バラを立体的に演出する構造物を見に出かけよう! 横浜のバラスポットへ

バラの開花が待ち遠しいですね。今まだ花が咲いていないローズガーデンは、立体的に演出する方法や、バラのある風景作りに役立つ構造物や誘引について学べる絶好の場所です。ぜひ、この時期にしかじっくり見ることができない、花が咲く前の構造物や誘引をローズガーデンで学びましょう。今回は、神奈川県横浜にある「横浜港の見える丘公園」から「山下公園」の構造物や誘引を「日本ローズライフコーディネーター協会」代表の元木はるみさんがご案内します。
目次
誘引見学スポット1
「横浜港の見える丘公園 イングリッシュローズの庭」

横浜市イギリス館前に広がる「イングリッシュローズの庭」には、約150品種、約1,000株が植栽され、多くのイングリッシュローズの品種を楽しむことができます。
花の咲いていない時期は、5月の華やいだ雰囲気とは違って、ひっそりと落ち着いた趣があります。

門を入ってすぐの位置にある、オベリスクには、頂点に横浜市の花である「バラ」を象ったオブジェがついています。

アーチの柱の部分は、先程通ってきた門のレンガとお揃いの仕上げになっています。
構造物の材質や色を統一することによって、まとまりのあるガーデンになっていることがよくわかります。
また、上部には「エバーグリーン色」といわれる深緑色に塗られたステンレス製のバーが、地面と平行に2列設けられ、それぞれにつるを誘引し、バラの花が高い位置で咲くように立体的に演出されています。


枝を斜め上に巻きながら数カ所止め、上部に持っていく誘引の方法もよく見ることができました。



こちらの大型のパーゴラは、上部のアーチ部分はステンレス製です。

見上げてよく見ると、枝をアーチに沿わせて伸ばし、紐で均等の間隔に固定しています。


こちらのパーゴラは、すべてステンレス製で華奢な印象です。
細いフレームが組み合わさった柱なので、通気性があり、枝も固定しやすそうで、誘引作業がしやすいように思えました。
誘引見学スポット2
「横浜港の見える丘公園 バラとカスケードの庭&香りの庭」

こちらは、イングリッシュローズガーデンの奥にある山手111番館前の「バラとカスケードの庭」にあるガゼボの春の姿です。
ガゼボの円柱には、‘ピエール・ド・ロンサール’(Cl)などが誘引されています。

こちらは、奥に横浜市生まれの作家・大佛次郎の記念館「大佛次郎記念館」を望む「香りの庭」です。
整然と美しく整えられた花咲く前のローズガーデン。こちらは、香りが低くたちこめるように、沈床花壇となっています。

約100品種、約500株の香りのバラが集められた香りのガーデンは、それぞれの香りの特徴ごとに分けられ植栽されています。

噴水を中心にバラのアーチが連なり、季節の花々が彩りを添えています。


では、冬の誘引の様子を見てみましょう。香りのバラに設置されているアーチは、エバーグリーン色で、すべてステンレス製です。

小道の先には、誰もが腰掛けたくなるような配置で、香りも楽しめそうなベンチがあります。

ベンチの背景になる場所には、ラウンドしたフェンスが設けられていて、誘引が丁寧に施されていました。
誘引見学スポット3
「横浜山下公園内 未来のバラ園」

こちらは、係留されている氷川丸を背景にした横浜山下公園の一部にある「未来のバラ園」です。
「未来のバラ園」は、海に向かって見て、山下公園の中央噴水の右側(元町側)にある沈床花壇で、約160種1,900株のバラが植栽されています。横浜の玄関口としての港のすぐそばにあるバラ園として、歴史のあるバラから新しいバラなど幅広い品種が植栽され、自然環境を考えた未来のモデルガーデンを目指していることから、「未来のバラ園」と命名されました。

「未来のバラ園」は、シンメトリー(左右対称)にデザインされ、中央にはスタンダード仕立てが植わり、その両サイドにつるバラが誘引されたアーチが連なっています。間口が広いローズゲートのため、広い空間で立体的にバラを楽しむことができます。

ローズゲートを進むと、鉢植えに仕立てられた‘ル・ポール・ロマンティーク’(CL)があります。

中央付近の四隅には、オブジェのように仕立てられたバラもあり、誘引方法をじっくりと見ることができました。

裏にまわってみると、株元が腰高な花壇に植えられていて、枝を横に倒しながら柱を覆っている誘引の様子がよく分かりました。

中央にスタンダード仕立てが奥へと整列し、左右に白バラが咲く春の「未来のバラ園」の圧巻の風景です。

ローズゲートのアーチに植栽されている6種のバラです。中央のスタンダード仕立てのバラは‘アイスバーグ’です。

ステンレス製の一基のアーチには、白を基調とした3種類のバラが誘引されていました。

こちらは、低い壁面に仕立てたれたつるバラ。ほどよい枝の数です。


「未来のバラ園」から階段を上ると、奥に噴水が見え、手前にバラが絡む大型のパーゴラがあります。柱の部分がレンガ仕上げ、上部は木製になっています。

レンガ部分の柱に施された誘引の様子です。手前にはパネルが設置されていて、サイドにはワイヤーが張られていてバラを留めつける場所になっています。誘引されている品種は、‘つるノックアウト’や‘アンジェラ’などで、強健な品種が選ばれています。

5月の最盛期になると、満開のバラと株元に植わるさまざまな宿根草などが花開き、多くの人々が集って賑やかです。こちらのガーデンでは、世界的に進められている環境への配慮に着目し、減農薬でも栽培できるバラが集められ、訪れる人々の目と心を楽しませてくれています。
バラの花が咲いた時期、そして、花のない時期にも、構造物や誘引を見に、ローズガーデンを訪れてみてはいかがでしょうか。きっと参考にしたいと思えることが、たくさん見つかることでしょう。
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Credit

写真&文/元木はるみ
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。「日本ローズライフコーディネーター協会」代表。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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