新緑が葉を広げ、バラや多年草の花が咲き始める5月上旬。北海道・旭川の「上野ファーム」と「大雪森のガーデン」に旅したのは神奈川・横浜で庭づくりを楽しんでいる前田満見さんです。「関東の5月は初夏ですが、北海道は、まだ春が始まったばかり。初々しい木々の若葉と、可憐な春の球根花が競い合うように咲いていました」という前田さんが、今回は、大雪森のガーデンの感動の景色と見所をご案内します。

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丘陵に広がる森の庭を訪ねる

大雪山を望む旭ヶ丘高原にある大雪森のガーデンは、色彩豊かな「森の花園」、樹木や山野草に癒される「森の迎賓館」、緑あふれる「遊びの森」の3つのエリアで構成された庭園です。

訪れた2019年の5月上旬は、「森の花園」エリアのみ無料公開されていました。

大雪山系を望む雄大なロケーション

大雪山系

旭川から大雪森のガーデンまでは、車で約1時間。広大な大地の遥か先まで真っ直ぐ伸びる道や、自然の芽吹きが織りなす美しい景色を眺めながらのドライブは、とても快適でした。

到着するや否や、まず心を奪われたのが、残雪を湛えた堂々たる大雪山連峰の雄大なロケーション。北海道ガーデンのスケールの大きさに改めて圧倒されました。そして、庭園に訪れたはずなのに、大自然に迷い込んだような不思議な気分に。「一体、この先はどんな景色が広がっているのだろう」と、胸が高鳴りました。

「森の花園」は妖精たちの楽園

大雪森のガーデン

エントランスを抜けると、目の前に広がっていたのは、空に向かって悠々と枝を広げた芽吹き前の白樺と落葉樹の大樹。その株元で、小球根の花々が春の訪れを告げていました。どうやら、「森の花園」は冬の眠りから覚めたばかり。声を出すのも躊躇するほどしんと静まり返っていました。

シラー・シビリカなどの早春の小球根

緩やかな斜面を縫うような小径に足を踏み入れると、インクブルーが鮮やかなシラー・シビリカ、水色の花弁にブルーのラインが美しいプシュキニア、星型のチオノドクサ、そして、色とりどりのクロッカスやフクジュソウが群れ咲いていました。極寒の冬を乗り越えた小球根の花々の、何とたくましく愛おしいこと。

プシュキニアとシラー・シビリカ

目が合う度に、甘い蜜に吸い寄せられる昆虫のように、何度も地面に顔を近づけました。見れば見るほど、柔らかな光と戯れる可憐な姿は、「春の妖精」そのもの。早春の「森の花園」は、まさに妖精たちの楽園でした。

じつは、小径の縁を彩る小球根の花があまりに愛らしかったので、去年の秋、プシュキニアとミニアイリスの球根をわが家の庭に植えました。嬉しいことに、この春、小さな庭に春一番を告げてくれたのは、この妖精たち。また一つ、春を待つ楽しみが増えました。

プシュキニアとミニアイリス
今年、わが家の庭で春を告げた小球根。左がプシュキニア、右はミニアイリス。

想像力を掻き立てられる鉄のアーチ

大雪森のガーデンのアーチ

「森の花園」で、ひと際目を引いていたのが、「花の泉」エリアに設置されていた鉄製のアーチ。エッジの効いた屈強なアーチが連なる様が、大雪山連峰の景色と重なりました。そして、アーチの下には早咲きのスイセン‘ティタ・ティタ’が色鮮やかに連なっています。その光景は、まるで大雪の雪を溶かす春の光のよう。グラウンドカバープランツを利用して地面から泉が湧き上がる様子を表現している「花の泉」。アーチの下で草花が咲き揃う季節は、どんなにか素晴らしいことでしょう。

早咲きのスイセン‘ティタ・ティタ’

癒やしのガーデンベンチ

大雪森のガーデンのガーデンベンチ

「森の花園」の緩やかな斜面には、いくつかガーデンベンチが設置されています。ガーデンベンチは、寛ぎの場所であると同時に、植栽のアクセントにもなる重要なアイテム。ベンチのデザインや色、置かれている場所でガーデンの印象も随分変わります。そういえば、上野ファームの射的山の頂上にあるカラフルな虹色のベンチや、ミラーボーダーのエレガントなブルーのベンチは、それらが植栽や周りの景色とぴったり。ベンチのある風景が、上野ファームのフォーカルポイントになっていますね。

大雪森のガーデンのガーデンベンチ

「森の花園」のガーデンベンチは、深緑色のシンプルなデザイン。白樺の自然林や植栽に溶け込んでいました。さらに、斜面の高台に置かれているベンチに座ると、「森の花園」が一望でき、何と心地よいことでしょう。まるで、景色を独り占めしているような気分でした。間違いなく「森の花園」の特等席です。

大雪森のガーデン

また、その他のレストラン&カフェの建物も木材を生かしたシンプル&ナチュラルな外観で、アーチやガーデンベンチと同じく、周りの景色にしっくり馴染んでいました。「森の花園」で感じた心地よさや癒やしは、自然の景色と調和した植栽デザインと構造物にあるような気がします。

早春の大雪森のガーデン

大雪山系の自然と庭園が調和した、癒やしの「大雪森のガーデン」。

早春にしか見られない「春の妖精」たちに会いに、いつか皆さんも訪れてみませんか。

Credit


写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。

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