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バラを美しく咲かせる特別な仕立て方「ガーランド」の秘技をバラの専門家が大公開!

バラを美しく咲かせる特別な仕立て方「ガーランド」の秘技をバラの専門家が大公開!

多数の花びらが重なり1輪でも豪華な咲き姿のバラを、リボン状に咲くように仕立てて圧巻の花風景を作る「ガーランド(花綱)」。2021年にグランドオープンし、庭ファン・バラファンに注目されている群馬県中之条町にある「中之条ガーデンズ」のローズガーデンでは、ガーランドが今年も開花に向けて生育中です。これを設計したのは、バラの専門家、河合伸志さん。品種の特性を知り尽くしたプロの技により美しく咲く「中之条ガーデンズ」のガーランドについて、河合さんが詳しく解説します。プロも必読の技、大公開!

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つるバラでつくるガーランドの魅力

ガーランド
建築物の装飾にも見られるガーランド。Aliaksandr Zosimau/Shutterstock.com

「ガーランド(garland)」とは、古くは名誉や勝利の印として贈られる花輪や花かんむりを指し、古代ギリシャの彫刻や建築にも見られる格調高い装飾模様の一つです。現代では、花や葉、旗などのモチーフがリボン状に連なった飾りを「ガーランド」といい、ガーデン界では「花綱(はなづな)」とも呼ばれている、花を連なるように咲かせる立体的で優美なバラの仕立て方です。

花綱

日本でも各地に、この「ガーランド」を取り入れている観光ガーデンがありますが、最も新しく登場し注目されているのが、ここで解説する「中之条ガーデンズ」のガーランドです。

中之条ガーデンズにある2カ所のガーランド

中之条ガーデンズのガーランド
低く仕立てられた花道のようなガーランド。

「中之条ガーデンズ」では、2カ所でそれぞれ異なるガーランド仕立てを見ることができます。1カ所はバラに挟まれた小道、もう1カ所はバラに360度囲まれるサークル状のエリアです。

ガーランド
花道のようなガーランドと隣り合う、サークル状のガーランド。

まるで花道のようなガーランド仕立ては、小道を歩きながらすぐそばに花々が咲く様子が楽しめて、無数のバラに囲まれた感覚を味わえます。2つ目は、空を見上げるほど高い位置に2連の輪が浮かび、360度バラに囲まれるという演出。このようにガーランドを設置する高さの違いによって、バラをいろんな角度から眺めることができます。

バラのガーランド

まずは、どんな構造になっているかをご紹介しましょう。1カ所目の「小道を歩きながら観賞するガーランド」は、支えになっている緑色の柱の高さは2m。高さ2mと1mの位置に各1本、合計2本のガーランドが、6本の柱の間に渡されています。

中之条ガーデンズのガーランド
2本のガーランドの間から向こう側に広がる庭が見えるので、間近に花が迫っていても圧迫感のないデザインです。

左右に2ガーランドが続く小道の幅は1.2m。人がすれ違える程度。これは、目の前に迫り咲く花を歩きながら眺められるうえ、豊かなバラの香りも楽しめるという、こだわりのデザインです。

中之条ガーデンズのガーランド

もう1カ所は、見上げるほど高い位置に360度ぐるりとサークル状に仕立てられた2連のガーランドです。柱の高さは、3m。地上から3mと2mの位置に綱が張られていて、空にくっきり花のラインが浮かび上がります。満開時には花に囲まれた特別な空間になり、訪れる人は皆、感嘆の声を上げます。

ガーランド仕立てに向くバラの品種とは?

バラのガーランド

つるバラをガーランドに仕立てる場合、まずは伸長力(つるが伸びる力)がある品種を選ぶことが大切です。一般にはランブラー・タイプと呼ばれるバラが該当しますが、このタイプであっても‘スーパー・エクセルサ’のような品種は伸長力が乏しく不向きです。

ロサ・ヘレナ
ロサ・ヘレナエ。COULANGES/Shutterstock.com

次に枝がしなやかな品種のほうが誘引しやすく、綱の形も崩れにくいです。ロサ・ヘレナなどは枝が硬く、思うような形状に曲がらなかったり、誘引作業中に枝が折れてしまうことがあります。またシュートが株元からも発生しやすい品種のほうが、年数を経過しても株元が寂しくなりにくいです。‘アルベリック・バルビエ’などは誘引を工夫しないと、数年後は株元に枝がない状態になってしまいます。

複数品種でつくる場合は、開花期が重なる品種で構成することも大切です。品種選びは、ある意味重要なテクニックです。

ガーランド

こうしたポイントを踏まえて、「中之条ガーデンズ」で選ばれている品種は、‘玉鬘(たまかずら)’や‘花小紋(はなこもん)’ ‘マニントン・マウブ・ランブラー’などです。

●『河合伸志が選ぶガーランド仕立て向きの推奨品種10選』も近日公開予定です。お楽しみに!

ガーランドの誘引テクニック

ガーランドの誘引には、バラが休眠中に行うベーシックな「冬季誘引型」と、上級者向けの「夏季誘引型」の2タイプあります。それぞれの特徴とコツを、バラの専門家・河合伸志さんが詳しく解説します。

ベーシックな「冬季誘引型」で仕立てるガーランド

ガーランドの仕立て方

誘引の仕方は、基本的に他のつるバラと同様です。枝数が多い場合は、柱に誘引する枝と、綱に誘引する枝を分けます。柱に誘引する枝は螺旋を描くように巻き付け、綱に誘引する枝は柱に寄せた後にそのまま各所に配置し、綱に沿うようにとめていきます。柱に誘引する枝は、下記の点を注意すると、より美しく仕上がります。

小道の左右に設けたガーランドを真横から見てみましょう(上写真)。柱の根元付近から枝を上へ誘引し、柱を起点に左右に振り分けます。ここで意識して行うのが、根元付近をいかに柱に沿わせるかです。

ガーランドの仕立て方

柱の根元付近を見ると、伸び出た枝はなるべく柱に沿うように地際から引き寄せて柱にとめつけられています。ここが膨らんで太くならないようにすることで、柱がすらりと見えて美しく仕上がります。

ガーランドの仕立て方

柱に沿わせて上へ誘引した枝は、左右の綱へ誘引していきます。この時、綱が複数段ある場合は、上下のボリューム感が同等になるようにします。また、左右の柱から誘引する枝も同様にボリューム感を調整し、中央付近では多少重ねた状態で、枝を留めます。

ガーランドの仕立て方

柱と柱の間に渡したロープに沿って枝をとめつけます。

ガーランドの仕立て方
写真内矢印の枝は表皮に細かなシワが寄っていて、枯れています。寒さが原因と思われます。

標高480mの冷涼な高地にある「中之条ガーデンズ」は、冬季の積雪は少ないものの、バラがダメージを受けるほど冷たい乾風が吹くため、未熟な若いシュートは春が来る前に枯れてしまいます。もしシュートが1本枯れてしまうと、綱を覆う枝が減って花数も少なくなります。そのため枝の選別は熟度を優先し、太くて立派なシュートであっても未熟なものは切り捨て、古枝であっても充実したものであれば優先的に残します。冬に耐える枝を見極めるという、プロの選別の目が、ガーランド仕立ての成功の鍵を握っています(関東地方以西の平地では、ここまでの真剣な選別をしなくても、冬季の枯れ込みは少ないです)。

ガーランドの仕立て方

冬季にガーランドに誘引した場合、もともとの枝の癖で綱が自然な印象にたわまなくなることがあります。このような場合は、綱が自然なカーブを描くように、仕上げに綱の中央付近を紐で下方に引っ張るようにレンガ(矢印)の重しを取り付け、綱のラインを矯正して完成です。

上級者向け「夏季誘引型」で仕立てるガーランド

花後にその時点で出ているシュートや未開花枝と主幹を残し、その他の株全体の枝を大きく切り詰めて整理します。その後、伸びてくるシュートや未開花枝はそのまま柱や綱に誘引していきます。誘引の仕方は冬季の場合と同じです。

冬季になったら、葉をむしって再度紐を結束し直します。この場合、枝の癖がロープのたわみに影響を与えることがないので、苦労して矯正しなくてすむというメリットがあります。

一方、花後に大きく切り詰めてから株を再生させるため、栽培技術が未熟な場合、十分に冬までに回復させることができず、翌年はボリュームダウンしてしまうことがあります。また切り詰めすぎでも同様のことが起こるので加減がとても難しく、どちらかというと、温暖な地域のバラ栽培、中・上級者向けの手法かもしれません。

バラのガーランドを見に行こう!

中之条ガーデンズのガーランド

シュートの良し悪しを見極めながら、手が凍えるほどの寒空のもと、開花の姿をイメージしながらガーデナーが一枝ずつ丁寧に誘引した「ガーランド」。中之条ガーデンズにあるガーランドは今、葉を茂らせ、たくさんのつぼみをつけて開花のシーズンに向けてスタンバイしています。

ぜひ、今年はオープンエアで安心して楽しめる花咲くガーデンへ出かけてみませんか? ご紹介の群馬県「中之条ガーデンズ」の美しいバラは、東京近郊のバラの最盛期が落ち着いた5月下旬から見頃を迎えます。

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