狭い場所でも、地植えできない場所でも、気軽に季節の花を楽しめる「寄せ植え」。たった5株の苗を組み合わせることで、花の愛らしさと葉の調和によって、うるおいのある一鉢ができます。見応えある寄せ植え作りを紹介してくれるのは、グリーンギャラリーガーデンズの堀田裕大さん。初心者でも簡単にできる冬の寄せ植え作りのコツと花苗選びについて教えていただきます。
目次
寄せ植え作り【5苗の役割】
寄せ植えの作り方は、用途や製作者によっても多少異なりますが、植えた草花の成長も楽しむためには、ある程度ゆとりのある容器に植え込むことがポイントです。ここではあちこちに置けて汎用性が高い、内径21cmのコンテナを使いますが、それには9cmポット苗なら5株ほどがちょうどいいボリューム。植物それぞれに、主役、準主役、脇役(引き立て役)といった役まわりを持たせて植え込みます。
主 役:1種類/花が大きくて目立つなど存在感を放つ植物。
準主役:1種類/主役に次ぐ、存在感を放つ植物。
脇 役:3種類/主役、準主役を引き立てつつ、全体を調和させたり、動きを出したりする植物。
※主役が2種類あって、準主役がないこともあります。
◆今回使う5株の花苗
- ヒヤシンス(青) ……主役
- プリムラ・ジュリアン‘マスカットのジュレ’ ……準主役(はじめは主役)
- イベリス‘ブライダルブーケ’ ……脇役1
- コロニア・バレンティナ‘バリエガータ’ ……脇役2
- クローバー‘ティントセピア’ ……脇役3
では、今回セレクトした5種の魅力をご紹介しましょう。
【今回使った植物紹介】
ヒヤシンス(青)
キジカクシ科球根植物
草丈:約20cm
開花期:3~4月
花色:青、ピンク、白、赤、紫、黄
透明感のあるつややかな花を連ね、強い香りを漂わせる。春咲きの秋植え球根だが、寄せ植えなど早く楽しみたい場合は、芽出し球根がおすすめ。花が終わったら、花茎を残して花がらを摘み、梅雨に入る前に掘り上げて秋まで乾燥させるとよい。
イベリス‘ブライダルブーケ’
アブラナ科多年草
草丈:20~30cm
開花期:4~6月
花色:白
純白の花を株いっぱいに咲かせる大輪系のイベリス。濃緑の葉は常緑で匍匐性なので、グラウンドカバーやロックガーデンにもおすすめ。摘心しながら育てるとこんもりとした草姿となり、花数も増える。耐寒性は強いが耐暑性は弱い。
プリムラ・ジュリアン‘マスカットのジュレ’
サクラソウ科多年草
草丈:5~10cm
開花期:12~4月
花色:白
花弁の先がほんのりフリルがかる、バラを思わせる華やかなジュリアン。どんな花でも合わせやすい淡いライムグリーンの花弁は、厚みがあり花もちがよい。日当たりを好むが、夏は風通しのよい半日陰で管理するとよい。
コロニア・バレンティナ‘バリエガータ’
マメ科常緑低木
樹高:30~100cm
開花期:4~5月
花色:黄
クリーム色の斑が入る小さい葉と黄色い花が愛らしい。株はブッシュ状にこんもり育ち、茎はしなやか。寒さに強く丈夫で、暖地では常緑で越冬するが、寒冷地では落葉することもある。
クローバー‘ティントセピア’
マメ科/多年草
草丈:5~15cm
開花期:3~6月
花色: 白
愛らしいクローバーの、えんじ色とグリーンのシックな品種。耐寒性が強く丈夫な常緑性。這って広がるので、グラウンドカバーとしても重宝する。直射日光をよく当てることで、葉の発色が鮮やかになる。
◆寄せ植えに使うコンテナと基本の道具
どんな植物ともよくなじむ、色が薄くシンプルなデザインの素焼きのコンテナを使います。床に直置きでも何かの上に置いても、違和感のない大きさなのもポイントです。サイズは、高さ23cm、内径21cm。
- 土入れ用トレイ/植え付け時の土がこぼれるのをキャッチ。
- 土入れ/狭い場所に土を注ぎ入れるのにも便利。
- 鉢底ネット/土の流出や、ナメクジなどの害虫が鉢内に侵入するのを防ぐ。
- 植え替え棒/植え付け時に、根株の隙間に培養土がきれいに入るようにつつくための棒。
- 園芸用ハサミ/枯れた花や葉を摘んだり、茂りすぎた枝葉を整理するのに使います。
- 肥料/鉢内で植物が成長するのに必要な栄養。
- 鉢底土/水はけをよくするために、鉢底に敷く軽石。
- 培養土/植物が成長するための土壌。園芸店やホームセンターで販売されている草花用を使用しましょう。
初秋の寄せ植え作り【植え付け手順】
1. 植えこむ前に、苗を並べてイメージのデザインを確認しておく。
2. コンテナの穴に鉢底ネットを置く。
3. 鉢底土をコンテナの2割ほどまで入れる。
4. 培養土に元肥を混ぜ込んでおく(※肥料によって、入れる量は異なります。パッケージに記載された規定量を使いましょう)。
5. 鉢底石が入ったコンテナに、土入れで培養土を入れる。
6. 苗の根鉢が入る程度のスペースを残しておく。
7. 植え替え棒を使って、根鉢をほぐすようにしながら崩していく。
8. 根鉢の肩の部分も削り、写真の程度まで崩す。
9. 芽出し球根のヒヤシンスは、根が折れないようにていねいに3分割する。
10. 鉢の中に入れ、上から見た時に正三角形を描くように配置して植える。
11. コロニアの根鉢は簡単にほぐして2分割し、ヒヤシンスの間2カ所に植える。
12. イベリスの根鉢も簡単にほぐして2分割し、鉢中央とコロニアが植わっていないヒヤシンスの間に植える。
13. プリムラの根をほぐしたら、鉢の前面に植える。
14. クローバーの根鉢も簡単にほぐして2分割する。
15. クローバーをプリムラとイベリス、それぞれの脇に植える。
16. 植え替え棒で根鉢のすき間を軽くつつきながら土を入れ込んでいく。ウォータースペース(水やり時に水や土があふれてこないようにとる、土の表面から鉢の上縁までの空間)として、2cm程度あけること。
17. 植え替え棒で根鉢のすき間を軽くつついて、しっかり土を入れ込む。
18. 葉やつるの重なりを直し、見栄えよくする。
19. 完成!!
まだ花を咲かせていないヒヤシンスを覆うように繊細な草花が広がり、春先の野原を思わせる風景を描きました。この時点ではライムイエローのプリムラが主役。コロニアのクリーム色の斑入り葉が、プリムラとイベリスの花色をつなぎ、まとまりを生んでいます。また、ダークカラーのクローバーをきりりと引き締め役にしながら、大人っぽい雰囲気を添えました。
【デザインのポイントまとめ】
- 量感のあるヒヤシンスと繊細な草花をつなぐように、キュッと塊になるプリムラを配置。
→全体のバランスを取る。 - コロニアで縦の動きを添えつつ明るさもプラス。クローバーで横の動きを添えつつ、やさしい色合いを引き締める。
→メリハリをつける。 - ヒヤシンスはブルーの花色をチョイス。
→プリムラとの反対色で、印象的に魅せる。
置き場所や管理のポイント
しばらくしてヒヤシンスが咲き始めると、素朴な雰囲気だったアレンジは一気に華やぎを放つようになります。ディスプレイの背景には、使い古したウッドボックスや、フィカス・プミラの実を入れたバスケットを用いて、球根植物の透明感をぐっと引き立てました。ストーリー性を出すために、鳥のオーナメントをプラス。春の訪れを待つ時間がいっそう楽しくなるように飾りました。
日当たりと風通しのよい場所に置き、霜が降りるような日は、軒下へ移動させましょう。
花がらはこまめに摘みます。開花期間が長いので、株が弱ったり花数が減らないように、液肥なら2週間に1回、粒状の肥料なら1カ月に1回追肥をします。
Credit
制作&アドバイス/グリーンギャラリーガーデンズ 堀田裕大
グリーンギャラリーガーデンズ店長。切り花の業界で学んだデザインのノウハウを生かした寄せ植えづくりに定評があり、2017年日比谷ガーデニングショーの寄せ植えコンテストで農林水産大臣賞を受賞。園芸誌などでも活躍中。
グリーンギャラリーガーデンズ紹介記事はこちら
SHOP DATA
東京都八王子市松木15-3
TEL:042-676-7155
営業時間;10:00~19:00 (火曜日10:00~17:00)
http://www.gg-gardens.com/
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋深まる
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガ…
-
ガーデン&ショップ
里帰りした宿根草「アスター‘ジンダイ’」が初めての開花! 東京パークガーデンアワード@神代植物公園で観…
今、ガーデンに関わる人たちの間では、温暖化や病害虫の影響を受けない植物のセレクトや、手のかからないローメンテナンスな庭づくりを叶える優れた植物を求めて日々チャレンジが続いています。そんななか、アメリ…
-
イベント・ニュース
【秋バラが本格的に開花!】秋の風情が深まる「横浜イングリッシュガーデン」へ出かけよう!PR
希少なアンティークローズから最新品種まで、国内外でも屈指のコレクション数を誇る「横浜イングリッシュガーデン」は、秋に色香を増すバラも続々開花が進んでいます。11月2日(土)からは、季節を先取りしてクリス…