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植物が病気にかかる原因は? かかりやすい病気と対処法をご紹介

植物が病気にかかる原因は? かかりやすい病気と対処法をご紹介

KAY4YK/Shutterstock.com

植物を育てていると、病気にかかってしまうことがあります。できるだけ病気の発症を抑えるためには、対策方法を知っておくことが大切です。この記事では、植物が病気になる要因や、かかりやすい病気、対策法について詳しくご紹介します。

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植物が病気にかかる要因になるもの

うどんこ病
Ruxandra Trica/Shutterstock.com

植物が病気を発症する原因になる病原体は、土中や周囲の植物などに潜んでいるもので、何もないところからにわかに病原体が発生するわけではありません。病原体は落ち葉や枯れ枝、雑草の中や地中に生息し、環境条件が揃うと活動を始めます。植物にすでに潜伏していながらも発症しないケースもあり、目に見える範囲で病原体の有無を確かめることは不可能です。

では、植物はどのようにして病気にかかるのでしょうか。それは環境が要因の多くを占めています。病原体は、ある程度の数が集まり、気温や湿度、天候、通気性などの要因が揃うと活発に成長し、増殖、繁殖能力が高まるのです。主に雨続きで湿度が高い状態を好む病原体が多く、植物に害を与えます。

一方で、植物自体に抵抗力がなく、軟弱な株に育った場合も病気が発症しやすい要因になります。植物同士が密になりすぎて風通しが悪い、土壌の栄養バランスが崩れている、日当たり、風通し、土壌水分や土壌酸度などが生育条件に適していない、といった場合には、植物自体が不健康となり、病気にかかりやすくなるので注意しましょう。

植物に病気をもたらす病原体

黒点病
Tunatura/Shutterstock.com

植物に病気をもたらす病原体は、3つの種類に分類することができます。この項目では、病原体の種類について解説します。

カビ

専門的には「糸状菌」と呼ばれているカビの病原体は、土壌の中に10万種以上がいるとされています。植物が発症する病気の約8割が、このカビが原因です。菌糸を広げたり、風や雨によって胞子を拡散させたりし、広い範囲に繁殖することができます。

カビの多くは、植物の表面に胞子が付着して傷口などから植物の体内に菌糸が入り込み、細胞を分解して栄養を奪いながら繁殖していきます。病気を発症すると、葉や花、茎、つぼみなどが変色・変形したり、腐敗したりといった異変が現れます。カビが原因による病気は、被害が現れた部位に毛に似た菌糸が見られることが多いので、これにより病気の発症を判断してもよいでしょう。

梅雨の時期になると食品にカビが発生しやすくなりますが、カビが原因の病気も高温多湿の環境下で繁殖が活発になります。ただし、なかには10℃ほどの低温で活発に繁殖するカビもあることも覚えておきましょう。

カビが原因となる主な病気は、うどんこ病、炭そ病、さび病、赤星病、つる割病、苗立枯病、灰色かび病、べと病などです。

細菌

細菌とは単細胞の生物で、バクテリアとも呼ばれています。細胞分裂で増殖し、発病するとみるみる弱っていき、進行が速いのが特徴です。病原体となる細菌は、球状、楕円状、柱状など、種類によってさまざまな形をしていますが、細菌自体は非常に小さいため、肉眼で見つけることはできません。

植物に被害を与える細菌の多くは、水中を泳いで移動し、範囲を広げます。したがって、雨や水やりをきっかけに植物に付着して伝染します。植物の傷口などから、雨や水やりによる泥はねによって植物の体内に入り込んで増殖していくのです。

細菌は高温多湿の環境を好み、梅雨の時期には特に発生しやすくなります。病斑が現れたり、急に立ち枯れたり、コブ状のがん腫ができたりしたら、細菌による病気の発症を疑うとよいでしょう。

細菌が原因による主な病気は、青枯病、根頭がん腫病、軟腐病などです。

ウイルス

核酸とタンパク質のみで構成されているのがウイルスで、生物としては分類されていません。ウイルスそのものは大変小さく、電子顕微鏡でしか確認できないレベルです。したがって、肉眼で発見することはできません。自ら伝染していく能力はなく、人の手や園芸バサミなどの資材、昆虫、菌、地中のセンチュウなどを介して植物の傷口などから侵入して感染します。葉色が明らかに変色するほか、発育不良、壊死といった症状が特徴です。ウイルスを病原体とする病気は、薬剤散布などの効果は期待できません。発症を確認したら、周囲に蔓延させないためにも早々に株を抜き取って、土ごとビニールに入れて処分しましょう。

ウイルスを原因とする主な病気は、ウイルス病、モザイク病などです。

植物がかかりやすい病気

この項目では、植物がかかりやすい病気についてご紹介していきます。症状や対策などの参考にしてください。

うどんこ病

うどんこ病
AJCespedes/Shutterstock.com

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。チッ素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

褐斑病

褐斑病
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褐斑病は、カビによる伝染性の病気です。主に葉に褐色またはくすんだ茶色の斑点が現れ、下葉から枯れ上がっていきます。雨が多い時期に発生しやすいのが特徴です。発症した葉を見つけたら、早々に切り取って処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。適用する薬剤を葉の表と裏に散布して、防除します。

さび病

さび病
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さび病は、カビによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。

灰色かび病

灰色カビ病
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灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。

モザイク病

モザイク病
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モザイク病は、ウイルスによる伝染性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどが媒介となって発症します。花弁にすじ状の斑が入って花が小さくなったり、葉にモザイク状のまだら模様が現れて縮れたりします。発病すると治らないので、周囲に病気が蔓延しないように、株を抜き取って土ごと処分してください。媒介となるアブラムシなどを防除することで、病気の発症も防ぐことができます。

植物の病気を防ぐ対策

お気に入りの植物を見つけて、丹精込めて育んでいこうと思っていたのに、病気にかかって枯れてしまったら、がっかりしますよね。植物が病気にかからないようにするための対策として、どんなことができるのでしょうか。この項目では、植物の病気対策について解説します。

気づいたときに早めの対処を心掛ける

農薬
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病原体が付着し、繁殖したことによる病気の発生は、植物に現れた異変によって気づくことができます。しかしそれは、実際にはもっと以前から病気にかかっていて、病状がかなり進んでいる状況なので、すぐに対処することが大切。症状が現れた部分を見つけたら、すぐに切り取り、ビニール袋などに入れて廃棄しましょう。そのまま地面に捨てると、病気が周囲に蔓延するので注意してください。

発生初期なら、薬剤散布によって被害を抑えることができます。病気に適応する薬剤を選び、用法・用量を守って利用しましょう。初心者なら、そのまま使えるスプレータイプを選ぶと便利です。

植物が健全に生育しやすい環境を整える

花がら切り
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【連作をしない】

菜園では特に、連作をしないことがポイントです。連作とは、同じ科の植物を同じ場所に植え続けることです。例えばアブラナ科のコマツナを栽培した同じ場所に、アブラナ科のダイコンを栽培することを繰り返すと、土壌の栄養バランスが崩れて健全に生育できず、病気が発生しやすくなります(このことを「連作障害(れんさくしょうがい)」と呼びます)。菜園を楽しむ場合は植え場所を区分けし、ローテーションする菜園計画を立てることで、病気の発生を抑えることができます。

【健全な苗を選ぶ】

病気を発生させない環境づくりは、苗を購入するときから始まります。健全な苗は、葉色が濃く、節間が締まり、がっしりとして勢いがあるものです。逆に節間が間のびしている、葉色が薄い、葉が縮れている、葉に穴があいている、虫がついている……といった苗は避けてください。

病気にかかりにくい耐病性に特化した苗を選ぶのも一案です。ナスやダイコン、カブなどの野菜苗には、特定の病気への抵抗性を持たせた品種が出回っています。種子袋に表記されている「YR」は「萎黄病(いおうびょう)抵抗性」を、「CR」は「根こぶ病耐病性」を表しています。

また、接木苗を利用する方法もあります。接木苗とは、病気にかかりにくい品種の台木に、育てたい品種の穂木をついで育成したものです。キュウリやメロンなどウリ科の野菜はつる割病にかかりやすいため、カボチャを台木にした接木苗が出回っています。トマトやナスなども接木苗が一般に流通しているので、少し価格は上がりますが、接木苗を選ぶのも病気の発生を抑える環境づくりのポイントです。

【適切な土づくりをする】

病気の発生を抑制するために、植物に適した土づくりをするのも栽培の基本。植物の根が健全に生育する土壌とは、水はけがよく、バランスのとれた栄養分を含み、育てる植物に適した酸度の土壌です。

水はけがよい土とは、団粒構造のふかふかとした状態の土で、完熟堆肥などの有機質資材を投入し根がしっかりと張りやすい土づくりをします。土壌酸度は、土が酸性、中性、アルカリ性のどの状態であるかを表し、植物によって最適な土壌酸度は異なります。特に野菜の栽培では、適した酸度への調整が必要で、適していない酸度で栽培すると、土壌から養分をうまく吸収できずに生育が悪くなり、軟弱な株になるので注意。主に弱酸性から中性(5.5〜7.0)が適正とされており、必要な場合は石灰などを散布して土壌改良を行います。

【風通しをよくする】

病気の多くは、梅雨など高温多湿の時期に発生しやすくなります。風通しをよくして湿度を下げれば、病原菌の活動が鈍くなるので、病気の発症を防ぐことができるというわけです。まずは、植物の草丈や株幅に応じた株間を取って植え付けましょう。生育期に旺盛に茂って密になっていたら、込んでいる部分をすかす剪定をして、風通しをよくします。

【適切な水やりをする】

多湿の状態では病気にかかりやすくなるので、植物に適した水やりが大切です。

地植えの場合は、下から水が上がってくるのでほとんど不要。晴天が続いて乾燥が続くようであれば水やりをして補う程度でかまいません。

鉢栽培の場合は、乾きやすいので定期的な水やりが必要ですが、毎日与える必要はありません。表土が白っぽく乾いたら、鉢底から流れ出すまでたっぷりと水を与えるのが基本です。乾いてもいないのに毎日水やりすると、多湿になって根腐れし、株が軟弱になって病気を呼んでしまいます。適切な水分管理を心がけましょう。

【適した量の肥料を与える】

植物の種類によって、肥料を欲しがるものと、痩せ地を好むものとがあるので、性質に応じた施肥量を心がけましょう。肥料不足でも肥料過多でも、軟弱な株になり病気を招くことになります。

特に与えすぎは禁物。チッ素成分を多く含んだ肥料を与えすぎると、軟弱に育ちやすいので注意します。全体の施肥量が多すぎる場合も、茎葉が茂りすぎて日当たりや風通しが悪くなり、病気が蔓延しやすい環境になるので注意。また、土壌に肥料成分が濃くなりすぎると、植物が肥料やけすることがあります。養分が吸収できなくなって軟弱な株になり、病気にかかりやすくなるので、適切な肥料管理が大切です。

【枯れ葉や花がらの掃除をまめに行う】

枯れた葉や花がらをいつまでも放置しておくと、病気が発生しやすくなります。腐ってくると見た目も悪いので、まめに掃除をして株まわりを清潔に保つようにしましょう。

病気を悪化させないために普段から植物をよく観察しよう

病気対策
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植物の病気は、できるだけ早く対処することが大切です。そのためには、普段から植物の状態を観察して、葉色の変化や縮れなど異変がないかをチェックしましょう。病原体が増殖しやすい環境をつくらないことも大切です。病気から守るケアをしっかり行えば、手間をかけた分だけ植物たちも応えてくれますよ!

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献/
『だれでもわかる病害虫防除対策』監修/草間祐輔 発行/万来舎 発売/エイブル
『植物の病気と害虫 防ぎ方・なおし方』著者/草間祐輔 発行/主婦の友社

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