小さな植物の成長を手元で楽しめるテラリウム。ガラス容器の中に森のような景色を作ることもできます。そんな綺麗なテラリウムを自分で作って部屋で楽しみたいですよね。眺めて美しいテラリウムの作り方や注意点をご紹介します。
目次
テラリウムとは?
テラリウムは「テラ(土地)」と「アリウム(場所)」の2つの言葉から作られた言葉です。広い意味では植物園もテラリウムですが、一般には水槽や透明のガラス、ボトル容器の中に自然の風景を再現し、植物や小動物を育てることを意味します。テラリウムなら、植物を育ててみたいけれど庭がない、ベランダが狭い、日照条件が悪いと諦めていた人も、室内の一角で楽しむことができます。テラリウムは、今、グリーンインテリアとしても人気の高いジャンルです。
テラリウムの種類
テラリウムにはさまざまなスタイルがありますが、容器の設置方法では、主に「置き型」と「ハンギング型」に分けられます。最もポピュラーなのは、置き型のテラリウム。魚を飼育するための水槽やシリンダー型の花器など、さまざまなガラス容器を使って作ることができます。ハンギング型はフックで吊り下げるタイプです。吊り下げられるようなデザインのガラス容器を利用したり、植物用のハンガーを利用して吊します。テラリウムは湿らせた用土を使うことから重量があるので、ハンギング型の容器は小さめで軽量のものが向いています。
一般的なテラリウムは地上部分だけを作ることが多いですが、一部に水辺の風景を作るアクアテラリウムというスタイルもあります。最近は「パルダリウム」と呼ばれることもありますが、イモリやカエルなどの両生類や爬虫類を飼育しながら楽しめる新しいスタイルです。
テラリウムを作る準備をしよう
テラリウムを作る準備では、まずどのようなテラリウムを作りたいか、置く場所や大きさ、作りたい風景をイメージします。それに合わせた容器や道具、中に入れる植物や用土などを事前に用意しましょう。
器具と資材
テラリウム作成に必要なものを用意しましょう。印象を決める容器は、見た目の好みはもちろん、管理のしやすさ、置く場所、使用したい植物などを考慮して決めます。一般には、浅型ガラス水槽、アクリル水槽、ガラス瓶、花瓶などを利用しますが、育てたい植物によっては密閉できる容器にする必要があります。
植物を植える用土は、カビの原因になる有機物を含まないものがよいでしょう。テラリウムに使う用土には、以下のようなものがあります。
- アクアリウム用のソイル…天然土を粒状に焼き固めて作られたもの
- ハイドロボール…粘土を高温で焼成して発泡させた植え付け資材
- セラミス…粒の細かい粘土を焼成した粒状の植え付け資材
- 砂利…大磯石などのアクアリウム用資材を流用
- 赤玉土、鹿沼土…一般の園芸に使う用土
異なる色の用土を使うと地層のような演出をすることも可能です。
植物の光合成に欠かせない光は、部屋の中では不足しがち。そのため、インテリア要素も兼ねて植物育成ライトも用意しましょう。容器のサイズが大きいほどライトの数も多く必要になります。植物を植える作業を効率よくするために、ピンセット、割り箸、園芸用ハサミ、水挿し、スプーン、じょうごなども事前に用意しておきましょう。
アクアテラリウムを作る場合は、水草用おもりも。生き物を入れる場合は、冷暖房器具、サーモスタット(温度調節装置)、水質の調整剤、シェルターなども必要です。
テラリウムに適した植物
部屋でテラリウムを楽しむ場合、弱光、高湿度を好む植物が向いています。具体的にはコケ、シダ、アナナス、ベゴニア、ランなど。アクアテラリウムの場合は、ウィローモスをはじめとする水草類も使えます。植物は園芸店やアクアリウムショップ、通販などで購入できます。購入品には植物の名前が明記されているので、育てる際の参考にしましょう。
植物を選ぶ際には、どのようなタイプのテラリウムを作りたいか、どこに置くかを決め、その場所に合ったものを選びます。その際、メインとなる植物を決め、それに似た性質の植物を合わせるとよいでしょう。容器より大きく育つ植物、成長が早い植物は、植え替えたり、トリミングでサイズを調整する必要があります。植物の性質が分からない場合はネットや図鑑などで調べ、適した環境で管理します。
アクアテラリウムに適した生き物
アクアリウムと合わせたアクアテラリウムでは、植物に加え、一般的に生き物も飼育します。多くの場合、飼育には小型のテラリウムは不向きです。生き物に合わせたサイズの水槽を準備し、飛び出さないよう深めの水槽を使用しましょう。アクアテラリウムに向いている生き物は、イモリ、メダカ、ミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビ、カエルなど。頻繁に清掃が必要な生き物は向いていません。アクアテラリウムの場合、生き物の生息地を再現するような植物を選ぶと、生き物も元気に育ち、より自然に見えます。生き物を飼育する場合は、責任をもって健全に生育できる環境を整えてあげることが大切です。
レイアウト素材
容器、用土、育てる植物や生き物が決まったら、自然な風景を演出するレイアウト素材を準備します。レイアウト素材には、風山石や溶岩石などのアクアリウム用の石材を使うことができます。そのほか流木やコルク、木の枝や落ち葉などの植物性の素材も風景になじみます。また、作った風景の中に動物や人形などのフィギュアを配置して、臨場感のあるシーンを演出しても楽しいでしょう。こういった資材は園芸店やアクアリウムショップ、通信販売などで入手できます。天然素材の中でも植物性の素材は、虫やカビの発生源になることもあるので、必要があれば煮沸消毒などをしてから利用するようにしましょう。
テラリウムの作り方
テラリウムに必要な道具や植物が準備できたら、いよいよテラリウムを作ります。順を追って作成していきましょう。
1:植物・レイアウトを決める
ここまで、どのようなテラリウムを作りたいかイメージし、それに合った植物や生き物、容器を準備してきました。レイアウト素材も含め、材料が揃った時点で、より具体的にどのようなレイアウトにしたいかを考えます。植物やレイアウトが明確でないと、バランスが悪く違和感のあるテラリウムになることも。レイアウトが浮かばない、どのような組み合わせがよいか分からない場合は、準備した植物が生息している場所を参考にしてみましょう。より自然な雰囲気のテラリウムを作ることができます。
2:洗浄・殺虫を行う
一度テラリウムを組み上げた後は、細かいところまで手入れをするのは難しくなるので、事前に害虫や病気を予防することが大切です。入手した植物についている土や余計な生物をケースに持ち込まないように水でしっかり洗浄し、もともと付いている土は可能な限り洗い落とします。虫がいた場合、植物だけの場合は駆除に適した薬剤を使用します。生き物がいる場合は、テラリウムに入れる前に二酸化炭素を使って駆除します。その際、空気漏れのない袋に虫が発生している岩や流木を入れ、二酸化炭素を注入して殺虫します。植え付ける植物は、枯れている部分があると腐ったりカビが生えたりする原因になるので取り除きましょう。生き物を入れない場合は、植物やレイアウト素材を消毒してから使うと、ある程度カビの発生を抑えることができます。
3:レイアウトの仮組みをする
いよいよ準備した容器や水槽にレイアウト素材を入れていきます。まずは全体の印象を決めるメイン素材から組み立てていきます。例えば、大きな溶岩石などはメインとなる素材なので、最初に配置を決めましょう。テラリウムを作る際は、下から上の方向で組み上げていきます。一方向からだけでなく、いろいろな方向から自然に見えるか、安定しているかを確認します。大きいサイズのテラリウムを作る場合、レイアウト素材やソイル(用土)の重さで底面が割れる危険があります。その場合は、ソイルで見えない部分には発泡スチロールなどの軽い素材を使うなどの工夫が必要です。
4:ソイルを入れて植物を植える
植物やレイアウト素材のおおまかな位置が決まったら、ソイルを底に敷きます。ソイルは隙間のないように入れることが大切です。隙間があると植物の給水がうまくいかなかったり、レイアウトの崩壊の原因になります。完成後に隙間や空間があると修正しにくいので、ソイルを投入しながら、適宜、細い割り箸やピンセットなどを使って隙間なく入れていきます。
ソイルを入れ終えたら、レイアウトのイメージに合わせて植物を植えていきます。正面からだけでなく側面や上部からもチェックし、違和感がないようにしましょう。植物がグラグラしていると根張りが悪くなるので、しっかり固定します。用土が足りないと水切れしやすくなるので注意します。また、植物は成長するので、隙間なく植えるとすぐに窮屈になってしまいます。ある程度スペースの余裕を持って植えましょう。
大きなテラリウムの場合、ソイルを入れた後は重くて動かせなくなる可能性があるので、入れる前に設置予定の場所に移動しておくようにしましょう。
5:養生・メンテナンスを行う
完成したテラリウムをよりよい状態で長く楽しむには、定期的なメンテナンスと養生が必要です。
水分補給は、朝夕に霧吹きで行うとよいでしょう。枯れた葉は取り除き、病気予防に努めます。育ちすぎて密集した場合は、蒸れないようにトリミングします。肥料が多いと病気やカビの原因になるので、成長期にごく少量与えるようにしましょう。また、生き物を飼育する場合は、レイアウトの完成から1カ月程度経過して、植物が根付いたタイミングで入れるようにします。
テラリウム作成時の注意点
テラリウムを作成する際に注意するポイントをご紹介します。
植物やレイアウト素材を他人の私有地、公共の土地などで採取しない
日本の土地は基本的に所有権が存在するので、無許可で植物の採取をしてはいけません。土地の所有者に事前に許可をとりましょう。また、国、地方自治体が管理している場所では、原則的に植物や石の採取は禁止されているので注意が必要です。採取は自分が所有する土地でのみ行い、それ以外は園芸店やアクアリウムショップなどから購入するようにしましょう。また、戸外で採取した植物には病原菌や虫が付着している可能性があるので、十分処理してから使用するようにしましょう。
口が狭い容器の使用は避けたほうが無難
容器は好みや植えたい植物に合わせて選びますが、口が狭い容器は、植える時やその後のメンテナンスに手間がかかり技術を要するケースが多いです。植物やピンセット、手などが入れやすい、口が広いものを選ぶと管理しやすいでしょう。ただし、口が広いほど乾燥しやすくなるので、植える植物の性質を考慮したうえで容器の形を考える必要があります。
植物を詰め込みすぎない
初めてテラリウムを作る時は、いろいろな植物、レイアウト素材を入れたくなりますが、詰め込みすぎると窮屈な印象になってしまいますし、密集していると病気の原因にもなります。さらに植物は時間経過とともに成長するため、スペースを確保しておく必要があります。どのような風景を作りたいのか、全体のバランスやレイアウトのイメージを明確にし、思い浮かばない場合は、メインの植物の自生地の風景や、テラリウム作品を見て参考にしましょう。レイアウトしてみて、植物が多すぎる場合は、減らしてバランスを見てみましょう。
テラリウム維持の注意点
完成したテラリウムを長く良好な状態で保つための置き場所や管理方法についてご紹介します。
直射日光が当たる場所で育てない
直射日光に当たると葉が焼けてしまうことがあります。また、密閉した空間に日光が当たると急激に温度が上昇し、蒸れたり、水がお湯のようになって枯れてしまうことがあります。テラリウムは直射日光の当たらない明るい日陰に置きましょう。光が不足する場合は植物用の人工ライトを設置します。また、窓際は温度変化が大きいので、窓から離してできるだけ温度が一定の場所に置きましょう。
水のやりすぎは控える
水のやりすぎは、根腐れの原因になります。密閉容器で根腐れを起こすとカビや病気の原因になり、健康な植物にまで被害を及ぼします。根腐れしないよう、基本的に根元が乾いてから給水し、湿度は霧吹きで補うようにしましょう。特に冬は温度が下がり、植物の成長が緩慢になる時期です。よく観察し、あまり乾いていないようならば水やりを控えるように気を付けましょう。
好きな植物や生物でテラリウムを作ってみよう!
テラリウムは、コケなど身近な植物と、空き瓶や花瓶など身近な道具を利用して気軽に始められます。好みのデザインで作って、グリーンインテリアとして飾ることもできます。大型のものは、インテリアとしてもインパクト抜群。今回ご紹介した作り方や注意点を参考にして、ぜひテラリウムに挑戦してみましょう。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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