植物にも過酷なこの盛夏。バラを育てている人はこの時期「何をするべき」か「何もしなくてよい」か、手入れに迷っていませんか? 神奈川の自宅で多数のバラを育てている「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、秋バラが咲くまで成長を助けるバラの手入れについて教えていただきます。
目次
一番花、二番花が終わった盛夏の庭
例年より花付きがよかった今年の二番花の季節を終え、暑さで外に出るのも気がのらず、バラのお世話も大変な時期ですね。
今年の春の一番花の開花時期は、例年より高温続きで前倒しとなり、枝が徒長して花が小さめでした。その後、梅雨の水分を補給したからか、一番花の開花が今ひとつ満足いかなかったことを挽回してくれるかのように、たくさんの花が咲いてくれました。
庭のバラがこの夏を乗り切ってくれるように、管理のポイントを5つご紹介します。
盛夏のバラの管理
ポイント1.水やりをしっかり行う
外に出るのがおっくうになるほどの酷暑ですが、ずっと外にいるバラや植物たちは、降雨が少ないと、たちまち水分不足になってしまいます。
植物は、根から土中の水分を吸い上げ、葉の表面にある気孔から水分を水蒸気に換え、空気中に放出する蒸散作用を行っています。
夏に、葉が黄褐色になったり、落葉するなどの症状が起こるのは、水分不足によるものが大きな原因です。落葉して葉がなくなってしまえば、光合成ができなくなり、株に大きなダメージを与えてしまいます。
なるべく青々とした葉を付けた元気な株でいてもらうためにも、水分不足にならないよう管理することが大切です。
早起きは大変ではありますが、朝の涼しい時間を心がけて、 バラの株元にたっぷりと水を与えましょう。量の目安は、1株につき心で5つ数えるくらいです。また、ハダニ防止や高温軽減のため、葉水も行っています。
盛夏のバラの管理
ポイント2.害虫から守る
この時期に一番多いバラにとっての害虫被害は、コガネムシによるものです。コガネムシや一回り小さなマメコガネの成虫は、バラの花や葉を食害します。また、土中に卵を産み付け孵化した幼虫は、バラの白根を食害します。
まず、成虫が飛来するこの季節に、成虫を捕殺することが大切です。
夏のバラの花は小さく、あまり綺麗ではありませんし、コガネムシなどのエサになりますので、思い切ってつぼみができたら摘んでしまうのも予防策の一つです。
花を咲かせたい場合は、咲き始めたらなるべく早く枝をカットし、室内で咲かせて楽しみましょう。また、コガネムシのほかに、ゴマダラカミキリ、ハダニ、ゾウムシなどにも、引き続き注意が必要です。
盛夏のバラの管理
ポイント3.鉢植えの管理
根が鉢の中でパンパンに張っている状態になるのも、この時期です。
鉢底から根が出ていない場合は、一回り大きな鉢に、根を切らないよう(根鉢を崩さないよう)植え替えます。これを鉢増しといいます。
鉢底から根が出て、地面の中に伸びてしまった場合は、植え替えや鉢増しはできません。
なぜなら、バラは根の先端の根毛の部分から水分や養分を吸収しているからです。今、根を切ってしまったら根毛を多く失うことになり、水分や養分を吸い上げる力が落ちて、たちまち元気がなくなってしまいます。ですので、鉢底から根が土の中に伸びていて鉢が持ち上がらないような株は、植え替えや鉢増しの作業は、今ではなく、冬まで待って行います。
鉢増しした株も、植え替えない株も、どちらも盛夏はたっぷり水を与えましょう。
盛夏のバラの管理
ポイント4.残す枝と取り除く枝の管理
この時期は、徒長した枝もあれば、枯れた枝もあるなど、成長ステージはさまざまです。残す枝と、取り除く枝を見極めて、対処を行うことも大切です。
まず、枯れ枝を取り除きましょう。茶色になって枯れた部分は、全て取り除きます。枝が枯れるのは、この時期よくあることなので、気落ちしたりせずに、株をリフレッシュさせましょう。
上写真は、つる性のバラ、ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ(ツクシイバラ)の枝で、明るい緑色のシュートが上に向かって伸びています。このシュートは来年、花を咲かせる枝になりますので、大事に扱います。
このまま支柱を立てて、上を向かせたままの状態で支柱に結束しておきます(高い位置で手が届かず作業が大変な場合は、枝の先端を少しカットして短くしても大丈夫です)。その場合、冬に結束を外して枝を横に倒し、フェンスやトレリスなどに誘引します。
もし、ブッシュ状の株の枝が、このように1本伸びてしまっていたら、他の枝と同じ高さに揃えてカットしておきましょう。
上写真のように枝の先端がホウキ状に数本に分かれている場合は、エネルギーがそこに集中してしまっていますので、ホウキ状のすぐ下の位置でカットして取り除きます。
盛夏のバラの管理
ポイント5.適切な除草を行う
この時期になると、地植えでも鉢植えでもバラの株元で生えてほしくない草が大きく茂ってしまっている場合もあるかと思います(もちろん、こまめに除草に気を配り、そんな状態にはなっていないという方も多くいらっしゃることでしょう)。
草は小さなうちに抜き取るのが基本です。もし現在、バラの株元で大きく茂ってしまった草がある場合、引き抜いて取り除こうとすると、草の根とバラの根を一緒に切ってしまうことにつながるかもしれません。バラはいま根を切ってしまうと、前述した通り、ダメージが残る可能性があります。
ですので、もし草が、バラの株元で大きく茂ってしまった場合は、引き抜かずに、浅くスコップやカマを入れて、バラの根を傷付けないように取り除きます。
今やるべき手入れで秋バラ開花のご褒美が待っています!
9月になったら秋の花を咲かせるために、中旬頃までに夏の元肥や夏剪定をしますが、それまでの期間は、今回ご紹介した盛夏のバラの管理5つのポイントを心がけながら、バラと共に盛夏を無事乗り越えていただきたいと思います。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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