観葉植物を枯らしてしまう多くの原因は、冬越しです。この冬越しをうまくできる人は、観葉植物を育てるのが上手ともいえるでしょう。近年は暖房事情などがよくなっているので、コツをつかめば意外と楽に管理できます。この記事では、観葉植物を上手に冬越しさせるための基本知識やポイント、耐寒性のランク付けによる種類ごとに適した置き場所、冬の基本的な管理や耐寒温度別種類リスト、Q&Aまでをプロが詳しく解説します。
目次
観葉植物の冬越しのための基本知識
観葉植物の原産地は、多くが熱帯や亜熱帯の暖かい地域です。日本で観葉植物を育てる場合、まず障害になるのが冬の寒さです。冬越しさせるには、最低温度を保持することが第一の重要なポイントになります。
また成長が止まる冬は、春から秋の時期とは育て方も大きく変わります。年中同じ管理をすると枯れてしまうので注意してください。
種類によって違う、観葉植物の越冬温度
種類によって原産地はさまざまで、耐えられる最低温度も異なります。耐寒性の強さによって置き場所や管理方法が変わるので、育てている観葉植物の耐寒性を正しく把握することが大切です。
適切な置き場所を決めるには?
最低温度を保持するには、育てている場所を知ることが重要です。地域や建物などによって温度の下がり方が大きく異なりますし、また同じ家の中でも、暖房機器の有無や部屋の中の位置などによって最低温度が変わります。
具体的に室温がどの程度下がるか把握することも大切です。特に日の出前の早朝は、気温が最も低下します。
自宅の最低温度を簡単に把握する方法は、最高最低温度計の利用です。
育てている植物の越冬温度と、置き場所の最低温度が分かれば、適切な環境で育てることができます。
観葉植物に適した環境・置き場所
温度が最も下がりにくい場所が、寒さに弱い観葉植物の置き場所に適します。
晴れた日の昼の窓際は、冬の室内の中で一番暖かい場所ですが、夜間は冷え込みやすいので、寒さに弱い種類の観葉植物の置き場所には適しません。特に窓際から周囲30cm付近までの位置は、外気温と同じくらい温度が下がることがあります。暖房を入れる居間など、長時間人が過ごす部屋の中央付近が最も暖かい場所です。
室内の置き場所のポイント
- 暖房が入る居間のような部屋で、窓から離れた中央付近の高い場所は最も温度が下がりにくい。
- 風呂場も浴槽の余熱で温度が下がりにくく、最も暖かい場所の可能性が高い。
- 窓際は最も温度が下がりやすい。
- 人がいることの少ない部屋や玄関は温度が下がりやすい。
暖房器具の近くは要注意
エアコンやストーブ、ファンヒーターなどの暖房機器の近くや、暖かい風が当たる場所は避けてください。高温と乾燥で、すぐに観葉植物が衰えて、枯れてしまいます。
一方、オイルヒーターや床暖房などが設置されている部屋は全体がゆるやかに温まり、湿度も下がらないので安全です。
高温性の観葉植物の置き場所 最低温度10~15℃
保温を第一に考えます。家の中でも温度が最も下がりにくい場所に置いてください。最低温度が保てないときは、室内用簡易温室(ワーディアンケース)や水槽の中などに入れて保温すると理想的です。
株が小さく数も少ない場合は、保温マットの利用もおすすめです。比較的安価で維持費もかかりません。マットの上に植物を置き、ビニールをかけ、夜だけ段ボールなどで囲うと効果的です。
水やりをできるだけ控えることで耐寒性が強くなります。サンセベリアは断水することができます。茎が多肉質のアグラオネマやディフェンバキアは葉が傷むほど水を控えると、中温性の植物程度に耐寒性が強くなります。
高温性の観葉植物の例
アグラオネマ/アロカシア(アマゾニカ、グリーンベルベット)/アンスリウム/カラテア/クロトン/サンセベリア/ディフェンバキア
中温性の観葉植物の置き場所 最低温度5~8℃
葉を美しく保つには、10℃以上を保つようにしてください。0℃付近までの温度に耐える種類もありますが、株がひどく傷むことが多いです。窓際付近に置くのは、できるだけ避けると安全です。窓際に置いた場合は、夜間に厚手のカーテンを引くか、強い冷え込みが予想される日だけでも部屋の中央付近に移動するとよいでしょう。
アナナス類は、葉の付け根部分に水が溜まります。溜まった水は、温度が低下した際に冷えて株が傷むので、株を逆さにして水を抜いてください。
中温性の観葉植物
アナナス類(グズマニア/エクメア/ネオレゲリア)/コーヒーノキ/スパティフィラム/ドラセナ/パキラ/ビカクシダ/フィカス(ゴムノキ)
低温性の観葉植物の置き場所 最低温度0~3℃
寒さに強いので、室内なら置き場所をほとんど選びません。玄関やトイレなど、家の中でも温度が下がりやすい場所で育てるのにも適しています。日光を好む種類は、窓際付近に置いてください。霜の降りにくい関東南部や暖地では、軒下などで越冬する場合があります。
アジアンタムやオリヅルランは、寒さによって地上部は傷みますが、地下部はよく生き残って春に再び葉が展開します。
低温性の観葉植物
アイビー(ヘデラ)/アジアンタム/オリヅルラン/カンノンチク/クワズイモ/シェフレラ/ユッカ/ワイヤープランツ
冬の観葉植物の管理
水やり
ほとんどの種類は乾かし気味に管理します。具体的には、鉢土が乾いてから、さらに数日待ってから水やりします。水を控え気味に管理することで、耐寒性も強くなります。多肉植物など、種類によっては断水します。
水やり後は、受け皿に溜まった水はすぐに捨ててください。そのままにすると過湿の原因になります。
温かい場所で育てている低温性の種類などが生育している場合は、通常のように鉢土が乾いてから水やりします。
湿度の保持
暖房時は特に乾燥するので、霧吹きなどで葉水を与えて湿度を維持してください。特に湿度を好むシダ類などには重要な作業です。
加湿器とサーキュレーターで湿度を保ちつつ空気を循環させるようにすると、人間だけでなく植物にも快適な環境になります。
肥料
成長の止まる冬には肥料を与えないのが原則です。
弱った株に肥料を与えると、さらに根を傷めて逆効果になります。活力剤は与えてもよいですが、商品によっては、肥料入りの活力剤があるので注意してください。
手入れ
室内で育てている観葉植物も、しばらくたつうちに葉にホコリなどが付着します。1カ月に1回以上はチェックも兼ねて葉を布などで拭いてください。
観葉植物が冬に傷んだときの対処法
冬に観葉植物が傷む主な原因は、寒さに当たったか、水のやりすぎです。まずは以前より暖かい場所に移動し、水を控えてください。
根腐れなど手入れが必要な場合は、春の5月中旬以降、十分に暖かくなってから行います。
ほかにありがちな失敗としては、肥料を与えたなどです。
よくある冬の観葉植物Q&A
Q 冬にサンセベリアが枯れる寸前です。原因と対処法は?
サンセベリア・トリファスキアタは、冬は断水して越冬させます。以前からよく育てられる定番の種類ですが、サンセベリアの中でも寒さに弱いので注意してください。
また成長の止まる冬には肥料は与えません。弱った株に肥料を与えると、さらに根が傷んで枯れてしまいます。
上写真の鉢植えは肥沃な培養土で大きめの鉢に植えてありますが、これはよくありません。水もちのよい用土や大きすぎる鉢は過湿になりやすく、冬以外も立ち枯れしたり、生育が遅くなります。
対処法としては、鉢から根鉢を出して土を落とし、新聞紙などでくるんで暖かい場所で春まで保存してください。暖かくなった5月頃に、排水のよい用土を使い、1~2回り小さな鉢に植え替えます。
Q 寒さに当たったせいか、アグラオネマの葉が枯れてしまいました。対処法とその後の管理は?
アグラオネマは、寒さによる被害を受けやすいので要注意です。上写真の株は新芽付近が生きているので、復活は十分可能です。
まず以前より暖かい場所に移動してください。暖房をつける居間などの中央付近の高い場所などは、温度が下がりにくいです。また夜間に段ボールや発泡スチロールなどの箱を被せるのも効果的です。冷え込みが予想される日だけ箱を被せても効果があります。
その後の管理は、枯れた葉は除去して水やりをできるだけ控えます。アグラオネマは茎が多肉質なので、葉が傷むほど水やりを控えても大丈夫です。水を控えることで、5℃くらいまでなら耐えることができます。ただし、葉に美しい模様が入る品種や高価な種類などは性質が弱いので、簡易温室や水槽などでさらに保温したほうがよいでしょう。
観葉植物の上手な冬越しのポイント まとめ
- 最低温度を把握して適切な場所に置く。
- 温度が下がりにくい部屋の中央付近の高い場所は、寒さに弱い種類に最適。
- 水を与えすぎない、受け皿に水をためないなど過湿に注意。
- 肥料は与えない。
- 暖房機器の近くや、風が当たる場所に置かない。
現在流通している多くの観葉植物は、環境適応性が高く比較的育てやすい種類が多いです。以上のポイントを押さえれば、上手に冬越しができるでしょう。
美しい葉や個性的な株姿、綺麗な花が咲くものなど観葉植物にはいろいろな種類があります。お気に入りのものをたくさん見つけて、素敵なグリーンライフを満喫してください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -
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