日本には古くから暦に沿った季節の風習があり、祈りを込めて正月や盆などの行事が行われてきました。そこにはさまざまな植物が関わっています。近年では意識されなくなってしまったものもある一方で、新型コロナウイルスの禍中にあって、新たに祈りの文化が見直されています。一年の暦と関連する植物、ガーデニングの作業をまとめました。
目次
1、3、5、7、9月の五節句
暦は古代中国から伝わり、日本人の風習と融合して受け継がれてきました。 五節句(節供)は江戸時代に定着したといわれ、現在でも全国各地でさまざまな行事が行われています。それぞれの節句に、別名として植物の名前が使われています。
1月7日 人日(じんじつ)/七草の節句
中国には、正月7日の朝に7種の野菜を食べて邪気を避ける習慣があり、日本でも平安時代初期には、無病長寿を願って7種の若菜を食べる習慣が生まれていました。七草がゆにするようになったのは、室町時代以降だといわれています。
3月3日 上巳(じょうし)/桃の節句
平安時代には紙の人形を川に流して、子どもの厄を除けました。現在の形となったのは安土桃 山末期〜江戸時代です。旧暦 3月3日頃は桃の花が咲くので桃の節句と呼ばれますが、雛人形には京都御所に植えられている桜と橘が飾られます。
5月5日 端午(たんご)/菖蒲の節句
旧暦5月5日は、高温多湿で伝染病や害虫が多く発生しました。それを避けるため、香りの強いショウブやヨモギを菖蒲湯や厄除けの飾りなどに利用するようになりました。ちなみに、ショウブとハナショウブは別物なのでご注意を。
7月7日 七夕(しちせき)/笹の節句
織姫と彦星の伝説でおなじみの節句です。五色の短冊に願い事を書いて葉のついた竹に飾りますが、このとき五色の吹き流しもつけるのは厄除けのため。また、竹や笹は生命力が強く、古くから縁起物の植物として使われてきました。
9月9日 重陽(ちょうよう)/菊の節句
これから訪れる寒さに対して、無病息災や長寿を願い、邪気を避ける節句です。キクは古来、霊薬といわれました。料理や酒、菊湯に使われたほか、地方によっては、重陽の晩にキクの花を詰めた「菊枕」で眠る風習もあるそうです。
事始めの目安にしたい二十四節気
二十四節気は、一年を春夏秋冬の4つの季節に分け、 さらにそれぞれを6つに分けたもので、農耕作業の目安として使われてきました。旧暦から新暦への移行で、現在では季節感がずれるものもありますが、関わる植物や習慣をご紹介します。
雨水
雨水は古くから農作業の準備を始める日とされてきました。まだまだ寒いですが、春から家庭菜園やガーデニングを始める準備として、スコップや用土、肥料、手袋など園芸道具を点検しておきましょう。壊れたり、不足しているものがあれば、補充しておきましょう。また、雑草対策として除草剤を用いる場合は、この頃から使って発芽させないようにすると後処理も楽です。
啓蟄
暖かくなり、昆虫たちが活動を開始する時期です。アブラムシなどは発生初期に退治しておくと爆発的に増えることがありません。対策を始めましょう。
穀雨
タネまきや育苗を始める時期とされています。地域によってはまだ霜が降りることもあるので、地植えにするのは霜の心配がなくなってからですが、この頃までにタネや苗を買っておきましょう。
大暑
大暑は暑中見舞いを出す季節。コロナ禍で会えない人には花を送ってみてはいかがですか。ブーケなどのほかに、寄せ植えの贈り物もあります。立秋を過ぎた場合は「残暑見舞い」になります。
秋分
秋分の時期には月見団子をお供えし、名月を眺める「中秋」があります。厄除けの力があるとされるススキを用意してお月見を楽しみましょう。
冬至
冬至はカボチャを食べることで知られます。夏に収穫したカボチャは、保存すると栄養価が高まり美味しくなります。今年は家庭菜園で育ててみませんか?
季節の変わり目の目安となる雑節
節分
豆まきのほかにも、ヒイラギにイワシの頭を挿したものを玄関に飾る風習があります。ヒイラギのトゲトゲとした葉には魔除けの力があるとされていますが、防犯上でも活躍してくれる植物です。
土用
夏の土用がおなじみですが、土用は春夏秋冬それぞれあります。この期間は土をさわらず休める時期とされています。肥料や堆肥を混ぜた土は、2週間程度おいてから植物を植えたりタネを播いたりしたほうが生育がよいので、これまでに土づくりを済ませておきましょう。
八十八夜
「♪夏も近づく」で知られる八十八夜はタネまきの時期。ちょうどゴールデンウィークの期間中で菜園売り場が賑わいます。野菜の苗は時期を逃すと手に入らなくなってしまうので、タイミングよくゲットを!
半夏生
園芸でハンゲショウといえば、ドクダミ科の多年草。独特の匂いは好みが分かれるところですが、緑と白の葉は清涼感を与えてくれます。
彼岸
彼岸にいただく「ぼたもち」「おはぎ」の名前の由来は花の名前です。ボタンの咲く春の彼岸は「ぼたもち」、ハギの花が咲く秋の彼岸は「おはぎ」。庭の植物と食の文化が粋なセンスで結びついていました。それぞれのお花を飾って、「ぼたもち」「おはぎ」をいただきましょう。
お守りの植物を庭に植えよう
ヒイラギとナンテン
ヒイラギとナンテンは、古くから魔除けの植物として庭に植えられてきました。ヒイラギは家の北東(表鬼門)に、ナンテンは南西(裏鬼門)に植えるといいとされています。ナンテンの名前は「難を転じる」にもつながり、正月の飾りなどにもよく使われます。
桃と柑橘
古事記には、イザナギノミコトがモモの実を投げて黄泉の国の魔物を追い払ったという話がありますが、モモも魔除けの果物として珍重されてきました。また、タチバナやユズなど香りのよい柑橘類の果樹も、厄除けの目的で植えられてきました。
Credit
執筆/株式会社グリーン情報
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再構成/ガーデンストーリー編集部
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