週末は、タイムスリップしてみませんか? 時空を超えて向かうのは、「江戸時代の花屋さん」。本当は長野の松本なんですけど、静かな城下町の一角に、そんな気分を味わるお店が誕生しました。
トップ画面の写真を見て、気になった方が多そうですね。のれんをかけている花屋さんなんて、そうはないかもしれません。『花屋 彦兵衛』。時代小説にでも登場しそうなこのお店があるのは、城下町の名残と新しい文化が交差する長野・松本。江戸時代、米問屋が所有していた5つの蔵『和泉町伍蔵(いずみまちごくら)』の一角で、まさに“のれん”を掲げました。

オーナーは、東京・二子玉川で『メゾンフルーリ』を営む佐々木久満さんです。おしゃれな街、二子玉川で華やかな花々を扱う一方、和の花を扱う店をもちたいというのが長年の夢。そして、空間と、そこに置く花、コンセプトのすべてのピースが、「やっと、この松本の店でぴたっとはまった」と言います。

土間に並べた切り花のメインは、季節の草花。糸菊などの和の風情漂う花々のほか、葉や実の彩りに季節を映す枝もの。約30種そろえる花材には、シャクヤク、クレマチス、ダリア、リンドウなどの長野が誇る花々も、季節ごとに加わります。
↓が糸菊。

↓は上伊那の瀬戸さんが作るリンドウ。

そんな花を使ったアレンジにも特徴があり、オーダーすると「器」に挿して販売しています。花瓶か、民芸調のかごか好きなほうを選べるそう。考えてみると、花器を買う機会って、あまりありませんよね。ギフトにはもちろん、自宅用にもうれしい“器込みのアレンジ”です。
店先にはこんなふうに小さな寄せ植えが並んでいます。それらは、切り花と同じ比重で力を入れる「草もの盆栽」。日本の野山にありそうな草花を使った盆栽のことです。

↓は、野紺菊の寄せ植え。細い葉は石菖(せきしょう)、赤い実は「酢実(ずみ)」。寄せ植えしてから4、5年は経ったものだそうです。

お店では、こうした月日の流れを愛でる経年もののほかに、身近な盆栽もオリジナルで作っています。染付の蕎麦猪口風の鉢に植えられているのは↓、シクラメンのコウムという品種。ハート形の葉がかわいらしく、花の季節には小指の先ほどのつぶらな花で楽しませてくれるそうです。素敵ですね!

訪ねると、気づくことがあるはず…。それは値札。木札風の値札に、旧字で表記! のれんといい、値札といい、粋な遊び心にグッときてしまいます。

ところで、店名がなぜ、『彦兵衛』なのでしょう? それは、明治のころ、東京・日本橋橘町に創業した呉服商「大黒屋彦兵衛」にあやかったもの。佐々木さんの母方のルーツをたどると登場する人で、友禅染めと日本刺しゅうを融合させ、新たに江戸友禅という技法を生み出した人といいます。「着物と花とではまったく異なりますが、この店を作った根底には、そこへ近づけたらという思いがあります」。信州松本の城下町で取り組むのは、“新しい和のスタイル”。フラワーアレンジメントのテクニックを使いながら、気軽に和の粋を楽しめる花を提案していくそうです。
松本へお出かけの折には、立ち寄ってみませんか?
Shop Data:花屋 彦兵衛
フェイスブック/https://www.facebook.com/hanayahikobee/
住所/長野県松本市旭1-1-20 和泉町伍蔵
電話/0263・31・6187
営業時間/12~18時
定休日/月・火曜
アクセス/松本駅より徒歩約25分、バスの場合は、松本駅より四賀線に乗車。和泉町バス停下車、徒歩約1分。車の場合は、松本ICより約25分。
Credit
撮影・佐々木久満 構成と文・鈴木清子
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