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バラの専門家がズバリ答える! 下枝がなくなってきたつるバラの剪定&誘引のテクニック

バラの専門家がズバリ答える! 下枝がなくなってきたつるバラの剪定&誘引のテクニック

冬はつるバラを剪定&誘引し、春の開花に向けて準備する大切な時期。みなさんが育てているつるバラは上手に誘引できたでしょうか? これまで、個人の庭や観光ガーデンなどで、あらゆるタイプのつるバラを剪定&誘引してきたバラの専門家、河合伸志さんに今回は典型的ではないつるバラの誘引事例を教えていただきます。

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年数が経過し、株元からのシュートが出にくくなってきたバラの対策

つるバラはフェンスやアーチ、オベリスクなどさまざまな構造物に誘引することで、立体的な演出ができる魅力的なバラです。苗を植え付けての数年間は、概ね教科書通りに誘引でき、コツさえ覚えればさほど迷うことがないのですが、年数の経過と共に品種によっては新しいシュートの発生が少なくなり、気がつけば“株元付近は枝がスカスカ!”なんて状態になってしまうことがあります。そこで今回は、株元付近の枝が少なくなってきた場合の剪定&誘引のテクニックをご紹介しましょう。

なお、典型的なつるバラの剪定と誘引に関しては
『バラの専門家がズバリ答える! 冬の大切な作業「つるバラの剪定」』と『バラの専門家がズバリ答える! 美しく咲かせるための作業「つるバラの誘引」』を参照してください。

シュートが出にくいつるバラの剪定&誘引テクニック

品種は、‘ZENtulavende’。‘まほろば’の姉妹個体で、試作中の品種。紫色のセミダブルの花を大房で咲かせます。

植えつけ5年後の株。年数の経過と共に株元からのシュートの発生が減少し、近い将来、株の下方がスカスカになってもおかしくない状況。この先がとっても不安です。

【対策その1】株元からの貴重なシュートは、下方にとどめおく

株元から出た貴重なシュートは、どんなに長く伸びていても上方まで誘引せずに、下方で留めるためにバッサリ短く切ります。写真は、下方、左側のアップです。丸印の場所が思い切って剪定した場所です。こうしておくことで、下枝がなくなりにくくなります。

【対策その2】上方で元気よく茂っている古い枝を思い切って短く切り詰め、下枝を発生させる

写真は、下方、右側のアップです。こちらも丸印が剪定した先端です。古い枝でも上部が元気よく茂っている枝はそれなりに力を蓄えているので、思い切って短く切り詰めると、新しい枝が下の方に発生します。

ここで注意したいのが、古い枝を短く切る場合、元気のよい枝であることが必須です。元気がない古い枝を短く切っても、そもそも力を蓄えていないので、切ったことをきっかけにその枝が枯れてしまうことが多いです。

株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case1

品種は、‘まほろば’。茶色と紫色が絶妙に混ざった複雑な色彩。極早咲きのカップ咲きの品種で、花つきがよいです。

植えつけ後5年の株。数年前より株元からのシュートはまったく発生していません。時々、古い枝の途中より中程度の発生は見られますが、ほとんどは古い開花枝。それでも毎年多数の花を咲かせています。

【対策】後生大事に古い枝を残す

写真は‘まほろば’の株元付近(剪定後)。あるのは過去数年間花を咲かせ続けてきた古い開花枝のみで、新しいシュートがまったく発生していないのがわかります。上方の枝に比べると、下方の枝は細く元気がないようにも思えますが、大切にし、剪定の際はこの古い開花枝を2~3節残して切ります。剪定後の姿は枝がゴツゴツした印象になりますが、成育期になればまったく気にならず、また花も問題なく咲きます。

株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case2

品種は、‘マニントン・マウブ・ランブラー’。ライラック色のポンポン咲きの可憐なランブラー。スパイシーな香りも心地よい品種。しなやかな枝が長く伸びます。

年数が経過しても、比較的シュートが発生しやすい品種ですが、今回の株は株元からのシュートの発生はなく、下枝も少ないです。ただし途中よりサイド・シュートが発生しています。

【対策】枝のしなやかさを活かして、サイド・シュートを思い切って反転させ下方に誘引する

古い枝の途中(ピンクの矢印)から長いサイド・シュートが発生したので、上部で反転させて(ピンクの丸印)下方へつるを下ろしています(緑の矢印の方向)。‘マニントン・マウブ・ランブラー’のような小輪系のランブラーローズなら、このようにシュートを下げても春には花を咲かせます。しかし、多くの場合下げた枝は開花後に弱っていき、反転させた付近(ピンクの丸印)より新しくサイド・シュートが発生します。したがって、下げた枝に花が咲くのは概ね1年限りのことが多いです。

株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case3

品種は、‘つるエンジェル・フェイス’。強い香りを放ち、波状弁の美しい品種。早咲きで花つきがよく魅力的ですが、つる性の性質が不安定で、ブッシュローズに戻りやすいです。

この場所に植えて5年が経過した株。古い枝の途中から発生したサイド・シュートはありますが、株元からのシュートはなく、年々下方が寂しくなってきています。

【対策】他人の力を借りる

左隣に植えてあるつるバラ‘スーパー・フェアリー’のシュート(ブルーの楕円印)をこの株の下方に誘引しました。この助っ人は別にバラである必要性はなく、クレマチスなどバラと相性のよい植物を選んでもよいですし、少し背丈の高い植物を株元付近に植栽すれば、空きスペースは十分に隠せます。

ここの剪定と誘引の事例は、すべて神奈川・横浜にある観光ガーデン「横浜イングリッシュガーデン」にて行われました。これらの株がどんな風に花を咲かせるのか、ぜひバラの最盛期が到来する5月に見に行ってみてはいかがでしょうか。

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