一度はこの目で見てみたい! 英国の春を告げる スイセンの花景色
日本で春の花といえば、真っ先に思い浮かぶのはサクラかチューリップ。しかし、イギリスの春は、なんといってもスイセンです。毎年3月から4月にかけて、英国ナショナル・トラストが所有する200余りの庭は、数多のスイセンに彩られます。それは、人々が待ち望む、春の花景色。園芸大国イギリスで愛される花、スイセンの魅力に迫ります。
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。
目次
スイセンが咲いて、春が来る
英国の人々にとって、スイセンは春の兆しを告げるスノードロップに続き、本格的な春の到来を知らせる花です。ウェスト・サセックス州、ペットワース・ハウスの森に広がる、鮮やかな黄色のカーペットは、花たちが春の歓びを爆発させているかのようです。
スイセンと冬枯れしない芝生がつくる鮮やかな黄と緑のコントラストは、ロンドンの公園でも見られる春の風物詩です。街角のフラワースタンドでもスイセンの花束がたくさん売られて、人々はその元気な黄色を目にする度に、どんよりとした灰色の雲に覆われた冬の日々がようやく終わった、と実感するのです。
春を彩る花木のよきパートナー
こちらは、ケント州にある世界的に有名な庭園、シシングハースト・カースル・ガーデンの果樹園。庭園の象徴である、古いレンガ造りの塔が背景にあることで、ロマンチックな雰囲気が漂います。写真のサクラや、英国で広く栽培されるリンゴなど、花木とスイセンの組み合わせは、英国の春の果樹園でよく見られるものです。
ウェスト・サセックス州にあるナイマンズのウォールガーデンで見られるのは、ピンクのマグノリアとの組み合わせ。優美で大ぶりのマグノリアの花と、フォーカルポイントとして置かれた石壺が、エレガントな景色を生み出しています。
園芸品種は2万7,000種!
チェシャー州、ダーナム・マーシーの森では、ミニサイズの可憐なスイセンが咲き広がります。ここに腰掛けてしゃべっていたら、森の小人にでも出会えそうな、ファンタジックな風景ですね。
英国のスイセン協会(ダッフォディル・ソサエティー)によれば、植物学者によって見解は異なるものの、スイセンの種類は40種余りで、亜種を含めると200種余り。そして、登録されている園芸品種の数は、なんと2万7,000を超えるとか。確かに、英国の園芸百科事典では、バラには負けるもののクレマチス同様に大きく扱われていて、スイセンの人気ぶりがうかがえます。
スイセンの花は13の形に区分され、中心のカップ部が大きいものや小さいもの、花弁が反り返っているもの、八重咲き、房咲きなど、さまざまです。色は、白、黄、橙で主に構成されますが、同じ白でも純白からクリーム色まで、黄色もレモンイエローからはっきりした黄色まで、色調のバリエーションが豊かです。花形と花色の組み合わせによって印象はがらりと変わり、その花姿はじつに多様。清楚な白花と可憐な黄花、あなたのお好みはどちらでしょう。
翌年も咲く「復活」の花
こちらは、コーンウォール州のコーティールにつくられた、スイセンの小径。こんな素敵な花の小径なら、どこまでも歩いていけそうですね。このメドウでは、春になると、250種のスイセンが次々と咲き継いでいきます。
咲き終わっても翌年また芽を出して咲いてくれることから、スイセンは復活を象徴する花でもあります。コーティールのヘッド・ガーデナー、デイビッドさんによると、その「復活」の秘訣は、品種を混ぜないで植えることと、日当たりをよくしておくこと、それから、花後は葉が自然に枯れるまで放っておくこと。スイセンはあまり手をかけなくても再び美しい花を咲かせてくれる、優等生なのですね。
最後は、ヘレフォードシャー州、ザ・ワイヤー・ガーデンのロックガーデンという、ちょっと珍しいシチュエーション。斜面に咲くスイセンの黄色に、反対色であるクリスマスローズの紫が映える、野趣ある花景色です。
さて、春を呼ぶスイセンの姿はいかがでしたか。この春スイセンを見かけたら、ぜひじっくりと観察してみてくださいね。
取材協力
英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
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