【半日陰の寄せ植え】ヤマアジサイとインパチェンスの寄せ植え

住宅街では、一日中、日当たりに恵まれた庭はなかなかありません。一日のうち数時間だけ日が当たる場所を半日陰と呼びますが、そうした場所でこそ美しさを発揮する花が、ヤマアジサイとインパチェンス。花のスペシャリスト、エム・アンド・ビー・フローラの難波良憲さんに教わる連載「1鉢で華やか! 寄せ植えブーケ」第8回目は、半日陰で美しさを発揮する寄せ植えをご紹介します。
目次
小ぶりな花が寄せ植えにぴったりのヤマアジサイ

住宅街の庭では、建物に日が遮られて、一日中日が当たっている庭はなかなかありません。一日のうち数時間だけ日が当たる場所を半日陰と呼びますが、そうした場所で美しく映える花の代表がアジサイ。なかでもヤマアジサイは、古くから日本の山野に自生してきた花木で、気候に馴染み育てやすく、ガーデニングビギナーにもおすすめです。豪華な西洋アジサイとは異なり、野趣あふれる花姿は趣があり、株が小型のものは小さな庭や寄せ植えにも向きます。今回の寄せ植えの主役には、そんな小型のヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’を用いました。

ヤマアジサイは根の生育が旺盛で、生育期には水を盛んに吸い上げるので、鉢はある程度大きさと深さがあるもののほうが乾きにくく向いています。


半日陰できれいに咲くインパチェンス

寄せ植えでは、同じ環境を好む草花を選ぶ必要がありますので、同様に半日陰を好む草花をヤマアジサイの株元に入れました。インパチェンスはアジサイと開花期が同じで、半日陰を好むので、組み合わせるにはぴったり。ここではバラのように花心が渦巻いて咲くインパチェンス‘カリフォルニアローズ フィエスタ’のアップルブロッサムをセレクト。やさしい水色のヤマアジサイによく似合うふんわりしたパウダーピンクの花です。ほかに斑入りコデマリ‘ピンクアイス’、黒い葉が美しいヒューケラ、銀葉のラミウムを合わせました。すべて半日陰を好む植物です。

花と花の間に入れる葉ものがポイント

植栽のレイアウトは、中央にヤマアジサイ、次にヒューケラ、鉢縁にいくに従い草丈の低い植物を配置しています。ヤマアジサイは小ぶりの品種を選んでいますが、植えた直後のインパチェンスは草丈が15〜20cm程度なので、間にやや空間が生まれます。その空間をちょうどよくつなぐのが、黒っぽい葉色のヒューケラ。ヤマアジサイとインパチェンスの花と花の間には、ヒューケラのようなリーフプランツを入れるのがポイントです。花を引き立ててより美しく見せる役目を果たします。インパチェンスは生育するに従い、こんもりと茂って草丈も高くなってきます。
インパチェンスで半日陰を華やかに!

インパチェンスは初夏から秋までよく咲き、半日陰の庭を彩る夏の一年草の代表です。草丈は10〜40cmで、こんもりと茂るので、花壇の前方や寄せ植えの素材として重宝します。花径3〜4cmの愛らしい花は株を覆うようにバランスよく咲き、主役にも脇役にもなるので、使い勝手も抜群。ヤマアジサイとの寄せ植えでは準主役として共演しましたが、上の写真のように主役としても活躍してくれます。ここでは、バラ咲きの人気品種インパチェンス‘カリフォルニアローズ フィエスタ’を主役に、周りに半日陰を好むラミウムやアジュガを植栽しました。
日陰の庭に人気の「バラ咲き」 ‘カリフォルニアローズ フィエスタ’

とりわけバラのように優雅な花姿で人気のインパチェンス‘カリフォルニアローズ フィエスタ’は、寄せ植えの主役としても存在感を発揮します。この品種は「暑さに強いバラ咲きインパチェンス」として、20年を超えて愛されている人気品種で、カラーバリエーションも豊富。春から晩秋まで長く咲き続け、日陰を鮮やかに彩ってくれます。
半日陰の寄せ植えのお手入れと注意点

植え付け時に緩効性肥料を用い、追肥として緩効性肥料を与えるか、定期的に液肥を施しながら育てます。水は表面の土が乾いたら、鉢底から流れ出るまでたっぷりとあげましょう。暗い場所はナメクジやダンゴムシも好み、花や葉を食べられることがあるので、専用の忌避剤などを用いて対策をしておくとよいでしょう。もし薬剤を用いたくないなら、ナメクジは夜行性なので夜のパトロールで捕獲しましょう。
インパチェンスのお手入れ

長く咲かせるために、植え付け時に緩効性肥料を用い、追肥として緩効性肥料を月に1度与えるか、定期的に液肥を施しながら育てます。株が大きくなって間のびしてきたら、7月頃に地上部を15cm程度残して、刈り込みます。刈り込んだ後、追肥を与えることで、もう一度きれいな姿で花を楽しめます。一年草なので晩秋に花が咲かなくなってきたら寿命です。
ヤマアジサイのお手入れ

ヤマアジサイは5〜7月に開花し、晩秋には落葉しますが、枯れたのではなく休眠しているだけです。翌春には再び新芽を出して生育し始めるという、一度植え付ければ長い期間にわたって毎年の開花を楽しめる、コストパフォーマンスの高い植物です。10月頃には翌年のための花芽がつくので、花が終わったら9月までには剪定し、液肥を与えましょう。枝にある節を3〜5個残し、節の上2〜3cmのところでカットして切り戻し、樹高を低くします。古くなっている枝があれば、根元から切り取って新しい枝に更新します。

日当たりに恵まれない庭でも、花を選べば華やかに空間を彩ることができます。今回ご紹介した半日陰を好む植物の寄せ植えは、玄関ポーチなど庇があり陰ができる場所に最適です。暗くなりがちな場所に華やかな寄せ植えがあれば、パッと明るく美しく見えますよ。
Credit
寄せ植え制作&アドバイス / 難波良憲

八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。気になる方はぜひアカウントを覗いてみてください。
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写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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