ガーデンダイアリーなどで活躍するカメラマンの福岡将之さんによる写真講座。今回は、山形県の蔵王スキー場の近くにあるペンション「アップル」の庭の写真を紹介します。
この庭では、山野草や、園芸種の植物でも自然な雰囲気を持つものが選ばれ、周囲の山々の自然に溶け込むような庭づくりがされています。周囲の景色を借景とする広い風景はもちろん、足元の小さな部分にも庭主さんの繊細なこだわりが見られる、魅力いっぱいの庭です。この庭を舞台に、花と庭の写真を撮るときの要点をお伝えします。

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花の存在感を際立たせる

絞りf14 シャッタースピード1/50秒 ISO感度200 手持ち

芍薬の花が見事に咲いていました。大きな芍薬の花は、ガーデンの中でも目立つ存在です。たくさん咲いている中で、とくに存在感のある花に広角レンズで寄って、株全体と、遠くの庭の様子も一緒に写し込んでいます。全体にピントが合うように被写界深度を深く撮りました。

流れているような構図をつくる

絞りf9 シャッタースピード1/125秒 ISO感度200 手持ち

アネモネ カナデンシスの白い花が、自然の草原のように咲いている庭の一角です。画面全体を花で埋め尽くすのではなく、白い花が左上から右下に広がるように、奥から手前に流れてきているように見える画面構成にしています。右上、左下に花がない部分があるので花が流れているように見える構図になります。

見下ろして全体の細部まで楽しめるように撮る

絞りf5.6 シャッタースピード1/200秒 ISO感度200 手持ち

フウロソウやナデシコ、ガンコウランなどが咲いています。高山の岩場を歩くと、このようなシーンを見ることができますが、自然の高山の花畑よりも、より植物の密度が高く感じられます。この構成の面白さを捉えるには、あまり技巧的にならずに、目線から見下ろすようにして、全体の細部まで楽しめるように撮ります。

庭のつくり手と同じ目線になって撮る

絞りf10 シャッタースピード1/60秒 ISO感度200 手持ち

砂利が敷かれた小道の両側に、明るい黄緑色のフウチソウ、ヒオウギアヤメ、アルケミラモリス、ギボウシなどが植えられています。花の量は少ないですが、葉の色や形の多様性を楽しめます。小道のカーブを左側に配置して、右側手前に紫色のアヤメの花をポイントとなるように入れて撮っています。庭を撮るときは、庭をつくった人の意図をくみ取って、その意図がより分かりやすく見える位置を探して撮ります。「ここから、このように見えるように」と、風景としてしっかりつくられた庭は、どこから撮ればいいか、現場で迷うことがありません。庭をつくった人と同じ目線になると、その意図が伝わりやすい写真を撮れると思います。

ポイントとして補色を入れると画面が引き締まる

絞りf8 シャッタースピード1/100秒 ISO感度200 手持ち

放射状に広がる黄緑色のクサソテツの葉の中に、紫色のヒオウギアヤメが咲いていました。中心から放射状に広がっているのが面白いので、シンメトリーに近くなるように自分が動き、クサソテツの株元が画面の中央になるように構図を決めて撮っています。黄緑色と紫は、色相環でいうと「補色」の関係になります。補色の色がポイントとして入ると、画面が引き締まります。

緑の階調とさまざまな葉の形を楽しむ

絞りf13 シャッタースピード1/15秒 ISO感度200 手持ち

ヤグルマソウの大きな葉の群生と、その周囲のスズラン、キンミズヒキ、ヤマブキ、シャクなどの小さく繊細な葉の構成が面白いシーンです。撮ったときには、花はほとんどありませんが、緑の階調、さまざまな葉の形を楽しめる庭のシーンとして撮影しました。

3本ぜんぶにピントを合わせて撮る

絞りf5.6 シャッタースピード1/160秒 ISO感度200 手持ち

オキナグサは庭の数カ所に生えていましたが、その中でも、3本がきれいに並んでいるところを見つけたのでローアングルで、マクロレンズを使って真横から撮っています。3本並んだ真横から撮ることで、3本にピントを合わせられます。また、綿毛の部分だけではなく、茎にも毛が生えているのでその様子がわかるように撮りました。

庭のシーンを自然の草原のように撮る

絞りf5.6 シャッタースピード1/125秒 ISO感度200 手持ち

地面すれすれの低い位置に花を咲かせるユリ「ヒメイズイ」と白い星のように咲くオオヤマフスマを組み合わせた庭です。ヒメイズイもオオヤマフスマも、寒冷地の草原や路傍で見かける花ですが、このように美しく組み合わさったシーンは、自然の中ではなかなか見られません。自然をよく観察して、さらにその美しさを抽出し強調したみごとなガーデンデザインです。さらに、手前の淡い色の丸い玉砂利との組み合わせも河原の草原のようで、ナチュラルにまとまっていました。このように設計された庭ですから、その構成がよくわかるように、手前の玉砂利も入れて、自然の草原の一角を見下ろすように撮りました。

地面すれすれのシーンを撮る

絞りf5.6 シャッタースピード1/100秒 ISO感度200 手持ち

前の写真で紹介したヒメイズイとオオヤマフスマの組み合わせを、まったく違うアプローチで撮りました。地面に寝っ転がって、マクロレンズで近づいて、ヒメイズイの花と葉と、オオヤマフスマの花の両方にピントが合うように撮りました。地面すれすれのシーンを撮るのは、体力を消耗しますが、ファインダーを覗いているときの感動はひとしおです。

室内の暗さが外の緑の色を引き立てる

絞りf5.6 シャッタースピード1/100秒 ISO感度200 手持ち

ペンションの玄関の中から見た庭。地面の石組みの陰影のグラデーションが魅力的でした。目で見ていると、庭も室内もそれぞれに適度な明るさで見えますが、このように明度差が大きい場合は、写真では両立は難しいです。暗い玄関から見る庭を撮るときに、外の庭に明るさを合わせると室内の影の部分は真っ黒になります。無理に明るく撮って、扉の内側を見せるよりも、この写真のように、室内を黒くすることで外の緑の色をより引き立たてる効果を選びます。

Credit

写真・文/福岡将之
写真家。1970年、長崎市生まれ。東京を拠点に、「ガーデンダイアリー」、「大成功のバラ栽培」などの書籍、雑誌、広告の撮影をおこなっている。 著書「portrait」「紫竹おばあちゃんの幸福の庭」「北鎌倉のお庭の台所」。インターネットで花と庭の写真撮影を、全国のアマチュア写真家に教えている。
「福岡将之の無料メルマガ写真講座」 http://laf-p.com

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