不調なバラの手入れをし、春に向けて再生させるのに適したシーズンがやってきました。今回の事例のような鉢が手元にある方は、なるべく1月中旬まで(可能なら12月末まで)に作業を終わらせることを目標にチャレンジしてみましょう。ここでは、今年の春から都内某所にあるバルコニーで育ててきた鉢植えのつるバラについて、生育診断をしながら誘引するまでの作業プロセスを、バラの専門家、河合伸志さんに教えていただきます。
まずは現状をチェック!

【現状】春に愛らしい薄紫の花が咲いていたシュラブ・ローズの‘モチーフ’ですが、夏になると葉をすべて落としたため、株の大きさに対して鉢が小さいのかと思い、現在植わっている直径40㎝の白いプラスチック製の鉢に鉢増しをしました(この判断は間違いです)。その後、再び新芽が展開して花が少し咲いたものの、他のバラに比べて早く葉が落ちてしまいました。
河合さんの診断
まずは、枝を見てみましょう。茶色く枯れ込んだ枝があちこちに見られますね。緑の枝の表面にはブツブツと黒い点が現れています。これは、紫系や白系のバラのいくつかの品種で冬季に見られる症状で、寒さが原因と思われます。品種によっては株が順調に生育すると出にくいものもあります。落葉してしまったのは、恐らく黒星病が原因ではないでしょうか。いずれにせよ状態は悪いです。
掘り上げて生育を判断

鉢底を見ると、穴が非常に小さくて少なく、しかも、自動灌水で12月になっても1日に2度も水をやっていたというのですから、これは根腐れしている可能性が高いと想像できます。実際、鉢から株を抜いてみると、用土は崩れ落ち、新しい白い根が少なく、黒く腐っているような部分もあります。

用土はヘドロのような臭いがし、おまけにコガネムシの幼虫まで出てきました。まだ小さいので、夏にこの場所で生まれた幼虫だと思われます(コガネムシによる根の食害の形跡はほとんどみられていない)。腐った根を取り除き、軽く洗います。根腐れの深刻度としては中程度です。生育不良の原因は、黒星病と根腐れでした。
新しい用土に植え込みます

新しい用土を用意します。根腐れで根の状態がよくないので、ひと回り小さい鉢(8号鉢)にサイズダウンをして、養生することにしました。また用土には元肥を入れず、しばらくは根を再生させることを優先します。鉢底石を入れ、隠れる程度に培養土を入れておきます。

植えた後のバランスや見た目をよくするために、やや深めに鉢の中央に株をすえます。根の周囲にある程度用土を入れたら、割り箸や棒などで用土をつつきます。今回は根鉢をかなり崩したので、根の間に新しい用土がしっかり入るように意識してまんべんなくつつきましょう。ウォーター・スペース(灌水の際に水が溜まる部分)を残すため、鉢の縁から3〜5㎝程下まで土を入れ、鉢底から抜ける程度に水をたっぷり与え、植え込みは完了です。
シュラブ・ローズは剪定と誘引で株姿を整えます
‘モチーフ’は伸長1.5mほどのシュラブ・ローズで、冬季に切り詰めて咲かせることも可能ですが、この事例のように小型の構造物に誘引することもできます。今回の株は生育が悪く、新しいシュートも発生していないので、残っている葉を摘み取り、枯れ枝や小枝を切り、それ以外はなるべく残すようにします。

病葉を摘み取り、枯れた枝、楊枝サイズの弱小枝は切り取ります。

花枝は2〜3節残して先端を切り取ります。これらの作業が終わったら、オベリスクにゆるく巻きつけるように誘引し、麻紐でとめます。誘引に伴い、枝が込み合った部分が出てきた場合、必要に応じて枝数を減らします。

以前使っていたオベリスクは壊れてまっすぐ立たないので、新しいオベリスクを鉢の中に差し込み、枝をゆるくとめつけました。不要な枝が取り除かれて、剪定&誘引後は株がスッキリ。これで春まで養生します。
今回使用したアイアン製のオベリスクは、鉢のサイズを選ばずに設置が可能な「楽々三角オベリスク」。発売元:ベルツモアジャパン(http://bellsmore.jp)
今回の株は、根の再生が確認できるようになったら施肥をし、生育を促します。この株は前年度の生育が悪いので、次の春の開花はさほど多くないと思いますが、これを機に生育の改善が進めば、より多くの花を楽しめるようになるでしょう。
Credit

アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真/3and garden
協力/株式会社タクト、ベルツモアジャパン(山洋発條)
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