みなさん、つるバラの剪定・誘引は終わりましたか? つるバラ剪定に適した時期は、バラが休眠している冬。ちょっととっつきにくいイメージのある剪定を、バラの専門家、河合伸志さんに分かりやすく解説していただきます。まだ剪定が終わってない人は、今すぐチェック! すでに剪定が終わった人は、自分の剪定方法との違いがないか、来年に向けておさらいをしておきましょう。
目次
つるバラの剪定・誘引をする理由
つるバラに限らずバラは常に枝の新陳代謝を繰り返しながら生育する植物で、サクラやケヤキのように、1本の幹が年々太っていくような生育にはなりません(ハコネサンショウバラを除く)。通常、バラは新しい勢いのある枝(シュート)が発生すると、古い枝が衰えて枯れていくという枝の新旧の入れ代わりを繰り返しています。
野生のバラは誰も剪定・誘引をしていませんが、花を咲かせています。また、園芸品種であっても、剪定・誘引をせずに放置した株が花を咲かせているのを見かけることがあります。従って、つるバラは剪定・誘引を行わなくても、花を咲かせることが可能であるといえます。
では、なぜ剪定・誘引作業が必要なのでしょうか? それは、作業をすることによって得られるメリットがあるためです。
バラの剪定 メリット・デメリット
剪定・誘引作業を行うことによって得られる主なメリットとしては、次の4つが挙げられます。
①古枝を除去し、新枝を成長させることで、新陳代謝をスムーズにすることが可能になります。
②小枝や枯れ枝が除去されるため、株内部の蒸れが解消され、病害が発生しにくくなります。また、薬剤散布の際に、満遍なく薬剤を噴霧することができるようになります。
③小枝や枯れ枝が除去されることで、鑑賞上の美観が得られます。
④誘引によって株形を調整することにより、美しい姿で花を咲かせることができます。
一方で、弱った株や老株に強い剪定を行うと、そのまま枯死に至ることがあります。つまり、枯れ枝や枯れつつある枝を切り取る以外の剪定作業は、バラにとっては基本的には養分のロスを生じるというデメリットであるということが分かります。
以上よりポイントとなるのは、作業によって得られるメリットとデメリットがあるので、その接点をいかに見極めるかということです。
そのことを踏まえて、つるバラの剪定・誘引をしてみましょう。今回は、つるバラの剪定方法を解説します。
剪定するバラ:‘伽羅奢(がらしゃ)’
四季咲き性が強く、淡い桜色の一重の小輪花をたくさん咲かせるバラ。枝はしなやかに2m程度伸長します。
つるバラの剪定
つるバラの剪定・誘引は、バラの休眠期に行います。関東以西の平地であれば、12月10日過ぎから1月いっぱいぐらいまでが剪定・誘引の適期。適期よりも早く行うと、十分に休眠していないため、水分が多く残っている枝が折れやすく、また剪定・誘引後に芽が伸び始め、年末以降の本格的な寒さでその芽が傷んでしまうこともあります。
一方で、遅くなってから作業を行うと、すでに芽が動き始めていることが多く、誘引作業の途中で芽を欠いてしまうことがあります。芽を欠いてしまうと、一季咲きの品種は花が咲かなくなってしまいます。また、芽の伸長は養分が集まりやすい枝先などから先に始まるため、芽が伸び始めてから丁寧に誘引をしたとしても、元の方の芽は遅れて伸び始め、枝の元と先で開花が揃わなくなります。つるバラの剪定にベストな時期は、12月下旬~1月15日頃です。この時期を目安に剪定を行いましょう。
用意するもの
・剪定ばさみ
・トゲに引っかかってもよい服
・革手袋
・ゴミ袋(ビニール袋は破れやすいので、切った枝は新聞紙などで巻くか、紙袋に入れてから捨てるのがオススメです)
剪定の手順
- 株全体の姿が分かりやすくなるよう、残っている葉があれば取り除きます。多少葉があっても、全体の姿が分かるのであれば、ほかの作業と並行して取り除いてもOKです。
- 誘引紐(麻紐)を外します。誘引紐は古くなると切れてしまう恐れがあるので、毎年誘引するときに付け替えましょう。
- 枯れ枝を付け根から切ります。枝までうどん粉病に罹病してしまった場合は、枝が灰色になっていて枯れ枝かどうかの見分けがつきにくいことがあります。そのような時は、先端を少し切ってみて、断面が緑色を帯びた色ならば生きています。
- 今年度に伸びた枝のうち、花の咲かない細い枝(弱小枝)をつけ根から切ります。枝を切るときは、枝の根元から落とし、切り残しがないようにしましょう。
※弱小枝の太さは、品種によって異なります。大輪系の品種は鉛筆程度の太さ、中輪品種は割りばし程度、小輪品種は竹串程度の太さが良い花が咲く枝の目安で、それ以下の太さの枝が弱小枝に該当します。ただし、同じ大輪品種でも枝が太い品種と細めの品種とがあるので、その点は加味する必要があります。また、生育が悪い株の場合は、贅沢を言える状態ではありませんので細い枝も大切に残します。逆にとても生育が旺盛の場合は、目安の太さを格上げして判断するとよいでしょう。
今回剪定する‘伽羅奢’は花径4㎝ほどの小輪品種で、弱小枝の目安は竹串サイズ以下の枝になります。 - 枯れ枝と弱小枝を切り取った結果、古枝だけになってしまった部分を切り取ります。新しい枝とは今年度に伸びた枝を、古枝とは前年度以前に伸びた枝を指します。両者の区別は、枝の表面(新しい枝よりも古い枝の表面は荒れている)やトゲ(古い枝のトゲは灰色がかって乾燥したような質感)で判断します。また、新しい枝は節々に赤い小さな芽があるのに対し、古い枝は赤い芽が少なく一部は黒色になっているので、これも判別のポイントになります。この枝の見極めは難しいところで、これができないと適切な剪定ができないので、よく観察しながら覚えていきましょう。
ここまでの作業で、作業前と後の違いを比べてみましょう。誘引前に、さらに剪定作業を進めます。
- 今年度に花を咲かせた枝は2~3節(芽と芽の間を1節と数え、5~15㎝程度と品種によって異なる)残して切り詰めます。
- 分枝したシュートの処理をします。下の写真のように、シュートの先が複数に分かれて分枝している場合、本数を制限してもよいですし、枝が少なければ全部残しても構いません。状況に応じて判断しましょう。今回は十分に成育しているので、分枝した細い枝を落とします。
シュートの本数を整理するときは、必ず芽を確認しながら作業します。分枝点に芽がある場合(写真右)は芽を残して付け根で切りますが、芽がない場合(写真左)は1節残して切り取らないと、その箇所に花が咲かなくなってしまいます。 - 枝先の未熟な部分や花がらなどは、20~30㎝程度切り落とします。
これにて誘引前のバラの剪定は完了!
次回は、剪定後の誘引作業を解説します。
Credit
アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真/3and garden
撮影協力/横浜イングリッシュガーデン http://www.y-eg.jp
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