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熱帯植物の楽園「熱川バナナワニ園」【松本路子の庭をめぐる物語】

熱帯植物の楽園「熱川バナナワニ園」【松本路子の庭をめぐる物語】

夏の花のイメージがあるブーゲンビレアやハイビスカス、バナナやマンゴーなど、熱帯地方に育つカラフルな植物グループ、熱帯植物が約5,000種も育つ「熱川バナナワニ園」。ワニやレッサーパンダなども飼育されている動物・植物を展示するレジャー施設で、夏休みのお出かけにもぴったりの場所。ここでは、世界各地を旅する写真家でエッセイストの松本路子さんが、静岡・伊豆熱川にある「熱川バナナワニ園」の見どころをご案内します。

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約5,000種の熱帯植物が育つ楽園

バナナワニ園
世界各地のパパイヤとマンゴーが実る温室。

静岡県、伊豆熱川にある熱川バナナワニ園。ここには16種類約130頭(交雑含む)のワニが飼育されており、ワニ園としての注目度が高い。またバナナの温室では、世界各地のさまざまな種類のバナナがたわわに実っている。

だが意外に知られていないのが、約5,000種の熱帯植物を見ることができるということ。豊富な源泉を有する熱川ならではの、温泉熱を利用した温室がいくつも連なり、熱帯植物の楽園ともいえる姿を見せている。

ブーゲンビレアとハイビスカスのアーチがお出迎え

バナナワニ園

熱川バナナワニ園は開園が1958年と、歴史ある植物園。本園のほか、1971年には分園もオープンした。本園は熱川の駅前で、駅から園の入り口まで徒歩1分と、地の利がよい場所にある。

八重のブーゲンビレア
八重のブーゲンビレア。

本園に入ると、まず熱帯花木の温室があり、ブーゲンビレアの巨大なアーチに迎えられる。周りには八重や珍しい色のブーゲンビレア、さらにさまざまな種類のハイビスカスが茂っている。

ブーゲンビレアとハイビスカス
ピンクと白のブーゲンビレアを背景にしたハイビスカス。

ブーゲンビレアやハイビスカスは、近年耐寒性のある種類の苗が市販され、関東以南では露地植えも可能だ。また観葉植物として、室内の窓辺で育てることもできる。温室でこうした花々に囲まれると、我が家でももっと熱帯植物を育てたいという気にさせられる。

ハイビスカス
ハイビスカス。

ヒスイカズラをはじめ、珍しい熱帯の花々

コチョウランと原種ラン
コチョウランと原種ラン。

園内の植物は世界各地から取り寄せられたもので、学芸員が旅先から持ち帰った貴重なものも多い。ランに関しても、お馴染みのコチョウランやカトレアのほか、原種ランが1,500種展示されている。

ヒスイカズラ
ヒスイ色が鮮やかな、ジェードパイン開花初期の姿。

開花期に人気を博すのがジェードパイン。ヒスイカズラとも呼ばれ、3月から5月にかけて、濃いエメラルドグリーンの房を何百と付ける。フィリピン原産のマメ科の大型つる性植物。「女王の耳飾り」とも称される、宝石のような花だ。東京都内では植物園の温室などでも見ることができるが、日本で初めて育成開花させたのがこの園だという。花数も桁外れに多い。

ドリアンテス・パルメリー
ドリアンテス・パルメリーのつぼみ。

本園中庭ではオーストラリア原産の多肉植物ドリアンテス・パルメリーのつぼみが5月の開花を待っていた。栽培29年にして2度目の開花だという。こうした珍しい花をはじめとして、ほぼ一年中見られる花々、季節ごとに出合える花、と見どころは尽きない。

コンロンカ
南西諸島や台湾原産のアカネ科の植物、コンロンカ。
テコマンテ・ヒリー
ニューギニア原産のノウゼンカズラ科のつる植物、テコマンテ・ヒリー。

水面を彩る水生植物

熱帯性スイレン
熱帯性スイレン
熱帯性スイレンの温室に咲く、純白のスイレン。姿も香りも楽しめる。

エレベーターに乗り、本園の上階に向かうと、熱帯性スイレンの温室に至る。常時60種ほどのスイレンの花が見られ、水面に映る花姿が優美だ。

オオオニバス
バナナや多彩な熱帯植物に囲まれた池にはオオオニバスが。

また大温室の池ではオオオニバスが直径2mを超す円形の葉を広げる。学名「ビクトリア・アマゾニカ(Victoria amazonica)」。イギリス女王の名を冠するにふさわしい迫力だ。夏休みには体重30kg以下の子どもに限り、水面に浮く葉の上に乗り記念撮影ができるイベントがある。オオオニバスは夜に開花し、刻々とその花姿を変えていく。昼間、その名残の幻想的な花を見ることができたらラッキーだ。

バナナ、パパイヤ、マンゴーの実り

バナナ

熱帯果樹の茂る温室群は分園に位置する。分園は本園から500mほど離れており、順次マイクロバスで送迎される。圧巻なのは、20種類のバナナが立ち並ぶ温室。

バナナの花と果実
バナナの温室。観賞用バナナのつぼみと、実ったバナナの大房。

バナナは木ではなく草なので、成長がきわめて早い。植えてから1年半ほどで収穫できるという。夏は特に収穫量が多く、温室で熟した珍しい種類のバナナを園内のフルーツパーラーで味わうことができる。

マンゴーとカカオ
マンゴーの温室(左)や、カカオが実る熱帯果樹の温室。

パパイヤとマンゴーの温室では、果実とともに花も見ることができる。パパイヤの花はクリーム色で楚々としている。熱帯果樹の温室では、チョコレートの原料のカカオの実、グアバ、ミラクルフルーツなどの果物が実っている。

パパイヤの花
パパイヤの花。
マンゴーの花
マンゴーの花。

熱帯植物を育てたい!

バナナワニ園
観葉植物の温室のヤシ(左)とシダの温室。葉が頭上に生い茂り、涼しげ。

園内を巡っていると、植物の息吹や温室特有の空気感に、言いようのない懐かしさを憶える。子どもの頃、私は父の仕事の関係で伊豆の熱帯植物園の敷地内にあった家で育ち、温室が遊び場だった。

ピンクと白のブーゲンビリア
ピンクと白のブーゲンビレアが頭上に広がる熱帯花木の温室。

その植物園は今存在しないが、ブーゲンビレアやハイビスカスの茂るさまは、いわば原風景ともいえるものだ。オオオニバスの葉の上に乗せられ、また夜半に家族総出で、ハスの開花を見に出かけたことなど、幼児期の記憶が鮮明に蘇る。

オオオニバスの葉
オオオニバスの葉。夏には子どもを乗せることができるほどに大きく、丈夫になる。

熱帯植物の持つ多彩な色や、珍しい形。果物の濃厚な味わい。今、そうしたものに心惹かれる。トロピカル体験をした熱川の旅から帰り、アイスクリームバナナという名前のバナナの苗木を取り寄せた。都心のマンションのバルコニーでの鉢植え栽培なので、実を得ることは難しいだろうが、バナナの葉が背丈ほどに繁るさまを想像して楽しんでいる。

バナナワニ園
温室から海が見え、遠くに伊豆大島の島影を望むことができるのも「熱川バナナワニ園」ならでは。

Information

熱川バナナワニ園

所在地:静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1253-10
TEL:0557-23-1105
http://bananawani.jp

アクセス:伊豆急行線「伊豆熱川駅」(東京から約2時間)下車、駅から徒歩 1 分

営業時間  9:00〜17:00(最終入園16:30)年中無休

入園料:大人1,800円、子ども(4歳から小学生)900円、4歳未満無料

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