トップへ戻る

一口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれのショップの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、私たちの想像力を刺激し、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、海外のインテリア雑誌に出てくるような洗練されたショップ、香川県の「GARDENS」を訪ねました。見どころを隅々までご紹介します。

Print Friendly, PDF & Email

海外のショップを訪れたような
感覚が楽しめるショップ

園芸店 GARDENS

高松市内中心部から数キロ離れた、のどかなエリアに店舗を構える「GARDENS」。白い建物につややかなカラーリーフが映える店構えが印象的です。

インテリアデザイナーの感覚で
イギリスと北欧スタイルの融合

オーナーは、ガーデニングショーで大賞を受賞したり、花のイベントで庭づくりを担当するなど活躍中のガーデンデザイナー、宮本里美さん。じつは、かつてはインテリアデザイナーだったというだけあって、宮本さんの提案する庭は、庭空間だけでなく、暮らし全般につながるコーディネートがなされています。

園芸店 GARDENS

ガーデンデザイナーになる前からイギリスに興味があり、たびたび渡英していた宮本さん。イギリスの庭文化に触れるにつれ、どんどんガーデニングにのめり込み、自宅でガーデンデザインのアトリエ兼、ガーデニングの店をオープン。次第に、宮本さんが提案するイギリスの雰囲気を漂わせるおしゃれなガーデニングが話題となり、全国からお客さんが集まってくるショップに成長しました。

園芸店 GARDENS

素敵なリビングでは、フラワーアレンジや寄せ植えなど、さまざまなワークショップが受講できます。海外のお宅を訪れたようなインテリアも見どころ。

園芸店 GARDENS
楽しい雰囲気の中で、テーブルコーディネートを習うこともできます。

ここ数年は、北欧のスタイルも多く取り入れている宮本さん。「日本では‘ガーデニング’と‘インテリア’は別のくくりですが、デンマークをはじめとする北欧では、家の内外の空間を区別せずに、‘リビング’と同じくくりとしてとらえているのですよ。私もそう思います」。そうした北欧人の感覚は、インテリアとガーデニング、どちらも手掛ける宮本さんの感性にしっくりきたのだそうです。

4つの空間で構成した売り場で
緑のある暮らしを提案

園芸店 GARDENS

住居兼アトリエの建物と一体化したショップは、連なる4つの空間で構成されています。まずは、事務所入り口でもある、グリーンで構成されたフォーマルな「エントランスガーデン」。そこを抜けると、花苗やガーデニング用品が並ぶ「苗・資材売り場」、その奥に、室内を彩る雑貨を扱う「インテリア雑貨売り場」、そして一番奥には、居住空間に面した「中庭」が広がります。

居心地のよさを追求した
リビングのような「中庭」

庭での暮らし方の提案が盛り込まれているのは、宮本さんの生活の場の一部でもある「中庭」。塀に囲まれ、プライベートが守られるこの場所には、宮本さんが考える居心地のよい空間づくりのヒントがたくさん隠されています。

園芸店 GARDENS

春~夏に緑陰を落とすシンボルツリーのエノキの下に、ベンチやオーナメントをレイアウト。ギボウシやクリスマスローズがつややかに育つ、しっとりとしたシェードガーデンです。

園芸店 GARDENS

アンティークなどの小物類は、テーブルの上にまとめてディスプレイ。樹木の緑を背景にしながら高低差をつけて飾ることで、それぞれの存在感が際立つコーディネートに。

園芸店 GARDENS

雑貨の軽重のバランスも絶妙で、あまり重い印象にしたくない場所は、透け感のあるアイアンの鳥カゴを使用。

園芸店 GARDENS オーナメント

平面的になりがちなウォールやリーフの茂みの中には、さまざまなタイプのオーナメントがあしらわれています。どれも植物に馴染んで、さりげないワンポイントに。

園芸店 GARDENS

雨の当たらない軒下は、インテリア感覚でガーデニングを楽しめる格好の場所です。宮本さんは、この軒下スペースに寄せ植えや植え替えをする作業台と飾り棚を設置。北欧のアンティークの作業台にモノトーンの雑貨を合わせていることで、大人っぽい雰囲気になっています。

園芸店 GARDENS
多肉植物類は軒下で管理。銅葉×ダークカラーの器のコーディネートが、青々とした庭を引き締めています。

小さな空間に凝縮させた
宮本さんセレクトの「苗&資材売り場」

どんなに忙しくても、自分の足で自身の感性に合った苗を探して回るという宮本さん。「直に生産者に会っていろいろ教えてもらわないと、お客さんに自信を持って勧められないですものね」。ブルーグレーのフェンスに囲まれた売り場には、厳選したリーフをメインとしたシックな苗がたくさん揃っています。

園芸店 GARDENS 苗売り場
日除け・雨除けの役割を果たしているブラックのパラソルまでも、絵になっています。
園芸店 GARDENS 花苗

リーフ類をメインとして使う宮本さんが、植栽に彩りを添える際に重宝する花苗をセレクトしています。並ぶ苗はどれも清楚で可憐。そして、ナチュラルな雰囲気。

園芸店 GARDENS 資材

資材コーナーもブルーグレーにペイント。コンテナ類は、宮本さんが北欧に足を運んで輸入したというものがほとんど。グレーや黒を基調にしたシックなカラーと美しいフォルムが、グリーンをおしゃれに見せてくれます。

園芸店 GARDENS オーナメント

空間の雰囲気づくりに大いに役立っているのが、あちこちに配されたイギリス製のオーナメント類。重厚な存在感がイギリスのアイテムらしい。

園芸店 GARDENS
春には小輪のバラが咲く下で、小さなオーナメントが愛らしく並んでいました。

緑のグラデーションが美しい
「エントランスガーデン」

ショップの入り口のアーチをくぐると「エントランスガーデン」に。常緑樹が青々と茂る空間が広がります。豊富な緑に囲まれていますが、高木以外はほとんどがコンテナ植え。見ごたえのあるポッティングガーデンとなっています。

園芸店 GARDENS
まず入り口正面には、スタンダードに仕立てられた大きな月桂樹のトピアリーが鎮座し、来訪者の視線をとめるアイストップに。その手前で園路が左右に分かれています。

〔通路右側のエリア〕

園芸店 GARDENS 園芸店 GARDENS

右側の園路は、奥の売り場に直接抜けることができる通路で、大小のポットで立体的にシーンを演出しています。

〔通路左側のエリア〕

園芸店 GARDENS 園芸店 GARDENS

左側は事務所の入り口に向かう園路で、コンテナやオーナメント、ベンチなどのアイテムをおしゃれにコーディネート。建物の白い壁にアイテムと植物のフォルムが際立ち、都会的な雰囲気が漂っています。

園芸店 GARDENS
ポットにプラスしてアイアンのオーナメントが大活躍。「デンマークの庭では、クラウン形(左)のものがよく置かれていますよ」と宮本さん。

インテリアのセンスが学べる
「インテリア雑貨売り場」

園芸店 GARDENS

室内の売り場では、宮本さんが北欧で買いつけてきた花瓶や器などの雑貨類が販売されています。ここはインテリアデザイナーとしてのセンスが盛り込まれた宮本さんならではの庭空間。生活のワンシーンを思わせるようなディスプレイが、海外のお宅に招かれたような落ち着いた雰囲気を感じさせます。

園芸店 GARDENS
売り場というよりも、うっとりする美しいインテリア空間。
園芸店 GARDENS

売っているものは、決して高価なものばかりではありません。素敵な飾り方の極意は、「使う色は絞って、バランスよくシンプルに」。

室内でもアイアンは
必須アイテム

園芸店 GARDENS
園芸店 GARDENS
上/逆光になるスペースも、それを逆手にとって活用。浮かび上がるキャンドルスタンドの愛らしいシルエットが楽しめるコーナー。 下/西欧のインテリアでよく見られる美術品のような人の像も、さりげなくレイアウト。大人っぽい知性を感じます。

誰でも真似できる演出のコツ

美しいシーンにあふれている「GARDENS」。ここでは、たくさんある中で誰でも真似しやすいコーナーを選んでご紹介します。お客様を招いたパーティーシーンや、いつものインテリアをワンランクアップさせたい人にオススメの小技です。

園芸店 GARDENS
左/2段のトレーに、ピンクや薄いブラウンのマカロンをハーブと合わせてディスプレイして、優雅さをアップ。「すぐに傷むものではないから、しばらくディスプレイとして活用しています」と宮本さん。右/キャンドルは宮本さんのマストアイテム。あたたかみのある灯りが陰影を生み、雰囲気をぐっと高めています。「キャンドルはやや深めの器に入れて使うと安心ですね」。
園芸店 GARDENS
光を透過し、反射するガラス類は、やはり欠かせないアイテム。左/落ち着いたシーンを演出したいときは、冷たい雰囲気を持つブルーのガラスが◎。右/シンプルなあしらいには、遊び心があるカップがオススメ。
園芸店 GARDENS
愛らしい彩りが欲しい時は、ハーブゼラニウム類がオススメ。いい香りも楽しめます。

どこもかしこも洗練度大!
上方もチェックして

うっかりテーブルや棚だけを眺めがちですが、このショップは隅の隅まで美しい演出が施されているので、ぜひチェックを。

園芸店 GARDENS

オレンジのあたたかい光を放つ、デコラティブでありながら素朴な印象も併せ持つ照明。消えてしまっているところも、ご愛嬌として受け止められる素敵さ。

園芸店 GARDENS
ブドウの房をモチーフとして作られた照明とビカクシダのハンギング。どこか異国情緒が漂っています。

メリハリのある抜群の展開力。
「ショップのまわり」もチェック!

北東の角地にあるショップは、東と北側が道路に面しています。それぞれまったく異なる演出が、ここにも。ショップの知識とアイデアの豊富さが表れています。

〔東側のエリア〕

白いモダンな建物をキャンバスに、木製の扉とクサツゲを植えたコンテナが映える、カッコいい住居兼ショップのファサード。海外の街の一角を思わせる風景。

園芸店 GARDENS
直線的なラインが多いデザインの中に、丸く刈られたクサツゲが効果的なアクセントになっています。
園芸店 GARDENS
背後からバラがつるを伸ばすコーナーに取りつけられたショップの看板。バラの時期はとびきり素敵なシーンになるそう。
園芸店 GARDENS
木の扉の向こうは、宮本さんのプライベートゾーン。ホスタやヘンリーヅタがつややかな緑を添えるスモールガーデンです。
園芸店 GARDENS
白花のつるバラが覆う、中庭にじかに入れる小さな扉まわり。クサツゲをシンメトリーに配し、グリーンのコントラストを効かせています。

〔北側のエリア〕

ショップの脇の通り沿いには、奥行き1mほどの植栽花壇が設けられています。建物が出っ張った部分からは高さ55㎝ほどのレイズドベッドに切り替え、それぞれ異なる趣の植栽が盛り込まれています。

園芸店 GARDENS
花壇側には、大きく育つスモークツリーやバンクシア、ジューンベリーなどの樹木が植わり、株元にはニューサイラン、メリアンサスなど個性的な色・形のリーフ類を木々の間を埋めるように植栽。
園芸店 GARDENS
春にはたくさんの草花が華を添えます。今年の春は、ブラックチューリップでシックにまとめました。

「GARDENS」宮本里美さんの
イチオシグッズをご紹介!

宮本さんのイチオシグッズは、デンマークのリビング雑誌『ISABELLAS 』とイギリスのJane Hogben Potteryのマグカップです。

園芸店 GARDENS

デンマークのカントリーリビング雑誌『ISABELLAS』。「この雑誌は特別おしゃれな人たちに向けたものではなく、一般的な女性がよく読む雑誌なんですよ。それなのに本当におしゃれでレベルが高いんです」と宮本さん。国内で扱っているショップは現在ここだけ。そして、もう一つのオススメは、宮本さんがイギリスで直接買いつけてきたという、パンジーやスノードロップ、小鳥のワンポイントが愛らしいJane Hogben Potteryのマグカップ。「お気に入りの雑誌とマグカップがあれば、外に出かけられない日が続いても、美しい誌面を眺めて楽しく過ごせますよ」。

「日々の暮らしをより美しいものに」という思いから、毎年イギリスや北欧に足を運び、年々洗練度を増していく宮本さんの「GARDENS」。これからは全国の住宅施工業者とタッグを組み、宮本さんが考える「GARDENSの庭づくり」を広めながら、子どもたちのための花育にも力を入れていく予定です。常に進化し続ける「GARDENS」にぜひ訪れてみてください。アクセスは、高松自動車道 高松中央I.C.から車で約5分。

【GARDEN DATA】

〒761-8075  香川県高松市多肥下町1539-7
TEL: 087-815-3883

http://gardens.co.jp/

営業時間:10:00 〜18:00/OFFICE 9:00-18:00

休日:毎週水曜日・第一木曜日

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

写真協力/GARDENS

Print Friendly, PDF & Email

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO