ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、イギリスの香りが漂うショップ、宮城県の「スワローテイルガーデン」を訪ねました。

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閑静な住宅街の中で
牧歌的な風を感じさせるショップ

スワローテイルガーデン

仙台市郊外の閑静な住宅地の中にあるスワローテイルガーデン。店先の小さな庭に設けられたはちみつ色の石積みが、異国情緒を放っています。この石積みは、オーナーである小野雄大さんがイギリスの石を英国式の工法で積んだ壁、ドライウォール。ほんの数メートルの壁ですが、コッツウォルズの風景を感じさせています。

石積み+ナチュラルな草花の
素朴な演出にほっこり

スワローテイルガーデンの石積み

石積みには、野に生えているような楚々とした草花が寄り添い、牧歌的な風景が演出されています。この本場さながらの石積みは、セメントを使わずに石を載せるだけという英国式工法で、熟練の技術と勘が必要。国内で最初に英国に渡って資格を取得した神谷造園(愛知県岡崎市)の神谷さんに学びながら、さらに本場でも研鑽を積み、技術を習得しました。現在国内でたった3人しか認定されていない難易度「レベル3」を保持しており、常に次なる高みを目指して技術を磨いています。

スワローテイルガーデン

ふんわりとした姿の草花を合わせて、石積みの重い印象を軽減。

スワローテイルガーデン
販売されている花苗。左上から時計回りに/細いラインが美しいカンパニュラ・ロツンディフォリア。/暑さ寒さに強く花期が長いセネシオ・ポリオドン。/クリムゾンレッドの花が、植栽のアクセントになるダイアンサス・クルエンタス。/花壇の縁などをカバーするのにぴったりのシレネ‘スワンレイク’。/ユニークな花形のエキナセア・パリダ‘フラダンサー’。/ボリュームはあるが軽やかな印象のアスチルベ‘エリザベス・ブルーム’。

庭の雰囲気を盛り上げる
数々のオーナメントも必見

小さなガーデンの雰囲気を盛り立てているのは、イギリスから仕入れた、重厚感のあるオーナメントやコンテナ類。大小さまざまのアイテムが見事に石積みと響き合いながら、軽やかな植物とバランスよく調和しています。

スワローテイルガーデン
雨に濡れるとよりいっそう重厚感が増し、庭の趣を深める大型のコンテナ。アジサイ‘アナベル’を合わせて、階段の上り口に印象的にレイアウト。
スワローテイルガーデン

植栽の中にひっそりと配したバードバスとカエルのオーナメント。全形を見せないのが自然な庭を造るポイント。自然体な庭づくりからは、小野さんの人柄や植物との向き合い方が感じられます。

スワローテイルガーデン
木の株元に何気なく置かれた、オーナメントの数々。植物に少し覆われた姿が、静かな時の流れを感じさせて。

子どもの頃から親しんだ風景が
現在つくり出す風景につながる

子どもの頃、庭に咲いた花を部屋に飾るのが大好きだったという小野さん。母方の実家は田畑に囲まれた茅葺きの古民家で、そんな風景に親しみながら育ちました。その頃の記憶が、現在抱く心の原風景になっていると言います。

スワローテイルガーデン

「園芸というより植物全般やそれを取り巻く環境に興味がありましたね」。子どもの頃から抱いていた「植物や園芸のことをもっと知りたい」という思いに押され、高校卒業後は、タイやマレーシアの農場を一年ほどかけて見て回り、帰国後は園芸の学校に入学。園芸学校では室内装飾・インドアグリーンを専攻していました。けれど、それだけでは飽き足らず、専攻以外にも面白そうなことは何でも参加し、学校が長期休みに入ると、校内の圃場やハウスで栽培の管理を自主的に行ったり、造園の講習にも頻繁に出席。さらに、都内のインテリアショップやアンティークショップも、時間をつくっては見に行くという生活で、あらゆる感性に磨きをかけていきました。

スワローテイルガーデン
ヨーロッパノブドウを絡ませた手づくりのシェッド。

園芸の学校を卒業した後は、通訳をしていた祖父の影響もあってニュージーランドに渡航した小野さん。ニュージーランドでは、古いモノや拾ってきたモノをさりげなく取り込んだり、自然な植栽を楽しんでいる人が多く、日本のガーデニングとは異なる‘無作為な庭づくり’に感動を受けました。毎日新たな刺激を受けるにつれ、「日本の庭園についてもきちんと学ぶ必要があるのでは?」と感じ始め、帰国後すぐに、鎌倉の造園会社に入社しました。

スワローテイルガーデン
シェッドの中には英国・KEW Gardenのカラフルな鉢やSpear & Jackson社のツール類を飾り、人の気配を感じさせて。

何世代にもわたって受け継いだものを大事にしながら、自身の趣味を反映させている家が多い鎌倉。土地柄、借景を生かした庭も多かったため、自然に見せる手法や剪定の技術を学びました。学校だけでなく、ニュージーランドや鎌倉で、あらゆることを吸収していったのです。

英国の香りが満ちあふれる
居心地のよい建物内

スワローテイルガーデン

東日本大震災をきっかけに、奥様の明日香さんと仙台に戻り、以前から考えていた園芸店を自宅でスタートさせた小野さん。住まい兼を兼ねたショップは、イギリスにあるような小さな家がコンセプトです。壁はコッツウォルズのハニーストーンに似た色を選び、屋根の傾斜は現地の角度を参考に。緑の木のドアを開けると、イギリスの香りがさらに強く味わえる世界へ突入です。

スワローテイルガーデン

室内はイギリスで買い付けてきたというツールや雑貨でいっぱい。暖炉のあるリビングのような空間は、誰かの住まいを訪れたような落ち着いた時間が流れています。

スワローテイルガーデン
無垢の家具が什器に用いられた、ぬくもりのある室内。こちらは、奥さまが作ったアクセサリーが並んでいます。

小野さんはイギリスに行くたびに、あちこちのディスプレイをチェック。特に、コッツウォルズのテットベリーという小さな村にある何軒かのアンティークショップがお気に入り。「ショップ巡りはとても刺激になりますよ。この村はリッチなエリアなので、置いてあるものがみんな素敵なんです」。

スワローテイルガーデン
左/古いミシン台の上に洗面ボウルを置いた小さな水場のコーナー。ブルーウィローのお皿を並べたラックにキッチン小物を吊り下げて、頭上を楽しくディスプレイ。右/ラックにキャニスターや紅茶、ゼリーの型を載せたディスプレイ。花をモチーフにしたライトが愛らしさをプラス。
スワローテイルガーデン
室内のディスプレイは明日香さんがメインでコーディネート。中央のテーブルは、おもてなしを意識したディスプレイ。クリスマスの時などは特に力を入れるので、いつもより豪華なコーディネートが楽しめます(撮影は6月)。
スワローテイルガーデン
コンパクトな白いマントルピースは使っていませんが、空間をより西欧的に見せています。飾り棚としても重宝。

父方も母方も、祖父が通訳だったことから、幼い頃から海外の人や物に親しんでいた小野さん。「イギリスのトラッドなファッションが昔から好きですね。あまり時代に流されずに、カッチリしたところが好きなんです」。そんな伝統を重んじるイギリス人は、おとぎ話や愛らしい動物が大好き。このショップでは、そんな文化も感じることができるアイテムがいっぱいです。

スワローテイルガーデン
左上から/イギリスの作家さんの動物のブローチ。/チャールズ皇太子のブランド‘HIGHGROVE’のオーナメント。/Jane Hogben社のマグカップ。ウサギ柄のカップは今年の新作。/スワローテイルガーデンのトレードマークとなっているハリネズミの人形。知人のぬいぐるみ作家さんが作ってくれた大切なマスコット。

スワローテイルガーデンの
ディスプレイあれこれ

季節ごとにチェンジするスワローテイルガーデンのディスプレイ。イギリスのウインドーディスプレイの雰囲気を意識して飾り付けをしています。その素敵の秘密をご紹介。ぜひ、ベランダのコーナーやもてなしのシーンづくりの参考にしてください。

【ガーデンアイテムは、明るく清潔感が漂うように】

スワローテイルガーデン

ガーデンツールや雑貨も泥臭い印象にならないように、清潔感を大切に一般的な雑貨と同じ感覚で飾ります。春や夏など開放的な気分になる季節は、明るいカラーにまとめて楽し気に演出しましょう。

【チェアも什器に活用】

スワローテイルガーデン

テーブルセットの一つであるチェアも立派な什器に。何を置いてもしっくりなじみ、ぬくもりのあるシーンが演出できます。居心地のよい空間づくりにぴったり。

【ドライフラワーもマストアイテム】

スワローテイルガーデン

なんだか物足りない──そんな場所にはドライフラワーを添えてみましょう。ニュアンスのある色味のものを選べば、落ち着いたシーンを描けます。ほんの少し添えるだけで、絵になるシーンに。

【冬ごもりの時季は、あたたかみを添えて】

スワローテイルガーデン

寒い時期は外の風景を取り入れながら、心もあたたまるシーンを演出します。野山に行けばいくらでもある枯れ枝は、ディスプレイで活躍する重要アイテムです。花瓶などに数本挿して、動物のオーナメントを添えれば、ォーカルポイントに。この年のクリスマスは、あたたかみのある上品なブラウンでまとめました。「冬の時期のピーターシャムナーセリのようなキラキラ感を取り入れています」。

スワローテイルガーデン

キッチンツールで
アットホームな楽しさを

おたまや木べら、キャニスターなどのキッチンツールは、空間に安心感やぬくもりを感じさせるのにぴったりのアイテム。クロスやお菓子などを合わせて、楽しく演出しましょう。

スワローテイルガーデン
スワローテイルガーデン

テーブルコーディネートは
つややかさと透明感が肝要

スワローテイルガーデン

大切な人をおもてなしする日は、テーブルセッティングに特に力を入れたいもの。上品にまとめるためには、次の3つが大切です。①色を揃えて少なくとどめること。②ガラスも使って透明感を出すこと。④植物をほどよい分量でさりげなく添えること。

スワローテイルガーデン スワローテイルガーデン

こだわりのスイーツ&ティーも並ぶ
夢のような空間

ショップ内には、「秘密の庭の小さな焼き菓子店」と名付けられた小さなスイーツ&紅茶コーナーがあります。スイーツは、近所で小野さんの母が営むレストラン、「Salon de Cafe MANNE (サロンド カフェ マンナ)」のもの。こだわりの材料で作られたタルトやシフォンケーキ、クッキーが並びます。そして10種類以上ある紅茶は、ドイツのロンネフェルト社のもの。香り高く深い味わいが、優雅なティータイムを演出してくれます。

スワローテイルガーデン
ブルーウィローのお皿に並ぶナッツのタルトやシフォンケーキ。素材の味わいと、ほどよい甘さがたまらない。
スワローテイルガーデン
スワローテイルガーデンのマスコットであるハリネズミのクッキー。ちょっとしたプレゼントにもピッタリ。
スワローテイルガーデン
紅茶は小野さんの妹が営むカフェ「Le cafe de Herisson」で扱っているものの一部が並んでいます。

小野さんのイチオシアイテム
「コッツウォルドストーン」

イギリスのカントリーサイドでよく見られる石積み。庭や牧場の仕切りとしてだけでなく、橋や川岸、建物の塀にも用いられています。イギリスでは景観条例が厳しいので、自然に溶け込むこの石積みが最適なのです。

コッツウォルドストーン

小野さんは庭の施工も手掛けているので、現在日本各地で石積みをしています。地場産の石を使うこともありますが、雰囲気を出したいエントランスなどには、やはりコッツウォルドストーンがおすすめです。

コッツウォルドストーン
左/イギリスで石積みの修行を積む小野さん。右/八ヶ岳にあるペンションのエントランスに積んだ石積みのウォール。
イギリスの石積み試験場
イギリスのケンダルにある石積み試験場。

イギリス人がこよなく愛する草花、お菓子、紅茶、おとぎの世界。それらすべてを取り込んで、トータルでガーデンライフを提案しているスワローテイルガーデン。イギリスのエッセンスがぎっしりと詰まった空間は、しばしの間旅行気分にさせてくれる本格的な演出です。ぜひ訪れてください。アクセスは、仙台市地下鉄南北線泉中央駅よりバスで約15分。

【GARDEN DATA】

スワローテイル ガーデン

宮城県仙台市泉区将監12-11-9-2
TEL: 022-725-6998
https://www.facebook.com/Swallowtail-garden-1426701067608819/

営業時間:11:00~18:00(冬季は17:00ごろ閉店)

休日:日曜日、月曜日

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

写真協力:スワローテイルガーデン

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