一口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、私たちの想像力を刺激し、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は京都、二条城の南側の路地裏にある観葉植物専門店「cotoha」を訪ねました。

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路地裏にひっそりとある
隠れ家的存在の観葉植物専門店

観葉植物専門店「cotoha」

コーヒーの香りと独特な雰囲気が漂う袋小路。インドアグリーンをメインで扱った植物の店「cotoha」はその一角にある、ツタが覆う古びた建物の2階にあります。1階にはカフェや雑貨店があり、ゆっくり楽しめるショップが集まる一角です。

観葉植物専門店「cotoha」
上/階段脇の錆びた看板がお店の目印。古いスクーターが店先の植物ディスプレイを盛り立てて。 下/1階の喫茶店「CLAMP COFFEE SALASA」の入り口も、ツタが覆いシックな雰囲気を強めている。

期待に胸を膨らませ急勾配の木の階段を上がると、まるで植物園の温室のような緑輝く瑞々しい空間が広がります。建物外から想像する以上の圧倒的なグリーンの量です。

観葉植物専門店「cotoha」

のびのびと枝葉を伸ばす観葉植物はみな、オーナーの谷奥俊男さんが自ら沖縄や鹿児島の生産農家に赴いて選んできたもの。現地で生産者に会い、育った環境、樹形の魅力などを一株ずつ自身の目で確かめながら仕入れています。植物は、珍しい種類はもちろん、曲がりくねった自然樹形のものを積極的に仕入れているので、空間をデザインするのにぴったりのグリーンが揃っています。

観葉植物専門店「cotoha」
左/曲がりくねった枝ぶりのグリーンが、階段の頭上を覆う。右/小さな階段を設けて高低差のある店内。変化に富んだ店内には、楽しい仕掛けがあちこちに。
観葉植物専門店「cotoha」
天窓から差し込む光が、観葉植物の葉に美しく透け、空間にきらめきを与えている。
観葉植物専門店「cotoha」

京都らしい古い建物が特徴的のこの店舗は、もともとは古い燃料倉庫で、その後は写真のスタジオとして使われていたもの。当時の高い天井と、大きく取られた半円形の窓を利点としてそのまま生かしているため、店内はどこかクラシックな趣が漂っています。それぞれの時代の名残りが、空間に深みを与えて。

観葉植物専門店「cotoha」
写真スタジオ時代にしつらえられたアールを描く大きな窓、グレーの壁とカーテンが、個性的な植物をぐっとシックに引き立てている。

アンティークアイテムと合わせて
植物の生命力が感じられる空間を提案

オープンして約6年経つ「cotoha」。それまでは西陣の実家の生花店で切り花の販売をしていた谷奥さん。「植物をもののように扱い、売れ残ったら廃棄という流れに疑問を持ちながらやっていたんだよね」。そんな思いを抱えながら、販売していた観葉植物を自宅で育ててみると、次第に成長する植物の繊細さやたくましさ、おもしろみ、そして愛おしさを感じるようになりました。「育てる植物を販売しよう」と方向性が明確に定まり、実家の生花店から独立して観葉植物の専門店「cotoha」をオープンさせました。

観葉植物専門店「cotoha」
個性的な植物が多く、都内の有名インテリアショップにも植物を卸している。

店内では観葉植物と併せてアンティークの家具や雑貨も販売。店内の什器や飾りとして巧みに使い、空間に雰囲気と立体感をもたらしています。どこを切り取っても絵になるそのあしらいは、おしゃれに感度の高い人たちのインテリアのお手本として話題です。

観葉植物専門店「cotoha」
古い脚立を2つ並べ、板を渡しただけの植物スタンド。赤いペイントがアクセントに。
観葉植物専門店「cotoha」
アンティークの小物類も充実。古い秤は多肉植物を飾るスタンドにぴったり。

あちこちのガーデニングショーやイベントで空間提案をすることも多い「cotoha」。最近は、東京ドームで開かれた世界らん展に、「ランとグリーンのある暮らし」をアンティークのアイテムと併せて展示提案し、好評を博しました。店舗でもワークショップやセミナーを開催し、「植物があることの重要性と楽しさ」を常に発信することを心掛けています。

観葉植物専門店「cotoha」
以前、ガーデニングショーで展示したシンプルな東屋も店内に展示し、空間のアクセントに。その下には、アンティークの革ソファーを置き、打ち合わせの場として活用している。
観葉植物専門店「cotoha」
販売しているアンティークの革のソファーは、観葉植物との相性抜群。

店名の「cotoha」は「古と葉」をアルファベットで表記したもの。「古いものと植物の葉で、暮らしに潤いを」という思いが込められています。

観葉植物専門店「cotoha」
東屋の側面にはアンティークのフェンスをつけて、ビカクシダやランをハンギング。打ち合わせコーナーの程よい目隠しにしている。
観葉植物専門店「cotoha」
左/アイアンを使ったアイテムやグレイッシュな鉢は、グリーンと相性抜群のアイテム。
右/エキゾチックな雰囲気の竹葉セッコク。山地や岩場に見られる小型の着生ラン。
観葉植物専門店「cotoha」
古いステレオも素敵な飾り台に。大きなボトルのテラリウムがシーンに透明感をプラス。
観葉植物専門店「cotoha」
古いミシンと瑞々しい葉のコントラストが目を引くコーナー。
観葉植物専門店「cotoha」
以前の写真スタジオ時代に設けられた飾り壁も、格好のディスプレーコーナー。

充実した植物ライフのために
アフターフォローに注力

こんなにも多くの人に支持されている「cotoha」ですが、最初の年は失敗も多く、お客様に教えて貰うことも多かったと谷奥さん。「実践することが何よりですね。自信を持って説明して販売できるよう、必死に研究しました」と今までを振り返ります。その真摯な姿勢ともともと持ち合わせていたインテリアセンスが評判を呼び、話題の人気店に成長しました。

観葉植物専門店「cotoha」
メインの売り場の隣の小さな部屋は、植物やパルダリウムがゆったりと飾られたアトリエ。植物目利きであることや空間での生かし方のセンスは、他業界にも定評があり、都内の有名インテリア店にも植物を卸している。

お店が軌道に乗り3年ほど経った頃、新規の客数は伸びるのに対して、リピーターが減っていることに気づきました。その原因を探るべくいろいろリサーチしたところ、「購入後しばらくすると枯れてしまった。我が家には無理」という声が多く、さらにその枯れた原因を確認してみると「部屋は常に締めきっている」「部屋に日が入らず暗い」といったパターンでした。多くの人が本来あるべき状況からは大きくかけ離れた環境で植物を育てていることを知った谷奥さん。「これじゃ店も園芸業界も衰退してしまう」と危機を感じ、販売時の説明に加えて、購入後のフォローに力を注ぐことの必要性を感じるようになりました。

観葉植物専門店「cotoha」
観葉植物専門店「cotoha」
自然の一部を切り取ったような風景を水槽でつくる人気のパルダリウム。初心者さんには、お店のスタッフが丁寧に教えてくれます。

観葉植物を育てながらベストな生育環境を分析して、きちんとデータ化している谷奥さん。お客様が育てようとしている環境を聞いて、どういった種類が合い、どういう管理が必要かということを、感覚的だけではなく理論立てて分かりやすく、的確にカウンセリングしています。最近評判を得ているのが、LINEを使っての個別アドバイス。植物は育てる環境が変わると葉を落としたり元気がなくなったりしますが、それが生理的なものなのか、不調なのか初心者には見極めが難しいものです。お客様が写真をLINEでお店に送ることで、原因や今の状況を判断してもらえます。「初期に判断ができれば、枯らすことはありません」と谷奥さん。細やかなフォローで、お客様のストレスが軽減し、ショップのリピート率アップにつなげています

観葉植物専門店「cotoha」
チランジアなどのエアプランツも充実。飾り方も参考になります。

「今の園芸店では店頭でもお客様が購入した後も、‘育てる’でなく‘延命している’感じがします。仕入れたときが最高にいい状態というのでは、お客様にストレスを与えますし、結果園芸から離れてしまいます。だから、僕は植物を仕入れる際の環境を目で確認してきて、この空間に徐々に慣らし、お客様にお届けし、さらにその後もフォローをすることを心掛けています。これは、この店の客数を増やすということだけでなく、園芸離れに歯止めをかけることにつながり、結果、園芸界に活気が戻ると思うからです」。

観葉植物専門店「cotoha」

最近では、ハウスメーカーやインテリアコーディネーターから講習会を頼まれることもしばしば。大学の教授と観葉植物がもたらす効果や最適な土などの研究を重ね、オリジナルの用土も開発・販売をしています。

谷奥さんのイチオシアイテム
「cotoha」のオリジナル用土・セラミックソイル

観葉植物専門店「cotoha」オリジナルの用土

「cotoha」では、オリジナルの用土を開発・販売しています。室内で育てる観葉植物は、特に保水性、排水性が高く衛生的であることが重要。「cotoha」のオリジナル用土は、セラミックで作り、これらをクリアした安心の室内用用土です。最近は、個人や店舗のインテリア用としてだけでなく、病院での採用が増えており、多方面からの信頼を得ているとか。

この用土は、一般的な鉢植えはもちろん、テラリウムなどにもおすすめです。乾燥してくると白く、湿っている状態だと茶色くなるので、水やりの目安が分かりやすいのもポイント。肥料は液肥を施してください。

観葉植物専門店「cotoha」オリジナル用土

落ち着いた路地裏位置する、京都を満喫しながら観葉植物を選べるショップ「cotoha」。植物の楽しみ方のみならず、ベストな栽培法、植物が人にもたらす効果、お客様へのサポートなど、とことん追求し、形にしている谷奥さんの熱意をたっぷり感じるショップです。ぜひ訪れてください。アクセスは、JR二条駅より徒歩約5分、地下鉄東西線二条城前駅より徒歩約7分。

【GARDEN DATA】

cotoha

京都府京都市中京区西ノ京職司町67-38
TEL:075-802-9108

営業時間:11:00~18:00

定休日:水曜日

http://www.cotoha.me

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

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