夏の花の定番ペチュニアですが、近年の異常な暑さに加え、花を傷めるスコールのような雨は、ペチュニアにとって新たな課題です。そんな厳しい条件下でも、きれいに花を咲かせ続ける耐暑性、耐雨性に優れた品種も登場しています。連載「1鉢で華やか!寄せ植えブーケ」第9回目は、過酷な日本の夏にも美しく咲くペチュニアの最新情報と、カラーリーフと合わせたおしゃれなペチュニアの寄せ植え5例をご紹介します。
ペチュニアとは

ペチュニアはナス科の植物で、本来は多年草ですが、寒さに弱いため日本では基本的に一年草として扱われます。夏の暑い時期もよく咲き、花期が長く品種のバリエーションも豊富なので夏のガーデンには欠かせない存在。草丈は15〜30cm程度で、多くのものは這うように広がってこんもりとした丸い花の茂みを作ります。鉢植えにすると、縁からあふれるように咲きとても華やかです。
耐暑性、耐雨性に優れたペチュニアの登場

しかし、近年の日本の夏は、夏の定番花ペチュニアにとっても過酷。40℃を越す異常な暑さや打ち付けるような強い雨によって、きれいに咲いていた花がダメになってしまった、という残念な思いをしたことのある人も少なくないのでは? でももうがっかりしなくて大丈夫。耐暑性はもちろん、耐雨性にも優れた品種が次々に登場しています。黄色のペチュニア‘ビーズニーズ’はその一つ。近年の厳しい夏の課題をクリアし、ジャパンフラワーセレクションでベスト・フラワー賞、グッドパフォーマンス賞を受賞するのみならず、アメリカのオール・アメリカ・セレクションでも最高品種賞のゴールドメダルを獲得。なんと、ペチュニアがこの賞に輝くのはコンテスト90年の歴史において、‘ビーズニーズ’でまだ2度目。約70年ぶりに、あまたの優れた草花のなかでNO.1に輝いた、いわば奇跡のペチュニアなのです。

オレンジ&ブラウンのグラデーションがおしゃれな‘ゆうやけこやけ’も同様に、耐暑性・耐雨性に優れた品種。春から秋まで絶え間なく花が咲き、長く楽しませてくれます。写真は9月末の様子。まだまだつぼみが上がり最盛期が続きます。
繊細な色彩のペチュニアも続々

暑さにも雨にも負けない「強さ」の追求の一方で、ビジュアルの進化も目を見張るペチュニア。単に色幅の多さだけでなく、一輪のなかで複雑かつ繊細な色合いを展開するものが増えています。
- 白い花弁にラズベリーピンクがにじむような‘ピンクサファイア’。ツンと尖った小ぶりの花弁が幾重にも重なり合う愛らしい花です。
- 色鉛筆でふわっと色をつけたような素朴な味わいのある‘花ことば’。ピンクから次第に淡い紫へと花色が変化し、株全体がグラデーションになります
- 花弁の重なりが多く目を惹く‘花衣(はなごろも)’シリーズの新色「瑠璃静(るりしずか)」。淡い藤色に白い覆輪が入る小ぶりの八重咲きです。
- ライムグリーンにプラムカラーの花心、花弁の縁がわずかに藤色がかり、ひらひらとひるがえる優雅な花姿はこれまでにない個性。来春、デビューするか否か、お楽しみの品種です。
ペチュニアとカラーリーフの寄せ植え実例5選
同系色での色合わせ

単体でも見どころ満載のペチュニアですが、色の複雑性ゆえに寄せ植えの花材としてもこれほど楽しいものはありません。例えば、発売以来不動の人気を誇るペチュニア‘カプチーノ’。アイボリーの花弁にブラックの花心がおしゃれな花ですが、このような複色の場合、ペチュニアを構成するアイボリーとブラックの2色で他の草花を色合わせすれば、美しくまとまること間違いなし。ここではブラックリーフのミカニア・デンタータと白い粒々の花が愛らしい斑入りコデマリ‘ピンクアイス’を合わせました。

このペチュニアは日本の育種家、花芳さんの八重咲きペチュニア‘ジュリエット’「モダンホワイト」。なんとも複雑でユニークでおしゃれな花を主役に、同系色のアジュガとミカニア・デンタータを合わせ、鉢もアンティークカラーのものを選びました。

こちらはシックなベルベッドレッドのペチュニア‘スイートサンシャイン’「バーガンディ」を主役にした寄せ植えです。このペチュニアの花色は、一口に「赤」と言えない深みのある色です。花色をよく観察してみると、赤紫や黒みがかった赤色などで構成されています。それをヒントに、他の植物を選び出します。カラーリーフにはミカニア・デンタータとシルバータイムを。シルバータイムは葉の色に目が行きがちですが実は茎の色が赤紫色で今回の寄せ植えの主役のペチュニアの花色と重なります。さらに赤紫色の花のアゲラタムを組み合わせました。植物の色は1色に見えて、よく観察するとこのように複数の微妙な色で構成されていることがよくあります。寄せ植え植物のセレクトは、まずは主役となる花を決め、それをよく観察するのがポイント。組み合わせのヒントは花が教えてくれます。

補色の植物セレクト

‘花衣(はなごろも)’シリーズの「瑠璃静(るりしずか)」を主役にした寄せ植えです。淡い藤色の花と組み合わせたのは、オレガノやルーなど、ライムイエローの葉を持つ植物。紫と黄色は補色ですが、補色もお互いの色を引き立て合うため相性のよい組み合わせです。花を縁取る白い覆輪に合わせて、斑入りのバコパやアジュガ、シルバータイムを入れて繊細な雰囲気もプラスしました。

白と紫のコントラストが鮮やかな‘花衣’シリーズの「藍染」を使った寄せ植え。基本的には先ほどと同様の補色の組み合わせですが、それに加えスッと茎を伸ばすガウラやサルビア‘ブルーチル’、ユーフォルビアなど白っぽい花をプラス。風に揺れる風情が涼しげな一鉢に仕上げました。
ペチュニアの寄せ植えを長く美しく保つコツ

八重咲きの品種は雨に当たると花が傷みやすいため、軒下など直接雨がかからない場所に置くとよいでしょう。春から植えていたものは、品種によって梅雨頃には茎が伸びて中心部が空洞化してくることがあります。そうなったら一度、株元10〜15cm程度を残してカットします。これを「切り戻し」といいますが、しばらくすると再び花が上がってきて、こんもりきれいな形に茂ります。また、花を咲かせ続けると株は体力を使うため、定期的に液肥などを与えて栄養を補給してやりましょう。切り戻し後も液肥を与えると、分枝が促進されます。
魅力的な品種があふれるペチュニア。いろいろ試して、夏のガーデンも楽しく美しく彩ってくださいね。

寄せ植え制作&アドバイス/難波良憲
八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。気になる方はぜひアカウントを覗いてみてください→https://www.instagram.com/m_b_flora_official/
Credit
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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