初めての庭づくりに「花がいっぱい咲いたらいいな」「家庭菜園をしてみたい」「庭でBBQしたい!」などなど、夢はたくさん膨らんでいることでしょう。しかし、さていざ庭をつくるとなると、いったい何から始めたらよいか分からないという人は少なくありません。そんなときはまず、地面に絵を描いてみましょう。ガーデンデザイナーの阿部容子さんが庭づくりの始め方を指南してくれます。庭計画を立てるには、今が最も適した季節です。
目次
無駄な草取りはすぐやめましょう
しばしば、新築の家の庭の草取りを一生懸命しているパパさんを見かけますが、草取りはすぐやめましょう。パパさんの休日はもっと楽しく、有意義なものでなければなりません。それに、残念なことにその草は取っても取っても、すぐに生えてきますよ。というのも、新築の家の造成地には、山から運ばれてきた土が入っています。山から運ばれてきた土には、ありとあらゆる草の種子が仕込まれており、いわば雑草の苗床状態。取ったところで徒労に終わりますので、もっと有意義な庭づくりの始め方をお教えします。
除草剤を使っていったん土をリセット
まずは除草剤を使って、土をいったんリセットしましょう。「除草剤」と聞くと、使うのがなんだかコワイ、環境への影響が心配、と思われる方がいるかもしれませんが、ご安心を。「農林水産省の農薬登録を取得している除草剤」は、農薬として登録するまでに人や生物、環境の安全を確保するためのさまざまな審査をクリアしています。商品ラベルに「農林水産省登録〇〇〇〇〇号」という番号が入っている商品を選び、使用方法を守れば安全です。
適した除草剤を選んで使いましょう
除草剤は用途によってさまざまな種類があります。大きく分けると、以下の2つのタイプになります。
■土に薬をまくタイプ/薬の成分が根から吸収されて草を枯らす。効果は6カ月から1年近くなど長いものが多い。駐車場など、長期的に植物を育てる予定のない場所に向く。
■雑草に直接かけるタイプ/葉や茎から成分が吸収されて草を枯らす。薬の成分は土に落ちると効果がなくなるため、かかっていない雑草には効かない。効果は2週間など短いものが多い。
庭の予定地には後者のタイプが向いています。除草剤をかけて雑草を枯らしたら、防草シートをとりあえず庭全体に敷いておきます。この防草シートは、庭計画にともなって後から部分的に取り除きますが、後々にも必要になります。防草シートを敷けばとりあえず、これで草取りの労役からは解放されます。さあ、楽しい庭計画をじっくり練りましょう。
防草シートの上に庭の絵を描こう
防草シートは雑草を防ぐためのものですが、キャンバスとしても役立ちます。防草シートの上に、ペンやチョークを使って庭のレイアウトを描いてみましょう。まずはざっくりとしたエリア分けでOK。デッキや花壇、芝生のエリア、ガーデンテーブルを置く場所など、庭をどんな風に使いたいか、室内からはどう見えるかなどを考慮しながら、家族であれこれ考えてみましょう。
日当たりの確認をしましょう
エリア分けを考える上でヒントになるのは、日当たりです。植物が健全に生育するには、基本的に日光が必要ですから、樹木や花壇、芝生のエリアは日が当たる場所にレイアウトしましょう。「日が当たる」と一口にいっても、当たり具合で適した植物が異なります。植物の生育に関連して、日当たり具合を以下の4つに分けました。庭のどこがどれに当てはまるか、チェックしてみましょう。
- 日当たり良好/朝日が当たり、午後過ぎまで日が当たって、西日(3時以降の日)は建物などで遮られる。
- 日当たり強光/午前中から日暮れまで、ずっと日が当たる。
- 半日陰/午前中のみ、または午後からのみ日が当たる。
- 日陰/一日中、日が当たらない。
最も植物の選択肢が多いのは、①の「日当たり良好」エリア。②も植物がよく育つエリアですが、夏の暑さと乾燥に注意が必要。強い光によって「葉焼け」するような植物は避けます。③は日陰にも強い植物を選びます。④は植栽する場所ではなく、収納スペースなどに活用するとよいでしょう。
植栽は庭の敷地の20〜30%
これから庭づくりをしようというとき、緑いっぱい、花いっぱいの庭にしたい、と思っている人は少なくないでしょう。もちろん、できますとも。でも、庭いっぱいに植栽をしてはいけません。植栽帯は庭の敷地の20〜30%がちょうどよいくらいです。「えっ!少なっ!」と思ったあなた。植物は立体物ですから、面積ではなく体積で考えましょう。例えば、樹木は枝葉を伸ばして空間を豊かな緑で彩ってくれます。この緑の見え方のことを「緑視率(りょくしりつ)」といいますが、植栽帯は20〜30%でも緑視率は十分です。
70〜80%は庭の機能面
では、植栽していない他の70〜80%はどうするのかというと、そこは人のための場所です。デッキやガーデンテーブルを置く場所、人が歩く動線や水場、作業場、収納場所など、庭の機能面を充実させるスペースとして考えましょう。
芝生を全面に張った場合でも、人がよく行き来する動線部分は芝生がはげてくることがあります。また、テーブルを置いたらその下は陰になり、芝生は早々に枯れてきます。芝生がなくなったところは土が剥き出しになり、雨が降るとドロドロになります。足元がドロドロのテーブルでお茶を飲むのは不快極まりありません。ですから、人の動線や居場所は最初から決めておいて、タイル敷きや砂利敷きにしておくことをおすすめします。そうすれば、枯れゆく芝生を悲しむ必要もありませんし、何度も芝生を張り替える労力も必要ありません。
まずは樹木から選びましょう
植物には大きく分けて樹木類と草類があります。まずは庭の骨格を作る樹木から考えましょう。小さな庭でも樹木はあったほうがいいです。先ほど述べたように、樹木は圧倒的な緑視率に貢献しますし、庭が整った印象になり、草花の彩りも美しく見えます。ただし、木の大きさに注意。家の近くに高木を植栽して、樹木の根っこが家の基礎の下に入りこんで家が傾いてしまったという事例もあります。樹木を選ぶ時は、次のことを必ずチェックしましょう。
●生育後の大きさ/大きくなる木は根っこも地上部と同じサイズ感で大きくなると考える必要があります。また、樹木がある程度生育したら、定期的な剪定などの手入れが必要です。
●常緑か落葉か/常緑樹の場合、その下は木陰になります。落葉樹の場合、夏は木陰に、秋冬は日向になります。また、落ち葉の掃除の必要があります。
樹木を買うなら冬がチャンス
樹木の苗が豊富に流通するのは冬です。冬は落葉樹など多くの樹木が休眠期や生育緩慢になる時期で、植木屋さんの畑から苗木を傷めず掘り上げて出荷することができるからです。植栽にも適した時期ですので、冬のうちに樹木だけでも決めておくことをおすすめします。
住宅街の庭におすすめのコンパクトな樹木
住宅街の庭では、あまり大きくなりすぎる樹木を植えると、庭全体が日陰になってしまって他の植物が育たなくなったり、近所への落ち葉の心配などもあります。シンボルツリーとしてよく選ばれる木には樹高が10m以上になるシマトネリコやハナミズキなどがありますが、生育すると自分で剪定するのは難しくなるので、プロに依頼する必要があります。住宅街の庭なら、樹高3〜4mでも十分です。家の天井高の平均が2.2〜2.4mですので、それよりも大きい木ですが、樹木では低木に分類されます。低木は庭では垣根などとして扱われることが多いですが、自然樹形で育てるととても美しい枝ぶりでシンボルツリーに適したものもたくさんあります。おすすめの樹木を以下にご紹介します。
ニシキギ
低木に分類される樹木で、樹高は大きくなっても3m。住宅街の庭にちょうどよい高さで止まってくれます。紅葉の美しさを錦に例えられて名前がついたほど、秋は見事に紅葉します。枝を奔放に伸ばし、自然樹形だと上の写真のようにゆったり枝を広げますが、剪定しやすい高さなので、枝ぶりを庭の広さに合わせて自分でコントロールできます。
エルダー
エルダーフラワーとして知られる西洋ニワトコも低木〜中低木類に分類され、樹高は約3〜6m。初夏に咲く白い花は、さまざまな薬効のあるハーブとしても知られ、シロップ漬けにしてコーディアルとして飲まれます。園芸品種に黒葉でピンクの花を咲かせる‘ブラック・レース’があります。花後にはエルダーベリーと呼ばれる黒い艶やかな実がなり、この実もジャムなどにして食されます。
オオベニウツギ
自然樹形だと3mほどに育ち、春はピンクの花をたわわに咲かせて見事です。耐暑性・耐陰性に優れ、病害虫にも強く非常に丈夫です。シンボルツリーとして扱われることの少ない樹木ですが、下枝を整理するように樹形を仕立てていくと、とても美しく印象的です。
冬の間にシンボルツリーを決め、植栽するところまでやっておくことをおすすめします。次回は、樹木以外の植物の選び方をご紹介します。
Credit
アドバイス / 阿部容子 - ガーデンデザイナー/造園家 -
あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
写真&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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