【家庭菜園】知っておきたいキーワード「連作障害」 原因と対策の基礎知識

Joanne Dale/Shutterstock.com
家庭菜園で、花や野菜を元気に健やかに育てるために、知っておきたいキーワードの一つが、「連作障害(れんさくしょうがい)」。この記事では、連作障害となる複数の原因と発生させないための対策、覚えておきたい連作障害が起こりやすい野菜の種類などについて、詳しく解説します。
目次
そもそも連作障害(れんさくしょうがい)とは? 引き起こす原因は複数ある

連作障害とは、同じ植物、もしくは同じ科の植物を、同じ土壌で育て続けていると徐々に生育不良になることを指します。特に、特定の野菜を繰り返し栽培することが多い家庭菜園で発生しやすいので、注意が必要です。
連作障害の原因は複数あります。まずは、その原因別に解説します。
細菌・ウイルス・カビなどの病原体が原因の「土壌病害」

植物が発症する病気には、土壌中に生息する細菌やウイルス、カビなどの病原体が原因となるものがあります。例えば「青枯れ病」や「根こぶ病」などです。
青枯れ病は、ナス科の植物に起こりやすい病気で、葉が青いまま枯れてしまいます。
根こぶ病は、その名の通り根にこぶができて生育が悪くなる病気のことで、アブラナ科の植物に起こりやすいです。
連作により土壌に棲む微生物のバランスが崩れ、特定の植物にとって有害な病原体が増えることで、病気が発生しやすくなります。
センチュウなどによる「虫害」

土壌中に生息する害虫が原因で、植物の生育が悪くなることもあります。代表的なものはセンチュウで、センチュウによる植物の不調は病気として扱われることもあります。
根にこぶを作るセンチュウや、根を腐らせるセンチュウなどがあり、大きさは1mm以下と小さいため肉眼では見えにくく、根絶するのは難しいです。
連作していると土壌に住む微生物のバランスが崩れやすくなり、それが原因となってセンチュウが発生しやすくなります
栄養素の偏りなどで引き起こされる「生理障害」

栄養素の欠乏もしくは過多でも、生育に障害が起こります。連作により特定の養分だけが吸収されると土壌中の養分バランスが崩れ、また微量元素の欠乏によっても生育に悪影響が出ることがあります。
植物自身の毒素による「自家中毒」

植物の中には、周囲のほかの植物の生育を抑制する物質を土中に排出するものもあります。このような植物は、同じ場所で育て続けるとその濃度が高くなりすぎて自家中毒を起こし、生育が悪くなってしまうことがあります。
連作障害が起こりやすい野菜と起こりにくい野菜は?

連作障害は、植物の種類によって起こりやすいものがあります。連作障害を起こしやすい作物の代表的なものは、以下のものです。
「ナス科」のナス、トマト、ピーマン、ジャガイモなど。
「アブラナ科」のハクサイ、キャベツ、ブロッコリーなど。
「ウリ科」のキュウリ、スイカ、メロンなど。
「マメ科」のエンドウなど。
「バラ科」のイチゴ、リンゴ、梨など。
これらの植物は、同じ科のものを連続して育てることでも連作障害を引き起こしやすいので注意しましょう。
反対に、タマネギやネギ、ニンジン、トウモロコシ、サツマイモなどは連作障害を起こしにくい植物です。
連作障害は草花でも起こる!

連作障害は野菜だけでなく、花でも起こります。
種類によって、一度育ててから次に同じ場所で育てるタイミングを、あけたほうがよい期間(輪作年限)が異なります。
連作障害を起こしやすい花の代表的なものを、休作期間ごとにまとめました。
●1年休んだほうがいい花
春の花:キンセンカ、ナデシコ類、ロベリア、ムスカリなど。
夏の花:アサガオ、オシロイバナ、クレオメ、ヒマワリ、ペチュニアなど。
秋冬の花:黄色コスモス、シロタエギクなど。
●1~2年休んだほうがいい花
春の花:ポピー、アネモネ、キンギョソウ、スイートピーなど。
夏の花:インパチェンス、コスモス、ポーチュラカ、ホウセンカ、ルドベキアなど。
秋冬の花:ハボタンなど。
●2年休んだほうがいい花
春の花:コデチア、バーベナ、ルピナス、チューリップ、ラナンキュラスなど。
夏の花:ケイトウ、センニチソウ、トレニアなど。
秋冬の花:クッションマムなど。
●3年休んだほうがいい花
春の花:アリウムなど。
夏の花:アスター、サルビア、ニチニチソウなど。
連作障害を防ぐには?

ここまで、連作障害の原因や、連作障害を起こしやすい植物についていくつかご紹介しました。では、連作障害を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、連作障害を防ぐための方法について解説します。
輪作(ローテーション栽培)する

連作障害は、同じ場所で同じ科の植物を続けて育てることで起こるので、これを防ぐためには計画的に植える場所や作物を変える「輪作(りんさく)」を行うのが効果的です。輪作は、畑を複数のブロックに区分けし、異なる科の植物をローテーションで移動させて植えるようにします。
連作障害が起こりやすい植物には、一度植えてからもう一度植えるまでにはこの程度の期間をあけるべき、という輪作年限があります。植えたい野菜や花の輪作年限に注意しながら計画しましょう。例えば、ナス科の輪作年限は3~4年程度、アブラナ科は1~2年程度とされています。
土の状態などによって輪作年限は変わりますので、あくまでも目安として活用してください。
コンパニオンプランツを植える

同じ場所に複数の種類の植物を組み合わせて植えることで、土壌の栄養や微生物のバランスが偏りにくくなる場合もあります。
生育がよくなったり病害虫が減ったりと、よい効果が期待できる植物はコンパニオンプランツと呼ばれます。例えば、キク科の植物はセンチュウの予防になるほか、ネギ科の植物はウリ科の植物の病気抑制効果が期待できます。
耐性苗や接ぎ木苗を植える

連作障害に強いとされている苗などを選んで植えるのも、一つの方法です。品種改良によって病害虫に耐性がある苗なども作られています。
病気に強い植物を台木として、作物を接ぎ木した苗も販売されています。野菜ではキュウリやナス、トマト、ピーマンなどでよく行われている手法です。
有機物や連作障害軽減材などを投入して土壌改良する

病害虫の発生を防ぐためには、有機物を投入して土壌中の微生物を増やすのが大切です。それとともに、植物を育てるときにはそれぞれの植物に合った土づくりをすることが大切なので、土壌が植物に合っていない場合は対策を施す必要があります。例えば、スイカやサツマイモなどは水はけのよい砂地を好むため、有機物は少なくします。アルカリ性を好むホウレンソウやネギなどを育てる場合は、石灰を混ぜて酸度を調整します。
また、連作障害軽減剤も販売されているので、必要に応じて土にすき込むのもよいでしょう。
連作障害が起きてしまったら土壌消毒を行う

場所が限られていて輪作ができない場合や、連作障害が起きてしまった場合には、土壌消毒を行います。
夏の場合は、太陽熱を利用した消毒がおすすめです。被害を受けた土をビニール袋(黒色が効果的)に入れ、両面を直射日光に2、3日当てます。米ぬかの発酵熱と太陽熱を使って土壌消毒をする方法もあります。
冬は土を掘り起こして寒さに当て、病原菌や病害虫を駆除します。土が団粒化して通気性をよくする効果もあります。
土壌消毒後には、欠乏した養分などを補うため、土壌改良も行うとよいでしょう。
連作障害に気をつけて野菜や花を元気に育てよう!

身近な植物の中にも、連作障害を起こしやすいものがありますが、輪作や土壌改良などで事前に対策することが可能です。ご自宅での家庭菜園でも連作障害に気をつけながら、野菜や花を元気に育てましょう。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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