植物を育てていると、育て方はもちろん、病気や害虫への対策など、さまざまな壁に出くわしますよね。そんなお悩み解決を、皆さんにとって一番身近な「街の園芸店さん」にお願いしました。では、今回のお悩みを見てみましょう。
うどんこ病やアブラムシなどの病害虫は園芸お悩み相談の大定番
植物を育てていれば、さまざまな問題にぶつかります。その代表格が病害虫ではないでしょうか。今回、GS編集部がLINE公式アカウントのアンケートで募集したお悩み相談の中でも多く寄せられた「病害虫のお悩み」を、街の園芸店さん、『フラワーガーデン・セキ』の関ヨシカズさんに解決していただきました。
今回答えてくれる街の園芸店さん『フラワーガーデン・セキ』(目黒区祐天寺)
今回皆さんのお悩みにお答えいただいた『フラワーガーデン・セキ』さん。東京は目黒区祐天寺に古くからお店を構え、近隣住民から愛される、地域に根ざした園芸店さんです。関ヨシカズさんはそのお店の2代目で、木やお花はもちろん、今ブームのサボテンやコーデックスなどの多肉植物にも精通した園芸のエキスパート。皆さんのお悩みをわかりやすく解決してくれます。今回はどんなお悩みが寄せられているのでしょうか? 早速関さんに聞いてみましょう。

【お悩み1】バラが毎年うどんこ病になります

バラを主としてガーデニングをしています。そのバラが毎年うどんこ病になります。
予防法を教えていただきたいです。 (50代・女性・関東)
関さんの答え
うどんこ病は、黒点病と並ぶバラの代表的な病気の一つで、うどん粉をふりかけたように真っ白になり、酷くなると株が枯れてしまうので、うどんこ病に弱い品種には対策が必要です。バラは品種によっては病気になるし、虫もつくし、難易度が高いものもありますよね。肥料大好きだし、太陽大好き、風大好き、それを乗り越えてあの花を咲かせるので、手がかかるからこその喜びもひとしおだと思います。
予防法としては、まずは殺虫剤『オルトランC』を春先に撒き、耐性をつけてもらうのが一番よいと思いますね。うどんこ病は5月ぐらいから始まります。その段階で1カ月に1回ぐらい『オルトランC』を撒いておいて、それでもなるようであれば、患部に直接『ベンレート』とか、『モスピラン』という、うどんこ病系に効く薬を撒いて対応するしか方法がないですね。品種にもよりますが、バラは、予防というよりは対処療法を行いつつ付き合っていく、といった考え方でいたほうがよいと思います。
【お悩み2】レモンの木の新芽に細かい虫!?

毎年実が付いていたレモンの木が、今年は半分しか花が咲かず、新芽に細かい虫…? が、たくさん付いていて、殺虫剤をかけても効果がなく、花芽にも黒いゴマみたいなものがたくさん付いて悩んでいます。どのような対応をしたらいいか教えてください。今朝、食器洗い洗剤を薄くしてかけてみましたが夕方はまた付いていました。 (60代・女性・関東)
関さんの答え
詳細な状況が分からないので確かなことは言えませんが、毎年実を採りすぎていたのではないでしょうか? そうなると肥料不足の可能性もあります。また、過度の剪定も花付きに影響することがあります。花芽に付いている黒ゴマみたいな小さな虫は、ほぼ100%アブラムシでしょう。殺虫剤で効果がない、とのことですが、ポロッと落ちていないだけで、アブラムシは既に死んでいる可能性が高いと思われます。また、食器洗い洗剤を薄くしてかけられたそうですが、もし食器洗い洗剤の界面活性剤成分が脂汚れを落とす効果を、アブラムシ駆除にも期待されているのであれば、それは植物のためにも止めたほうがよいです。花芽に殺虫剤をかけても浸透はせず、実には影響しませんので、即効性のある殺虫剤を散布して、柔らかめの歯ブラシなどを使い、丁寧に死骸を除去するのが一番よい方法だと思います。殺虫剤の中にも、『ベニカX』や『グリーンV』などの、野菜や果樹にも安心して使えるタイプもあるので、それらを使用してみるというのはいかがでしょうか?

もしアブラムシを直接手で触れることに抵抗がないのであれば、殺虫剤を使用せずとも、直接歯ブラシを使って除去してしまったほうが手取り早いです。『オルトラン』のような粉末殺虫剤を土の上に撒く方法もありますが、『オルトラン』を使用する上で注意しなければならないのは、撒く時期です。撒いた薬剤は植物が殺虫剤耐性をつけるために成分が木の中を上がっていき、1カ月程度は残留すると言われているので、収穫の1カ月前は撒かないなど、収穫時期から逆算して撒くとよいでしょう。ただ、その成分が入っているからといって、食べてはいけないとか、病気になるとかいうことではありません。気にされる場合は、そうすればよい、ということです。
薬剤を使いたくない、虫を直接触りたくない、ということであれば、水道のホースリールのヘッドをジェット噴射などの水が勢いよく出るモードにして、水圧でアブラムシを吹き飛ばす、という方法もあります。ただ、目に見えないだけで、アブラムシはそこいらじゅうに飛んでいるので、朝起きたらまた付いている、ということも多々あります。その場合はもう、気長に戦ってもらうしかないです。アブラムシはすぐに新芽をダメにするというわけではなく、時間をかけて養分を吸うため、見つけたらすぐに何らかの対策を講じることが望ましいです。
【お悩み3】コガネムシの幼虫がプランターの中に!
コガネムシの幼虫がプランターの中にいて植物が枯れたことがあるので予防策を教えてほしい。また、カシワバアジサイの葉が、焼けてしまうのかな? 茶色に錆びたようになるので、こちらも予防策を教えてほしいです。 (50代・女性・関東)
関さんの答え
- コガネムシの幼虫について

とりあえず『ダイアジノン』という薬剤を撒くのが予防策としては有効ですが、既にプランターの中に幼虫がいる場合は、一番手っ取り早いのは土の全取っ替えです。土の中にいるわけですから、これが一番有効です。ただ、プランターが大きい場合は、土の廃棄処理も大変だと思うので、薬での駆除がよいでしょう。コガネムシの幼虫は、土の中で悪さをした後、成虫になって飛んで行ってしまった後は痕跡が残らないため、原因が分からないまま植物が枯れてしまった、という例が多いです。なので、幼虫を残さないよう、これらの対策が必要です。
- カシワバアジサイの葉について

これは単純に季節的な問題ですね。葉先が茶色くなったり焼けたりしているのをよく見ますが、暑すぎ寒すぎといった極端な気温の変化に植物自体がストレスを感じてそのようになることはあります。ただ、実際に地植えであれだけ咲くものなので、太陽にも強いはずですし、それにより枯れているのでなければ問題はないと思います。とはいえ、直射日光による影響が少なからずはあるとは思うので、予防策としては、遮光、あるいは減光してあげてみてはいかがでしょうか。園芸用の遮光、減光ネットはホームセンターやネットで、簡単に手に入ります。
【お悩み4】ナメクジを退治する勇気がない

野菜にアブラムシやナメクジがついて困っているが、ナメクジを退治する勇気がない。 (40代・女性・中部)
関さんの答え
うちのお店に来るお客様には「勇気を出すのみです」って言っちゃうんですけど(笑)。 園芸=虫や病気、なので、それと戦うということも、園芸を嗜む上では必要なのではないでしょうか。って、答えになってないか(笑)。 アブラムシは、『ベニカX』などの殺虫剤や、薬剤を用いることで簡単に解決できますが、薬剤使用に抵抗を感じる場合は、ホースから水圧の強い水を出し、それでアブラムシを飛ばせば容易に解決できます。
ナメクジは、まぁ、僕らでも直に触ると気持ち悪いと思うので、お気持ちは分かります。僕らは指でつまんで捨てちゃいますが、それが無理な場合は薬剤を用いるのが最も有効的です。『ナメトックス』や『ナメトール』、『スラゴ』など、様々なナメクジやカタツムリ類の市販退治薬が出ています。どの商品もただ撒くだけでよく効くので、試してみてはいかがでしょうか。梅雨時などは、葉を見れば這った跡があり一目瞭然ですよね。これらの薬剤はそのように発生したナメクジに対して効力を発揮しますが、まだナメクジを見ていない時期に予防で撒いても効果はあります。いずれにしても、退治する勇気は持ちましょうね。
【お悩み5】大好きなパンジーとビオラにケムシが!

パンジー、ビオラが大好きなんですが、必ず春になると、黒いケムシがつきはじめて嫌になります。噴射式の殺虫剤などは虫がつく前にするほうがよいのでしょうか? あまりやりすぎると花への影響はありますか? 土の上に置くタイプの方がよいですか? (40代・女性・近畿)
関さんの答え
噴射式の薬剤ですが、即効性タイプのものは、既に発生してしまった虫に対して効果をもたらすものなので、予防的に撒いても意味はないです。予防的な措置としては、粉末の『オルトラン』を土に撒き、植物の耐性をつけてあげるのが一番だと思います。2〜3月あたりに撒いておけば、うどんこ病の予防にもなるので、おすすめです。それでも付いてしまった場合は噴射式の出番です。
花への影響ですが、これは、ほぼ無いと考えて大丈夫です。ひと昔前のフロンガスを用いた噴射式殺虫剤だと、至近距離で噴射することによってフロンガスが花芽を凍らせ、駄目にすることもありましたが、今のスプレーはそのようなこともなく、また、薬剤が花に影響を与えることはないので、心配には及びません。『ベニカX』あたりがおすすめです。
- 余談ですが
これはうちのお客様にもよく言うのですが、パンジーやビオラは、10月の後半から11月ぐらいに適期で植え付けをして、長いものだと4月まで、条件によっては梅雨入り前まで楽しめる花です。4月にはもう他の春の花や、5月ともなると夏の花が店頭に並んでいます。その時点でモコモコになったパンジー、ビオラの病害虫対策にお金をかけて延命するよりも、ペチュニアなどの春のお花を楽しむという選択肢もあるということを留めておいてください。

ビオラもパンジーも、梅雨時になれば、必ずうどんこ病になって、アブラムシもついて、縦に伸びて、パターンって倒れる、というのが定番です。背が伸びすぎたその状態をよしとするのか、それでも薬をあげて延命するのがいいのか、どちらの選択肢がいいのかは、一年草との付き合い方としては永遠のテーマですね。僕らの場合は、4月を過ぎて延びきっちゃったら、もう切っちゃいます。150円くらいであの可愛らしい花を5カ月間も楽しめるわけですから、病害虫に蝕まれて無残な状態になってさよならするよりは、3〜4月、アブラムシが付き始めたころに、まだ花も綺麗なうちに切ってしまったほうが…、とお客様には言っています。延命しても、種子がこぼれない限り、来年咲くことはないですからね。
おわりに
いかがでしたでしょうか? 園芸=虫や病気との戦い、とは、さすがに説得力がありますね。ただやっぱり、嫌なものは嫌ですよね(笑)。水でアブラムシを飛ばすという原始的な方法は、確かに地球環境にも優しくて積極的に利用したい方法ですが、飛ばす方向に注意を払う必要がありますね。編集部にも、植えたゴーヤの花にアブラムシが付いてしまい、野菜なので薬剤を使うかどうか迷っているスタッフがいまして、水で飛ばしの技、早速試してみるそうです。園芸店さんのアドバイスには、普段から街の皆さんとのふれあいがあるからこその説得力があります。ガーデンストーリーでは、今後も関さんにさまざまな質問をぶつけていきます。次回もお楽しみに!
植物に関するお悩み募集中!
植物を育てる上でのお悩みを募集しています。お寄せいただいたお悩みは、こちらの連載『街の園芸店がお悩みを解決!』にて、園芸のプロが丁寧に回答してくれるかもしれません。
※取り上げるお悩みは編集部にて選定させていただきます。お答えできない場合もございますので、ご了承ください。
お悩み入力フォームはこちら↓↓
https://forms.gle/vi7LXzPMD51Qgb5g9
取材協力

Credit
取材・文/ガーデンストーリー編集部
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