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異彩を放つオージープランツの寄せ植え講座

異彩を放つオージープランツの寄せ植え講座

春になると一般的な草花に混ざって、個性的な特徴をもつオージープランツも園芸店に並びます。寄せ植えの一部にオージープランツが使われることは多いものですが、「なんだか長もちしないなぁ」と感じた経験がある方にも必見の「オージープランツ寄せ植え講座」。自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てているガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが、なぜ他の草花と一緒に植えると調子が悪くなるのかの理由と、オージープランツだけを寄せ植えて作る異彩を放つひと鉢に使ったオージープランツを8種ご紹介します。

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春咲く草花とオージープランツの相性は?

エレモフィラ・ニベア
白い産毛に覆われたような葉をもち、寄せ植え用の花苗としても出回るエレモフィラ・ニベア

春になると、一斉にさまざまな個性的なオージープランツが園芸店の店頭に並びますね。

寄せ植えの一部にオージープランツを使用することは、一般にはよく見かけますが、例えば、寄せ植え素材として人気のエレモフィラ・ニベアや初恋草は、寒さにはある程度強く、秋から春までは一般の草花と一緒に寄せ植えしても比較的もちますが、蒸し暑い梅雨時期を迎えて雨に濡れると、ほぼ100%枯れてしまいます。

初恋草
繊細な葉が茂る独特な株姿の初恋草。日本では一年草扱いだが、本来は常緑低木。

なぜなら、もともとエレモフィラ・ニベアや初恋草は西オーストラリアの乾燥地帯に自生する植物で、過湿やリン酸肥料に弱いのです。ですから、パンジーなどの一般の草花と同様に、リン酸が多い液肥をたっぷり与えたり、雨の当たる場所に置いてしまうと、まず枯れてしまいます。今この記事をお読みの方の中にも、エレモフィラ・ニベアや初恋草を枯らした経験がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

オージープランツだけで作る寄せ植え

寄せ植えは、同じ環境下で育つもの同士を組み合わせる必要があります。そして、隣り合う植物の調和をできるだけ長く楽しみたいものですよね。そこで、私がおすすめするのは、オージープランツだけの寄せ植えです。水はけのよい土に植え、肥料は控えめにし、日当たりのよい雨の当たらないところで管理します。

オージープランツの寄せ植え
7種のオージープランツとリーフの寄せ植えは、直径約50cmのコンテナを使用。

オージープランツだけの寄せ植えは、見た目にもエキゾチックで新鮮な印象。異彩を放つので、一般住宅の玄関などにはもちろん、お洒落な商業スペースにも最適です。

それでは、今回使用したオージープランツをご紹介しましょう。

<オージープランツの寄せ植え花材1>
ライスフラワー

ライスフラワー

まず、中央の後方でピンクの米粒のような花が房状に咲くのは、ライスフラワー。

学名はOzothamnus diosmifolius。キク科の植物です。

東オーストラリア原産なので、比較的日本でも育てやすいです。米粒のようなつぼみがお米によく似ているので、ライスフラワーという名前がついたようです。

比較的寒さにも強く、暖地では庭植えも可能で、約2mまでになる低木です。背が高いので後方に配置しました。花色には白もありますが、今回は華やかなピンクをセレクト。

<オージープランツの寄せ植え花材2>
カンガルーポー

カンガルーポー

後方左側で一段と鮮やかな色彩の花を咲かせているのは、オージープランツの代表的な植物、カンガルーポー(Kangaroo paw/カンガルーの足という意味)です。学名は Anigozanthos

「カンガルーの足」のようなユニークな花の形が、寄せ植えのオリジナリティーをいっそう高めてくれています。花の色は、赤のほかに黄、ピンクなどがありますが、寄せ植えの雰囲気を赤系でまとめるために赤花を使用しました。

寄せ植えを制作するときは、同系色の花色を集めるとテクニックいらずで、落ち着きますね。カンガルーポーは、西オーストラリアの原野の痩せた土壌に自生するので、一般の寄せ植えに使う肥沃な用土は避けましょう。

日本では一年草扱いされがちですが、本来は宿根草で、我が家では実生25年ほどの大株も育っています。花茎が伸びて2mくらいになります。

カンガルーポーの詳しい記事はこちら

<オージープランツの寄せ植え花材3>
ピメレア

ピメレア

次は中央左側の白い花、名称はピメレアです。学名はPimelea spectabilis、ジンチョウゲ科の植物です。言われてみれば、沈丁花と花の付き方が似ていますね。

エレガントで清楚な雰囲気があり、寄せ植えの中で白い花は、ほかの花との色彩や形状のぶつかり合いを緩衝する役割を果たしてくれます。オージープランツは全般的に派手な色や形の花が多いので、このピメレアの白花を入れることで、雰囲気を落ち着かせる効果があります。原産地は、乾燥している西オーストラリアなので、他の植物同様に過湿を嫌います。

ピメレアの詳しい記事はこちら

<オージープランツの寄せ植え花材4>
ミントブッシュ

ミントブッシュ

次に、寄せ植えの左側で紫の小さな花を咲かせている植物、ミントブッシュをご紹介しましょう。

第一次オージープランツブームが到来した20年ほど前に、初恋草やエレモフィラ・ニベアなどと同時に流行った、個人的には懐かしい花木です。

名前の通り、葉はミントのようなスゥーッと爽やかな香りがするシソ科の植物で、学名はProstanthera です。「プロスタンセラ」として売られていることもあります。

意外なのが花の香りで、妖艶なクチナシに似た香りがするのです。見た目には、紫の小さな花で、どちらかというと葉の緑が多く、地味に見えますが、この香りのために寄せ植えに使用したといっても過言ではないほど、香り効果を狙っています。五感で感じる寄せ植えも素敵ですよね。

ミントブッシュの詳しい記事はこちら

<オージープランツの寄せ植え花材5>
フェアリーピンク

フェアリーピンク

次に中央に広がるシルバーリーフとピンクの花は、フェアリーピンクです。フェアリーピンクは流通名で、正式には英名がAustralian foxglove(オーストラリアン・ジギタリス)。学名はDasymalla terminalis。確かに花は、ジギタリスに似たフォルムですね。

シルバーホワイトの葉と濃いピンクの花とのコントラストにインパクトがあるので、中央に配置しました。寄せ植えの場合、存在感のあるものを中央にすえると、全体の存在感がアップする効果があります。

フェアリーピンクの詳しい記事はこちら

<オージープランツの寄せ植え花材6>
エレモフィラ・ニベア

エレモフィラ・ニベア

隣にあるフェアリーピンクにやや圧倒されていますが、シルバーホワイトの葉と、パープルの小さな花をつけているのが、寄せ植え花材でお馴染みのエレモフィラ・ニベアです。学名はEremophila nivea、俗名はSilky Eremophila。この時期はまだ花数が少なくて残念ですが、花盛りになると淡いパープルに彩られて、とてもきれいです。また、羽毛で覆われたような細く小さな葉は、触るととても快い感触。

エレモフィラ・ニベアは、乾燥を好む西オーストラリアの典型的な植物で、雨や過湿、そしてリン酸にも弱く、他の一般の草花と寄せ植えにして維持するのは難しいでしょう。オージープランツだけの寄せ植えだからこそ使いたい花木です。

エレモフィラ・ニベアの詳しい記事はこちら

<オージープランツの寄せ植え花材7>
ワックス・フラワー

ワックス・フラワー

次にご紹介するのは、前方右に植わるワックス・フラワーです。

花は、まるでロウ細工のようで繊細な雰囲気。フトモモ科の植物で西オーストラリア原産です。学名はChamelaucium uncinatum。たくさんの花が密集して咲くので、華やかさを演出してくれます。低木で、原産地では2mほどに成長します。今回は小さな苗木を使用して、寄せ植えの低い位置を明るくしました。ワックス・フラワーは、大株を単独で鉢植えにしても豪華です。

<オージープランツの寄せ植え花材8>
その他の葉物

ニューサイラン
左は、ニューサイラン‘ピンクストライプ’、右はニューサイラン‘ブラックアダー’。

オージープランツは以上の7種ですが、寄せ植え全体のバランスを取るために、ニュージーランド原産のニューサイランを2種(ピンクストライプとブラックアダー)、そして、根元に同じニュージーランド原産のアステリア、特別参加のエアープランツを使用しています。

アステリア
ニュージーランド原産のアステリア。

ニューサイランの剣葉はシャープな印象を与え、雰囲気をスタイリッシュに引き締めてくれると同時に、伸びやかなラインが広がり感を与えてくれます。アステリアはニューサイランに似ていますが、光沢のある葉が渋く、芸術的な独特の佇まいを見せてくれます。

エアプランツ

根元には特別参加のエアプランツです。洗練されたワイルド感がありますね。

ニューサイランの詳しい記事はこちら

春を迎える玄関に、ちょっと豪華に異彩を放つ、オージープランツの寄せ植えを作ってみてはいかがですか? コロナ禍の憂鬱な気分を吹き飛ばし、明るいオーストラリアの開放的な気分になれますよ。愛犬ココちゃんも、ご機嫌です!

オージープランツの寄せ植え
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