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【果樹・花木を上手に育てたい!】街の園芸店がお悩みを解決!vol.3

【果樹・花木を上手に育てたい!】街の園芸店がお悩みを解決!vol.3

植物を育てていると、育て方はもちろん、病気や害虫への対策など、さまざまな壁に出くわしますよね。そんなお悩み解決を、皆さんにとって一番身近な園芸のプロ「街の園芸店」にお願いしました。今回は実りが楽しみな果樹と、満開が待ち遠しい花木のお悩みです。

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せっかく楽しみにしていた実が、花が、・・・。

why
Hvarts/Shutterstock.com

植物を育てていれば、さまざまな問題にぶつかります。実りをもたらしてくれる果樹や、美しい花を咲かせて庭を彩る花木も、小さな草花同様、正しい栽培方法を知らなければさまざまなトラブルが起きてしまいます。せっかく楽しみにしていた実がつかなかったり、花が咲かなかったりしたら、ショックも大きいですよね。そんな果樹・花木に関するお悩みを、今回も街の園芸店「フラワーガーデン・セキ」の関ヨシカズさんに解決していただきました。

今回も答えてくれる街の園芸店「フラワーガーデン・セキ」(目黒区祐天寺)

今回も読者の皆さんのお悩みに答えていただく「フラワーガーデン・セキ」の関さん。東京は目黒区祐天寺に古くからお店を構え、近隣住民から愛される、地域に根ざした園芸ショップです。2代目の関ヨシカズさんは、木々にも精通した園芸のエキスパート。お店には果樹や花木の育て方を相談しに訪れるお客様も多いので、皆さんからいただいたお悩みにも分かりやすく答えてくれます。さて、今回はどんなお悩みが寄せられているのでしょうか? 早速関さんに伺ってみましょう。

関さん近影
「果樹・花木のお悩みも気軽にご相談ください」と、関ヨシカズさん。

【お悩み1】庭のレモンの木の葉が虫に食われてしまいました

アゲハ幼虫
traction/Shutterstock.com

庭にレモンの木を植えていますが、葉を虫に食われてしまい、ほぼ残っていません。何をしたら復活しますか?      (関東 50代 女性)

関さんの答え

その虫は、間違いなくアゲハの幼虫だと思います。何も残っていないとのことですが、根が生きていれば復活します。現状では木がなんらかのアクションを起こしてくれるまでの「待ち」の状態なので、しばらく静観するのが一番だと思います。

庭ということは地植えされているかと思いますが、地植えだと根の状態は見えませんね。でも枝をカットしてみれば、水分があるっぽいかそうでないかで、木自体が生きているかどうかは分かるので、生きていれば新芽が動くまで待つしかないかな。植木屋さんを呼んで見てもらうのも手です。木が生きていることが分かれば、同じ静観でも、悶々としながらではなく、安心して待つことができると思います。もし鉢植えの場合は、ご自分でチェックできます。鉢から株を上げて、土を落として、根がちゃんと白くみずみずしい状態なら、それは生きているということなので、植え戻しておけば、来年の春先から夏にかけて新芽が出てくると思います。

地植えにしろ、鉢植えにしろ、光合成を行うための葉がない以上、果樹としてのパワーは弱ってしまいますが、葉がなくても幹に葉緑体が入っているため光合成自体はできるんで心配はありません。ただ、大粒でも小粒でもどちらでもよいので、化成肥料をまいてあげましょう。化学成分が嫌だったら、堆肥や牛ふんでも大丈夫です。

根腐れ
細菌により腐敗が始まった根。この状態の場合は植木屋さんを呼んで治療の相談を。Kritchai7752/shutterstock.com

予防ですが、レモンの葉はほぼ100%アゲハの幼虫に食われます。幼虫は見れば一発で分かるので、その段階で幼虫を取るしかないですね。まぁこれは葉がある時の話なので、今回の場合は前述のように、静観して木からのリアクションを待つほかないでしょう。

とにかく、日頃から目視で木の状態をチェックすることが大事です。答えになってないかな(笑)。シンプルな答えになってしまいますが、1:肥料をまいておき、2:見守る。3:アゲハの幼虫は見つけ次第取る。この3つというところでしょうか。

【お悩み2】レモンの木の剪定方法を教えてください

レモンの木の剪定
Supaleka_P/Shutterstock.com

レモンの木を植えていますが、冬越しがうまくいかず、葉がだいぶ落ちてしまいました。新芽も出てきているので、徒長したような上の部分を切ってしまうべきか、悩んでいます。切る場合、どこから切るべきか判断する方法などあるでしょうか? (中国地方 30代 女性)

関さんの答え

レモンの木が寒さに反応して葉を落とすのは、まぁ言ってみれば普通のことです。寒いので(笑)。落葉は葉からの蒸散を防いで木が枯れないようにするための、植物自身の防御反応でもあります。なので心配は無用です。しかも新芽が出てきてるわけですから、問題ないですよ。

徒長したような上の部分を切るか否かというところですが、これは好みですね。まぁ、切ったほうがいいかな。レモンは、だいたい3月くらいに新芽が伸びるので、一番いいのは、その直前に剪定すること。剪定後に新芽がいい感じで出てきて花がつく、というルーティーンが理想的です。折り重なるように生い茂った葉や、徒長した部分を切ることによって風の通りがよくなり、それにより花に栄養がしっかりいくようになり、結果、実付きがよくなります。なので、剪定自体は有効ですが、切る時期を間違えて、花がつく予定だった枝を切っちゃうと、実付きにも悪影響を及ぼすことになるので注意してください。剪定の時期ですが、5〜8月は適期ではないです。一番適しているのは、冬越しした2月下旬から3月です。

どこから切るべきかの質問ですが、これはもう普通の植物の剪定方法になるので、例えば、枝と枝が交差しているところを切る感じかな。太陽の当たり具合をよくする、というのをテーマに剪定するのが一般的です。ここに陽が当たらないので、こっちを落としてこっちに陽を当てるとか、そういう意味合いで切ると、いい剪定になるんじゃないかな。ただし、全体的に切りすぎちゃうと光合成に悪影響を及ぼすので、まぁほどほどに。太陽が満遍なく当たるようにすいていくっていうのが基本です。あと、形も意識しながら切りましょう。ちゃんと陽に当たって、根っこがいっぱい張って、大量に花を咲かせてくれれば、実もたくさん獲れるはずです。

【お悩み3】パッションフルーツの枝が枯れてしまいました

Passion Fruit Tree
timmy49/Shutterstock.com

パッションフルーツの枝が枯れてしまいましたが、枝は切り込んだほうがいいのか、ほっといていいのか、根は生きてる感じですが、土を掘って根を見てもいいのか。何事にも悩みます。水は土が乾くまで我慢して、なるべく放置しています。どのように見守っていったらいいですか? (四国 50代 女性)

関さんの答え

これは察するに鉢植えだと思いますが、この場合も【お悩み1】のレモンの木同様、見守ることが必要だと思います。こちらの場合は根が生きているということなので、なおのこと放置しておいても大丈夫です。ただ、本当に根が生きているかどうか、一度抜いて確認したほうがいいかもしれないですね。根っこが完全に茶色くなっているようであれば腐っている可能性もあるので、この場合はもう諦めるしかないです。でも、根っこがまだ白く活き活きしている場合は、再生の望みは全然アリですよ。

枝ですが、切っても構いません。ただ、めちゃくちゃバッサリ切る強剪定は避けるべきです。とりあえずはね、新しい枝が生え揃うまで、見守りでいいと思います。これもレモンと一緒で、枝枯れして、葉っぱも落ちて、でも根っこが生きてるのであれば、肥料をあげておいたほうがいいですね。で、新しく再生させて一から作り直すしか方法がないので。こういうのって時間がかかるので、もう年単位で見守っていくくらい長いスパンで考えてください。土が乾くまで水をあげないというのは、とてもよい判断です。

【お悩み4】ブルーベリーの実がなりません

Wild Blueberries
Krizek Vaclav/Shutterstock.com

ブルーベリーの花がたくさんつくのに、実はいつも数個です。ベランダ栽培で、木は同じ種類を2本植えています。背丈も1mくらいで、7〜8年になります。毎年数個しか実らないのはなぜでしょうか? (関東 60代 女性)

関さんの答え

ブルーベリーって、系統と品種っていうのがあって、ざっくり3系統。そのうち、市販流通しているのはラビットアイとハイブッシュ(ノーザンハイブッシュまたはサザンハイブッシュ)の、この2系統から品種が分かれてるんですよ。よく言われているのは、ちゃんと結実させて、たくさん実を収穫するには「同系統の異品種」を植えること。ブルーベリーはラビットアイ系以外は基本的に自家受粉するんですけど、そばに異品種があったほうが受粉確率が上がるんです。なので「木は同じ種類を2本植えてます」とのことですが、植えているのが同じ系統の同じ品種なので実付きが悪いのではないかと思います。ラビットアイの○○○を2本植えても、それはDNAが一緒なので、自家受粉になり、ほとんど実がつかないんです。ブルーベリーは多くの場合、販売タグに「ラビットアイ系○○○」というように品種名が明記されているので、購入時のタグがまだ残っているようでしたら調べてみてください。

実を多くならせるには、ラビットアイの○○○と、ラビットアイの×××など、同系統の異品種を植えてやる必要があります。ラビットアイ系統とハイブッシュ系統は、開花時期が異なるので、一緒に植えても意味はないです。なので、「同系統異品種」がいいのです。なんかややこしいね。でも大事なんで覚えておいてください。

もし、同系統異品種2本を植えていて7〜8年で1mという状況であれば、それは明らかに生育不良なので、鉢の中で根詰まりしているのか、肥料が足りないのか、日照が不足しているのか、などの物理的な問題が考えられます。その場合は、鉢から株を上げて根をチェックしてください。根詰まりなら、根をほどいて、新しいブルーベリー用土で、ひと回り大きな鉢に植え替えましょう。逆に、剪定して高さをあえて1mに留めているのであれば、剪定のしすぎということも考えられます。でも、花はたくさん付くのですよね? う〜ん、謎だな。

総合的に見て、僕の判断としては「同系統異品種でない可能性」が高いですね。タグを調べてもらって、もしそうだった場合は、同系の異品種をそばに置いてやれば、問題は解決すると思います。

【お悩み5】ジューンベリーの花が咲きません

ジューンベリー
Mr. Meijer/Shutterstock.com

ジューンベリーの花が咲きません。昨年株立ちの木を植えていただきました。昨年は順調に花をつけ、実もたわわについたのですが。今年はひとつも花が咲きませんでした。 (関東 60代 女性)

[株立ちとは]

株立ちとは、木の根元部分が3本以上分岐している樹形のことを指します(幹が2本の場合は2本立ちといいます)。株立ちは、自然になる場合と、人の手で仕立てる場合があります。株立ちの木は幹が細いため、成長が遅い傾向があります。

株立
株立ちの木。

関さんの答え

株立ちということは、全体的に大きめのジューンベリーだと思いますが、植えた年はよかったけど、翌年がダメだったということは、じつはよくある話なんです。考えられるのは剪定ミスで、めちゃくちゃ切りすぎちゃって花が咲かなかったか、あるいは、剪定をしていないのだったら、単純にスタミナ不足なのではないかと思います。「昨年は実が“たわわに”」とのことですが、それは相当パワーを消費しているんで、つまり、それを補うだけの肥料分が足りなかった可能性が高いと思います。実は、いっぱいつければいいというわけではないので。ジューンベリーは本来スタミナの強い果樹なので、放っておいてもどんどん花も咲くし、ジューンというくらいなので、5〜6月にたくさん実がつくんですよ。

その「お礼肥え」というわけでもないですが、実がついたあとに、収穫への感謝をしながら肥料をあげて、夏を過ごしてもらい、そして落葉して、また春を迎えてもらうのはどうでしょうか? 5~6月の肥料が来年の結実の鍵を握る、と考えておいてください。ここはひとつ、次の年に期待してみてはどうでしょうか?

[お礼肥えとは]

果樹や樹木が、たくさんの果実や花を付けた後に、豊かな恵みを与えてくれた感謝の気持ちを込めて、果樹は収穫後、花木は花落ち後に肥料をあげることを「お礼肥え」といいます。お礼肥えには意味があり、結実でパワーを消費した果樹・樹木のスタミナを回復させる効果があります。

【お悩み6】庭のハナミズキの花が咲かなくなってしまいました

ハナミズキ
Mark Baldwin/Shutterstock.com

庭のハナミズキの花が咲かなくなってしまいました。葉も、ついている枝とついていない枝があります。お水が足りないのでしょうか? どうすればまた花を咲かせられますか? 私自身の妊娠出産時期に庭の水やりが不十分だったのか、去年も咲いておらず、妊娠中だった一昨年は花が咲いていたかどうかも覚えていません。3年前は咲いていたと思います。なんとかまた花が咲くように木を元気にしてあげたいです。アドバイスを頂けると幸いです。どうぞよろしくお願いします。 (近畿 30代 女性)

関さんの答え

庭木なので、水が足りないってことはまずないと思うんですよ。もしかしたらカンカン照りのところに植えてあるんじゃないですかね? ハナミズキはあまりカンカン照りは好きではないので、半日陰くらいの環境がちょうどよいのです。そうでないとしたら、剪定ミスというのも考えられます。花芽になるところをバッサリいっちゃうというのはよくある話なんで。剪定をしていないのであれば、やっぱり肥料かなぁ。もし肥料をあげていないのだったら、肥料はあげたほうがいいです。特に、リン酸多めの。

リン酸多めの肥料
関さんおすすめの「リン酸多め」の肥料。

やっぱね、肥料って大事なんですよ。ハナミズキはサクラの後に咲くと思うので、開花後、5〜7月に肥料をあげて、辛抱強く待ってみてください。

【お悩み7】庭のハナミズキの木が1階の屋根を越えてしまい、楽しめません

ハナミズキハウス
Vineyard Perspective/Shutterstock.com

庭のハナミズキの木が、大変大きくなり、今現在花が満開ですが、1階の屋根以上あり、楽しめません。年ごとに花芽が上にあがります。どうすればいいでしょうか? よろしくお願いします。   (近畿 60代 女性)

関さんの答え

1階の屋根の上まであって楽しめない、というと、つまり1階で見たいということなのかな? 植木屋さんに頼んで、どこまで切れるか相談されたほうがいいと思います。ただ、2階までいっちゃってるっていうことは、3m以上はあるっていうことですから、半分くらい切っちゃうことになるのか・・・そうなるとかなりの強剪定になるので、植物にとってはちょっと気の毒な気もしますね。でも結局2〜3年かけてまた上にあがっていくので、その繰り返しになっちゃう感じかな。

だったら僕の提案としては、庭のハナミズキはそのままにしておいて、鉢のハナミズキを買ってきて、それはそれで小ぢんまりと眺めながら侘び寂びを楽しむ、っていうのはどうでしょう? せっかくそこまで成長したのを切っちゃうのは、僕はもったいないと思うんですよね。【お悩み6】の方にあげたいくらいです(笑)。まぁ、1階で鉢を、2階で庭木を、っていう楽しみ方ができるんだったら、それはとても素敵なことじゃないかと思いますよ。

関さんからの愛のメッセージ

施肥
photowind/Shutterstock.com

果樹や花木は、やっぱ剪定がどうしても必須になってきます。あとは肥料ですよね。肥料は植物がより健康に生きていくための大事な栄養源です。質問を読んでいると、全体的に意外とそのあたりをやっているのかやっていないのかが分からない感じがあるんで、施肥をしていないのであれば、そこをちゃんと実践してもらうっていうことが、果樹・花木を育てる上で大事だと思います。

果樹はついた果実を口にすることから、化学成分のある化成肥料を使いたくない人も多いようですが、そういう人は有機肥料を使えばいいわけですから。とにかく果樹・花木に関しては、肥料はとても大事なんです。

果樹が実をつけるというのは、言ってみれば出産。実を1つつけるのに、かなりのエネルギーを使うんです。放っておけば勝手にポコポコ出てくるものでもないんですよ。それを毎年毎年とかってなると、やっぱ木が痩せてきたりもしますし、鉢ならなおさらです。全部に花がついて、それが全部結実したら、そのままごっそり実を取っていいのかどうかもちゃんと考えなきゃならないし、そこは鉢の大きさに応じて間引くべきだし。それで次の年に実がつかないとかっていうのはよくある話なんですよ。その辺も踏まえて果樹栽培を楽しんでくれたらいいと思います。

ブルーベリーはね、これはもう「ブルーベリーあるある」なんで、同系異品種ってのを覚えておけば大丈夫。レモンもね、レモンの木を、あえてアゲハを呼ぶために買う人がいるってぐらい、アゲハ(の幼虫)が来るんです。

ちょっと見てみますか?

まぁ、アゲハの幼虫は、高速でどんどん葉っぱを食べちゃうけど、こういうのは毎日木をチェックしていれば、病気と一緒で早期発見できるんです。うちはアゲハ蝶が好きなお客様が多いので、あえて幼虫は取らないんだけど、そうでない人は…って、そうでない人のほうが多いか(笑)。虫はね、果樹・花木には付いてまわる問題なんだけど、これもまたね、戦いなんだよね。どんな植物にもいえるんだけど、毎日のチェックが大切ですよ、って話です。来年は実りがあるといいですね! がんばってください。

おわりに

いかがでしたか? 今回も“愛の叱咤激励”をいただきました! 収穫をもたらす果樹、美しい花で楽しませてくれる花木、両方とも地植えのイメージなので、マンション・アパート住まいの人にはその環境自体が羨ましい限りですが、もし将来、庭付きの家に住むようになった時に、関さんのアドバイスが役に立つことがあるかもしれません。そういった意味では、今回のVol.3果樹・花木編は永久保存版ですね!

ガーデンストーリーでは、引き続き関さんにさまざまな質問をぶつけていきます。次回も乞うご期待です!

植物に関するお悩み募集中!

植物を育てる上で、何かお悩みはありませんか? こちらの連載『街の園芸店がお悩みを解決!』にて、園芸のプロが丁寧に回答してくれますよ。
※取り上げるお悩みは編集部にて選定させていただきます。お答えできない場合もございますので、ご了承ください。

お悩み入力フォームはこちら↓↓
https://forms.gle/vi7LXzPMD51Qgb5g9

取材協力

フラワーガーデン セキ
東京都目黒区中町2-39-15 電話:03-3712-3230
※現在(2024年5月)一時休業中。新店舗にて再開次第お知らせいたします。

Credit

取材・文/ガーデンストーリー編集部

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