オールドローズの聖地と呼ばれ、貴重な野生種をはじめ、約1,300品種のバラが保存・育成されている千葉県佐倉市の「佐倉草ぶえの丘バラ園」。これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さんにとっても、思い出深く愛するバラ園です。今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第23回は、2019年春の感動の庭とこれまでの歩み、そして2019年9月9日に襲った台風による被害を緊急レポートします。

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異常気象でもバラの最盛期は見事に咲いていた

佐倉草ぶえの丘バラ園

2019年、今年の春は例年には珍しく、4月に寒い日が続いたので、バラの開花はどこも遅れるのだろうかと思っていたところ、5月に入ってからは一転、気温が高い日が続いたため、結局、開花は例年通りでした。ただ、今年はどこのバラ園へ行っても花がとてもきれいで、バラの先生方に聞いてみると4月の気温が低かったことから、つぼみから開花までがゆっくりだったのがよかったのではないかということでした。

2019年5月26日ファインダー越しの美しい花々

‘ラ・ノブレス’
‘ラ・ノブレス’

5月26日、今日はオールドローズの聖地「佐倉草ぶえの丘バラ園」で撮影です。天気は晴天。しばらく雨も降っていないし、気温はちょっと高めだけど空は真っ青で、これならきれいなオールドローズが見られるはずと気分は上々で一路佐倉へ向かいました。バラ園に到着したのは午後3時。まだ日差しは少し強いのですが、バラ園の入り口のアーチをくぐって、すぐ正面の「サンタ・マリアの谷」は西側が高い傾斜地になっているので、もうゆっくりと西側から影が伸び始めています。

佐倉草ぶえの丘バラ園
「サンタマリアの谷」。チャイナローズとハイブリッドギガンティアの収集で有名なイタリアのバラ研究家、ヘルガブリシェさんから寄贈された貴重なバラのコレクションが見られる。

僕が花を撮る時の基本は「日向と日陰の境目の花を狙う」こと。早速「サンタ・マリアの谷」へ下りて行き、まず始めはティーローズ、その次はチャイナローズという順序で撮影を進めてました。一番下はノワゼットと可愛い花ばかりが揃っていて、気分は早くもうっとり。きれいな光が当たっている花を見つけては「可愛いな〜」とつぶやきながらシャッターを切っていきます。

コンディションのよい花たちに出合える喜び

佐倉草ぶえの丘バラ園

たとえ可愛く咲いていても、日差しが強過ぎる花はひとまず後にまわして、次はバラ園の一番西側、奥の林の高木の影になっているエリアへ向かい、日本の野バラの辺りから影になっている場所に沿ってオールドローズのエリアを一回り。すると、まだ強過ぎる光の中で何輪も美しい花が咲いています。もう少し光が柔らかくなったらまた来るからねと心の中でつぶやいていると、顔見知りのボランティアさんに会ったり、バラ園の理事長である前原さんとすれ違ったりしました。

佐倉草ぶえの丘バラ園

花のコンディションが素晴らしいからでしょう。「今日が一番きれいですよ」「いい日に来ましたね」なんて皆さんと笑顔で声をかけてくれます。僕の好きなエリアの一つ「歴史コーナー」では、ガリカローズからダマスクローズ、ケンティフォリアローズ,アルバローズ…。オールドローズの名花にため息をついて、また「サンタ・マリアの谷」へ戻ります。先程は日差しの具合がよくなくて撮れなかった、可愛いノワゼットを撮ったり、ガーデンの中を光の美しい場所を探しながら、最後はオールドローズガーデンの入り口にあるアイアンのアーチ越しの宿根草のカットです。

佐倉草ぶえの丘バラ園
このバラ園ができた時から、バラの最盛期になると、このアーチの写真を撮り続けてきたお気に入りのアングル。今年の写真は格別にきれいだった。

ここの写真はこのバラ園ができた12年前から必ず撮る、いわばお決まりのカットで、この日はつるバラも左奥の宿根草のボーダーも5時過ぎのきれいな逆光に美しく輝いていました。今までの撮影の中でも一番、まさにベストタイミングです。西側の林に少しずつ隠れて行く太陽を見ながら、5分おきくらいに何回も何回もカメラのシャッターを切って、午後6時過ぎに林の向こうに太陽が隠れたのを確認して撮影を終了しました。

オールドローズを教えてくれたバラ園

オールドローズ ‘プティット・ドゥ・オランド’
‘プティット・ドゥ・オランド’

このバラ園の前身は「ローズガーデン・アルバ」という名称で、佐倉の隣の志津地区にありました。畑に囲まれた小さな、でも手作り感いっぱいの可愛いバラ園で、僕が初めてそのバラ園に行ったのはもう20数年も前のこと。ガーデニング誌『BISES』の八木編集長から「ローズガーデン・アルバ」でオールドローズの写真を撮ってほしいと頼まれたのがきっかけでした。当時の僕は、オールドローズのことは何も知りませんでしたが、「オールドローズ」という名前からして魅力的な、未知のバラの世界の入り口に立たせてもらったような。少しワクワクしてそのバラ園に通ったことを覚えています。

オールドローズ‘ポンポン・ブラン・パルフェ’
‘ポンポン・ブラン・パルフェ’

シーズンに入り、いざ撮影を開始すると、初めて見るオールドローズはどの花も小さくて可愛く、上品できれいなものばかり。そうしてすっかり魅了されてしまい、そのシーズンは何日通ったか分からないほどで、僕のオールドローズ愛はその時から芽生えて今日に至ると言っても過言ではありません。

「ローズガーデン・アルバ」の写真は、2019年の春亡くなられた故野村和子先生、前原克彦理事長の執筆で『憧れのローズガーデン』(主婦の友社)として平成18年に出版されました。

佐倉草ぶえの丘バラ園

台風15号による「佐倉草ぶえの丘バラ園」被害緊急告知

2019年9月9日深夜のこと。みなさんもニュースなどでご存知の通り、強烈な台風15号が千葉県を直撃しました。千葉県各地で停電などの被害が出ていることはテレビの報道でご存じのことだと思います。停電で水もない、電気もつかない。屋外は35℃だというのにエアコンも使えない。コンビニの棚には食べ物が何もないし、ガソリンスタンドも閉まっている。こんな不便な生活を5日間も続けていて、あと何日したら復旧するのかも分からない。そんな苦労の中にあるたくさんの人が千葉県各地にいると思うと、ただただ一日も早い復旧を願わずにはいられません。

台風15号
御巫由紀さんのフェイスブック投稿。

そんな中、9月12日朝、千葉県立中央博物館研究員の御巫由紀さんが、フェイスブックで佐倉市の「佐倉草ぶえの丘バラ園」の被害状況を写真付きで投稿してくれました。「佐倉草ぶえの丘バラ園」を主会場として平成24年(2012年)には「国際ヘリテージローズ会議2012佐倉」が開催され、平成26年にアメリカのグレート ロザリアンズ オブ ザ ワールド プログラムより殿堂入りバラ園の表彰。平成27年には世界バラ連合から優秀庭園賞を受賞した、オールドローズを中心に1,300品種のコレクションを誇る日本を代表するバラ園です。

そのバラ園で今、台風の強風でラティスフェンスが倒れ、大きく育った原種のバラが根こそぎ倒れてしまっています。台風発生以降は、ボランティアさん達が暑い中、必死で復旧作業に取り掛かっていますが、まだまだ長い作業になりそうです。御巫さんも寄付を募る方法などを考えてくださっているようです。

バラが好きな方、「佐倉草ぶえの丘バラ園」が好きな方、どうかご協力をお願いします。幸いにブッシュローズの被害は少なかったとのことで、10月にはまたこのバラ園でしか見ることのできないきれいなティーローズや可愛いチャイナローズ、ノワゼットローズがたくさん咲いてくれるはずです。

今年の秋は「佐倉草ぶえの丘バラ園」の秋バラを、ぜひ皆さんで見に行ってください。そしてその際に募金箱を見つけましたら、募金も宜しくお願いいたします。

<クラウドファンディングを開始しました>

佐倉草ぶえの丘バラ園を台風15号の被害から立ち直らせよう!

<公開URL> https://camp-fire.jp/projects/view/200167
<開始日> 2019年10月4日(金) <終了期限> 2019年11月24日(日)

Credit


写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ローズカレンダー』も好評。

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