ガーデンデザインの一つの手法である「ロックガーデン」。興味があるけれど、つくるのは難しそうとか、DIYするにはハードルが高いのではないかと思っている方は多いのではないでしょうか。傾斜のきつい広い面積の場合は、プロに任せるほうが安心ですが、庭の一角にごくゆるい傾斜のロックガーデンをつくる分には、そう難しいことでもありません。この記事では、ロックガーデンの特徴や向いている植物、つくる際のポイントについてご紹介します。
目次
ロックガーデンとは
ロックガーデンとは、傾斜地や斜面などに自然石を組み入れて土留めにし、石と石の隙間に植物を植え込んだ、野趣感漂う庭のデザインのことをいいます。大きさは、一般住宅の庭園の一角に取り入れるものから、大きな自然石をダイナミックに組ませて面で魅せる公園規模までさまざまです。
ロックガーデンは、ロッカリーまたはアルパインガーデンともいわれます。イギリスでは、ガーデンの一つのスタイルとして19世紀後半から庭に取り入れることが流行しました。アルプス山脈の景色を再現するかのように高山植物を植栽し、景色づくりを楽しんだとされています。現在はタイ王国など、熱帯の国々で景観づくりとしてロックガーデンの人気が高まっているようです。
ロックガーデンは斜面につくられるので、すぐに水が抜けて乾燥しがちな環境となります。そのため、乾燥に強い植物や山野草、多肉植物などが向いています。不向きなのは、水辺に自生してきた植物など、水もちのよい環境を好む性質のもの。また、石と石の間を埋めるように植栽していくので、草丈が高くなる植物もロックガーデンには不向き。おすすめの植物は、草丈が低いものや、這うように広がるもの、枝がしだれて伸びるものなどです。
ロックガーデンのつくり方
敷地の外側の斜面などのように大がかりな工事になる場合、石組みはプロにまかせたほうがよいでしょう。特に大きな石を使う際は、しっかり組まないと崩れてしまい、人を巻き込んだ事故が発生しかねないからです。しかし、敷地内の一角で個人が楽しむ程度の規模なら、自作することもできます。ここでは、ロックガーデンのつくり方についてご紹介します。
【手順1】つくる場所と植える植物を選ぶ
ロックガーデンは傾斜地につくることが基本になるので、DIYする場合はごくゆるい傾斜のある場所を選んでください。平らな場所しかない場合は、土を盛ってなだらかな高低差を設けるとよいでしょう。
また、植物は日なたを好むものが多いので、基本的には日当たりのいい場所を選びます。
東向きの場所は午前中に光が差す程度ですが、近年の夏の暑さを考慮すると、じつはベストな環境。石の大きさにもよりますが、日差しを受けると石が蓄熱して熱くなるからです。午前中のみ直射日光が差す程度の環境でも、植物は一年を通して十分に育ちますよ!
南向きの場所は、日当たりがよく植物が生育しやすい恵まれた環境です。しかし、石組みによって熱がこもりやすいので、夏は一日中日差しが届く環境だと植物が弱ってしまうことがあります。その場合は、日除けを設置するなどの工夫が必要です。
西向きの場所は、夏は特に西日に弱い植物の栽培はできませんが、逆に冬は暖かいというメリットがあります。北側の場所では、日差しがあまり望めないので、半日陰で育つ植物を選び、カラーリーフプランツなどを使ってみずみずしく演出するとよいでしょう。
植える植物は、基本的には日なた、半日陰、日陰など環境に応じた性質のものを選んでください。ロックガーデンは水はけがよい環境のため、乾燥した気候を好むハーブ類や多肉植物は比較的向いています。
背丈が高くなる植物はバランスを崩すのでNG。草丈は5〜20cmくらいまでにおさまる植物を選ぶとまとまりがよくなります。草姿は、地面を這うように広がるものや、下に向かって枝葉を伸ばす植物を組み合わせると、変化のある景色になりますよ!
また、ロックガーデンはもともと山野の景色を再現するスタイルでもあるので、山野草や野の花のような楚々とした花姿の植物を選ぶとよいでしょう。派手さを目的として作出された園芸品種は、場合によってはちぐはぐな印象になってしまうかもしれません。
【手順2】石を用意する
ロックガーデンに利用する石は、園芸店やホームセンターで入手することができます。軽石、溶岩石、石英岩などさまざまな種類が揃うので、好みの色や質感で選ぶとよいでしょう。拾ってきた川石や山石などを利用すれば、あまりお金をかけずに作ることもできますが、国立公園や国定公園内の鉱物を持ち帰ることは法律で禁じられているので注意してください。また、他人の私有地内のものも勝手に持ち帰ってはいけません。採取の許可が確認できる場所でのみ拾うようにしましょう。
ロックガーデンには、排水性と保水性に優れる多孔質の溶岩が最適とされていますが、どんな石でもある程度はこれらの性質を備えているので、あまり細かく考えずに気に入ったものを選ぶとよいでしょう。
【手順3】石を組む
ロックガーデンをつくる場所を選び、石を手に入れたら「石を組む」作業に取りかかりましょう。石を組む前に、配置する場所に石全体の2/3が埋まるくらいの大きな穴を掘ります。穴の底は太い棒などで打ちつけて硬くし、なるべくデコボコにならないようにしてください。その穴へ入手した石を配置していきます。飛び石を設置する感覚で、自然な配置にするとよいでしょう。また、石が崩れ落ちて怪我をすることがないように、丈夫な石組みを目指してください。
【手順4】植物を入れるポケットを作る
ロックガーデンでは、石と石の隙間となるポケットが、植物を植栽するスペースとなります。石垣のように隙間を作らずに積んでいく必要はなく、ランダムに植栽スペースを設けていきましょう。隙間があまりに小さいと、植えられる植物が限られてくるので、植木鉢をイメージしてバランスよく植栽部分をレイアウトしてください。ただし、石組みが崩壊することのないように、無理のない配置をすることが大切。土が中にとどまる程度のスペースがあれば十分です。
【手順5】培養土と肥料を入れる
石組みが終了し、植栽するスペースが出来上がったら、そこへ土を入れていきます。庭土を利用する場合は、腐葉土と堆肥、元肥となる緩効性化成肥料をよく混ぜ込み、隙間に入れていきます。市販の草花用の培養土を利用すると、より手軽です。植物が十分に根を張れるように、隙間の奥までしっかりと用土を詰め込みましょう。
ある程度傾斜をきかせたロックガーデンでは、水はけがいいのであまり土質を選びませんが、DIYではゆるやかな傾斜となるので、山野草や多肉植物を植えたい場合は、水はけのよい土壌に整えてください。庭土または市販の培養土に、川砂や硬質赤玉土小粒などの水はけをよくする土壌改良資材を混ぜ込みます。
【手順6】植物を植える
土を入れて植栽スペースが出来上がったら、植物を植え込んでいきます。ロックガーデンでは、低い位置は比較的水もちのよい環境を好む植物を植え、上に向かうにしたがって乾燥を好む植物を植えるようにしましょう。
草花の色や草姿のバランスを見ながら、まずは入手したポット苗を仮置きし、全体のバランスを確かめていきます。配置が決まったら、ハンギングバスケットをつくる時のように、植物が前を向くようにやや横向きにして植え込んでいきましょう。
素敵なロックガーデンをつくるためのポイント
ここまで、ロックガーデンのつくり方をご紹介してきました。この項目では、より素敵なロックガーデンに仕上げるポイントについて解説します。
【ポイントその1】使う石の大きさや重さを考えよう!
DIYでロックガーデンをつくる場合は、傾斜のきつい場所や大がかりな石組みは手に負えなくなりがちです。途中で挫折することのないように、傾斜がゆるい場所を選び、持てる範囲の石を使うようにしましょう。そうすれば、後で石を移動して景色を変えることもできます。
ロックガーデンに使う石は、溶岩石や軽石など軽くて見映えのよいものを選ぶのがおすすめ。これらの石は、水はけがよいというメリットもあります。石の大きさは同じようなサイズを選ばずに、大小異なるものを組み合わせてメリハリをつけると自然な雰囲気を演出できます。
【ポイントその2】石を置くときはあまり考えすぎない!
石を配置する際は、あまり考えずに置くほうが自然な仕上がりになるので、悩みすぎないようにしてくださいね。石のサイズを揃えすぎると人工的な印象になりがち。大小組み合わせると、自然な雰囲気を出すことができます。また、石を等間隔に配したり、向きを一定方向に揃えたりするのも、人工的に見えます。迷った時は、石を自由に投げ入れてみて配置決めをするのも、自然な野山のように見せる方法です。
また、枕木を使うのも一案。土留めとしてはもちろん、石が転がってしまわないようにする役割も果たしてくれます。枕木と石の相性はよく、ナチュラルな雰囲気にまとめるのに重宝するアイテムです。
【ポイントその3】植物を植えるときは自然を意識する!
ロックガーデンは、野山の景色を再現するスタイルなので、植える植物も野趣感のあるタイプを選ぶのがおすすめです。例えば赤やオレンジ、黒などの花色で、花弁にフリルが入るパンジーのように、個性や華やかさを追求して作出された園芸品種を選ぶと、浮いてしまいがちに。パステルカラーのビオラやスミレを選ぶほうが、景観に馴染みやすくなります。
またDIYでロックガーデンをつくる場合は、ゆるやかな傾斜地で持てる範囲の石を取り入れたシーンづくりとなるので、草丈の低い植物をメインに選ぶことになります。草丈の高い植物を植えると、石が隠れてしまってロックガーデンの醍醐味が薄れてしまうので注意。草丈は5〜20cmの範囲の植物を選ぶと自然に見せることができます。
草丈の低い植物で構成するとなると、変化をつけにくいのでは? と感じるかもしれませんね。そこは、草姿の異なる植物を組み合わせればカバーすることができます。タイムやスイートアリッサム、アジュガなどの、這うように広がる植物や、シュガーバインやグリーンネックレスなど枝葉が垂れ下がる植物、半つる性のクレマチスやつる植物のアイビーなどを組み合わせれば、かなり変化をつけることができます。放射状に細い葉を広げるミスキャンタスや斑入りヤブランのほか、セダムなどフォルムの美しい多肉植物を加えるのもおすすめです。
押さえておきたいのは、ロックガーデンは植物の植え付けがゴールではないということ。傾斜地で水はけのよい場所は、植物にとっては育ちやすい環境です。裏を返せば、植物がはびこりやすい環境ということ。石と植物が調和するシーンを保つには、必ず人の手によるメンテナンスが必要です。もさもさと繁茂しすぎて他の植物の育ちが悪くなったり、石がすべて覆われて見えなくならないよう、切り戻したり、抜き取ったりして調整してください。植物と石がバランスよく調和する景色は、石の1/3が顔を出し、ほかは植物に覆われているような状態です。日々のメンテナンスによって、美しいシーンを演出しましょう。
【ポイントその4】何より自由に楽しむことが一番!
ガーデニングで大切なことは、楽しむこと! ロックガーデンもスタイルにとらわれずに、自由にアレンジするのが一番です。そのためには、ハードルを低くしてできる範囲から始めましょう。いきなり大がかりな本格ロックガーデンを目指すのではなく、ゆるやかな斜面で小さいスペースからつくってみるのがおすすめです。少しずつ大きくしたり、慣れた頃に傾斜をつけてみたりと、庭を少しずつ進化させていくことも楽しいもの。あまり気負わず、ぜひ楽しんでください。
ロックガーデンをつくる際の注意点
水はけをよくするために、土に川砂などを混ぜ込んで土壌改良をした場合、傾斜地であるロックガーデンでは、強い雨が降ると粒子が細かい川砂は流出しがちです。土が流れ出すと石組みも崩れやすくなるので、その場合は用土を足すなどして強度を保つようにしてください。
自分の好みのロックガーデンをつくってみよう!
傾斜地に石組みを取り入れて、ナチュラルなシーンを演出するロックガーデン。本格的なロックガーデンにしたい場合はプロに依頼するのが一番ですが、ゆるやかな傾斜で持ち運びできる範囲の石組みを取り入れる範囲であれば、DIYでも十分に楽しむことができます。好きな植物を植え込んで、野趣感漂うロックガーデンを完成させてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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