咲きカナダケシ(サンギナリア)は、年々花数が増えて、早春の庭では特に目立つ存在になってきました。
まるでコートにくるまっているかのような咲き始めの姿も、お客様から大人気でした。
白樺の林の中で咲くチューリップも色数を増やして、2020年の春はとてもポップな場所となりました。残念ながらコロナ禍での休業要請の時期と重なり、見てくださる方はほとんどいませんでしたが、この風景のおかげで、私自身の気持ちはとても明るくなりました。
2021年は昨年とは少し色の比率を変え、新しい品種も秋にたくさん植えたので、春が待ち遠しいです。
チューリップが終わると寂しくなるミラーボーダーに、遅咲きのチューリップと同じころに咲き出すアリウム‘パープルセンセーション’を入れると、とてもいい雰囲気になりました。SNSでも大人気のシーンです。
開花期を細かく分析して重ねていく手法を取るデザインは、植物の成長と季節を待たなくてはならず、すぐには結果が出ないのですが、その分、素敵な風景が出現した時の嬉しさは格別です。アリウム‘パープルセンセーション’は、発色がよくて早咲きなので、インパクトのある風景を作れます。
2020年6月上旬の景色です。毎年、ノームの庭に少しずつ増やしていたアリウムですが、この年ようやく思い通りのボリュームを出すことに成功! 手前の黄金葉の植物は、西洋ニワトコ。
<初夏>
エレムルス、シレネ、西洋オダマキ
アリウムの開花が終わると、迫力をだすのが、エレムルス、特にこの白(品種不明)は、この場所がとても気に入っているようで、他のエレムルスよりも生育がよく、大迫力。植えてから3年が経ち、年々穂数が増えて、庭でも主役級となり、ちょっと自慢です。
エレムルスの白は、他の色よりも根塊が大きく、草丈も上野ファームでは150cmを超えるほどになります。
さまざまな植物と混ざり合うような植栽も、2020年はたくさん増やしました。黄金葉に鮮やかなピンクの花が、庭でとても目立っていたシレネは、紫花のサルビアとの相性も素晴らしく、これからもいろんな場所で使ってみたいと思っています。
ちょっとパンチが欲しいときや変化が欲しいときに、シレネを一株入れると面白くなります。
ここ数年、いろいろと集めているのが、西洋オダマキ(アキレギア)です。昔からある植物ですが、改めて咲かせてみると、じつはファンが多いことが分かりました。
シンプルな品種でも、まとめて咲かせたり、または混植させることで、今までのイメージとは違う雰囲気を出すことができます。
咲くと必ず何の花? と聞かれるのは、アキレギアの「ウィンキーシリーズ」‘ダブルブルーホワイト’。よく見ると芸術的な花びらですね。
開花期が長くてシンプルな美しさがあるアキレギア‘クリスタル’も、お気に入りの品種です。
植栽の中に、ちらりと西洋オダマキを入れることで、初夏の庭がより一層華やかになるので、ピンポイントでよく使います。旭川では6月上旬に咲く宿根草はまだ少ないので、ジギタリスなどと合わせて、西洋オダマキはこの時期、とても重宝します。
一年草のミックスフラワーにも挑戦
2020年は、畑の一角にラインを描くように一年草のばら播きにも挑戦しました。宿根草が多い上野ファームですが、一年草の風景も新鮮でした。
カルフォルニアポピー、コーンフラワー、ムシトリナデシコなどなど、定番の一年草ですが、ミックスフラワーの魅力は種子のブレンドによって変化が出せること。ただいま研究中です。
<盛夏>
アリウム、ホリホック、タリクトラム
最近話題の真夏に咲くアリウムも数年前から挑戦していますが、猛暑が厳しかった2020年も元気に咲いていました。3年目の株は驚くほど増えて、耐寒性と耐暑性を併せ持つ優秀な夏植物ということを実感。球根というよりも、大きめの花が咲くチャイブのような感じで、根でよく増えます。
上写真左は、アリウム‘サマービューティー’。真夏でも表情は涼し気です。
右は、アリウム‘ミレニアム’。同じく乾燥が好きなセダムとも合わせやすく、草丈30~40cmなので、ガーデンでも扱いやすい花です。
3m近くまで大きく育ったホリホックは、まるで森のように天高く伸びて、上野ファームの夏の風物詩にもなっています。交配してこぼれダネで増えたものも多く、雨風で傷む不安はあるものの、どうしても夏には咲かせたい植物の一つです。
華やかな八重咲き品種もよくありますが、上野ファームでは、毎年シンプルな一重のものが欲しい! という要望が続出です。懐かしい気持ちと、夏らしさを感じる花は、昔からある品種であっても、決して古臭くはなく、大切にデザインに入れていきたいと思っています。
咲き出した日から、毎日のように名前を聞かれたのが、タリクトラム‘スプレンダイド・ホワイト’です。愛らしい粒状の白い花は、決して派手ではありませんが、ガーデンのあちこちで開花して人気でした。タリクトラムの中でも、この品種は花数が抜群に多く、早めに切り戻すことで二番花も楽しめます。茎が弱いので、枝などで添木をするとよいでしょう。
同種で薄紫のタリクトラム‘スプレンダイド’もあります。
<秋>
オーナメンタルグラス
秋になると花数は減ってきますが、近年日本でも注目されているナチュラリスティックプランティングのブームもあってか、オーナメンタルグラスの美しさや魅力を理解してくれる方が年々増えてきたように感じます。決して目立つ存在ではないのですが、他の植物を引き立て、秋にさらに美しさを増します。
葉先がボルドーカラーに染まるパニカム‘シェナンドア’は魅力的なオーナメンタルグラスで、素敵なシーンをガーデンで増産中です!
上野ファームでは夏の終わり頃から咲くサマーヒヤシンス(ガルトニア)は、本来は春に植える球根植物です。数年試してみて、旭川でも越冬することも分かり、これから使い道が増えそうな新しい仲間です。
純白の釣り鐘状の花が、ダークリーフのアスターを背景にとても目立っていました。まだまだ、いろいろな組み合わせが楽しめそうなので、増やしていく予定です。
●『上野ファームの庭便り「秋こそ美しい! 表現広がるオーナメンタルグラス」』
上野ファーム2021インフォメーション
こうして2020年を終え、今ガーデンは例年通り銀世界ですが、また再び花咲く季節に向けて準備中です。
2021年は、カフェがリニューアルして、すべての食べ物がテイクアウト可能になり、ガーデンでもピクニックのように飲食が楽しめるようになりました。ガーデンの植物から元気をチャージして、心地よい庭時間を楽しんでください。
【2023年ガーデン公開期間】
4月21日~10月15日予定(期間中無休)
開園時間/10:00~17:00
入園料/大人1,000円 中学生500円 小学生以下無料
年間パスポート1,200円
※感染拡大防止のため予告なく営業内容が変更になる場合があります、あらかじめご了承ください。
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