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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。新潟県「国営越後丘陵公園 香りのばら園」

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。新潟県「国営越後丘陵公園 香りのばら園」

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第17回は、新潟県長岡市の「国営越後丘陵公園 香りのばら園」のバラが咲くエリア。朝靄や夕方の光に照らし出される美しいバラの写真などとともに、撮影秘話をご紹介します。

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小山内さんの勧めをきっかけに撮影へ

イングリッシュローズの‘エブリン’(Evelyn)
レンガの柱いっぱいに咲くイングリッシュローズの‘エブリン’(Evelyn)。こんなに咲いているエブリンを見るのは初めて。辺りは濃厚な香りに包まれていた。

今月ご紹介する庭は、新潟県長岡市の「国営越後丘陵公園 香りのばら園」です。今から約8年前のことと記憶していますが、NHK『趣味の園芸』編集部から、「翌年の秋バラの特集用に秋バラのストックフォトを撮っておいてください」と連絡がありました。僕は千葉県に住んでいるので、「京成バラ園」に行くのが都合がよいと思いながらも、ふと「今回はまだ行ったことのないバラ園に行ってみようか」と思い立ちました。

アルバローズ‘ケニギン・フォン・デンマーク’
少し青みがかった葉と香りのよいピンクの花が美しいアルバローズ‘ケニギン・フォン・デンマーク’(Königin von Dänemark)。

そこで、当時よく仕事でご一緒させていただいていた京阪園芸の小山内健さんにオススメのバラ園を尋ねてみると、「越後丘陵公園がいいです! 品種も多いし、何より手入れが素晴らしいから」とのことでした。越後丘陵公園は、香りのバラのコンテストが有名なのは知っていましたが、それ以上のことは知りませんでした。小山内さんの勧めなら行ってみようと、教えていただいたガーデナーの石原久美子さんに連絡をしました。

絞りのバラ カマーユ
絞りのバラはいっぱいあるけれど‘カマーユ’(Camaieux)は格別美しい。

電話で簡単なご挨拶をして、何日頃がよいかなど打ち合わせをさせていただいた際、石原さんは僕の名前をご存じだったようで、「今井さんに来ていただけるなんて嬉しいです」と言ってくれたのです。僕も何だか嬉しい気持ちで電話を切ったことを覚えています。

初めての地とは思えない歓迎も思い出に

国営越後丘陵公園 香りのばら園
[2016.5/28 pm6:45] 「ばらと草花のエリア」のイングリッシュローズの園路。この年は特にイングリッシュローズの咲き具合が素晴らしく、カメラを構えてみるけどレンズは真西を向いてしまい、撮影に苦心した。結局午後7時近くなって奥の山に日が沈むまで待つことで撮れた一枚。2018年のポスターに採用された、忘れられない写真だ。

撮影当日、バラ園の入り口から連絡をすると、すぐにちょっと日焼けした石原久美子さんが笑顔で出迎えてくれました。早速、石原さんの案内で園内に入って行くと、小山内さんが言っていた通り、どのバラも凄い花数で咲いていたのです。さらには、奥の山が借景になっていて、とても気持ちのよいバラ園だなぁと思いました。

オールドローズ デュセス・ドゥ・モンテベロー’
オールドローズの中でも人気の高い名花中の名花‘デュセス・ドゥ・モンテベロー’ (Duchesse de Montebello)。

バラを見ながら歩いていると、作業中のボランティアさんとすれ違う際、「今井さん! ようこそいらっしゃいました」と声をかけてくださったり、紹介していただいたマネージャーの渡邊さんも「撮影に必要なことは何でもおっしゃってください」と言ってくださって、ついさっき到着したとは思えないほど、とても居心地がよく好感を持ちました。

国営越後丘陵公園 香りのばら園
[2013.6/10] 「ばらと草花のエリア」。この頃から手入れが行き届いていて、きれいだった。

今回の撮影は「秋バラ」がテーマですから、モダンローズを中心に撮影しつつ、一通りの撮影を済ませた後は、個人的に気に入ったオールドローズの‘粉粧楼’(フンショウロウ)に釘付け状態で撮影を続けていました。すると、バラの作業の合間に様子を見にきてくれた石原さんが「こんなにたくさん今井さんに撮ってもらえて、あなたたちは幸せね」なんて、‘粉粧楼’に話しかけたりして。おだてられた僕は、すっかり良い気分で越後丘陵公園のファンになっていました。

アルバローズ‘ブランシュ・ドゥ・ベルジーク’
あまり他のバラ園では見ることのない珍しいアルバローズ‘ブランシュ・ドゥ・ベルジーク’(Blanche de Belgique)。

撮影終了後に‘粉粧楼’を熱心に撮る僕の姿を見て思ったのか、「来年はぜひ春のオールドローズも撮りにいらしてください」と石原さんに言っていただき、「絶対に来ます!」と約束をして、その日は帰りました。

新潟のバラの最盛期、6月上旬に再び撮影の旅

国営越後丘陵公園 香りのばら園
[2018.6/4 am 5:00] マネージャーの渡邊さんが「明日は4時半から始めませんか?」と提案してくれたので、いつもより30分早く到着すると、バラ園は今まで見たこともない幻想的な光に包まれていた。夢中でシャッターを切った、お気に入りの一枚。

翌年は5月終盤、関東周辺の撮影が終わった頃から石原さんに連絡をして、オールドローズの開花情報を教えてもらいながら、撮影日を6月10日に決定。当日は夜中に千葉を出発して、5時過ぎにはバラ園近くの事務所まで到着しました。すると、お二人はもう準備万端。すぐにバラ園のゲートを開けてくださり、お目当てのオールドローズのエリアへと直行しました。まずは朝露に濡れた芝の上をゆっくり歩きながら、満開のオールドローズ、一つずつの顔を見ながら撮影に最適なバラを探していきます。

バラ ブラータ
小山内さんが「ここのブラータが日本一」と言う通り、本当に美しいブラータ(Rosa ×centifolia bullata)。

オールドローズエリアの中ほどまで進むと、ロサ・ケンティフォリア・ブラータが見事に咲いていました。このバラは、小山内さんが「日本一のブラータ」といつも言っているバラです。僕もブラータはいろいろな場所で見ていますが、キャベツのような葉っぱであまり花付きはよくないバラで、なかなかうまく撮れないと感じてきました。そんなプラータが、自然樹形で茂り、僕の目の高さで満開に咲いていたのです。美しく咲く花がいくつもあるじゃないですか!

黒赤系のバラ トスカニー・スパーブ
黒赤系のガリカローズの名花‘トスカニー・スパーブ’(Tuscany Superb)。初期のイングリッシュローズで、‘キアンチ’(Chianti)の交配親として使われたことでも有名なバラ。

「素晴らしいな」「どう撮ろうかな」と考えながら角度を変えたりしてブラータを見ていると、後ろのモスローズのコーナーでは、‘コンテス・ドゥ・ミュリネ’が咲いているし、隣にはダマスクローズの‘レダ’に‘イスパハン’、その向こうには、大好きなガリカローズの‘アラン・ブランシャール’に‘トスカニー・スパーブ’が‼️ いったい、どこから撮り出せばよいのやら…。

国営越後丘陵公園 香りのばら園
[2017.6/6 pm 6:30] 「ばらと草花のエリア」のジギタリスも以前のピンク系から大人っぽい色合いに変わって、さらにオシャレなエリアになっていた。

幸い、その日の朝は晴れたり、日中は曇ったり、夕方はまた晴れたりしたので、一日中ほぼオールドローズのエリアにいた気がします。この日以来、毎年6月上旬の僕のスケジュールは、越後丘陵公園の撮影日と決まりました。毎回、開花情報を石原さんに聞きながら、天気の良い日を選んで1泊2日の撮影です。初日の夕方19時までと、翌日の早朝5時からの撮影ですが、いつも僕のわがままに笑顔で応えてくれる渡邊さんと石原さんには本当に感謝しています。

ガリカローズ‘ベル・ド・クレーシー’
くすんだ薄い紫色の花がブルーイングしてグラデーションになる姿が美しいガリカローズ‘ベル・ド・クレーシー’(Belle de Crecy)。

2014年にはオールドローズの写真展を、そして2017年には僕の写真でバラ園のポスターも作っていただきました。美しいバラと素敵な方々との心地いい関係を思うと、本当にバラのカメラマンをしていてよかったなと思います。

バラ ‘クロッカス・ローズ’
‘クロッカス・ローズ’(Crocus Rose)。宿根草とイングリッシュローズのコラボレーションは、このバラ園の見所の一つ。

追伸:今回は僕の趣味の話で、オールドローズのことを中心に書きましたが、もちろん国営越後丘陵公園には、イングリッシュローズもハイブリッドティーも、フロリバンダも、どれも石原さんと公園スタッフの方々、そしてボランティアの方々の手入れによりきれいに咲いています。ぜひ、越後のバラに会いに行ってください。

併せて『花の庭巡りならここ! ロザリアンの聖地「国営越後丘陵公園 香りのばら園」』もご覧ください。

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