ガーデニングの強い味方! バーミキュライトの特徴や使い方をご紹介

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みなさんは「バーミキュライト」というものをご存じですか? バーミキュライトは、ガーデニングを助けてくれる非常に便利なもので、市販の培養土にもよく配合されている資材です。この記事では、そんなバーミキュライトの効果からその使い方までを詳しくご紹介します。
バーミキュライトとは

バーミキュライトとは「苦土蛭石(くどひるいし)」という鉱物を、加熱してふくらませ、ガーデニング用に細かく加工したものです。原料は日本や中国、南アフリカ、オーストラリアなどで採取されています。
見た目はうろこ状でキラキラとした光沢があり、基本的に土に混ぜて使用しますが、単体で挿し木用土として使うこともあります。土壌改良のほか、建材に用いられることもあります。
バーミキュライトの成分

バーミキュライトの主成分は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどです。
原料の苦土蛭石の「苦土(くど)」とは、よく園芸で用いられる苦土石灰と同様に、マグネシウムが含まれていることを指しています。ちなみに、苦土蛭石は熱を加えるとウネウネとヒルのように動くことから「蛭石」と呼ばれています。
園芸で使われるバーミキュライトは、植物の生育をよくするマグネシウムやカリウム、鉄分などの微量元素を含んでいます。もっとも、含有成分が水や土に溶け出す量はほんのわずかなため、肥料としての効果は期待できません。
バーミキュライトの製造方法

バーミキュライトは、原料である苦土蛭石を800~1,000℃という高温の焼成炉に入れて加熱することで製造されます。苦土蛭石は高熱を加えると蛇腹状に膨張して元の体積の十数倍にもなるので、これを小さく砕いてガーデニングに使いやすい適したサイズにします。膨張したバーミキュライトは多層構造で隙間や穴がたくさんあるため、ここに水分や肥料、空気が入り込んで、土の状態を改善してくれます。
バーミキュライトの特徴

バーミキュライトには、ガーデニングをする上で知っておきたい、たくさんの効果や特性があります。ここからは、そんなバーミキュライトの特徴についてご紹介します。
保水性・排水性

バーミキュライトは、その特徴的な構造である蛇腹状の隙間にたくさんの水分を含むことができるため、保水性があります。バーミキュライトの体積の25~30%の水を吸収して水もちをよくし、水に溶け込んだ肥料分も保持することができます。
さらに、薄い層が積み重なった構造をしているため水や空気を通しやすく、水はけが悪く酸素不足になってしまった土に加えることで、土の排水性を改善させる効果もあります。
また、微細なバーミキュライトの粒はマイナスの電気を帯びており、酸性から中性ではプラスの電気を帯びている赤土などの粘土の微細な粒とくっついて団粒構造(だんりゅうこうぞう)を作り、内部に水や空気を保持することができます。
断熱性

バーミキュライトは表面にたくさんの穴があいていることから、外からの熱を遮断し、内部に熱を保ちやすくなっています。熱すぎる真夏には土の温度が上がりにくく、気温が下がる冬には土の温度が下がりにくいという、作物の根にとって優しい資材です。
無菌性

バーミキュライトは製造時に高温で処理するため、ほぼ無菌の状態です。
無菌状態の土は、作物を育苗したり挿し木をする際に、病害虫が発生する確率を減らす目的でも使用することができます。
軽量

空洞部分が多いためバーミキュライトは非常に軽く、一般的な土のおよそ10分の1以下の重さしかありません。そのため、他の園芸土に混ぜると、土全体の重量を軽くすることができます。あまり重くできないハンギングバスケットや、土の持ち運びに苦労するベランダでのガーデニングでは嬉しい資材です。
保肥性

バーミキュライトは塩基置換容量という、土中に含まれるカルシウムやマグネシウム、カリウムを保持する能力が高い資材です。そのため肥料が無駄に流れ出にくく、日頃の水やりで肥料分が流出しやすいプランター栽培に適しています。
パーライトとの違いは?

パーライトもバーミキュライトと同じように原料のガラス質の鉱物を急激に蒸発させて作られています。そのためパーライトも多孔質で軽く、バーミキュライトと同じように土壌改良に使えます。
バーミキュライトに比べ、パーライトは総じて「排水性」が高く、軽いのが特徴です。それに対してバーミキュライトは水を吸うとやや粘り気が出て、しっかりとした重みのある「保水性」の高い土になります。また、バーミキュライトは保水性と排水性のバランスがよく、特に性質を選ぶ必要はありませんが、パーライトには性質の異なる2種類のものがあるため、用途に応じて選ぶ必要があります。
パーライトには黒曜石が原料の黒曜石パーライトと、真珠岩が原料の真珠岩パーライトがあります。原料の水分量が違うため膨張した後の穴の大きさが異なり、黒曜石よりも真珠岩のパーライトのほうが穴が大きくなっています。黒曜石のほうが水はけがよく、真珠岩のほうが水もちがよいという特徴があります。
バーミキュライトやパーライトを使用するときには、種まきや一般的な土壌改良にはバーミキュライト、水はけをよくしたい場合は黒曜石パーライト、水もちをよくしたい場合は真珠岩パーライト、と使い分けるのがおすすめです。
安全性は大丈夫?

バーミキュライトは、1970年代から1980年代にかけてアメリカのリビー鉱山で採取されたものは毒性の強いアスベストが多く混入しているとして問題になりましたが、現在はこの鉱山は閉鎖されています。
さらに2006年からアスベストの含有量が重量に対して0.1%を超える製品の製造・譲渡などを禁止する労働安全衛生法の改正施行令が実施されました。その後も農林水産省の指導の下、製造業者に対して継続的な安全性の確認が行われているため、アスベストが混入している危険性はないと考えてよいでしょう。
ガーデニング用バーミキュライトの健康への影響は通常の使用方法では基本的に無く、バーミキュライトは安心して使える安全性の高い資材とされています。
バーミキュライトの使い方

ここからはバーミキュライトの具体的な使用方法についてご紹介します。
土壌改良材、補助用土

バーミキュライトには、肥料の成分であるマグネシウムやカリウム、鉄分などが含まれていますが、前述の通り、基本的にこれらの成分は微量で土に溶け出すことはほぼありません。したがって、肥料の代用にはならず、土に混ぜ込んで土壌改良材として使います。もっとも、バーミキュライトの多層構造の隙間に水や肥料が入り込み、保水性と保肥性が高いため、肥料と一緒に使うことでその効果を高めることが期待できます。
さらに空気を通すため、酸素不足になってしまった土に混ぜると排水性の改善に繋がります。また、たくさんの穴があいているため断熱や保温の効果もあり、夏の暑さや冬の寒さの緩和もしてくれます。水はけが悪かったり酸素を含んでいなかったりする悪い土には、バーミキュライトを混ぜ込むことで団粒構造が作られ、土壌改善の効果も。水はけや酸素の取り込みがよくなれば、花や野菜などの植物を元気に育てられます。
種まき・挿し木

種まき用土はバーミキュライトの最も一般的な使い方です。高温で生産されるバーミキュライトは生産過程で殺菌されているため、ほぼ無菌で清潔な土。
病気や害虫のリスクが高まるデリケートな種まき用土として最適です。しかしながら、無菌になっているのは最初だけで、後から菌や虫がつくことはあるため注意してください。種まき用土にはパーライト、川砂、赤玉土、ピートモスなども混ぜて使うとより効果的。使用するバーミキュライトは小粒がおすすめです。
挿し木にもバーミキュライトがよく使われます。無菌のため切ったばかりの枝も清潔なまま育てられます。挿し木をするときは、必ずきれいに洗って消毒した清潔なハサミで枝を切りましょう。切り口の汚れは挿し木が失敗する大きな原因の一つですので、切った後も切り口を汚さないよう清潔に保つことが重要です。挿し木をするときは、切り口を鋭利なカッターナイフで切り直して整えると、成功率が高まります。
水耕栽培

水耕栽培は、土を使わず植物の根を水につけて栽培する方法。土がなくても植物を育てられるので、マンション住まいの方にも人気の栽培方法です。
バーミキュライトは、その水耕栽培にも適しています。土を使わない水耕栽培といっても、栽培方法によっては苗を支えるための培地も必要となり、この培地にバーミキュライトを使用することがあります。容器にバーミキュライトを入れて苗を植え、液体肥料で育てます。
バーミキュライトを上手に活用しよう!

バーミキュライトについて、その特徴や使い方をご紹介しました。バーミキュライトを使うことでたくさんのメリットがあり、植物を元気に育てるために大いに役に立つおすすめの資材です。みなさんもバーミキュライトを上手に活用して、ガーデニングをより楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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