大きくなる種類の樹木でも、盆栽ならコンパクトに育てて愛でることができます。盆栽にできる樹木にはたくさん種類があり、それぞれ違った魅力を引き出す楽しみがあります。一方で、一般的な植物の育て方とは異なる部分も多く、手入れを怠るとうまく仕立てられなくなってしまうことも。この記事では、盆栽の特徴や日頃の管理の方法まで詳しく解説します。読み終えたころには、きっと盆栽を楽しめるようになっているはずです。
目次
盆栽とは?
鉢植えと盆栽は、どちらも容器に用土を入れて植物を育てる方法ですが、盆栽は鉢植えとは異なり、植物をルールに従って仕立てていく栽培スタイルの一つです。日本のみならず世界中に愛好家が多い盆栽ですが、鎌倉時代には日本で始まっていたとされ、江戸時代には多くの人々が楽しむようになった日本の伝統的な技術です。
盆栽は植物に人の手を加え、自然の美しさや厳しさを凝縮して表現していくことを重視しているため、あからさまに人工的な部分が見えてしまうようなものは基本的に好まれません。
どちらかというと荒々しい自然の中で生きている姿や、野山の中で育っているような姿を模して形作られることが多いです。また、最終的に床の間などに飾るために、植える鉢の素材や形などにも気をつかいます。
盆栽の楽しみ方とは?
盆栽にはさまざまな楽しみ方がありますが、ここでは鑑賞する際や育てる時にどんな点に注目すればいいのかをご紹介します。
見て楽しむ
盆栽の見方にはポイントがあります。
まず盆栽は鑑賞すべき方向が決まっています。正しい方向から目線を木の中心部に合わせて見ましょう。鑑賞すべき方向を正面、反対側を裏面と言います。
鑑賞にあたってチェックしたいポイントは、主に4つあります。
- ポイント① 根が力強く、周囲に広がって伸びているかどうか。
- ポイント② 根元から一番下方で伸び出る枝までの幹が太く、くびれが無いか。
- ポイント③ 枝の造形が美しいかどうか。
- ポイント④ 季節感を表現する葉や実、花の状態がよいか。
これらを押さえておくと、より深く盆栽鑑賞を楽しむことができます。
育てて楽しむ
盆栽を育てる場合、普通の鉢植えなどのガーデニングよりも、仕立てるのに長い時間が必要になります。生け花や茶道のような流派はありませんが、細かな仕立てのルールがあるので、決まりに従って楽しむのが基本。ですが初心者の場合は、まずは風景を作るよりも、育てる植物を愛でることを優先したほうが楽しみやすいです。
また、最初から形がある程度定まっている盆栽を購入することもできますが、苗からじっくり育て上げることも楽しみ方の一つです。
盆栽の種類
先に触れた通り、盆栽にはさまざまな種類があります。ここからは盆栽の種類についてご紹介します。
松柏(しょうはく)盆栽
松柏盆栽は、松など常緑樹を使った盆栽です。一年中緑が茂って見栄えもよく、初心者からベテランまで楽しめます。樹に針金をかけることでさまざまな樹形を作って楽しめるのも魅力です。
松にも種類があり、黒松や錦松、五葉松が代表的です。黒松は立派な枝ぶりが美しく、松柏盆栽の定番です。錦松は黒松から派生したもので、貫禄のある樹皮が逞しい種類です。五葉松は丈夫で仕立てやすい点が魅力的です。
雑木盆栽(葉物)
雑木盆栽は、季節によって姿が変わる点が魅力です。代表的なのはケヤキやカエデなど、紅葉が美しい落葉樹ですが、紅葉だけでなく新緑や裸木などの変化も見応えがあります。葉の形を揃えると美しく見えるため、不揃いな大きさの葉は全て切り揃えると、次に生えてくる葉の大きさが揃います。
雑木盆栽(花物)
サクラやウメなど庭植えでは大きくなる樹種でも、盆栽として仕立てることでコンパクトに楽しめます。室内で鑑賞したい場合は、日当たりや風通しなどに注意して管理しましょう。実をつけてしまうと翌年の花の咲き具合に影響が出る可能性があるので、花期にはこまめに花がらを摘み取っておきます。適切な時期に適量の肥料を与えることで花つきがよくなります。
雑木盆栽(実物)
実物の雑木盆栽は、日頃の手入れの成果が果実の様子で実感できて育てがいがあります。ナシやリンゴなどの親しみ深いフルーツも、盆栽として楽しむことができます。盆栽は基本的に外で育てますが、果実がなる盆栽の場合は野鳥などによる食害が起こりやすいので、置き場所に工夫が必要です。また、水やりで花粉を流してしまわないよう注意しましょう。
盆栽の基本的な育て方は?
実際に盆栽を育てていくにはどうすればよいのでしょうか。ここからは盆栽の基本的な育て方について解説します。
水やり
盆栽は一般的な鉢植えに比べると小さな鉢に植えることで、樹木が大きくなりすぎないようにコントロールします。土の量が少なく、乾くのも早いので、水切れで枯らさないよう頻繁に土の状態をチェックし、乾いていたら水を与えます。
水やりのタイミングは土が乾いたときですが、季節に応じて頻度を変えるとよいでしょう。1日に与える目安として、春は1回、水が乾きやすい夏には2〜3回ほど与え、水切れしないよう注意します。秋は1〜2回、冬は2日に1回ほどにして、凍らないよう暖かい時間に水やりします。
置き場所
基本的に盆栽は外に置いて、十分な光に当てて育てます。もっとも、日差しが強い夏や、凍結の可能性がある寒い冬には室内に入れたり霜よけをするなど、状況に合わせた管理が必要です。盆栽にしている植物が通常はどのような環境で生育しているのかを知ると、置き場所を考える際に役立ちます。
また、地面に直置きすると、風通しが悪くなったりコンクリートの床から熱が伝わったり、害虫が付く危険もあるので、60cmほどの高さの台の上で育てるとよいでしょう。
盆栽は小型の鉢植えなので、直植えなどよりも置き場所を変えて管理しやすいところも利点です。
剪定
盆栽を仕立てるために欠かせない剪定は、大きく2つに分けられます。基本形を決定するための大きな剪定と、形状を維持するメンテナンスのための剪定です。
基本的な形を決めるための剪定は、樹種によって適したタイミングが異なるので注意しましょう。メンテナンスのための剪定は、生育期の春から秋にかけて頻繁に行います。
剪定に用いるハサミは、専用の剪定ばさみを使います。普通のハサミでは枝をつぶしてしまい、うまく切ることができません。また、断面から病原菌が入るのを防ぐため、剪定前にハサミを消毒してから使ったり、太い枝を切った場合は癒合剤などを塗って切断部分から枯れてしまうのを防ぐことも大切です。
自分で盆栽を作ってみよう!
美しい盆栽をはじめから自分の手で作り上げることもできます。
ここからは盆栽の作り方について解説します。
苗木と鉢
盆栽にする苗木や鉢を選ぶ際は、植物→鉢→配置の順番で決めるのがおすすめです。
初心者の方は、高温多湿になる夏や、雪や霜にさらされる冬を見越して、特に丈夫で育てやすい種類の苗を選ぶとよいでしょう。葉物の雑木であるケヤキなどがおすすめです。
また鉢は、釉薬をかけたものがよいでしょう。素焼き鉢に比べて保水性があり土が乾ききりにくいので、育てやすくなります。紅葉した時の色など、植える植物の見どころを想像して、植物が映える鉢を選びましょう。
植え付け
植え付けは暖かくなる3月頃が適期。盆栽を植えるための土は、特に水分保持や水はけ、通気性、栄養などが重要で、赤玉土やくん炭など何種類かの土や土壌改良材を混ぜ合わせて使うのが一般的です。さらに植物を植え付けた土の表面は苔で覆うと、乾燥しすぎるのを防ぐことができます。
植え付けから1週間ほどは、植物が倒れないよう、強い風の当たらない日向に置くようにします。水はけが悪くなったり、土の色が黒ずんできたら植え替えのサインです。
自然が凝縮された世界 !盆栽をじっくり仕立てよう
自然の美しさを凝縮した盆栽は、鑑賞するだけでなく育てる楽しみもあります。盆栽として売られているものを買って育てるのも素敵ですが、自分で苗を植えて一から育て上げるのも愛着が湧いて楽しいですよ。
美しい盆栽に仕立て上げるには、適切にこまめなお手入れをすることが欠かせません。樹木の種類に合わせてそれぞれの育てるポイントを調べながら、盆栽を作ってみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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