狭い場所でも、地植えできない場所でも、気軽に季節の花を楽しめる「寄せ植え」。たった5株の苗を組み合わせることで、花の愛らしさと葉の調和によって、うるおいのある一鉢ができます。見応えある寄せ植え作りを紹介してくれるのは、グリーンギャラリーガーデンズの堀田裕大さん。初心者でも簡単に作れる初冬の寄せ植え。そのコツと花苗選びについて教えていただきます。
目次
寄せ植え作り【5苗の役割】
寄せ植えの作り方は、用途や製作者によって多少異なりますが、草花の成長も楽しむためには、ある程度容器にゆとりをもたせて植え込むことがポイントです。ここではあちこちに置けて汎用性が高い、内径21cmのコンテナを使いますが、それには9cmポット苗なら5株ほどがちょうどいいボリューム。植物それぞれに、主役、準主役、脇役(引き立て役)といった役まわりを持たせて植え込みます。
主 役:1種類/花が大きくて目立つなど存在感を放つ植物。
準主役:1種類/主役に次ぐ、存在感を放つ植物。
脇 役:3種類/主役、準主役を引き立てつつ、全体を調和させたり、動きを出したりする植物。
※主役が2種類あって、準主役がないこともあります。
◆今回使う5株の花苗
- ビオラ‘オレンジコアラ’……主役
- ストック(八重咲き)……準主役
- ハボタン……脇役1
- スイートアリッサム……脇役2
- シルバーレース……脇役3
では、今回セレクトした5種の魅力をご紹介しましょう。
【今回使った植物紹介】
ビオラ‘オレンジコアラ’
スミレ科一年草
草丈:10~15cm
開花期:10月下旬~5月
花色:ピンク~オレンジ~茶
丸みのある1.5cmほどの愛らしい小花をたくさん咲かせる。花色はオレンジがかるピンクにブラウンがにじむ、ニュアンスたっぷりのカラー。姉妹品種の‘ピンクコアラ’も人気。
ストック(八重咲き)
アブラナ科一年草
草丈:20~80cm
開花期:11~5月
花色:ピンク、白、薄黄、紫
すっと立つ花穂に、ほんのり甘い香りのある花をつけるストック。一重咲きもありますが、より華やかな雰囲気の八重咲きタイプが人気。寄せ植えには矮性品種がおすすめ。
ハボタン
アブラナ科一年草
草丈:10~100cm
葉の観賞期:11~3月
葉色:白、ピンク、クリーム、紫、黒など
キャベツの仲間で、丸葉やちりめん葉などさまざまな葉形があり、色、質感なども多彩。大きさ(高さ・直径)もいろいろありますが、寄せ植えにはコンパクトなタイプがおすすめ。
スイートアリッサム
アブラナ科一年草
草丈:約15cm
開花期:4~11月
花色:白、ピンク、アプリコット、クリーム、紫
無数の小花を咲かせ、横に広がるようにこんもりと育ちます。高温多湿には弱いですが、本来は多年草なので、うまく環境に合えば翌年も花を咲かせることができます。
シルバーレース
キク科多年草
草丈:約60cm
開花期:5~7月
花色:白
レースのように繊細な切れ込みが入るシルバーリーフ。雪の結晶のような美しさが楽しめます。初夏に白花を咲かせますが、基本的に葉を観賞します。
◆寄せ植えに使うコンテナと基本の道具
どんな植物ともよくなじむ、色が薄くシンプルなデザインの素焼きのコンテナを使います。床に直置きでも何かの上に置いても、違和感のない大きさなのもポイントです。サイズは、高さ23cm、内径21cm。
- 土入れ用トレイ/植え付け時の土がこぼれるのをキャッチ。
- 土入れ/狭い場所に土を注ぎ入れるのにも便利。
- 鉢底ネット/土の流出や、ナメクジなどの害虫が鉢内に侵入するのを防ぐ。
- 植え替え棒/植え付け時に、根株の隙間に培養土がきれいに入るようにつつくための棒。
- 園芸用ハサミ/枯れた花や葉を摘んだり、茂りすぎた枝葉を整理するのに使います。
- 肥料/鉢内で植物が成長するのに必要な栄養。
- 鉢底土/水はけをよくするために、鉢底に敷く軽石。
- 培養土/植物が成長するための土壌。園芸店やホームセンターで販売されている草花用を使用しましょう。
晩秋の寄せ植え作り【植え付け手順】
1. 植え込む前に、苗を並べてイメージのデザインを確認しておく。
2. コンテナの穴に鉢底ネットを置く。
3. 鉢底土をコンテナの2割ほどまで入れる。
4. 培養土に元肥を混ぜ込んでおく(※肥料によって、入れる量は異なります。パッケージに記載された規定量を使いましょう)。
5. 鉢底石が入ったコンテナに、土入れで培養土を入れる。
6. 苗の根鉢が入る程度のスペースを残しておく。
7. 植え替え棒を使って、根鉢をほぐすようにしながら崩していく。
8. 根鉢の肩の部分も削り、写真の程度まで崩す。
9. 後部(奥)の、ストックから植える。
10. ストックの前の中央部に、主役のビオラを植える。
11. 1つのポットに数株入っているスイートアリッサムは、根鉢の土をやさしく落として2分割する。
12. 分割したスイートアリッサムを前面に植え、その左後ろのスペースにハボタンを植える。
13. 11と同様、1つのポットに数株植わっているシルバーリーフも根株を2分割し、やさしく土を落としてスイートアリッサムの横に交互に植える。
14. 全部の苗が入ったら土を入れ込んでいく。ウォータースペース(水やり時に水や土があふれてこないようにとる、土の表面から鉢の上縁までの空間)として、2cm程度あけること。
15. 植え替え棒で根鉢のすき間を軽くつついて、しっかり土を入れ込む。
16. 凸凹した土の表面を、指でならす。
17. 葉や茎の重なりを直し、見栄えよく整える。
18. 完成!!
小さなビオラを主役にした、ピンク×白(シルバー)のふんわりやさしい印象の寄せ植えです。後方にはすらりと立つストック、傍らにはどっしり安定感を生むハボタン、前面には鉢のエッジを覆うスイートアリッサムとクールな色を添えるシルバーレースを。それぞれ異なる役割を担う草花を合わせることで、表情豊かなアレンジに仕上がっています。
寄せ植えのピンクの甘さを抑えつつ、ロマンティックな雰囲気を出すために、アンティーク風の石のベンチに飾りました。背もたれのデコラティブな模様が、可憐な花を引き立てています。傍らにはリスが描かれたプレートを添えて、愛らしさとストーリー性を加えています。
日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。
花がらはこまめに摘み取ります。ストックは花が終わったら茎の根元から切り取ります。
開花期間が長いので、株が弱ったり花数が減らないように、液肥なら1週間に1回、粒状の肥料なら1カ月に1回追肥をします。
Credit
制作&アドバイス/グリーンギャラリーガーデンズ 堀田裕大
グリーンギャラリーガーデンズ店長。切り花の業界で学んだデザインのノウハウを生かした寄せ植えづくりに定評があり、2017年日比谷ガーデニングショーの寄せ植えコンテストで農林水産大臣賞を受賞。園芸誌などでも活躍中。
グリーンギャラリーガーデンズ紹介記事はこちら
SHOP DATA
東京都八王子市松木15-3
TEL:042-676-7155
営業時間;10:00~19:00 (火曜日10:00~17:00)
http://www.gg-gardens.com/
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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