素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪15 宮城「スワローテイルガーデン」
ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、イギリスの香りが漂うショップ、宮城県の「スワローテイルガーデン」を訪ねました。
目次
閑静な住宅街の中で
牧歌的な風を感じさせるショップ
仙台市郊外の閑静な住宅地の中にあるスワローテイルガーデン。店先の小さな庭に設けられたはちみつ色の石積みが、異国情緒を放っています。この石積みは、オーナーである小野雄大さんがイギリスの石を英国式の工法で積んだ壁、ドライウォール。ほんの数メートルの壁ですが、コッツウォルズの風景を感じさせています。
石積み+ナチュラルな草花の
素朴な演出にほっこり
石積みには、野に生えているような楚々とした草花が寄り添い、牧歌的な風景が演出されています。この本場さながらの石積みは、セメントを使わずに石を載せるだけという英国式工法で、熟練の技術と勘が必要。国内で最初に英国に渡って資格を取得した神谷造園(愛知県岡崎市)の神谷さんに学びながら、さらに本場でも研鑽を積み、技術を習得しました。現在国内でたった3人しか認定されていない難易度「レベル3」を保持しており、常に次なる高みを目指して技術を磨いています。
ふんわりとした姿の草花を合わせて、石積みの重い印象を軽減。
庭の雰囲気を盛り上げる
数々のオーナメントも必見
小さなガーデンの雰囲気を盛り立てているのは、イギリスから仕入れた、重厚感のあるオーナメントやコンテナ類。大小さまざまのアイテムが見事に石積みと響き合いながら、軽やかな植物とバランスよく調和しています。
植栽の中にひっそりと配したバードバスとカエルのオーナメント。全形を見せないのが自然な庭を造るポイント。自然体な庭づくりからは、小野さんの人柄や植物との向き合い方が感じられます。
子どもの頃から親しんだ風景が
現在つくり出す風景につながる
子どもの頃、庭に咲いた花を部屋に飾るのが大好きだったという小野さん。母方の実家は田畑に囲まれた茅葺きの古民家で、そんな風景に親しみながら育ちました。その頃の記憶が、現在抱く心の原風景になっていると言います。
「園芸というより植物全般やそれを取り巻く環境に興味がありましたね」。子どもの頃から抱いていた「植物や園芸のことをもっと知りたい」という思いに押され、高校卒業後は、タイやマレーシアの農場を一年ほどかけて見て回り、帰国後は園芸の学校に入学。園芸学校では室内装飾・インドアグリーンを専攻していました。けれど、それだけでは飽き足らず、専攻以外にも面白そうなことは何でも参加し、学校が長期休みに入ると、校内の圃場やハウスで栽培の管理を自主的に行ったり、造園の講習にも頻繁に出席。さらに、都内のインテリアショップやアンティークショップも、時間をつくっては見に行くという生活で、あらゆる感性に磨きをかけていきました。
園芸の学校を卒業した後は、通訳をしていた祖父の影響もあってニュージーランドに渡航した小野さん。ニュージーランドでは、古いモノや拾ってきたモノをさりげなく取り込んだり、自然な植栽を楽しんでいる人が多く、日本のガーデニングとは異なる‘無作為な庭づくり’に感動を受けました。毎日新たな刺激を受けるにつれ、「日本の庭園についてもきちんと学ぶ必要があるのでは?」と感じ始め、帰国後すぐに、鎌倉の造園会社に入社しました。
何世代にもわたって受け継いだものを大事にしながら、自身の趣味を反映させている家が多い鎌倉。土地柄、借景を生かした庭も多かったため、自然に見せる手法や剪定の技術を学びました。学校だけでなく、ニュージーランドや鎌倉で、あらゆることを吸収していったのです。
英国の香りが満ちあふれる
居心地のよい建物内
東日本大震災をきっかけに、奥様の明日香さんと仙台に戻り、以前から考えていた園芸店を自宅でスタートさせた小野さん。住まい兼を兼ねたショップは、イギリスにあるような小さな家がコンセプトです。壁はコッツウォルズのハニーストーンに似た色を選び、屋根の傾斜は現地の角度を参考に。緑の木のドアを開けると、イギリスの香りがさらに強く味わえる世界へ突入です。
室内はイギリスで買い付けてきたというツールや雑貨でいっぱい。暖炉のあるリビングのような空間は、誰かの住まいを訪れたような落ち着いた時間が流れています。
小野さんはイギリスに行くたびに、あちこちのディスプレイをチェック。特に、コッツウォルズのテットベリーという小さな村にある何軒かのアンティークショップがお気に入り。「ショップ巡りはとても刺激になりますよ。この村はリッチなエリアなので、置いてあるものがみんな素敵なんです」。
父方も母方も、祖父が通訳だったことから、幼い頃から海外の人や物に親しんでいた小野さん。「イギリスのトラッドなファッションが昔から好きですね。あまり時代に流されずに、カッチリしたところが好きなんです」。そんな伝統を重んじるイギリス人は、おとぎ話や愛らしい動物が大好き。このショップでは、そんな文化も感じることができるアイテムがいっぱいです。
スワローテイルガーデンの
ディスプレイあれこれ
季節ごとにチェンジするスワローテイルガーデンのディスプレイ。イギリスのウインドーディスプレイの雰囲気を意識して飾り付けをしています。その素敵の秘密をご紹介。ぜひ、ベランダのコーナーやもてなしのシーンづくりの参考にしてください。
【ガーデンアイテムは、明るく清潔感が漂うように】
ガーデンツールや雑貨も泥臭い印象にならないように、清潔感を大切に一般的な雑貨と同じ感覚で飾ります。春や夏など開放的な気分になる季節は、明るいカラーにまとめて楽し気に演出しましょう。
【チェアも什器に活用】
テーブルセットの一つであるチェアも立派な什器に。何を置いてもしっくりなじみ、ぬくもりのあるシーンが演出できます。居心地のよい空間づくりにぴったり。
【ドライフラワーもマストアイテム】
なんだか物足りない──そんな場所にはドライフラワーを添えてみましょう。ニュアンスのある色味のものを選べば、落ち着いたシーンを描けます。ほんの少し添えるだけで、絵になるシーンに。
【冬ごもりの時季は、あたたかみを添えて】
寒い時期は外の風景を取り入れながら、心もあたたまるシーンを演出します。野山に行けばいくらでもある枯れ枝は、ディスプレイで活躍する重要アイテムです。花瓶などに数本挿して、動物のオーナメントを添えれば、ォーカルポイントに。この年のクリスマスは、あたたかみのある上品なブラウンでまとめました。「冬の時期のピーターシャムナーセリのようなキラキラ感を取り入れています」。
キッチンツールで
アットホームな楽しさを
おたまや木べら、キャニスターなどのキッチンツールは、空間に安心感やぬくもりを感じさせるのにぴったりのアイテム。クロスやお菓子などを合わせて、楽しく演出しましょう。
テーブルコーディネートは
つややかさと透明感が肝要
大切な人をおもてなしする日は、テーブルセッティングに特に力を入れたいもの。上品にまとめるためには、次の3つが大切です。①色を揃えて少なくとどめること。②ガラスも使って透明感を出すこと。④植物をほどよい分量でさりげなく添えること。
こだわりのスイーツ&ティーも並ぶ
夢のような空間
ショップ内には、「秘密の庭の小さな焼き菓子店」と名付けられた小さなスイーツ&紅茶コーナーがあります。スイーツは、近所で小野さんの母が営むレストラン、「Salon de Cafe MANNE (サロンド カフェ マンナ)」のもの。こだわりの材料で作られたタルトやシフォンケーキ、クッキーが並びます。そして10種類以上ある紅茶は、ドイツのロンネフェルト社のもの。香り高く深い味わいが、優雅なティータイムを演出してくれます。
小野さんのイチオシアイテム
「コッツウォルドストーン」
イギリスのカントリーサイドでよく見られる石積み。庭や牧場の仕切りとしてだけでなく、橋や川岸、建物の塀にも用いられています。イギリスでは景観条例が厳しいので、自然に溶け込むこの石積みが最適なのです。
小野さんは庭の施工も手掛けているので、現在日本各地で石積みをしています。地場産の石を使うこともありますが、雰囲気を出したいエントランスなどには、やはりコッツウォルドストーンがおすすめです。
イギリス人がこよなく愛する草花、お菓子、紅茶、おとぎの世界。それらすべてを取り込んで、トータルでガーデンライフを提案しているスワローテイルガーデン。イギリスのエッセンスがぎっしりと詰まった空間は、しばしの間旅行気分にさせてくれる本格的な演出です。ぜひ訪れてください。アクセスは、仙台市地下鉄南北線泉中央駅よりバスで約15分。
【GARDEN DATA】
スワローテイル ガーデン
宮城県仙台市泉区将監12-11-9-2
TEL: 022-725-6998
https://www.facebook.com/Swallowtail-garden-1426701067608819/
営業時間:11:00~18:00(冬季は17:00ごろ閉店)
休日:日曜日、月曜日
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