イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう
さまざまな花色で、春を明るく彩るチューリップ。世話いらずのこの球根花は、花壇でも鉢植えでも楽しめ、アレンジ次第でじつにいろいろな表情を見せてくれます。英国ナショナル・トラストの庭でも、チューリップは春の植栽に欠かせません。花の魅力を最大限に引き出す、イギリス流のアレンジ術をご紹介しましょう。
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々で見つけたチューリップの開花シーンをご紹介します。
目次
存在感ある鉢植えで魅せる
まずは、世界中のガーデナーが憧れるシシングハースト・カースル・ガーデンの、鉢植えアレンジ術を覗いてみましょう。
春のコテージガーデンにドーンと置かれているのは、明るいオレンジ色のチューリップが溢れんばかりに咲く銅製の大鉢。存在感たっぷりで、見る者の視線を集めます。このガーデンの春の植栽は、黄色とオレンジがテーマカラー。鮮やかなオレンジ色の花が、トピアリーの緑や鉢の緑青によく映えて、快活な春の景色をつくっています。
こちらは一転して、ニュアンスカラーの、優しいトーンの花景色です。鉢にしているのは、かつて家畜用に使われていた、古い石の餌入れ。イギリスの田舎ならではの発想ですね。温かみのあるレンガ造りの家壁にしっくり合う石鉢と、それにマッチする花色のチューリップをうまく選んでいます。
花壇に置かれたこちらの鉢植えは、素焼きの大鉢を使い、赤や紫の同系色の花色でまとめたもの。色とりどりの春の花が咲いて、野原のような、のどかで可愛らしい印象の花壇に大鉢を置くことで、面白味のある変化を生み出しています。
フォーマルガーデンの彩りに
イギリスの屋敷でよく見られる整形式庭園は、きれいに刈り込んだトピアリーや生け垣などで幾何学的な模様を描いた庭。その花壇は季節の花で彩られますが、花色が豊富なチューリップは、春の整形式庭園を彩るのにもぴったりです。
こちらは、ウェールズにあるエルディグのヴィクトリア朝様式の庭園。緑の球状のトピアリーと、赤い玉が浮かぶように連続するチューリップの花が、リズム感のある楽しげな景色をつくり出しています。
チェシャー州、ライム・パークのダッチガーデンでは、幾何学模様を塗りつぶすように、明るい花色のチューリップが咲き誇ります。
デザインの幅を広げる2色づかい
花壇に咲かせる場合、異なる2色のチューリップを組み合わせると、植栽のデザイン性がぐっと高まります。こちらは、コッツウォルズの名園、ヒドコートの花壇。先が尖り、反りかえった花弁を持つ、ユリ咲きの白と黄のチューリップが、きらめく星のように花壇を明るく彩ります。
次は、ウェールズ、ダフリン・ガーデンの、ビビッドなマゼンタ色とオレンジ色の組み合わせ。ライトグレーの抑えた色調で統一された敷石や植木鉢が、鮮やかな花色を引き立てる、現代的な印象のテラスガーデンです。カラフルな宝石のような色合わせには、子どもも思わずかくれんぼしたくなる楽しさがありますね。
一方、こちらはウェールズ、トレデガー・ハウスの整形式庭園。きっちりと刈り込まれたツゲの生け垣に囲まれて咲くのは、白と黒のチューリップ。可愛らしいというチューリップの一般的なイメージを覆す、モダンでシックな雰囲気の組み合わせです。
草原や森にナチュラルに咲き広がる
チューリップは、広い面積に咲き広がる様も素敵です。こちらは、ウェスト・サセックス州、スタンデンの庭。クロッケー用の芝生の脇にある土手に、芝草に交じってさまざまな色柄のチューリップが咲き広がります。キャンディが散りばめられたような、にぎやかな花景色は、花色や花姿が豊富なチューリップならではでしょう。
最後は、ケンブリッジにあるアングレジー・アビーのウィンターガーデンです。ヨーロッパシラカンバの林でピンクのチューリップが一面に咲き広がる様は壮観。色の少ない時期を明るくしようと、ガーデンデザイナーが計画した見事な花景色です。白く輝く樹皮とピンクの花色の組み合わせが、おとぎ話の世界のようにロマンチックですね。
さて、いろいろな見せ方のあるチューリップ、いかがでしたか。ぜひ、庭づくりのヒントにしてみてくださいね。
取材協力
英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
Credit
文 / 萩尾昌美
はぎお・まさみ/ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。早稲田大学第一文学部卒。神奈川生まれ、2児の母。
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