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バラの専門家が解説! 秋バラがまだ開花中の鉢植えのメンテナンス方法

バラの専門家が解説! 秋バラがまだ開花中の鉢植えのメンテナンス方法

あなたが育てているバラは今、どんな調子ですか? 鉢でバラを育てている人にとって晩秋から初冬は「鉢替え」のシーズンです。春の開花までに株を回復させるためには、関東以西の平地の場合、遅くても1月中旬(可能であれば12月末)までに作業を終わらせましょう。ここでは初夏から栽培をスタートした1年目の鉢替えバラの生育診断と鉢替えのポイントを、バラの専門家、河合伸志さんに教えていただきます。

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8号鉢以下で栽培中のバラは
1年に1度、鉢替えが必要

【現状】園芸店で9月ごろ、株全体に花がよく咲いていたミニバラ‘ロズマリン89’を購入し、一度花が終わったので一回り大きい鉢に植え替えて12月になりました。このまま次の春まで何もしなくてよいのか。それとも植え替えが必要なのか。まだ花が咲いているので、咲き終わるまで待っていればいいのか分からない株。

河合さんの診断

やや肥料が切れていたためか秋バラの花数は少ないものの、おおむね順調に生育していると思われます。鉢が小さく、このままさらに1年栽培すると、さまざまな要因で生育が悪くなると想定されるので、鉢替えをオススメします。

根鉢を崩して新しい用土で植え付ける作業を「鉢替え」といい、その間隔は8号鉢以上の大鉢(直径28㎝以上)なら2~3年に1度が目安ですが、それ以下の鉢の場合はできるだけ1年に1度行いましょう。鉢替えの際には根が切断されますが、春の生育開始時期までに十分に根が再生するためにも、作業は早めに行い、理想的には12月末くらいまでに、遅くても1月中旬までには行います(関東以西の平地の場合)。

用意するものは、バラ専用用土、元肥、鉢底石(鉢底のサイズに合わせて量を調整。ここでは軽石をネットに入れたものを1つ使用)、剪定鋏、シャベル、熊手。

秋バラが残っている株は
まず花がらをすべて切る

花を切り落とす理由は、この後に行う鉢替えで根鉢を崩す際に根が切断されて一時的に給水能力が低下するため、水を多く必要とする花(新芽がある場合は新芽も)が残っていると株が脱水症状を起こす危険性があるためです。一方、堅く成熟した葉は、脱水症状を起こす可能性が低く、むしろ根の再生を助けるので残します。また、この時期はすでに株が休眠に向かっており、この後、落葉する兆候があるため(葉の色から判断)葉は取らなくてもよいでしょう。

枯れた枝は切る

枯れた枝を残したままでは見た目にもよくないので、切り落とします。本格的な剪定には時期が早く、十分に休眠していないこの時期に剪定を行うと養分のロスが多くなるので、これ以外の枝は切らずに残します。なお、枝が長く作業しにくい場合は、適度に切り詰めてから行っても構いません。

鉢から根鉢を取り出す

鉢から抜いた根鉢は鉢底まで根が回り、細かな新しい根が出ています。鉢底石を取り外して固まった根をほぐし、同じ鉢に再び植え込むために、古い土を落として新しい用土が入るスペースを確保します。

固まった根をほぐす

まずは熊手などで表層をよく崩して、期せずして生えているオキザリスやカタバミなどの抜きにくい雑草や雑草の種子などを用土ごと取り除きます。次にサイドや底の根の塊を崩すようにかき取ります。この時に根が切れますが、気にせずに進めましょう。写真右くらいの状態まで根がほぐれたら終わりです。鉢替え前の根鉢の3~5割程度崩しても問題はありません。

植え込む鉢の準備

これまで使っていた鉢に再び植え込む場合、根鉢を抜いた鉢は一度水で洗います。見た目にもきれいになり、雑草の種子なども洗い流されます。鉢底に網を敷いたら鉢底石を入れます。

新しい用土の準備

バラ専用用土に元肥を混ぜて植え込み用土を準備します。今回は、天然素材をブレンドし、有効菌も豊富な培養土『バイオゴールドの土』に、天然有機肥料の『クラシック元肥』をブレンドしました(両資材ともに販売元:タクト)。この用土は水はけがよいのに水もちにも優れ、デリケートな植物の栽培にも向く用土です。

鉢に株を植え込む

根鉢の大きさに合わせて鉢底石の上に用土を入れたら、植えた後のバランスや見た目をよくするために、鉢の縁の高さに台木の接ぎ口がくるよう中央に株をすえます。

根の周囲にある程度用土を入れたら、割り箸や棒などでつつき根の間にしっかり土が入るようにします。今回は根鉢をかなり崩したので、根の間に新しい用土がしっかり入るように意識してまんべんなくつつきましょう。ウォーター・スペース(灌水の際に水を溜める部分)を残すため、鉢の縁から3〜5㎝ほど下まで土を入れたら完了です。なお接ぎ木苗はなるべく深めに植え付けたほうが、花が咲いた時の見栄えがよくなります。

水をたっぷりやって完了!

仕上げに水をやりますが、根の回復を助ける活力剤を与えるのもオススメです。活力剤『バイオゴールドバイタル』(販売元:タクト)は、水が少し茶色く色づく程度に薄めて使用します(1ℓにキャップ2杯/10㏄が目安)。

活力剤を入れた水をたっぷり与えます(鉢底から水が流れ出るまで)。植え込み直後の鉢植えは、粉塵が鉢底から流れ出るため、ベランダなどでは容器に入れて水をやるとよいでしょう。

株の状況にもよりますが、一連の写真の作業は約10分程度で終わります。ぜひ、鉢替えの時期を逃さずに、バラを健やかに育てましょう。

もし、バラの生育状態がよくないと感じたら、『バラの専門家が診断! 花数が増えないバラと調子が悪いバラのメンテナンス法』を参考に植え替えをしましょう。

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Credit

アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。

写真/3and garden

協力/株式会社タクト

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