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憧れの【バラに包まれたロマンチックガーデン】大原邸に学ぶ、小さな庭のつくり方

憧れの【バラに包まれたロマンチックガーデン】大原邸に学ぶ、小さな庭のつくり方

誰もが夢見るパーゴラ×ピンクのバラに包まれたロマンチックな庭。まさに絵に描いたようなバラ咲く庭をつくったのは、ガーデンストーリー主催の「フォトコンテスト2022」で『編集長賞』を受賞した大原てるみさん。大原さんが、限られたスペースで試行錯誤を重ねて作り上げたこの庭は、2/3以上が鉢植えという驚き工夫が凝らされています。小さな庭でも憧れのバラ園を実現できる、その秘訣と作り方、栽培品種をご紹介します。

たくさんの人々に響き渡る
奏でるようなバラの庭づくり

レンガの住宅を背景に、ロマンチックなバラが咲き誇る大原邸。階段脇でこんもりと咲き群れるバラに玄関の壁を駆け上がるバラ、フェンスに絡むバラなど仕立て方はさまざまで、道行く人たちの目を奪っています。

ローズガーデン

こんもりと茂るバラが一体感をなし、ピンクを軸とした美しいグラデーションを描いている大原さんのガーデン。この家を建てたのは約22年前。今ではこんなにもバラに包まれた夢のような庭ですが、当時はあまりバラには興味がなかったという大原さん。玄関のエントランス部分と庭の端に小さな花壇を設けた以外はコンクリートを打ち、花壇に季節の草花とコニファーを植えて、バラは取りあえず加える程度でした。

ローズガーデン
大原さんのお気に入りのバラ、ほんのりグレーがかる波打つ花弁の‘カミーユ’と、コロンとしたピンクの中輪咲きの‘アントニオ・ガウディ‘が控えめながらも存在感を発揮。フェンスには‘レイニー・ブルー’、レンガのウォールには‘ファイル・フェン・ブラウ’が広がっている。
エントランスの植栽
丸いトピアリー仕立てのツゲ類や、ペチュニア‘アマゾナス’など季節の花を植えたコンテナで、エントランスに彩りをプラス。

「この家を建てた当時は下の子がまだ3歳で、植えたバラの世話が大してできませんでした。けれど、子育てに少し余裕ができ始めた頃からその魅力に取りつかれるようになり、徐々に本数が増えていったんです」

和バラ‘あおい’とデルフィニウム
和バラ‘あおい’のこっくりとしたピンクの花が、デルフィニウムの青花とともに、あでやかなシーンを描いている。

とはいえ植えることができるスペースはほんの一部。地植えできる場所にはバラと草花を植えつつ、それ以外ではコンテナを用いたり、コンクリートの上に土を載せたりして、失敗も繰り返しながら、バラ×草花で彩られる空間づくりにシフトチェンジしていきました。

コンクリートの上の花壇
左/コンクリートの上に土を載せてレンガで土留めした小さな花壇。 右/コンテナ植えと地植えを交えて庭を構成。

こんなにもバラに包まれた空間ですが、2/3以上が鉢植えというから驚きです。コンテナは大きくすると管理も大変なので、10号サイズ程度までにとどめています。「小さい庭に合った程よい大きさに育つほか、移動もしやすく模様替えも容易になります。植え替えは様子を見ながら部分的に行っています」。

バラの庭
北側の玄関から南側のメインガーデンをつなぐ通路からの眺め。突き当りにアーチを配し、アイストップの効果を生んでいる。

現在、約50種類ものバラが5月上旬から次々に開花。大原邸の最大の見せ場である南側のメインガーデンでは、中央の白いパーゴラにランブラーローズ‘メイ・クイーン’と‘群星’、つるバラの‘玉鬘‘が咲き乱れ、柱まわりに添わせたフェンスとともにロマンチックな空間を作り出しています。

パーゴラ下のテーブルとイス
パーゴラ下でくつろげるように小さなテーブルとイスをセッティング。この空間ができたことで、ガーデンの立体感や見栄えがぐっと高まり、過ごす時間が格段に増えたのだそう。この麗しい空間は、いまや大原家のシンボリックな風景になりました。
バラのパーゴラ

パーゴラの半分ほどを占めているのは、ピンクのランブラーローズ‘メイ・クイーン’。「花付きのよい枝はしなやかで、下を向いてこぼれるように咲いてくれるので、パーゴラにピッタリなんです」と大原さん。今年は昨年より多めに枝を剪定したので、パーゴラ下の空間が明るくなりました。「枝をたくさん残せば、花は見事だけど庭が暗くなってしまう。この分量が最適だということが分かりました」。

デルフィニウムの庭
デルフィニウムが美しかった2023年の庭。今年は苗の入手が遅れたため、成長が遅れている。
ガーデニング

「結婚当初に訪れた信州で草花に感銘を受けたのが、ガーデニングに目覚めたきっかけです。以前の家では、寄せ植えやハンギングバスケットづくりの方が好きで、好きが高じて雑誌のコンテストで入選したこともありました。しかし、今では我が家はバラでいっぱいに。ご近所のバラ好きやお庭をされる方々と情報交換をしたりして、お世話になりながら楽しんでいます」

自宅でピアノを教えている大原さん。バラが見えるリビングでピアノを弾くことは至福の時間で、生徒さんやそのご家族にも好評なのだとか。「音楽も庭づくりも分野は異なりますが、どちらも“どう作り上げるか”が大切です。音楽にはいろいろな音があり、音色や強弱のコントラストなどを意識して演奏します。庭づくりも、たくさんの色彩等が交じり合って流れを作っていく。曲を奏でることと庭をつくることは、同じなんだなと感じています」。

窓からの庭景色
リビングからの眺め。豊かなフリルが美しいカーテンと相まって優雅さにあふれている。「早朝が最もきれいに見えるんですが、1日が終わって夕方に庭に出る時が、一番ほっとする時間です」。

そこかしこにロマンティックなシーンに囲まれている大原さんの庭。バラがひとしきり咲いた後は、アジサイとヤマボウシの花にバトンタッチ。庭はしっとりとした趣に変化していきます。

庭の雑貨
雑貨のあしらいも控えめながら、アクセントとして効果的に配されている。

バラを美しく咲かせるためには?

バラが本格的に増え始めて10年あまり。バラ栽培については、故村田晴夫さんの本などのさまざまな書籍やインターネット、SNSなどを参考にしながら自分なりに試行錯誤を繰り返してきました。今現在も庭づくりは進行形で、良いと思えることはいろいろ取り入れていっています。

窓からの庭景色

バラを美しく咲かせるためには、冬に有機肥料+2~3回有機化成肥料を施しています。オールドローズは肥料をやりすぎるとボーリング(つぼみのまま開かない現象)しやすかったり、うどんこ病も出やすくなったりするので、冬だけに限定。害虫はなるべく捕殺にとどめ、どうしても取り切れないときや病気が出たときは、スプレーの殺虫・殺菌剤をまいています。

バラの庭

【フェンス使いのヒント!】

限られた空間を有効的に使うには、フェンス・トレリスの導入が欠かせません! 大原さんの秀逸なフェンス使いの数々をご紹介します。

バラのフェンス
玄関正面にはしっかりしたフェンスを3連使いで見栄えよく。絡んでいるバラは‘レイニー・ブルー’。
黒のアイアンフェンス
黒のアイアンフェンス
隣家との境には、華奢なラインが美しいアイアンフェンスを。黒色で統一し、バラ×クレマチスを引き立てる。絡むのはバラ‘マダム・アルディ’や‘フィリスバイト’、クレマチス‘マダム・ジュリア・コレボン’など。
黒のアイアンフェンス
南側のメインガーデンで使われているのは、手づくりの白い木製フェンスと数枚を並べたアイアンフェンス。絡んでいるのは、バラ‘ローラ・ダボー’ とクレマチス‘ブルー・ライト‘。
バラと白のアイアンフェンス
メインガーデンの入り口でガーデンを一望できないように、バラ‘ロココ’と共に目隠ししているのは、白いアイアンフェンス。メダルタイプのオーナメントを下げて、ワンポイントをプラス。
ウッドフェンスのディスプレイコーナー
はすかいに続く建物の壁を覆う白いウッドフェンスを設置し、雑貨類を合わせてディスプレイコーナーに。扉付きのミラーが空間を広く見せながら、きらめきを生んでいる。
フェンスのシーン
左/リビングの掃き出し窓の横の壁を、白い小さなフェンスでカバー。台に載せた鉢植えのバラは‘リナルド’。 右/テーブルセットの脇にも華奢な白いフェンスを立てて。ピンクのバラ‘レーヌ・デ・ヴィオレット‘とクレマチス‘カシス’を合わせて可憐なワンシーンに。
バラとフェンス
西側の細い通路もウッドフェンスで隣家から目隠しし、コンテナ植えでバラを楽しんでいる。勝手口前には細いフェンスを配置して、‘ジ・オルブライトン・ランブラー’ を誘引。奥のアーチには‘クープ・デペ’で華やかさを出して。

【スモールガーデンを彩るバラ&クレマチス】

ここでは、庭を彩る美しいバラとクレマチスの品種を一部ご紹介します。

‘オデュッセイア’、‘カーディナル・ド・リシュリュー’、‘シャルル・ド・ミル’、‘ファイルフェンブラウ ’
左から/‘オデュッセイア’、‘カーディナル・ド・リシュリュー’、‘シャルル・ド・ミル’、‘ファイルフェンブラウ’
‘ザ・プリンス ’、‘あおい’、‘フランボワーズ・バニーユ’、‘クープ・テペ’
左から/‘ザ・プリンス ’、‘あおい’、‘フランボワーズ・バニーユ’、‘クープ・テペ’
‘レイニー・ブルー’、‘ローラ・ダボー’ 、‘メイ・クイーン’ 、‘ファンタン・ラトゥール’
左から/‘レイニー・ブルー’、‘ローラ・ダボー’ 、‘メイ・クイーン’ 、‘ファンタン・ラトゥール’
‘ウイリアム・モリス’ 、‘ スペクタビリス’ 、‘ペッシュ・ボンボン’、‘ロココ’
左から/‘ウイリアム・モリス’ 、‘ スペクタビリス’ 、‘ペッシュ・ボンボン’、‘ロココ’
‘ジ・オルブライトン・ランブラー’、‘群星’、‘スノー・グース’、‘マダム・アルディ’
左から/‘ジ・オルブライトン・ランブラー’、‘群星’、‘スノー・グース’、‘マダム・アルディ’
‘ジョセフィーヌ’、‘カシス’、白万重、‘アラベラ’
左から/‘ジョセフィーヌ’、‘カシス’、白万重、‘アラベラ’

2022年フォトコンテストで編集長賞を受賞

受賞時にガーデンストーリーサイトでもご紹介した受賞写真は、パーゴラに優雅にバラが絡み咲く風景でした。

まるで一服の絵画を思わせる写真に心奪われました。パーゴラにつるバラが優雅に絡み、視線の先で隣家を隠すフェンスにも何種かのバラが咲き、手前ではラベンダー色のバラが枝垂れ咲いています。寒さが厳しい冬につるバラのトゲと格闘しながら剪定や整理をされて、この時を待ちわびて訪れたベストシーズン。庭主さんがブルーの椅子に座ってバラの香りに包まれ、至福の時間を過ごされている光景が目に浮かびます。太陽光を受け止めて透ける葉色と影の色、その中に浮かび上がる愛らしい花色。咲かせすぎず、目に心地よい風景づくりに好感を持ち、編集長賞に選ばせていただきました。取材に行くのが楽しみです!

編集長倉重

ガーデンストーリーでは、今年も、フォトコンテストを開催中です。詳しくは、下記の記事をご覧ください。

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