小さな庭と花暮らし「ガーデンシェッドの小窓に季節の彩りを 〜新しい年に思いを馳せて〜」
多くの植物が休む年末年始は、一年を振り返りながら、新しい年の庭に想いを馳せるのにもいい時期です。神奈川県横浜で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんは、「ガーデンシェッドの2つの小窓」がお気に入りの場所。窓辺に誘引したつる性植物がドラマチックな表情を見せ、庭の草花やオーナメントも飾って四季折々の景色を楽しんでいます。これまでのお気に入りのシーンを振り返ります。
目次
小窓にひと足早い春を
立春を迎える頃、冬枯れの庭で枯れ葉を掻き分けると、土の中から黄緑色の芽をちょこんと出し、今か今かと出番を待っている春咲き球根花。
ガーデンシェッドの小窓にも、晩秋に仕込んでおいたヒヤシンスやムスカリの水耕栽培の新芽が、初々しい彩りを添えています。
そしてもう一つ、この時季、窓辺に飾りたくなるのが芽出し球根。毎年、ホームセンターや花屋さんで見かけると、つい、いくつも手に取ってしまいます。スノードロップ、クロッカス、ムスカリ、早咲きスイセン「ティタ・ティタ」。気がつけば、いつもカゴの中はいっぱいです。これらの小球根は、小鉢に植え替えたり、1球ずつ根洗いしてガラスの器に植え替えます。また、丸いワイヤーリースを使うと、球根花たちが向かい合って、まるでおしゃべりしているような愛らしい寄せ植えに。
さらに、表面に苔や枯葉をあしらって、ナチュラルな雰囲気に仕上げます。ちょっと面倒だけれど、春に想いを馳せながら作業するこのひと手間も、なかなか楽しいもの。見た目もぐんとおしゃれになって、殺風景な小窓に華やぎを与えてくれます。
柔らかな陽射しが差し込む窓辺に並んだひと足早い早春の息吹。こんな風景を目にすると、外気の凍えるような寒さも心なしか暖かく感じます。
そう、小さな庭の四季は、ガーデンシェッドの小窓から始まります。
新緑が美しい春の小窓
日増しに暖かくなる陽射しに、庭の草花が一斉に芽吹き始める春は、冬の間に誘引したつるバラやクレマチス、ヘンリーヅタなどつる性植物の若葉が小窓を彩ります。勢いよく伸びるしなやかなつるとみずみずしい葉の美しさは、この時季ならでは。特にヘンリーヅタは、ガーデンシェッドの中から逆光で見る造形的な葉の形や褐色の葉色がとても美しく、何だか一枚の絵のように見えます。植物をこんな目線で観賞できるのも、この小窓のおかげ。庭の楽しみがより豊かになります。
初夏〜夏の小窓は花々に包まれて
鮮やかな新緑が目に眩しい初夏は、多年草の花々が咲き継ぐ彩りの季節。小窓の周りも、待ちに待ったつるバラとクレマチスの競演で一気に華やぎます。
まず咲き始めるのが、つるバラ‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’。中輪房咲きのこのバラは、一日で花色が杏色〜淡い黄色〜白色へと変化するのが特徴で、見る時間帯によって表情がずいぶん違います。特に早朝は、杏色〜白色のグラデーションが際立ち、格別の美しさ。しかも、香りも濃厚。満開時には、毎朝、真っ先に庭に出て、その姿を心ゆくまで堪能します。
少し遅れて咲き始めるフロリダ系クレマチス‘ビクター・ヒューゴ’と‘流星’は、開花時期がつるバラと重なるので、小窓の景色をドラマチックに魅せる最適な品種。‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’と反対色の濃紫色の‘ビクター・ヒューゴ’、それに淡藤色の‘流星’をセレクトして、互いが引き立つように植栽しました。2つのクレマチスのダークな花心と整った剣弁が醸す、シックな雰囲気も大好き。
特に、‘流星’のシルバー系にも見える他にはない独特な花色が、初夏らしい爽やかさを添えています。
彩り豊かな花々と、芳しいバラの香りに包まれた初夏の小窓は、まさに極上の癒やしです。
そして、去年は、初めて小窓に朝顔「江戸風情」を誘引しました。数年前、紫の絞り模様の花に一目惚れして以来、毎年採種して鉢植えで楽しんでいる、夏の庭に欠かせない品種です。鉢植えに収まらないほど発芽してしまったので、試しに地植えしたところ、つるバラとクレマチスが咲き終わる絶妙のタイミングで開花し始めました。
ところが、なぜか、ここだけ絞り模様のない紫色の花ばかり。もともと模様に個体差がある「江戸風情」ですが、これにはちょっと驚きました。一体、どうしちゃったの…?未だ原因は定かではありませんが、こんなサプライズもガーデニングのおもしろさですね。
そんな朝顔の花を愛でることができるのも、たったの半日。だからこそ、日々開花する一輪一輪がいっそう愛おしく感じます。
新たに加わった小窓の夏景色……。
夏の朝の楽しみが、また一つ増えました。
秋〜冬の小窓は草花とオーナメントで賑やかに
残夏の夕暮れに虫の音が響く頃、真っ先に秋の訪れを告げる秋明菊。この花が咲き始めると、ノコンギクや清澄シラヤマギクなど野菊たちも次々と開花します。どの花も多花性で花もちがいいので、庭だけでなく切り花にして室内やガーデンシェッドの窓辺に飾って楽しみます。酷暑の夏は、庭の花を活ける機会がほとんどないので、久しぶりの花活けに心躍ります。しかも、秋は大好きな花ばかり。やっぱりガーデンシェッドの小窓には、素朴な庭の草花がよく似合います。
そして、秋のイベントといえばハロウィン。ここ数年、子どもたちが成長するにつれ、何となく気が向かなくなってしまいましたが、毎年、おもちゃカボチャでジャック・オー・ランタンを作って小窓に飾っていました。ハロウィン当日、灯りをともすと嬉しそうに手を叩いて喜んでくれた子どもたち。その顔が見たくて、慣れない彫刻刀を片手に黙々と。今となっては懐かしい思い出です。
それにしても、小窓にちょこんと並んだジャック・オー・ランタン。何とも愛嬌があって可愛いな。今年のハロウィンは、久しぶりに飾ってみましょうか。
草木がこっくりと色づく晩秋は、紅葉や実物を飾ります。例えば、紅葉のリースやバラの実と西洋カマツカの実を束ねたブーケ。自然と植物が織りなす色彩の何と美しいこと。宝石店のショーウィンドウを眺めているような、うっとりした気分になります。
初冬の気配が漂うクリスマスシーズンには、フレッシュな針葉樹のリースやスワッグを。すると、落葉して殺風景になった小窓に清々しい緑が映えて明るい雰囲気になり、クリスマス気分も高まります。
そして、庭の一年を静かに見守ってくれたフクロウ(オーナメント)も窓辺にお引っ越し。冬の間、ここがフクロウ親子の住処です。寒々しい冬枯れの庭より、ここのほうが居心地もよさそうです。もう一つの窓辺には、ヒヤシンスやクロッカスの水耕栽培を…。
冬の小窓も、春を待つ生き物たちで意外と賑やかです。
Credit
写真&文 / 前田満見
まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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